今週は仕事でバタバタしておりまして、ずいぶん間があいてしまいました。すみません。
(誰も待ってない?…そんなホントのコトを涙)
宙バウの配役が発表されたり(天輝トニカちゃん、大劇場で待っています!!)、オリンピックが盛り上がってきたりしていますが、とりあえず、中日劇場にいく前に落穂ひろいを終わらせておきたいと思います。……もう少し、お付き合いくださいませ。
青山劇場にて、「ウーマン・イン・ホワイト」を観劇しました……一ヶ月ほど前に。
二年前の上演時の日記はこちら。
http://80646.diarynote.jp/m/200711240059480000/
思い出してみれば、あのときも「ウーマン・イン・ホワイト」と「蜘蛛女のキス」は、なにげにセットだったんですねぇ。偶然なのかしら。
そして。
感想も「蜘蛛女のキス」とよく似てる、かも。
やっぱり音楽が良いし脚本が良いし、前回から引き続きのメインキャストは皆さん素晴らしいし、変わったキャストはそれぞれに良い味を出しているし。
どっちも、ホントにすごく良いカンパニーでした(*^ ^*)。
キャストは大幅に変更されていて、メインキャストで継続だったのは、主役・マリアンの笹本玲奈と、マリアンローラの父の弟(ローラの叔父)で二人の後見役の光枝明彦のみ、でした。
変更キャストは……
マリアンの異父妹で、父親の遺産を相続した資産家の美少女・ローラが神田沙也加⇒大和田美帆。
姉妹が恋する貧乏な(下層階級の)美術教師・ウォルターを別所哲也⇒田代万里生。
ローラの許嫁・グライド卿を石川禅⇒パク・トンハ。
グライド卿の友人、エピキュリアンなイタリア男・フォスコ伯爵を上條恒彦⇒岡幸二郎。
そして、白い服を着た謎の女、アン・キャスリックを、山本カナコ⇒和音美桜。
いや、面白かったです。
一番印象的だったのは、上條さんから岡さんに変わったフォスコ伯爵かな。
というか、そもそもフォスコ伯爵ってものすごく印象に残る役なので、それが全くの別人になったことで、ずいぶん作品のイメージが変わったな、と思いました。
前回観たときは、『もうこの作品は、上條さんが主役でいいよ!』…と思ったりしたのですが、キャストが変わった今回は、違う意味で同じことを思いました(^ ^)。いやー、フォスコ伯爵って本当に良い役なんですねぇ。
上條さんだと、どうしても年齢的に「初老の男」になるので、ああいう行動を見ていると「色ボケ!」という気がしてしまうのですが(汗)、岡さんだとマリアンたちと同世代……は言いすぎにしても、まあ相手をしてもおかしくない感じはするので。いろんな行動が自然なんですよね。
マリアンに興味を持つ過程も、屋敷に訪ねてきたマリアンをモノにしようとする場面(you can get away with anything)も、すごくテンポが良くて面白かったです。
まあ、岡さんは残念ながらそういう意味での色気のない人なので、夢中になってしまった上條さんのような可愛らしさや、「あ~あ、オジサンったら騙されちゃって…」みたいな見えかたは無かったのですが。その代わりに、彼にあるのは『冷静な観察者』としての存在感、ですね。マリアンが一生懸命チャンスを狙ってアレコレするのを、一歩離れたところで面白がっているような、そんな空気を感じました。
マリアンに髭を嫌がられて、ちょっとしょんぼりしながら剃るために席を外した、後。
ヤル気満々で戻ってきてみたら、マリアンが書類を掴んで立ち尽くしていた……その、場面。
上條さんの、何とも言えず残念そうな、「まったく、貴女ときたら……」という声が聞こえてきそうな芝居がすごく好きだったのですが、岡さんの「まーったく、何か企んでいると思ったら案の定……」という、ちょっと蔑んだような冷たい態度も、なかなかにツボでした。
作品的には、やはり年代的に岡さんの方が役にはあっていたような気がしますが、二人のフォスコ伯爵を観ることができて、とても楽しかったです。
大きく印象が変わったのは、ぐっと若く、真直ぐになった田代さんのウォルターですね。
私は別所さんのバルジャンはすごく好きだったんですが、こういう普通の二枚目役、若くてハンサムなテノール向きの役はイマイチ似合わないんですよね…(涙)それでも、他の作品…たとえば「ユーリンタウン」の主人公みたいな、ああいう役に比べれば、ウォルターは元々マリアンやローラの“先生”なので、彼女たちより一世代上で大丈夫だし、頼りがいのある誠実で不器用な男、という設定なのでそこまでの違和感は無かったのですが、今回田代さんのウォルターを観て、やっぱりあれは違っていたんだな、と思いました(^ ^;ゞ。
ウォルターには、若さゆえの『無力さ』と『無鉄砲さ』が必要なんだな、と思ったのです。
彼は労働者階級で、喪うものなど何もない、“持たざる者”なのですから。ジェントルメン階級のマリアンとローラ、労働者階級のウォルター。ウォルターはそれでも食事をマリアンたちと一緒にとることを赦されますが、本質的には『ジェントルメン』ではない、とみなされているわけですから。
そういう“持たざるも者”の、“持てる者”へ向ける憧憬や焦燥、そういった感情が、別所さんには全く無かった。落ち着いた大人の男でした。でも、決して芝居が巧いわけではないはずの田代さんには、そういう“焦り”があったんですよね。
ローラに対しても、真直ぐに愛を表現するのではなく、後ろめたくて一直線に駆け寄るわけにはいかない、という空気を感じさせたところが良かったのだと思います。それがあるから、ローラも駆け落ちとかそういうのを考えることができないわけで。唯々諾々と姉の言うままに嫁ぎ、決定的な傷を負わされるまで気がつかない。
そして、パーシヴァル卿のパク・トンハ。
なんせ初演は石川禅ちゃんだったわけで、現役エポニーヌな玲奈ちゃんと現役バルジャン&ジャヴェールな別所&石川のコンビっていうのは物凄い違和感だったんだな、と、今回観てあらためて思いました。やっぱり、マリアンがエポニーヌならウォルターとパーシヴァル卿はマリウス&アンジョルラスクラスでないと、ね(^ ^)。
マッチョな見た目と頑固な雰囲気は、エピキュリアンなフォスコ伯爵の仲間というよりは、厳格な軍人家庭みたいなものの方がイメージかな、とも思いましたけれども、二幕ラストの光枝さんを脅しつけてサインをさせようとする場面の小物っぷりとか、的確に役の人物を表現していたような気がします。あと、「エリザベート」のルドルフでデビューしているだけあって、さりげなく貴族に見えるところはさすがでした。ウォルターに対する態度の傲慢さとか、マリアンやローラをさりげなく下に見ているところとか、パーシヴァル卿>マリアン・ローラ>ウォルターという身分の差がよく見えて、話がわかりやすくなっていたかな、と。
ローラの大和田さんは、それなりに歌えていたのでホッとしました。
ソロもデュエットも聴きやすかったし、芝居も無難で、良かったんじゃないかなあ。ただ、玲奈ちゃんが最近急激に綺麗になってきているので、ウォルターがどうしてマリアンじゃダメだったんだろう?と思ってしまいましたが。神田さやかちゃんは、歌はアレでも、やっぱり可愛かったもんな。
……いや、大和田さんも可愛いんですけどね。玲奈ちゃんが、一幕前半はもう少し地味に(衣装とか、髪型とか、お化粧とか)する必要があるのかもしれません。
アン・キャスリックのたっちん(和音美桜)。
いやー、可愛かった!初演の山本さんのあの線の細さとヒステリックな声質が役にすごく合っていたので、どうなるかなあと思っていたのですが、さすがたっちん。演技力は半端ないですね。
初演より実在感のある演技で、玲奈ちゃんと対等にやりあっていたのがさすがでした。ヒロイン経験っていうのはこういうところでも役に立つんだなあ。
一つだけ改良点を挙げるなら、物語のラスト、駅のセットの上に立って笑顔でマリアンたちを見守っている場面だけは、幽霊メークじゃなくて普通のメークでよかったと思う。
結構長い時間、笑顔で目立つ所に立っていて、照明も当たっている場面なのに、目元のクマとか頬のコケた影とかが強すぎて、怖かった……(T T)。
最後に。
マリアン・ハルカムの笹本玲奈。
初演時にこの役でいくつかの賞を獲り、女優として大きく躍進した玲奈ちゃん。あの後もいろんんな役を経て、大きく成長しての再演。
……すごく良かったです。名実ともに、主演女優でした。物語を立ち上げ、支え、そして幕を降ろす……その一番難しい所を、ちゃんと責任を持ってやっているように見えました。
ホントに、いい女優になったなあ(*^ ^*)。
今回は、歌や芝居の基本的な技術にハテナがつく人がいなかったので、とても気持ちよく観ることができました。ちあきしんさんが歌唱指導のみで出演されなかったのがとても残念ですが、ソンちゃん(秋園美緒)がいたり、レ・ミゼラブル組が何人もいたり、アンサンブル観てるだけでも楽しかったです。
やっぱりこの作品、音楽がいい!!玲奈ちゃんの「All For LAURA」、また聴きたいです。良い作品は何度でも再演してほしい。
そして。ロイド=ウェッバー作品が劇団四季以外で上演されるたびに思うことを、ことだまとして書かせていただきたいと思います。
【祈】「サンセット・ブールバード」の、四季以外での上演が実現しますように!!【祈】
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(誰も待ってない?…そんなホントのコトを涙)
宙バウの配役が発表されたり(天輝トニカちゃん、大劇場で待っています!!)、オリンピックが盛り上がってきたりしていますが、とりあえず、中日劇場にいく前に落穂ひろいを終わらせておきたいと思います。……もう少し、お付き合いくださいませ。
青山劇場にて、「ウーマン・イン・ホワイト」を観劇しました……一ヶ月ほど前に。
二年前の上演時の日記はこちら。
http://80646.diarynote.jp/m/200711240059480000/
思い出してみれば、あのときも「ウーマン・イン・ホワイト」と「蜘蛛女のキス」は、なにげにセットだったんですねぇ。偶然なのかしら。
そして。
感想も「蜘蛛女のキス」とよく似てる、かも。
やっぱり音楽が良いし脚本が良いし、前回から引き続きのメインキャストは皆さん素晴らしいし、変わったキャストはそれぞれに良い味を出しているし。
どっちも、ホントにすごく良いカンパニーでした(*^ ^*)。
キャストは大幅に変更されていて、メインキャストで継続だったのは、主役・マリアンの笹本玲奈と、マリアンローラの父の弟(ローラの叔父)で二人の後見役の光枝明彦のみ、でした。
変更キャストは……
マリアンの異父妹で、父親の遺産を相続した資産家の美少女・ローラが神田沙也加⇒大和田美帆。
姉妹が恋する貧乏な(下層階級の)美術教師・ウォルターを別所哲也⇒田代万里生。
ローラの許嫁・グライド卿を石川禅⇒パク・トンハ。
グライド卿の友人、エピキュリアンなイタリア男・フォスコ伯爵を上條恒彦⇒岡幸二郎。
そして、白い服を着た謎の女、アン・キャスリックを、山本カナコ⇒和音美桜。
いや、面白かったです。
一番印象的だったのは、上條さんから岡さんに変わったフォスコ伯爵かな。
というか、そもそもフォスコ伯爵ってものすごく印象に残る役なので、それが全くの別人になったことで、ずいぶん作品のイメージが変わったな、と思いました。
前回観たときは、『もうこの作品は、上條さんが主役でいいよ!』…と思ったりしたのですが、キャストが変わった今回は、違う意味で同じことを思いました(^ ^)。いやー、フォスコ伯爵って本当に良い役なんですねぇ。
上條さんだと、どうしても年齢的に「初老の男」になるので、ああいう行動を見ていると「色ボケ!」という気がしてしまうのですが(汗)、岡さんだとマリアンたちと同世代……は言いすぎにしても、まあ相手をしてもおかしくない感じはするので。いろんな行動が自然なんですよね。
マリアンに興味を持つ過程も、屋敷に訪ねてきたマリアンをモノにしようとする場面(you can get away with anything)も、すごくテンポが良くて面白かったです。
まあ、岡さんは残念ながらそういう意味での色気のない人なので、夢中になってしまった上條さんのような可愛らしさや、「あ~あ、オジサンったら騙されちゃって…」みたいな見えかたは無かったのですが。その代わりに、彼にあるのは『冷静な観察者』としての存在感、ですね。マリアンが一生懸命チャンスを狙ってアレコレするのを、一歩離れたところで面白がっているような、そんな空気を感じました。
マリアンに髭を嫌がられて、ちょっとしょんぼりしながら剃るために席を外した、後。
ヤル気満々で戻ってきてみたら、マリアンが書類を掴んで立ち尽くしていた……その、場面。
上條さんの、何とも言えず残念そうな、「まったく、貴女ときたら……」という声が聞こえてきそうな芝居がすごく好きだったのですが、岡さんの「まーったく、何か企んでいると思ったら案の定……」という、ちょっと蔑んだような冷たい態度も、なかなかにツボでした。
作品的には、やはり年代的に岡さんの方が役にはあっていたような気がしますが、二人のフォスコ伯爵を観ることができて、とても楽しかったです。
大きく印象が変わったのは、ぐっと若く、真直ぐになった田代さんのウォルターですね。
私は別所さんのバルジャンはすごく好きだったんですが、こういう普通の二枚目役、若くてハンサムなテノール向きの役はイマイチ似合わないんですよね…(涙)それでも、他の作品…たとえば「ユーリンタウン」の主人公みたいな、ああいう役に比べれば、ウォルターは元々マリアンやローラの“先生”なので、彼女たちより一世代上で大丈夫だし、頼りがいのある誠実で不器用な男、という設定なのでそこまでの違和感は無かったのですが、今回田代さんのウォルターを観て、やっぱりあれは違っていたんだな、と思いました(^ ^;ゞ。
ウォルターには、若さゆえの『無力さ』と『無鉄砲さ』が必要なんだな、と思ったのです。
彼は労働者階級で、喪うものなど何もない、“持たざる者”なのですから。ジェントルメン階級のマリアンとローラ、労働者階級のウォルター。ウォルターはそれでも食事をマリアンたちと一緒にとることを赦されますが、本質的には『ジェントルメン』ではない、とみなされているわけですから。
そういう“持たざるも者”の、“持てる者”へ向ける憧憬や焦燥、そういった感情が、別所さんには全く無かった。落ち着いた大人の男でした。でも、決して芝居が巧いわけではないはずの田代さんには、そういう“焦り”があったんですよね。
ローラに対しても、真直ぐに愛を表現するのではなく、後ろめたくて一直線に駆け寄るわけにはいかない、という空気を感じさせたところが良かったのだと思います。それがあるから、ローラも駆け落ちとかそういうのを考えることができないわけで。唯々諾々と姉の言うままに嫁ぎ、決定的な傷を負わされるまで気がつかない。
そして、パーシヴァル卿のパク・トンハ。
なんせ初演は石川禅ちゃんだったわけで、現役エポニーヌな玲奈ちゃんと現役バルジャン&ジャヴェールな別所&石川のコンビっていうのは物凄い違和感だったんだな、と、今回観てあらためて思いました。やっぱり、マリアンがエポニーヌならウォルターとパーシヴァル卿はマリウス&アンジョルラスクラスでないと、ね(^ ^)。
マッチョな見た目と頑固な雰囲気は、エピキュリアンなフォスコ伯爵の仲間というよりは、厳格な軍人家庭みたいなものの方がイメージかな、とも思いましたけれども、二幕ラストの光枝さんを脅しつけてサインをさせようとする場面の小物っぷりとか、的確に役の人物を表現していたような気がします。あと、「エリザベート」のルドルフでデビューしているだけあって、さりげなく貴族に見えるところはさすがでした。ウォルターに対する態度の傲慢さとか、マリアンやローラをさりげなく下に見ているところとか、パーシヴァル卿>マリアン・ローラ>ウォルターという身分の差がよく見えて、話がわかりやすくなっていたかな、と。
ローラの大和田さんは、それなりに歌えていたのでホッとしました。
ソロもデュエットも聴きやすかったし、芝居も無難で、良かったんじゃないかなあ。ただ、玲奈ちゃんが最近急激に綺麗になってきているので、ウォルターがどうしてマリアンじゃダメだったんだろう?と思ってしまいましたが。神田さやかちゃんは、歌はアレでも、やっぱり可愛かったもんな。
……いや、大和田さんも可愛いんですけどね。玲奈ちゃんが、一幕前半はもう少し地味に(衣装とか、髪型とか、お化粧とか)する必要があるのかもしれません。
アン・キャスリックのたっちん(和音美桜)。
いやー、可愛かった!初演の山本さんのあの線の細さとヒステリックな声質が役にすごく合っていたので、どうなるかなあと思っていたのですが、さすがたっちん。演技力は半端ないですね。
初演より実在感のある演技で、玲奈ちゃんと対等にやりあっていたのがさすがでした。ヒロイン経験っていうのはこういうところでも役に立つんだなあ。
一つだけ改良点を挙げるなら、物語のラスト、駅のセットの上に立って笑顔でマリアンたちを見守っている場面だけは、幽霊メークじゃなくて普通のメークでよかったと思う。
結構長い時間、笑顔で目立つ所に立っていて、照明も当たっている場面なのに、目元のクマとか頬のコケた影とかが強すぎて、怖かった……(T T)。
最後に。
マリアン・ハルカムの笹本玲奈。
初演時にこの役でいくつかの賞を獲り、女優として大きく躍進した玲奈ちゃん。あの後もいろんんな役を経て、大きく成長しての再演。
……すごく良かったです。名実ともに、主演女優でした。物語を立ち上げ、支え、そして幕を降ろす……その一番難しい所を、ちゃんと責任を持ってやっているように見えました。
ホントに、いい女優になったなあ(*^ ^*)。
今回は、歌や芝居の基本的な技術にハテナがつく人がいなかったので、とても気持ちよく観ることができました。ちあきしんさんが歌唱指導のみで出演されなかったのがとても残念ですが、ソンちゃん(秋園美緒)がいたり、レ・ミゼラブル組が何人もいたり、アンサンブル観てるだけでも楽しかったです。
やっぱりこの作品、音楽がいい!!玲奈ちゃんの「All For LAURA」、また聴きたいです。良い作品は何度でも再演してほしい。
そして。ロイド=ウェッバー作品が劇団四季以外で上演されるたびに思うことを、ことだまとして書かせていただきたいと思います。
【祈】「サンセット・ブールバード」の、四季以外での上演が実現しますように!!【祈】
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