「カサブランカ」【11】
2010年1月18日 宝塚(宙) コメント (2)宝塚歌劇団宙組公演「カサブランカ」。
■第5~9場 リックのカフェ ~1941年12月2日(夜)~
ピアノを運んできたサム(萬あきら)が、縛り上げられているスタッフ一同を解いたところで、暗転。
盆が回って、カフェの外に立って身だしなみを調えるルノー(北翔海莉)にスポット。
そんなルノーに気づかぬていで、店のドアを出たとたんに溜息をついて煙草を出すリックが格好良いです(*^ ^*)。
少しルノーと話をするリック。それにしてもルノー、というか小池さん、捜索を「壊滅的に」やる、っていうのは、日本語として正しいんでしょうか…?
そこにやってくるイヴォンヌ(純矢ちとせ)。
ドイツ領事ハインツ(風莉じん)と共に現れた彼女は、リックを見てふぃっと肩をそびやかし、「Guten Abend!」と声をかける。
ちょっと低めのせーこちゃんの声が、色っぽくて良いです。『権力者におもねっている』ように見える彼女の行動を軽く揶揄するリック。
「いや、彼女は自己流でドイツと渡り合っているのさ」
自分のようにね、と、軽くウィンクしながらフォローして、ルノーは店内に戻っていく。
それを見送るでもなく見送って、煙草を消して、リックは下手からカジノの方へ戻っていく。
賑やかにざわめくカジノの空気。
その中心で、さりげなく場をコントロールするエミール(蓮水ゆうや)。
ルーレット台の反対側には、真剣な顔でルーレット台を睨みつける、青いスーツの若い男(凪七瑠海)。その背に漂う、絶望の影。
彼の傍に立っていた女性(花影アリス)が、リックに気づいてそっと近づいてくる。
チェス台の乗ったテーブルに座って、リックに相談を持ちかけるアニーナ。
「ルノー大尉は、信用できる方ですか…?」
「何故俺に?」
「大尉ご自身が、あなたに訊いてみるように、と」
「あいつ…」
苦虫を噛み潰しながら、リックはアニーナに視線を送る。
平静を装って喋るアリスちゃんの、怯えた小動物みたいな、落ち着かない視線。ひっきりなしに動く指。
「ヴィザを二枚お願いしたんです。……でも、お金が全然足りなくて」
祖国ブルガリアがナチスに降るまえに、国を出たヤンとアニーナ。ブルガリアは、早い段階でナチスに与したことで後々国際社会で苦労することになりますが、この時点では、攻撃を受けたわけでもなく、一般民衆が慌てて逃げるような事態ではなかったはず、と思っていたのですが……もしかして、どっちかがユダヤ系だったりするのでしょうか…?(T T)
「もしここに、あなたを真剣に愛する女性がいたとして」
何かを振り切るように、言葉を紡ぐアニーナ。
「あなたの幸せを願って、そのために罪を犯してしまったら、あなたはその人を赦せますか…?」
ルノーが信用できるかどうか訊ねるだけのつもりだったのに、何故そんなことを言い出したのか、彼女自身にもわからないのかもしれません。
少なくとも、目の前のリックがルノーと同じことを言い出す可能性だけはなさそうだ、と、そこは信用したんでしょうけれども。
「でも、彼がそれを知らず、女の方も黙ってさえいれば」
彼が知ることさえなければ。そして、私が黙りとおすことさえできれば。
「……大丈夫ですよね?」
この問いかけに、「俺をそこまで愛してくれたひとは、いない」と応えるリックは、やっぱり相当ひどく傷ついていたんだなあ、と思います。
それでも。
「あなたが彼の勝ちを必死に祈れば、問題は解決するかもしれませんよ?」
軽い口調でそう告げたところで、ビゴーがオーナーを呼びに来る。
「失礼」と一言で終わらせて立ち上がるリック、縋るような瞳で手をのばすアニーナ、妻が他の男と話しているのにも気づかぬていで、ルーレットにのめりこんでいくヤン……。
カフェ側への扉をくぐると、ちょうどイヴォンヌが啖呵を切ったところ。
「誰と呑もうとあたしの勝手だろう!?」
だいぶ荒れた、やさぐれた口調。フランス人(蒼羽りく)につけつけと言い返す様子は相当な迫力で、本質的に「少女」の役者であるせーこちゃんがこういう役をすると、案外と似合うのでとまどってしまいます………「スケバン刑事」とか似合いそうだなあ(*^ ^*)、とか、そういう妄想が走ってしまいます(^ ^;ゞ
……ちなみに、あのイヴォンヌの服は、本来はお腹が見えてる……感じなのでしょうか。それとも、見えているとおり肌色のインナーを着ているのかしら?
りくちゃんは、今回も本当に良いお芝居をしています♪
「こんなドイツ野郎と……!!」
この台詞の切実さ、籠められた怒りの大きさに感動しちゃうんですよね。
そして、そんな挑発に乗って、掴みかかってくるハインツ。
「このカサブランカがドイツ領になるのは時間の問題だ!」
それまでは飄々としていたのに、このときばかりは……という感じ。
「俺の店は中立だ!政治の話なら、外でやってくれ!」
宣言したリックは、いきり立つ客たちを宥めながらカジノに戻る。
なんというか、素敵ですよね、このひと(*^ ^*)。なんか、サラッとそんなことを言ってしまうあたりとか。
ちなみに。
この場面の見所は、ハインツに殴りかかろうとするりくちゃんを押し止めるフランス兵二人(澄輝さやと、風羽玲亜)。とっても格好良いんですよ♪♪ ひと段落ついて、席に戻った後、りくちゃんを手荒に歓迎している様子が面白いです。なんていうのかな、「男の友情」って感じです。
あと、喧嘩を見て怯えるボーイ二人(千鈴まゆ・綾瀬あきな)も超ツボ(^ ^ かーわーいーいいーーー!!
ついでに、リックを怒らせたことに落ち込んでいる(?)イヴォンヌを、大事そうに抱えてバーに連れて行くサッシャ(春風弥里)も、なかなかいい味を出しています(*^ ^*)。後ろからイヴォンヌを抱きしめるサッシャを、振り払おうとして、でも振り払いきれないイヴォンヌが可愛い♪
上手端のテーブルに固まっていたドイツ兵たち。ジョッキを持って、リーダー格(?)の雅桜歌さん中心に、苛々しているシュトラッサーに挨拶しに近づいてくる。
「少佐、我々と乾杯していただけますか!?」
「……Prost!」
すみません。田中芳樹さんの「銀河英雄伝説」ファンの猫にとって、何に驚いたかって独逸語の「乾杯」が「プロージット!」じゃなかったことですわ(滝汗)。
Prost!とProsit!、辞書を見るとどちらも使うようですが。意味とかは何か違うのでしょうか…?
再び盆が回り、舞台正面はカジノへ。
ルーレット台にさっきと同じ姿勢で座り、残り僅かになったコインを握り締めるヤン。
その傍らでじっと唇を噛むアニーナ。
「マダム エ ムシュー、どうぞ」
穏やかなエミールの声。僅かなコインを握り締めて、逡巡していいるヤンに、
「どうなさいます?」
「……止めておくよ」
何かを振り切るように、立ち上がって台を離れようとするヤン。
つ、とその傍に寄り添って、囁きかけるリック。
「今夜、22を試してみましたか?」
エミールに軽く合図をしながら、22を奨めて。逡巡しながらも、持っているコインを22に置くヤン。
「締め切りました……さぁ、」
……このカジノは、賭け終わってからルーレットを回す方式(胴元側に有利)なんですね(^ ^;。
「22!黒、偶数、後半、22です」
無表情なのに、口許だけ微かに綻ばせたちーちゃんが、クールで素敵です。
でも、結構大量に賭けられているのにレイク(熊手みたいなやつ)を使わないで手でコインを回収しているのはなんで?(^ ^)
信じられないことを聞いたかのように呆然とするカチャとアリスが、すごくリアル。
おたおたして、「ど、どうしよう……」という声が聞こえてきそうなカチャの肩をそっと押さえて、「そのまま、動かさないで」というリックが、物凄く大人で、格好良い!(*^ ^*)
もう一度ルーレットを回して、エミールが宣言する。
「22!黒、偶数、後半、22です。……おめでとうございます」
最後の一言は、にっこりとヤンに微笑みかけながら。
あの場面のやり取り、全部好きです。遠くからリックの動向を見逃すまいと、チラチラとリックとアイコンタクトしているちーちゃんも素敵だし、「どうしようどうしよう - -;;;」とおたおたしている若夫婦もメッチャ可愛い。いい場面だなあ……。
さりげなく様子を視ていて、タイミング良くリックに小切手を渡すかいちゃん。
小切手にサインをして、喜んでいるヤンにすっと差し出すリック。
「すぐに現金に換えるんだ。…二度と来るんじゃない」
大喜びの若夫婦と、穏やかに微笑むオーナーを、ワクワクしながら見守っているスタッフたちがめっちゃ可愛い!
話を聞いて、カフェとの間をつなぐドアから飛び込んでくる連中。どこからどう話が回ったのか、玄関をほっぽって来たドアマンのかけるくん(風馬翔)とか、キャッシャーを閉めてまで外に出てきた天風いぶきさんとか、良いのか君たちそれで。短時間とはいえ、スタッフが全員カジノに集まったってことは、カフェは今、無法地帯ってことですよね。皆、リックのファンにもほどがある(涙)。
サッシャの音頭で歌いだすメンバー。
♪われらが誇るべきボス リック!
大好きなリックが、珍しく“イイコト”をしたんだから、そりゃー皆も嬉しいですよねえ(*^ ^*)。思いっきり“ロシア式のお祝い”で祝福するサッシャ。咄嗟に後ろからチェス台を押さえるエミールのタイミングは、結構いつも微妙な気がする。っていうか、東宝に来てからサッシャの強引さが増しているような気がします。熱烈すぎ(^ ^)。
サッシャの“祝福”をやっと振り払ったリックは、ちょうどカジノに入ってきたラズロと眼が合う。口許をぬぐいながら、なんとか間をおくリック。
「盛り上がってますね」
蘭トムさんの静かな口調が、笑いのツボを直撃してくれます(^ ^)。
「……従業員の慰安だ」
咄嗟に誤魔化してスタッフたちを散らせ、2階のオフィスへ客人を連れて行く。
ルーレット台の周りで大人しくエミールを待っている客たちが、なんとなく微笑ましいです。
カーティス夫妻はかーなーり怪しんでますね。まさこちゃんの「あやしい…」が超ツボ。
キャッシャーのボックス(檻?)は非常に軽い素材で出来ていて、天風さんが出入りするときにかなり動きます(^ ^)。こないだ観たときは、壁にぴったりくっついてしまって入れなくて、天風さんが片手で(!)キャッシャーを前に出して、中に入ってから、自分で少し押して箱ごと移動していました(^ ^;;;。金が入っている設定なんだろうに、あのボックスはいったい……。
フェラーリに教えられたとおり、リックから通行証を買い取ろうとするラズロ。
地下組織の連中から教えられた、リックの過去。反ファシズムの闘士であった彼の、正義感に賭けて。
「あなたには、私がアメリカに亡命して活動することの重要性がおわかりのはずだ!」
「……なんて綺麗事なんだろうな。昔の俺だったら、感動しただろうに」
この場面での、リックのヤル気のなさ、醒めた空気がとても好きです。
「いい商売だが乗らないねぇ」
という口調が、すごく厭らしくていい。そして、そんな嫌味な言い方をされても全くこたえていないラズロも、いい。
自分とイルザが事実上夫婦であることを、確信をもって知っているリック。
誰から聞いたのか?……イルザしか、いない。どこで?いつのまに?そんな疑問をきっと抱いただろうに、いっさい表には出さないラズロが、格好いいなあと思うのです。
ただ。小池さん、
「君の妻に聞いてみろ、と」
って……せめて「君の奥方に」とか、何か言い方あるでしょうに。なぜ「妻」なんだココで。
カフェから大きな物音が聞こえてくる。
話を切って、降りていく二人。
ドイツ人たちが「ラインの守り」を歌い上げている。
店の中を傍若無人に歩き回り、気炎をあげる彼らを、嫌そうに睨みつける、ドイツ人以外のひとたち。
さっきの喧嘩の昂奮がおさまっていないりくちゃんを必死で押し留める、さっつんとあっきー。
階段を降りてきたラズロが、ピアノに座って手持ち無沙汰にしていたサムに言う。
「ラ・マルセイエーズを!」
昂然と弾き始めるサム、よく通る高い声で朗々と歌いだすヴィクター・ラズロ。
一瞬びくりとして、そして、力強く唱和しはじめる、反独抵抗者たち。
ラズロはチェコ人だし、バーガーはノルウェー人だし、リックの店のスタッフたちも殆どはフランス人ではありません。客たちも、多分。でもこの当時、「ラ・マルセイエーズ」は汎ヨーロッパ的に反ナチ歌だったんですよね……。その歌を歌うフランス人、そしてフランス以外の出身の人たちの気持ちを思うと、なんだか涙が出てきます。
この場面で、何も歌っていないのは、リック、イルザ、ルノー、そしてカーティス夫妻。
それ以外は全員どちらかの陣営に与している、と思います。たぶん。
リックは二階との境の階段の上で煙草の煙に本心を隠して、
ルノーは伏し目がちに、酒のグラスに本心を隠して、
カーティス夫妻は、好奇心に溢れたキラキラした様子で両陣営を見比べて、
……そしてイルザは、ただひたすら心配そうに、明朗なオーラで店内の客たちの心を掴んだカリスマを凝視している。
「ラ・マルセイエーズ」が「ラインの守り」を最初に凌駕したとき、ドイツ人たちは慌てて一箇所に集まって態勢を整え、もう一度主導権を取り戻します。けれども、小さくまとまったことで彼らは、なんというか、「ラ・マルセイエーズ」チームとの陣取り合戦に敗れたかたちになった。
店の敷地のほとんどを「ラ・マルセイエーズ」が占めて、残りのほんの僅かなところに固まっている自分たち。その図は、まさにヨーロッパの北方に閉じ込められた自分たちと、温暖で豊かな平地を持つ豊かな国々との縮図に見えたのではないでしょうか。
音楽のラストに、
「フランス万歳!」
というせーこちゃんの迫力が、観るたびに増していくのに感心します。
どこまで行くんだろう、この人は、と。
そして、効果音で入るシャンパンの栓を飛ばす音。タイミングよく出してくるサッシャの空気の読みようも凄いですよね。みーちゃん本人もあのくらい……むにゃむにゃむにゃ
だれかれ構わずシャンパンを注いで回るサッシャ。あれはリックの許可が出てるんだろうか…などと素朴に疑問に想いつつ。
そして、その効果音の数々を背にうけて、嫣然と笑むラズロが素晴らしい。絶賛(^ ^)。
どうしよう。ラズロさんが凄く素敵だ……。光を浴びて、光を発して、皆からの乾杯を受けて。
この小さな店は、たった今ラズロの牙城になった……そんな空気。
リックはただ、無表情に店の中を視ている。興奮して口々に乾杯を叫ぶ客たち。一緒になって盛り上がっている従業員たち。
……そして、大きな瞳をみひらいて、ただ夫の姿を追う、小さなイルザ。
怒りに我を忘れたシュトラッサーが、ルノーにカフェの閉鎖を命じる。
「しかし、理由がありません」
「自分で見つけろ!」
……無茶苦茶な(- -;
それでも、命令が降った以上は従わねばならないのが軍人です。
ルノーはサッシャからもう一杯シャンパンを貰って一気飲みし、呼ぶ子を取り出す。
ざわめきに水をさす、鋭い音。
客たちと一緒に盛り上がっていた警官たちが、慌てて整列する。
「全員、ただちに退出せよ!おって通達があるまで、このカフェは閉鎖する!」
これだけ胡散臭い店だから、何かあったときには強権発動できるよう準備されていてもおかしくないですからね。まあ、ある程度の腹積もりはあったと思ったほうが正解でしょう。
よく訓練された警官たちは、理不尽な命令にも素直に従って、客たちを追い出しにかかります。さすがに、抵抗らしい抵抗はせずに出て行く客たち。
………あの人たち、店の支払いはいつするんだろう……?(今ひとつ店のシステムが解っていないらしい)
店の隅で不安な予感を押し殺しているイルザに、脅しをかけてから出て行くシュトラッサー。
巨大なともちんが小さなすみ花ちゃんに話しかけている時点で怖いですから(T T)。
警官たちの指示を受けたラズロが、イルザを迎えに来る。
とにかく、店の外へ。今のラズロの立場では、退去命令の出たカフェに居座っているだけで逮捕されかねないから。
シュトラッサーの言葉に怯えて、この街が紛れも無く敵地である事実を、あらためて噛み締めるイルザ。
早く。
早くこの人を、この街から出さなくては。
なるべく早く、いいえ、今すぐにでも、アメリカへ。
この人は、世界にとって必要な人だから。
偽名を使うつもりも、変装する気も無いこの人を、あたしが守ってみせる。
世界のために。
未来のために。
そして、、、、
誰のために、というところを自分自身に誤魔化しながら、オスロの少女は、一つの決心をするーーーーー。
.
■第5~9場 リックのカフェ ~1941年12月2日(夜)~
ピアノを運んできたサム(萬あきら)が、縛り上げられているスタッフ一同を解いたところで、暗転。
盆が回って、カフェの外に立って身だしなみを調えるルノー(北翔海莉)にスポット。
そんなルノーに気づかぬていで、店のドアを出たとたんに溜息をついて煙草を出すリックが格好良いです(*^ ^*)。
少しルノーと話をするリック。それにしてもルノー、というか小池さん、捜索を「壊滅的に」やる、っていうのは、日本語として正しいんでしょうか…?
そこにやってくるイヴォンヌ(純矢ちとせ)。
ドイツ領事ハインツ(風莉じん)と共に現れた彼女は、リックを見てふぃっと肩をそびやかし、「Guten Abend!」と声をかける。
ちょっと低めのせーこちゃんの声が、色っぽくて良いです。『権力者におもねっている』ように見える彼女の行動を軽く揶揄するリック。
「いや、彼女は自己流でドイツと渡り合っているのさ」
自分のようにね、と、軽くウィンクしながらフォローして、ルノーは店内に戻っていく。
それを見送るでもなく見送って、煙草を消して、リックは下手からカジノの方へ戻っていく。
賑やかにざわめくカジノの空気。
その中心で、さりげなく場をコントロールするエミール(蓮水ゆうや)。
ルーレット台の反対側には、真剣な顔でルーレット台を睨みつける、青いスーツの若い男(凪七瑠海)。その背に漂う、絶望の影。
彼の傍に立っていた女性(花影アリス)が、リックに気づいてそっと近づいてくる。
チェス台の乗ったテーブルに座って、リックに相談を持ちかけるアニーナ。
「ルノー大尉は、信用できる方ですか…?」
「何故俺に?」
「大尉ご自身が、あなたに訊いてみるように、と」
「あいつ…」
苦虫を噛み潰しながら、リックはアニーナに視線を送る。
平静を装って喋るアリスちゃんの、怯えた小動物みたいな、落ち着かない視線。ひっきりなしに動く指。
「ヴィザを二枚お願いしたんです。……でも、お金が全然足りなくて」
祖国ブルガリアがナチスに降るまえに、国を出たヤンとアニーナ。ブルガリアは、早い段階でナチスに与したことで後々国際社会で苦労することになりますが、この時点では、攻撃を受けたわけでもなく、一般民衆が慌てて逃げるような事態ではなかったはず、と思っていたのですが……もしかして、どっちかがユダヤ系だったりするのでしょうか…?(T T)
「もしここに、あなたを真剣に愛する女性がいたとして」
何かを振り切るように、言葉を紡ぐアニーナ。
「あなたの幸せを願って、そのために罪を犯してしまったら、あなたはその人を赦せますか…?」
ルノーが信用できるかどうか訊ねるだけのつもりだったのに、何故そんなことを言い出したのか、彼女自身にもわからないのかもしれません。
少なくとも、目の前のリックがルノーと同じことを言い出す可能性だけはなさそうだ、と、そこは信用したんでしょうけれども。
「でも、彼がそれを知らず、女の方も黙ってさえいれば」
彼が知ることさえなければ。そして、私が黙りとおすことさえできれば。
「……大丈夫ですよね?」
この問いかけに、「俺をそこまで愛してくれたひとは、いない」と応えるリックは、やっぱり相当ひどく傷ついていたんだなあ、と思います。
それでも。
「あなたが彼の勝ちを必死に祈れば、問題は解決するかもしれませんよ?」
軽い口調でそう告げたところで、ビゴーがオーナーを呼びに来る。
「失礼」と一言で終わらせて立ち上がるリック、縋るような瞳で手をのばすアニーナ、妻が他の男と話しているのにも気づかぬていで、ルーレットにのめりこんでいくヤン……。
カフェ側への扉をくぐると、ちょうどイヴォンヌが啖呵を切ったところ。
「誰と呑もうとあたしの勝手だろう!?」
だいぶ荒れた、やさぐれた口調。フランス人(蒼羽りく)につけつけと言い返す様子は相当な迫力で、本質的に「少女」の役者であるせーこちゃんがこういう役をすると、案外と似合うのでとまどってしまいます………「スケバン刑事」とか似合いそうだなあ(*^ ^*)、とか、そういう妄想が走ってしまいます(^ ^;ゞ
……ちなみに、あのイヴォンヌの服は、本来はお腹が見えてる……感じなのでしょうか。それとも、見えているとおり肌色のインナーを着ているのかしら?
りくちゃんは、今回も本当に良いお芝居をしています♪
「こんなドイツ野郎と……!!」
この台詞の切実さ、籠められた怒りの大きさに感動しちゃうんですよね。
そして、そんな挑発に乗って、掴みかかってくるハインツ。
「このカサブランカがドイツ領になるのは時間の問題だ!」
それまでは飄々としていたのに、このときばかりは……という感じ。
「俺の店は中立だ!政治の話なら、外でやってくれ!」
宣言したリックは、いきり立つ客たちを宥めながらカジノに戻る。
なんというか、素敵ですよね、このひと(*^ ^*)。なんか、サラッとそんなことを言ってしまうあたりとか。
ちなみに。
この場面の見所は、ハインツに殴りかかろうとするりくちゃんを押し止めるフランス兵二人(澄輝さやと、風羽玲亜)。とっても格好良いんですよ♪♪ ひと段落ついて、席に戻った後、りくちゃんを手荒に歓迎している様子が面白いです。なんていうのかな、「男の友情」って感じです。
あと、喧嘩を見て怯えるボーイ二人(千鈴まゆ・綾瀬あきな)も超ツボ(^ ^ かーわーいーいいーーー!!
ついでに、リックを怒らせたことに落ち込んでいる(?)イヴォンヌを、大事そうに抱えてバーに連れて行くサッシャ(春風弥里)も、なかなかいい味を出しています(*^ ^*)。後ろからイヴォンヌを抱きしめるサッシャを、振り払おうとして、でも振り払いきれないイヴォンヌが可愛い♪
上手端のテーブルに固まっていたドイツ兵たち。ジョッキを持って、リーダー格(?)の雅桜歌さん中心に、苛々しているシュトラッサーに挨拶しに近づいてくる。
「少佐、我々と乾杯していただけますか!?」
「……Prost!」
すみません。田中芳樹さんの「銀河英雄伝説」ファンの猫にとって、何に驚いたかって独逸語の「乾杯」が「プロージット!」じゃなかったことですわ(滝汗)。
Prost!とProsit!、辞書を見るとどちらも使うようですが。意味とかは何か違うのでしょうか…?
再び盆が回り、舞台正面はカジノへ。
ルーレット台にさっきと同じ姿勢で座り、残り僅かになったコインを握り締めるヤン。
その傍らでじっと唇を噛むアニーナ。
「マダム エ ムシュー、どうぞ」
穏やかなエミールの声。僅かなコインを握り締めて、逡巡していいるヤンに、
「どうなさいます?」
「……止めておくよ」
何かを振り切るように、立ち上がって台を離れようとするヤン。
つ、とその傍に寄り添って、囁きかけるリック。
「今夜、22を試してみましたか?」
エミールに軽く合図をしながら、22を奨めて。逡巡しながらも、持っているコインを22に置くヤン。
「締め切りました……さぁ、」
……このカジノは、賭け終わってからルーレットを回す方式(胴元側に有利)なんですね(^ ^;。
「22!黒、偶数、後半、22です」
無表情なのに、口許だけ微かに綻ばせたちーちゃんが、クールで素敵です。
でも、結構大量に賭けられているのにレイク(熊手みたいなやつ)を使わないで手でコインを回収しているのはなんで?(^ ^)
信じられないことを聞いたかのように呆然とするカチャとアリスが、すごくリアル。
おたおたして、「ど、どうしよう……」という声が聞こえてきそうなカチャの肩をそっと押さえて、「そのまま、動かさないで」というリックが、物凄く大人で、格好良い!(*^ ^*)
もう一度ルーレットを回して、エミールが宣言する。
「22!黒、偶数、後半、22です。……おめでとうございます」
最後の一言は、にっこりとヤンに微笑みかけながら。
あの場面のやり取り、全部好きです。遠くからリックの動向を見逃すまいと、チラチラとリックとアイコンタクトしているちーちゃんも素敵だし、「どうしようどうしよう - -;;;」とおたおたしている若夫婦もメッチャ可愛い。いい場面だなあ……。
さりげなく様子を視ていて、タイミング良くリックに小切手を渡すかいちゃん。
小切手にサインをして、喜んでいるヤンにすっと差し出すリック。
「すぐに現金に換えるんだ。…二度と来るんじゃない」
大喜びの若夫婦と、穏やかに微笑むオーナーを、ワクワクしながら見守っているスタッフたちがめっちゃ可愛い!
話を聞いて、カフェとの間をつなぐドアから飛び込んでくる連中。どこからどう話が回ったのか、玄関をほっぽって来たドアマンのかけるくん(風馬翔)とか、キャッシャーを閉めてまで外に出てきた天風いぶきさんとか、良いのか君たちそれで。短時間とはいえ、スタッフが全員カジノに集まったってことは、カフェは今、無法地帯ってことですよね。皆、リックのファンにもほどがある(涙)。
サッシャの音頭で歌いだすメンバー。
♪われらが誇るべきボス リック!
大好きなリックが、珍しく“イイコト”をしたんだから、そりゃー皆も嬉しいですよねえ(*^ ^*)。思いっきり“ロシア式のお祝い”で祝福するサッシャ。咄嗟に後ろからチェス台を押さえるエミールのタイミングは、結構いつも微妙な気がする。っていうか、東宝に来てからサッシャの強引さが増しているような気がします。熱烈すぎ(^ ^)。
サッシャの“祝福”をやっと振り払ったリックは、ちょうどカジノに入ってきたラズロと眼が合う。口許をぬぐいながら、なんとか間をおくリック。
「盛り上がってますね」
蘭トムさんの静かな口調が、笑いのツボを直撃してくれます(^ ^)。
「……従業員の慰安だ」
咄嗟に誤魔化してスタッフたちを散らせ、2階のオフィスへ客人を連れて行く。
ルーレット台の周りで大人しくエミールを待っている客たちが、なんとなく微笑ましいです。
カーティス夫妻はかーなーり怪しんでますね。まさこちゃんの「あやしい…」が超ツボ。
キャッシャーのボックス(檻?)は非常に軽い素材で出来ていて、天風さんが出入りするときにかなり動きます(^ ^)。こないだ観たときは、壁にぴったりくっついてしまって入れなくて、天風さんが片手で(!)キャッシャーを前に出して、中に入ってから、自分で少し押して箱ごと移動していました(^ ^;;;。金が入っている設定なんだろうに、あのボックスはいったい……。
フェラーリに教えられたとおり、リックから通行証を買い取ろうとするラズロ。
地下組織の連中から教えられた、リックの過去。反ファシズムの闘士であった彼の、正義感に賭けて。
「あなたには、私がアメリカに亡命して活動することの重要性がおわかりのはずだ!」
「……なんて綺麗事なんだろうな。昔の俺だったら、感動しただろうに」
この場面での、リックのヤル気のなさ、醒めた空気がとても好きです。
「いい商売だが乗らないねぇ」
という口調が、すごく厭らしくていい。そして、そんな嫌味な言い方をされても全くこたえていないラズロも、いい。
自分とイルザが事実上夫婦であることを、確信をもって知っているリック。
誰から聞いたのか?……イルザしか、いない。どこで?いつのまに?そんな疑問をきっと抱いただろうに、いっさい表には出さないラズロが、格好いいなあと思うのです。
ただ。小池さん、
「君の妻に聞いてみろ、と」
って……せめて「君の奥方に」とか、何か言い方あるでしょうに。なぜ「妻」なんだココで。
カフェから大きな物音が聞こえてくる。
話を切って、降りていく二人。
ドイツ人たちが「ラインの守り」を歌い上げている。
店の中を傍若無人に歩き回り、気炎をあげる彼らを、嫌そうに睨みつける、ドイツ人以外のひとたち。
さっきの喧嘩の昂奮がおさまっていないりくちゃんを必死で押し留める、さっつんとあっきー。
階段を降りてきたラズロが、ピアノに座って手持ち無沙汰にしていたサムに言う。
「ラ・マルセイエーズを!」
昂然と弾き始めるサム、よく通る高い声で朗々と歌いだすヴィクター・ラズロ。
一瞬びくりとして、そして、力強く唱和しはじめる、反独抵抗者たち。
ラズロはチェコ人だし、バーガーはノルウェー人だし、リックの店のスタッフたちも殆どはフランス人ではありません。客たちも、多分。でもこの当時、「ラ・マルセイエーズ」は汎ヨーロッパ的に反ナチ歌だったんですよね……。その歌を歌うフランス人、そしてフランス以外の出身の人たちの気持ちを思うと、なんだか涙が出てきます。
この場面で、何も歌っていないのは、リック、イルザ、ルノー、そしてカーティス夫妻。
それ以外は全員どちらかの陣営に与している、と思います。たぶん。
リックは二階との境の階段の上で煙草の煙に本心を隠して、
ルノーは伏し目がちに、酒のグラスに本心を隠して、
カーティス夫妻は、好奇心に溢れたキラキラした様子で両陣営を見比べて、
……そしてイルザは、ただひたすら心配そうに、明朗なオーラで店内の客たちの心を掴んだカリスマを凝視している。
「ラ・マルセイエーズ」が「ラインの守り」を最初に凌駕したとき、ドイツ人たちは慌てて一箇所に集まって態勢を整え、もう一度主導権を取り戻します。けれども、小さくまとまったことで彼らは、なんというか、「ラ・マルセイエーズ」チームとの陣取り合戦に敗れたかたちになった。
店の敷地のほとんどを「ラ・マルセイエーズ」が占めて、残りのほんの僅かなところに固まっている自分たち。その図は、まさにヨーロッパの北方に閉じ込められた自分たちと、温暖で豊かな平地を持つ豊かな国々との縮図に見えたのではないでしょうか。
音楽のラストに、
「フランス万歳!」
というせーこちゃんの迫力が、観るたびに増していくのに感心します。
どこまで行くんだろう、この人は、と。
そして、効果音で入るシャンパンの栓を飛ばす音。タイミングよく出してくるサッシャの空気の読みようも凄いですよね。みーちゃん本人もあのくらい……むにゃむにゃむにゃ
だれかれ構わずシャンパンを注いで回るサッシャ。あれはリックの許可が出てるんだろうか…などと素朴に疑問に想いつつ。
そして、その効果音の数々を背にうけて、嫣然と笑むラズロが素晴らしい。絶賛(^ ^)。
どうしよう。ラズロさんが凄く素敵だ……。光を浴びて、光を発して、皆からの乾杯を受けて。
この小さな店は、たった今ラズロの牙城になった……そんな空気。
リックはただ、無表情に店の中を視ている。興奮して口々に乾杯を叫ぶ客たち。一緒になって盛り上がっている従業員たち。
……そして、大きな瞳をみひらいて、ただ夫の姿を追う、小さなイルザ。
怒りに我を忘れたシュトラッサーが、ルノーにカフェの閉鎖を命じる。
「しかし、理由がありません」
「自分で見つけろ!」
……無茶苦茶な(- -;
それでも、命令が降った以上は従わねばならないのが軍人です。
ルノーはサッシャからもう一杯シャンパンを貰って一気飲みし、呼ぶ子を取り出す。
ざわめきに水をさす、鋭い音。
客たちと一緒に盛り上がっていた警官たちが、慌てて整列する。
「全員、ただちに退出せよ!おって通達があるまで、このカフェは閉鎖する!」
これだけ胡散臭い店だから、何かあったときには強権発動できるよう準備されていてもおかしくないですからね。まあ、ある程度の腹積もりはあったと思ったほうが正解でしょう。
よく訓練された警官たちは、理不尽な命令にも素直に従って、客たちを追い出しにかかります。さすがに、抵抗らしい抵抗はせずに出て行く客たち。
………あの人たち、店の支払いはいつするんだろう……?(今ひとつ店のシステムが解っていないらしい)
店の隅で不安な予感を押し殺しているイルザに、脅しをかけてから出て行くシュトラッサー。
巨大なともちんが小さなすみ花ちゃんに話しかけている時点で怖いですから(T T)。
警官たちの指示を受けたラズロが、イルザを迎えに来る。
とにかく、店の外へ。今のラズロの立場では、退去命令の出たカフェに居座っているだけで逮捕されかねないから。
シュトラッサーの言葉に怯えて、この街が紛れも無く敵地である事実を、あらためて噛み締めるイルザ。
早く。
早くこの人を、この街から出さなくては。
なるべく早く、いいえ、今すぐにでも、アメリカへ。
この人は、世界にとって必要な人だから。
偽名を使うつもりも、変装する気も無いこの人を、あたしが守ってみせる。
世界のために。
未来のために。
そして、、、、
誰のために、というところを自分自身に誤魔化しながら、オスロの少女は、一つの決心をするーーーーー。
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コメント
今回のねこさまの文章はラストにむけて、ものすごい盛り上りますね
>>誰のために、というところを自分自身に誤魔化しながら、オスロの少女は、一つの決心をするーーーーー。
いや~もう大変に私、盛り上りました。この盛り上がりのまま、今夜の観劇に突入って感じ(でも遅刻するけど)
>>すぐに現金に換えるんだ。…二度と来るんじゃない
って行ったあと、そそくさとお金を払う若夫婦にルノーが明日10時にと言った後
リックにぷんぷんするじゃない?
あそこもツボです。ルノーが、ほんとに狸おやじで大好きです。
あと、どんどこ出て行くカフェのお客さんのお支払いですが
海外のカフェに行くと持ってきたときにすぐにお支払いするじゃない?
レストランは食事のあとでチェックを!というけど・・・
だから多分リックのお店は普通のお客さんは飲み物を受け取った時点でお支払いなのでは?
で、シュトラッサーたちは後から支払いを持ってくるから高額な支払いをさせられてるって
感じがしました。
ブーブクリコ、いま、円高なので4,000円台ですからそれを銀座のバーで飲むと3倍くらい??
だからリックの店もきっとそんな感じなんだろうと思いながら見てます(笑)
話が変わりますが
次回の大劇場宙組公演 ネルソン提督⇒軍服ですね、軍服!!
宙組は男役が大きいから絶対に軍服が似合いますよ。
しかも海戦ってことは軍艦が出ちゃうのね、さいとー先生だし
また音楽が無駄にかっこよくてプロローグだけで満足しちゃうような作品を
作ってくれちゃうことを期待してます。
しかもすみかちゃんは人妻なの? 嫉妬するオットが蘭寿さん??
いや、またまた面白そうですね~ いいなぁ
そして水さんさよならは正塚先生。
ってことは出演者がまたも超少ないということですね・・・(遠い目)
いつもコメントありがとうございます!えへへ、盛り上がりました?うふふふ♪
あそこ、ルノーさんも良いんですよね~!ちょっと、こう、肩を落としてしょんぼりと帰っていくのが良いわ~。ほんの数分前までは、「私は風の吹くほうになびくだけ……」とか偉そうに呟いていたくせに(^ ^)。
カフェの支払いは、そういうことなんですね。ハインツが帰り際にサインしていくから(←日に日に嫌そう度が増してますが)、皆そうなんだと思ってました。そうか、あれは高額だからなんですね。
ヴーヴクリコって昔はもう少し高級ワインのイメージでしたけど、今はその程度なのかー。
今度近所の酒屋で探してみます(^ ^)。
ネルソン提督は………びっくり、です。
そう来たかーーーーーっ!!