東宝劇場にて、宙組新人公演「カサブランカ」を観劇してまいりました。



新公演出は小柳奈穂子。一本ものなのでどうするのかなあ?と思っていたら、パリの場面と、群衆の場面(「ヴィザを!ヴィザを!」と「リックの店の捜索」)をマルッとカットしていました。
オープニング、リックが銀橋を渡りきったら、もうそこが空港だったことに吃驚(@ @)。


下級生ファン的には見せ場が削られていてとても残念でしたけれども、物語の筋立てを考えたら、カット場面の選定は間違ってないと思います。
ただ、そのカットに合わせて台詞を変えたりといったことは全くしていなかったので、新人公演を独立した作品としてみると、だいぶ意味不明なところが多かったとは思います。
フルバージョンの本公演の流れのままに、ところどころを飛ばしている、という感じなので。

「カサブランカ」は、前の場面での会話で使った台詞をを次の場面でも引っ張っていたり、そういうお洒落な展開が多いので、本公演をある程度の回数観てから新公を観る組ファン的には全っく問題無いんですけど、本公演を1,2回で新公、という観客には不親切な演出だな、と思いました。

同じ小池さんの一本モノでも、「太王四神記」(花組版/生田大和)は、非常に細かくカットした上に、カットした場面に関係する台詞は全部手直しされていて、一つの作品としての完成度が高かったのですが。

……まあ、新人公演なので、その辺はどちらでもいいのかもしれませんが。
出演者たちは、本公演をやっているつもりでお稽古すればいいわけだし。





さっきまでいろいろ書いていたんですが、またもや全部消えてしまったので(←どうして懲りるってことを知らないんだ私)、今日のところは、簡単に。


リック(凪七瑠海)

新人公演で主演をはるだけの力も魅力もある人だと思うんですよ、本当はね。芝居だって、良い物もっているんだから。
でも、この作品はちょっと難しすぎたね……(T T)という感じです。

あれだけのガタイと経験がある祐飛さんでさえ散々苦労して、制作発表時には全然ダメだった、ダブルのスーツの着こなし。そんなん、背だけはあっても細くて薄いカチャに、なんとかしろと言っても無理でしょう。

他の組を見渡しても、新公学年でリックをやらせたいジェンヌが、全く思い浮かびませんもの(T T)。

ただ、声はもう少しなんとか出来たんじゃないのかな、と残念に思います。
研2や3の抜擢組じゃないんだし、春にはバウ主演も控えているんだから、がんばってほしい!という思いをこめて、ちょっと辛口かもしれませんが。
昔から声が課題だった人ですが、シシィ役で女役の声を作り直して以来、男役としての声を見失っているような気がする。昔はもう少し出ていたと思うんだけどなあ……
とにかく、呼吸が浅い。と思うんですけよね。浅く吸って、喉で喋ってる。歌ってる。腹で支えてないから、良いところで響かせられなくて、なんだか鼻声に聞こえるんです(T T)。
カチャの方が祐飛さんより(声は悪くても)歌は巧いだろうと思っていたので、ちょっと驚きました。思っていた以上に、音域が狭かったしな……(@ @)。


そういう、演じる上で根本的なところ(ヴィジュアルと声)がダメすぎて、それ以外の部分を評価することが出来ません。ごめんなさい。
でもね、良いんですよ。これは新公なんですから。失敗を恐れて小さくまとまるより、がつんとコケた方が今後のためです。この失敗をうけて何をするか、どう挽回するか。カチャの場合は、そのチャンスがバウという形で既に与えられているわけですし、どうかどうか、がんばってほしいなと思います。必ず観にいきますので(^ ^)。






イルザ(藤咲えり)

可愛かった!!

本役と同期なだけあって、全然違う役づくりでしっかり造りこんでいて、さすがでした。
すみ花ちゃんのイルザよりは、ちょっとだけ歳上っぽい?かな?
清楚で慎ましやかで美しくて、儚げな女性像でした。革命の闘士でもなんでもなく、ただ、ラズロの理想に憧れて、憧れて、それが自分の生き方だと信じ込んだ少女。
ゲームのキャラクターにも生かされていた(^ ^)うるうるとした大きな瞳が魅力的で、これこそまさに「君の瞳に乾杯」したくなる瞳だな、と思いました。


一番印象として違ったのは、リックのカフェに最初に行ったとき、サムが歌う「As Time Goes By」を聴きながら、何というか……殉教者かなにかのような辛そうな表情をしていたことでしょうか。
今にも泣き出しそうに唇を噛み締めて、大きな瞳をうるうるさせて聴いていました。
キレイだった……。

すみ花ちゃんのイルザは、結構ギリギリ最後の最後まで、自分がリックを愛していることに気づいてない気がするのですが、エリちゃんのイルザは、この「As Time Goes By」を聴いている時点で、自分が彼を完全には忘れていないことも、手紙一つであの状況から姿を消した自分に、リックが深く傷ついたであろうことも、ちゃんと自覚していたような気がします。
彼を傷つけた自分を罰するための「思い出」。それが「As Time Goes By」だった……。

先日CSで流れていたエスプリトークで、エリちゃんが「ラズロと一緒に居るんだから逢うわけにはいかないのに、何がどうなってもいいから逢いたい、と思う」というようなことをお話されていましたが。
……すみ花ちゃんのイルザは、あまりそういう感じはしないのですが、エリちゃんのイルザは、本当にそう思っているんだな、と納得しました。そして、何のために逢いたいのかといえば、彼女は多分、謝りたい(あるいは、赦されたい)んだろうな、……と。


エリちゃんのイルザで、他に印象的だったのは、国歌対決でしょうか。
真ん中に立って「ラ・マルセイエーズ」を歌うラズロを、終始心配そうに見凝めるすみ花イルザと違い、エリちゃんのイルザは、シュトラッサーに脅されるまではちょっと自慢げに微笑んでいたのにちょっと驚いたので。
コリーナ(純矢ちとせ)が差し出すグラスを優雅に受け取り、礼をする様子は、ごくごく普通のマダムのようで。ちょっとだけ、エリちゃんのアニーナが観てみたいな、と思いました。






ラズロ(七海ひろき)

カッコよかった!!
いやー、期待以上に素敵でした。しかも、若い!!37歳には全く見えないリックより、更に若々しい印象で、ヘタをしたらイルザより若いんじゃないか、なんて(滝汗)。
とにかく、三人とも同世代くらいに見えましたね。

……っと。
今気づいたんですが。この三人って、一年前にアンソニー・ブラックとその愛人たちをやっていた三人ですよね!?すげーーーー。全然違う……。



歌やダンスはともかくとして(とりあえず、かいちゃんも祐飛さんのファンに言われたくないだろう)、かいちゃんの芝居は、愛が見えるところがとても好きです。
一つ一つの声にも、仕草にも、すごく愛が籠められているところが。「薔薇に降る雨」でも思いましたけれども、なんというか、相手を視て反応している、というのがわかるんですよね。うん。良い役者だなあと思います。
一番好きなのは、やっぱり深夜のカフェかなあ。
リックに
「それほどまでにイルザが好きか?」
と問われて、即答で「YES」と言うかいちゃんが、凄く好き。
で、そう応えた自分にちょっと吃驚して、でも、あらためて確信を持ってもう一度繰り返す。
「好きです。自分の命に代えても!」
……ちょっと照れたように言うんだよね、この台詞を。胸キュンですわ、まさに(*^ ^*)。

本役さんの、どこか非現実的なヒーロー像とはかなり違う、地に足のついた活動家っぷりで、とても良かったです。
愛があるから、世界を救いたいと思うんだな、と。そこはすごく素直に納得しました(^ ^)。






サム(月映樹茉)

リック、イルザ、ラズロ、ときて、次はサムです。すみません。
えなちゃんのサムが、あまりにも天使のように可愛くて、私はすっかり落ちてしまいました(^ ^;ゞ

ピアノを弾く姿が実に実に楽しそうで。
歌う姿はもっと楽しそうで。
踊る姿も、ものすごく幸せそうで。

あの学年で、ベテラン中のベテランが魂を籠めて造っている役をもらったのに、萬さんの真似をしようとは一切考えずに全く独自の道を歩こうとするそのキャラクターが、心の底から愛おしいです。
実は私、カフェでイルザに「As Time Goes By」を聴かせる彼を観ながら、泣いてしまったんですよね。
黒人の扮装がよく似合ってて、大きな瞳が硝子玉みたいにきれいで。
あのキレイな硝子の瞳には、今まで何を映してきたんだろうか、と。そんなことを考えているうちに。

彼は、リックの傷が開くことを懼れているんですよね。
リックが苦しむ姿を、もう視たくない、と。リックが苦しめば、自分も辛いから。そんな、エンパシーが強すぎるタイプなのかな、と思いました。
リックにとって、イルザが「嘆きの天使」なら、サムは「喜びの天使」なんでしょうね。いつでも自分の傍にいてくれて、見守っていてくれて、必要なときにはいつだって笑顔をくれる、年齢不詳の天使。

新人公演においてパリ時代が丸ごとカットされるのは、もう、仕方のないことなのですが。
新公メンバーで、あのパリのホテルの場面を観てみたい!です。えなちゃん、どんな芝居をしてくれただろうか。あの場面があったなら。





新公にハプニングはツキモノですが、今日の最大のハプニングは、カチャの台詞飛びでしょうか。
「本当の俺」の途中、ルノー(鳳樹いち)と話しているところで台詞が飛んでしまって、しばらくリカバリできなかったんですが。それでも、言葉を止めずにずーっと喋りつづけて、ルノーにも振って、、、流石の舞台度胸だな、と感心しました(^ ^)。よく頑張った!!しばらくしてから、お客さんからフォローが入って無事リカバリできたのですが……あれは、本人も辛かったでしょうけれども、一番辛かったのはルノーと、あと、客席にいた上級生たちでしょうねえ(T T)。
そういえば、途中で上級生たちが固まっているあたりから何か声が飛んでましたけれども、、、(^ ^)。
……私がもっと良い席だったら、すぐに教えてあげたのになあ(涙)。あの場面なら、全部台詞入ってる のにっ!(いばりんぼ)

まあ、台詞は飛ばないに超したことはないのですが、こういうことがあったときの対応とその後の場面の出来で役者のポテンシャルが見えるなあ、と改めて思いました。
崩れなかったカチャ。そんなことがあっても、ちゃんと最後までリックを遣りとおしたカチャは、やっぱり、舞台度胸のある、いいものを持っている人なんですよね。役者としての、大きな可能性を持っている人だと思う。

……ただ、今のままでは、その可能性も生かせるかどうか?と、それが、観ていて切ないです。


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コメント

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さくら貝
2010年1月23日10:48

カットによって、すさまじくリック出ずっぱりの芝居になってましたね。
そりゃ台詞も飛ぶわ、というくらいの。でも頑張ってつないでましたね。
時間的にパリの場面カットは仕方がないんだけど、1回目の「君の瞳に乾杯」が
ないと2回目以降の場面が生きてこないんですよね。

私はえりちゃん&かいちゃん好きなので、ラズロ夫妻にめろめろでした。
サムと話をするイルザの寂しげな表情にキュン…としてました。
「ラ・マルセイエーズ」でラズロを誇らしげに見守っていましたね。
かいちゃんのお芝居、「相手を視て反応している」という表現に納得です。
ラズロに肩入れして見ていたせいか、えりちゃんイルザはすみ花ちゃんより
ラズロ>リックな感じがしました。

みなこちゃん卒業は、せめて本公演2作目の初日以降に
発表してほしかったなぁ、と思います。
まだ本公演がまるまる2作あるのに、もうカウントダウンなんて寂しいですよね。

みつきねこ
2010年1月24日1:14

さくら貝さま★コメントありがとうございます♪

> カットによって、すさまじくリック出ずっぱりの芝居になってましたね。

でしたねー。そっか、確かに、「そりゃ台詞も飛ぶな」かも(^ ^)

> 1回目の「君の瞳に乾杯」がないと2回目以降の場面が生きてこないんですよね。

そう。あと、「君の声、変わってない…」とか。
そういうのがたくさん放置されていたのが残念でした。まぁ、それを全部フォローしてた生田さんが珍しいのかもしれませんが。

> 私はえりちゃん&かいちゃん好きなので、ラズロ夫妻にめろめろでした。

私も私も!!あの夫婦、めっちゃツボでした!(はぁと)
ドラマシティでも組んでくれるといいなあ♪

> まだ本公演がまるまる2作あるのに、もうカウントダウンなんて寂しいですよね。

ですよね……。でも、今回は今発表で正解かな、という気がします。
そもそも水さんが発表早すぎるんですよね(T T)。