「カサブランカ」【10】
2010年1月15日 宝塚(宙) コメント (4)宝塚歌劇団宙組公演「カサブランカ」。
まずは。初見の時から突っ込んでいたのに、書くのを忘れていた突込みを。
どうしてパリ市民は、全員トレンチコートにマフラーをつけ、帽子まで被って汽車を待つのでしょうか?
6月のパリって、そんなに寒くないですよね……?
(いや、着替える時間がないから、という理由は判っているのですが(^ ^;ゞ
■第3場 バザール(ブルー・パレット) ~1941年12月2日(昼前)~
人々で溢れかえるバザールの裏には、フェラーリ(磯野千尋)の店「ブルー・パレット」がある。
なんちゃってイスラム風(?)の内装に、ちょっと豪華めなソファ。いかにも胡散臭げな感じがいいです。リックのカフェが「アメリカン」なら、こちらは「ムスリム」な感じ、でしょうか(^ ^)。
ルノーのオフィスで「7時から並んでいた」のにヴィザを出してもらえなかったヤン(凪七瑠海)が、フェラーリのところに闇ヴィザの交渉に来ている。
「2万フランじゃ二人分は難しい」
それなりに同情の貌は見せつつも、あっさりと断るフェラーリ。彼はルノーの性癖を知っていて、「奥さんが交渉しているなら、なんとかなるかもしれない」と呟く。含み笑いで。
頭のてっぺんから「ハテナ?」を飛ばしながら、不安げに去っていくカチャが、なんかすごく可愛いときがあります。
フェラーリとヤンの話が終わるのを待っているリック。
時間的にはラズロたちがルノーのオフィスを出る頃でしょうから、11時頃、かな??
「一杯どうだ?」
「いや、午前中は飲まない」(←だって二日酔いなんだもん(by お披露目トークライヴ))
「中身はバーボンだ」(←意味不明。…と思ったら)
「俺の店には、ホンモノのバーボンを入れてくれよ?」(←バーボンにも色々あるのね)
「大丈夫、荷抜きなんかしてない」
「最近は、な」
ここの会話が結構好きなんですよね。なんていうか、間が良いと思う。(時々すっ飛ぶけど)
しかし、フェラーリはバーボンの瓶に何を詰めて売っているんでしょうかね……?
「昨夜、ウガーテが拘置所で死んだ」
「今朝聞いたよ」
話題を核心にもってくるフェラーリ。それにしても、リックは「今朝」、誰に聞いたんでしょうか。ルノーのオフィスになんて行ってないだろうし(←二日酔いだから)、店員は皆レジスタンスだからそんなところには近づかないだろうし。
あ、フランス兵のアルバイトをしているキャッシャーの天風いぶきさんがいたか!…というのは冗談ですが、まあ、風羽玲亜さんあたりが伝えに来た可能性はあるのかな…?
「あの通行証の持ち主に提案したいんだ。俺に捌かせろ、と」
「誰に?」
「お前に」
「……俺?」
何もかもわかっていながら、何もわからないフリをする、ベテラン二人。磯野さんも決して台詞術に長けた人ではないのですが、キャラになりきっているのがすごいなあと思います。
「(あんたがそう思うってことは)…ルノーもそう勘繰っているんだろうな。店が手入れにあうのは時間の問題か」
「だから、その前に話を付けたくて、朝っぱらから頼んでいるわけだ」
もう昼近いはずだけど、「朝っぱら」なんですね……(^ ^)。さすがモロッコ。
軽く手を振って、立ち上がるリック。お前に渡すツモリはないゾ、と言外に匂わせながら、飄々と下手へ向かう。
そこに、ファティマに案内されてきたヴィクターが鉢合わせする。苦笑いで挨拶を交わす二人。
嬉しそうにラズロを迎えるフェラーリ、表情を隠して上手袖へはけていくリック。
ふたたび盆が回り、バザールへ。
ウガーテの通行証の話を散々した末に、当のウガーテ(天羽珠紀)が元気にたのしそうに髭面で歌っているのを視るのは、とっても愉しいです(^ ^)
♪迷路の奥では何でも手に入る
ヴィザでも、女でも、何だって思いのままだ。
引き換えるものさえあれば。
ベリーダンサーの舞姫あゆみちゃんが、バザールの片隅で色っぽく踊る。
煽情的な褐色の肌が美しい。元花組の舞城のどかちゃん系の美女なんですよね。素敵だなあ(*^ ^*)。
その手をさりげなく取るジャン(珠洲春希)、のほほんと受けるカーティス(十輝いりす)。
鼻の下をぎゅーーーんと延ばして美人と踊る旦那をじぃっと睨みながら、その周りをぐるぐる回るカーティス妻(美風舞良)が素晴らしいです♪ 可愛いよ~~っ!!精力的に店を見て回り、ああだこうだと手に取ったりしている彼女と、そのエネルギーについていけなくてボーッと立っていたところに、ダンサーが来てくれたのでラッキー♪ とか思っていそうな旦那さん。
あれで案外、惚れあっている感じなのが愛おしい★
♪ただ一つ見つからない
♪愛だけは売ってない
“ムーア人の男”に唯一のホンモノの男役(風馬翔)がいることに、つい最近気がつきました。
てっきり、全員娘役さんだと思っていたのよー(汗)。ごめんね、かけるくん。
ああ、ポンファ通り(←太王四神記)といい、このバザールといい、忙しいったら……
あまりにも皆がいろんなことをしているので、詳細は「観てください」ってことで、省略(^ ^)。
ラズロを待ちがてら、露天をひやかしているイルザが、生地屋の女(千鈴まゆ)にレースを売りつけられている。
「千フランを、700でいいよ!」
……あ。まゆちゃん、ここは女役なんですね。もしかして、フィナーレ以外で唯一の女役ですか?(←他は全部、男の子役)それにしても、お芝居巧いなあ~!ちょっと真ん丸いけど可愛いんだし、この調子で役がついていくと良いのですが(^ ^)。
「200で十分だ」
イルザを見つけたリックが近づいてきて、さりげなく女を追い払う。
ちょっとだけ悔しそうなまゆちゃんが可愛い。でも、またすぐに次の客を捕まえて同じようなことを言っているような気がする……。
「昨夜は呑みすぎて、ひどい状態だった。……すまない」
率直に謝るリック。
ちょっと戸惑うイルザ。
「……もう、いいわ」
もう、すべては終わったコトなのだから。
イルザにとっては。
「昔のあなたになら、話が通じたと思う。でも、昨夜のあの男には何を話しても無駄ね……」
イルザは、何も知らない自分に、まだ気づいていない。
昔のリックがどんな男だったのか。今のリックがどんな男なのか。そんなことさえ、なにひとつ。
「あんな憎悪のまなざしで、私を視るなんて」
そう言いながら、『憎悪のまなざしで』リックを視るイルザ。
「昨夜会わなかったことにすれば、パリの思い出を傷つけずにとっておけるわ」
思い出は、古傷に沁みるものだから。
傷みを感じることもないほど遠くなっていた『思い出』が、リックの視線の強さに血を流し始める。だから、必死で眼を逸らして。パリは思い出。もう戻らない日々。戻らないからこそ美しく見えるのよ、それだけのことよ……
「もう二度と会うことはないわ。じきにここを発つから」
離れてしまえば、この傷ももう一度癒せるわ、きっと。
ラズロの傍で、まぁるくなって。そうすれば、すぐに。
「君はいつか、階段を昇って訪ねてくるだろう。俺はそれを待っているんだ」
「ありえないわ。……リック、昨夜私が言いたかったことはね、ラズロが私の夫だということよ…」
胸の奥に凝っていた秘密を打ち明けて、かえって重たいものを抱えてしまったような貌をするイルザ。
衝撃のあまり、凍りつくリック。
「過去は聞かない、という言葉に溺れてしまったのね、私……」
正直に全て話すべきだった、ごめんなさい、という言葉を残して走り去るイルザ。
追いかけることも出来ずに、天を仰ぐリック。
♪それなのに何故、
♪世界中にたった一つしか街が無いかのようにやって来たのか……
何故、と問いかける。
何故?と。
他にどこに行けばいいというのか。
ここはカサブランカ。地の果ての白い街。国を喪くした者の吹き溜まり。
自由の国アメリカへ逃げるための、『たった一つの』中継地なのに……。
リックの前から逃げ出したイルザは、ブルー・パレットでラズロと合流する。
イルザの分のヴィザなら用意できるが、さすがにラズロの分は難しい、と告げるフェラーリ。
一つ、素朴な疑問なのですが。
ラズロはどうして、偽名を使うということを考えないのでしょうか?
闇ヴィザと偽造ヴィザの違いも今ひとつよく判らないのですが(汗)、リックのカフェの予約にしてもそうなんですけど、偽名を使うとか、変装するとか、そういう発想はないのかなあ…?
……『世界が注目する男』だから、そんなことしても無駄なのでしょうか……?
いつ、ドイツが態度を豹変させて、カサブランカを「占領」扱いにしないとも限らない。
シュトラッサーに居場所も目的も知られている以上、カサブランカはラズロにとって非常に危険な土地になってしまっている。
だから、ラズロはイルザを先に脱出させておきたいんですよね。ラズロ一人なら、伝手もあるし、体力もあるから、どうにでもなる。
でも、イルザはそうはいきません。妻だと公表もできないイルザのために、どれだけの協力が得られるかもわからないし。
あるいは、女連れでは使えないルート、というものもあるかもしれないですし、ね。
しかも、イルザがずっとカサブランカに居た場合、万が一シュトラッサーが痺れを切らしてイルザを抑える挙に出たら、もうどうしようもなくなる。
なんとかイルザを先に行かせたい。それはラズロの本音であり、本気だと思うんですよね。
でも、イルザは頷かない。
リックと再会して不安なイルザは、ラズロと離れることに本能的に不安を感じるのでしょうか。
「マルセイユで私のヴィザが発行されなかったとき、待っていてくれたのは何故?」
「それは、君を愛しているから」
「……ならば、私も先には行けない」
イルザが先に行かないのと、ラズロがイルザを待っているのとでは意味が違うとは思うのですが。
それでもラズロは、妻の固い気持ちに折れてあげることにする。
「決めました。ヴィザが二枚手に入るまで、探し続けますよ」
「ならば、一つ情報を提供しましょうか」
ファシズムに賛成できない自由主義者は、『世界をあっと言わせた男』に教える。
クロード・ウガーテが盗み出してあなたに売るはずだった通行証は、今はリックが持っているかもしれない、と。
このときの、フェラーリのリック評が面白いな、と思います。
『予測のつかない男なんですよ。とてつもないことをしでかすような、それでいて何もしないような』
なんだか……祐飛さんご本人の評価を聞いているみたい、と思ったのは私だけでしょうか(^ ^)
フェラーリは、リックの過去を知っているのかなあ?
地下組織の連中が知っているくらいだから、その筋では有名な話なのかもしれませんね。ワクワク。
■第4場 リックのカフェ(開店前) ~1941年12月2日(午後)~
店の前に整列した警官たち。カッセル中尉の
「これより、リックのカフェの家宅捜索を開始する!」
という指示で、突入(?)する警官たち。
開店準備で忙しいスタッフたちが、びっくりして顔をあげる。
サッシャ(春風弥里)の
♪いったい何をしに来たんだ?
から、全員の
♪他人の事情に巻き込まれるな
♪この世はすべて情け無用
まで、一列に並んで、一言づつ歌っては列の後ろにつくスタッフたちの動きが面白すぎです♪
「問答無用!捜索開始!」
カッセル中尉の号令で、動き出す警官たち。応戦するスタッフたち。
テーブルクロスを、闘牛士の使うカポーテみたいに使ったり、ディズニーミュージカル「美女と野獣」の戦闘シーンみたいな演出がすごく楽しいです。照明もストロボっぽくして、まるでスラップスティック系のコメディ映画みたい。
最終的には、警官たちがトイレットペーパー(←プログラムにはそう書いてあります。観ていたときは、ロールタオルかな?と思っていたのですが)でスタッフを一つに括り上げて捜索を続行する。
しかし、いくら探しても何も見つからず、手ぶらで引揚げていく。
そこへ。
「おっはようございま~す♪」
と明るい声で挨拶しながら、黄色く塗られたアップライトピアノを押しながら現れるサム(萬あきら)。
……そりゃー、見つからんわ。
通行証をピアノの中に隠したリックは、この事態を予測していたのか?(違うと思うけど)
……ちなみに、天風いぶきさんは、キャッシャーとしてもフランス兵としてもこの場面には居ません。次の場面には居るのになあ(^ ^;
.
まずは。初見の時から突っ込んでいたのに、書くのを忘れていた突込みを。
どうしてパリ市民は、全員トレンチコートにマフラーをつけ、帽子まで被って汽車を待つのでしょうか?
6月のパリって、そんなに寒くないですよね……?
(いや、着替える時間がないから、という理由は判っているのですが(^ ^;ゞ
■第3場 バザール(ブルー・パレット) ~1941年12月2日(昼前)~
人々で溢れかえるバザールの裏には、フェラーリ(磯野千尋)の店「ブルー・パレット」がある。
なんちゃってイスラム風(?)の内装に、ちょっと豪華めなソファ。いかにも胡散臭げな感じがいいです。リックのカフェが「アメリカン」なら、こちらは「ムスリム」な感じ、でしょうか(^ ^)。
ルノーのオフィスで「7時から並んでいた」のにヴィザを出してもらえなかったヤン(凪七瑠海)が、フェラーリのところに闇ヴィザの交渉に来ている。
「2万フランじゃ二人分は難しい」
それなりに同情の貌は見せつつも、あっさりと断るフェラーリ。彼はルノーの性癖を知っていて、「奥さんが交渉しているなら、なんとかなるかもしれない」と呟く。含み笑いで。
頭のてっぺんから「ハテナ?」を飛ばしながら、不安げに去っていくカチャが、なんかすごく可愛いときがあります。
フェラーリとヤンの話が終わるのを待っているリック。
時間的にはラズロたちがルノーのオフィスを出る頃でしょうから、11時頃、かな??
「一杯どうだ?」
「いや、午前中は飲まない」(←だって二日酔いなんだもん(by お披露目トークライヴ))
「中身はバーボンだ」(←意味不明。…と思ったら)
「俺の店には、ホンモノのバーボンを入れてくれよ?」(←バーボンにも色々あるのね)
「大丈夫、荷抜きなんかしてない」
「最近は、な」
ここの会話が結構好きなんですよね。なんていうか、間が良いと思う。(時々すっ飛ぶけど)
しかし、フェラーリはバーボンの瓶に何を詰めて売っているんでしょうかね……?
「昨夜、ウガーテが拘置所で死んだ」
「今朝聞いたよ」
話題を核心にもってくるフェラーリ。それにしても、リックは「今朝」、誰に聞いたんでしょうか。ルノーのオフィスになんて行ってないだろうし(←二日酔いだから)、店員は皆レジスタンスだからそんなところには近づかないだろうし。
あ、フランス兵のアルバイトをしているキャッシャーの天風いぶきさんがいたか!…というのは冗談ですが、まあ、風羽玲亜さんあたりが伝えに来た可能性はあるのかな…?
「あの通行証の持ち主に提案したいんだ。俺に捌かせろ、と」
「誰に?」
「お前に」
「……俺?」
何もかもわかっていながら、何もわからないフリをする、ベテラン二人。磯野さんも決して台詞術に長けた人ではないのですが、キャラになりきっているのがすごいなあと思います。
「(あんたがそう思うってことは)…ルノーもそう勘繰っているんだろうな。店が手入れにあうのは時間の問題か」
「だから、その前に話を付けたくて、朝っぱらから頼んでいるわけだ」
もう昼近いはずだけど、「朝っぱら」なんですね……(^ ^)。さすがモロッコ。
軽く手を振って、立ち上がるリック。お前に渡すツモリはないゾ、と言外に匂わせながら、飄々と下手へ向かう。
そこに、ファティマに案内されてきたヴィクターが鉢合わせする。苦笑いで挨拶を交わす二人。
嬉しそうにラズロを迎えるフェラーリ、表情を隠して上手袖へはけていくリック。
ふたたび盆が回り、バザールへ。
ウガーテの通行証の話を散々した末に、当のウガーテ(天羽珠紀)が元気にたのしそうに髭面で歌っているのを視るのは、とっても愉しいです(^ ^)
♪迷路の奥では何でも手に入る
ヴィザでも、女でも、何だって思いのままだ。
引き換えるものさえあれば。
ベリーダンサーの舞姫あゆみちゃんが、バザールの片隅で色っぽく踊る。
煽情的な褐色の肌が美しい。元花組の舞城のどかちゃん系の美女なんですよね。素敵だなあ(*^ ^*)。
その手をさりげなく取るジャン(珠洲春希)、のほほんと受けるカーティス(十輝いりす)。
鼻の下をぎゅーーーんと延ばして美人と踊る旦那をじぃっと睨みながら、その周りをぐるぐる回るカーティス妻(美風舞良)が素晴らしいです♪ 可愛いよ~~っ!!精力的に店を見て回り、ああだこうだと手に取ったりしている彼女と、そのエネルギーについていけなくてボーッと立っていたところに、ダンサーが来てくれたのでラッキー♪ とか思っていそうな旦那さん。
あれで案外、惚れあっている感じなのが愛おしい★
♪ただ一つ見つからない
♪愛だけは売ってない
“ムーア人の男”に唯一のホンモノの男役(風馬翔)がいることに、つい最近気がつきました。
てっきり、全員娘役さんだと思っていたのよー(汗)。ごめんね、かけるくん。
ああ、ポンファ通り(←太王四神記)といい、このバザールといい、忙しいったら……
あまりにも皆がいろんなことをしているので、詳細は「観てください」ってことで、省略(^ ^)。
ラズロを待ちがてら、露天をひやかしているイルザが、生地屋の女(千鈴まゆ)にレースを売りつけられている。
「千フランを、700でいいよ!」
……あ。まゆちゃん、ここは女役なんですね。もしかして、フィナーレ以外で唯一の女役ですか?(←他は全部、男の子役)それにしても、お芝居巧いなあ~!ちょっと真ん丸いけど可愛いんだし、この調子で役がついていくと良いのですが(^ ^)。
「200で十分だ」
イルザを見つけたリックが近づいてきて、さりげなく女を追い払う。
ちょっとだけ悔しそうなまゆちゃんが可愛い。でも、またすぐに次の客を捕まえて同じようなことを言っているような気がする……。
「昨夜は呑みすぎて、ひどい状態だった。……すまない」
率直に謝るリック。
ちょっと戸惑うイルザ。
「……もう、いいわ」
もう、すべては終わったコトなのだから。
イルザにとっては。
「昔のあなたになら、話が通じたと思う。でも、昨夜のあの男には何を話しても無駄ね……」
イルザは、何も知らない自分に、まだ気づいていない。
昔のリックがどんな男だったのか。今のリックがどんな男なのか。そんなことさえ、なにひとつ。
「あんな憎悪のまなざしで、私を視るなんて」
そう言いながら、『憎悪のまなざしで』リックを視るイルザ。
「昨夜会わなかったことにすれば、パリの思い出を傷つけずにとっておけるわ」
思い出は、古傷に沁みるものだから。
傷みを感じることもないほど遠くなっていた『思い出』が、リックの視線の強さに血を流し始める。だから、必死で眼を逸らして。パリは思い出。もう戻らない日々。戻らないからこそ美しく見えるのよ、それだけのことよ……
「もう二度と会うことはないわ。じきにここを発つから」
離れてしまえば、この傷ももう一度癒せるわ、きっと。
ラズロの傍で、まぁるくなって。そうすれば、すぐに。
「君はいつか、階段を昇って訪ねてくるだろう。俺はそれを待っているんだ」
「ありえないわ。……リック、昨夜私が言いたかったことはね、ラズロが私の夫だということよ…」
胸の奥に凝っていた秘密を打ち明けて、かえって重たいものを抱えてしまったような貌をするイルザ。
衝撃のあまり、凍りつくリック。
「過去は聞かない、という言葉に溺れてしまったのね、私……」
正直に全て話すべきだった、ごめんなさい、という言葉を残して走り去るイルザ。
追いかけることも出来ずに、天を仰ぐリック。
♪それなのに何故、
♪世界中にたった一つしか街が無いかのようにやって来たのか……
何故、と問いかける。
何故?と。
他にどこに行けばいいというのか。
ここはカサブランカ。地の果ての白い街。国を喪くした者の吹き溜まり。
自由の国アメリカへ逃げるための、『たった一つの』中継地なのに……。
リックの前から逃げ出したイルザは、ブルー・パレットでラズロと合流する。
イルザの分のヴィザなら用意できるが、さすがにラズロの分は難しい、と告げるフェラーリ。
一つ、素朴な疑問なのですが。
ラズロはどうして、偽名を使うということを考えないのでしょうか?
闇ヴィザと偽造ヴィザの違いも今ひとつよく判らないのですが(汗)、リックのカフェの予約にしてもそうなんですけど、偽名を使うとか、変装するとか、そういう発想はないのかなあ…?
……『世界が注目する男』だから、そんなことしても無駄なのでしょうか……?
いつ、ドイツが態度を豹変させて、カサブランカを「占領」扱いにしないとも限らない。
シュトラッサーに居場所も目的も知られている以上、カサブランカはラズロにとって非常に危険な土地になってしまっている。
だから、ラズロはイルザを先に脱出させておきたいんですよね。ラズロ一人なら、伝手もあるし、体力もあるから、どうにでもなる。
でも、イルザはそうはいきません。妻だと公表もできないイルザのために、どれだけの協力が得られるかもわからないし。
あるいは、女連れでは使えないルート、というものもあるかもしれないですし、ね。
しかも、イルザがずっとカサブランカに居た場合、万が一シュトラッサーが痺れを切らしてイルザを抑える挙に出たら、もうどうしようもなくなる。
なんとかイルザを先に行かせたい。それはラズロの本音であり、本気だと思うんですよね。
でも、イルザは頷かない。
リックと再会して不安なイルザは、ラズロと離れることに本能的に不安を感じるのでしょうか。
「マルセイユで私のヴィザが発行されなかったとき、待っていてくれたのは何故?」
「それは、君を愛しているから」
「……ならば、私も先には行けない」
イルザが先に行かないのと、ラズロがイルザを待っているのとでは意味が違うとは思うのですが。
それでもラズロは、妻の固い気持ちに折れてあげることにする。
「決めました。ヴィザが二枚手に入るまで、探し続けますよ」
「ならば、一つ情報を提供しましょうか」
ファシズムに賛成できない自由主義者は、『世界をあっと言わせた男』に教える。
クロード・ウガーテが盗み出してあなたに売るはずだった通行証は、今はリックが持っているかもしれない、と。
このときの、フェラーリのリック評が面白いな、と思います。
『予測のつかない男なんですよ。とてつもないことをしでかすような、それでいて何もしないような』
なんだか……祐飛さんご本人の評価を聞いているみたい、と思ったのは私だけでしょうか(^ ^)
フェラーリは、リックの過去を知っているのかなあ?
地下組織の連中が知っているくらいだから、その筋では有名な話なのかもしれませんね。ワクワク。
■第4場 リックのカフェ(開店前) ~1941年12月2日(午後)~
店の前に整列した警官たち。カッセル中尉の
「これより、リックのカフェの家宅捜索を開始する!」
という指示で、突入(?)する警官たち。
開店準備で忙しいスタッフたちが、びっくりして顔をあげる。
サッシャ(春風弥里)の
♪いったい何をしに来たんだ?
から、全員の
♪他人の事情に巻き込まれるな
♪この世はすべて情け無用
まで、一列に並んで、一言づつ歌っては列の後ろにつくスタッフたちの動きが面白すぎです♪
「問答無用!捜索開始!」
カッセル中尉の号令で、動き出す警官たち。応戦するスタッフたち。
テーブルクロスを、闘牛士の使うカポーテみたいに使ったり、ディズニーミュージカル「美女と野獣」の戦闘シーンみたいな演出がすごく楽しいです。照明もストロボっぽくして、まるでスラップスティック系のコメディ映画みたい。
最終的には、警官たちがトイレットペーパー(←プログラムにはそう書いてあります。観ていたときは、ロールタオルかな?と思っていたのですが)でスタッフを一つに括り上げて捜索を続行する。
しかし、いくら探しても何も見つからず、手ぶらで引揚げていく。
そこへ。
「おっはようございま~す♪」
と明るい声で挨拶しながら、黄色く塗られたアップライトピアノを押しながら現れるサム(萬あきら)。
……そりゃー、見つからんわ。
通行証をピアノの中に隠したリックは、この事態を予測していたのか?(違うと思うけど)
……ちなみに、天風いぶきさんは、キャッシャーとしてもフランス兵としてもこの場面には居ません。次の場面には居るのになあ(^ ^;
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コメント
昨夜萬あきらさんのお茶会で色々とお話を伺って、早くみたいよーと思ってます。
明日なんだけどね(笑)
>6月のパリって、そんなに寒くないですよね……?
これってさ、前に「アンネの日記」の映画を観たときに持てるだけの荷物を持って
出国するわけだから、帽子とコートも気温云々には関係なく身につけられるから実につけていくんじゃないのかな?
全員がその姿というところに、返って私は切迫感というか、緊迫感というか感じます。
>頭のてっぺんから「ハテナ?」を飛ばしながら
ほんとほんとーー!
このときのカチャ、すごく可愛いしこういう人だからアリス妻が必死になるのねと
納得できて良い夫婦な二人だと思いました。
>「あんな憎悪のまなざしで、私を視るなんて」
「昨夜会わなかったことにすれば、パリの思い出を傷つけずにとっておけるわ」
この言葉を聞くとちょっと不思議な感じがするんですよね
イルザってあんな別れ方をしてもリックが傷ついてないかとか考えてなかったのかな?
お別れの手紙を一応出したし・・・
ま、ちゃんと道理は通したわよね、私 ってこと?!
いや、それはないよな、イルザー! しかも 「ごめん結婚してたし」でしょ
もう混乱させられますよね、その混乱ぷりがイルザが再度リックを訪ねて
VISAをくれというところのあれこれに大きく関係してるんだなぁと思うと
うまくできてますよ、この話。
ラズロさんが名前を偽らないところが私も不思議でした。
そういうところが、正義の味方というか、紳士なのかなと??
駄目ですよーーー、そんなの!皆がんばっているので、たくさん観てあげてください(; ;)。
> 持てるだけの荷物を持って出国するわけだから、帽子とコートも
> 気温云々には関係なく身につけられるから実につけていくんじゃないのかな?
なるほど!!眼から鱗とはこのことです!
たしかに、コートなんて腕に抱えていくより着ていくほうが楽ですもんね。
> このときのカチャ、すごく可愛いしこういう人だからアリス妻が必死になるのねと
> 納得できて良い夫婦な二人だと思いました。
そうなんですよねー(^ ^)。アリスちゃんとカチャ、並びも綺麗だし、芸風がよく合ってて、バウで組ませてみたい気持ちはよくわかります♪
> イルザってあんな別れ方をしてもリックが傷ついてないかとか考えてなかったのかな?
考えていなかったんじゃないかな、と。私の個人的な意見ですけどね。リックにどれほどの傷を残したのか、わかっていなかったような気がするんです。だから、久しぶりに名前をきいて懐かしさが溢れてしまう……リックの気持ちなど気づきもせずに。そんな風に感じながら観ています。最近は。
> ラズロさんが名前を偽らないところが私も不思議でした。
> そういうところが、正義の味方というか、紳士なのかなと??
やっぱり、そういうことなんでしょうか?それか、アメリカに入国するときに「ラズロ」の名前じゃないと活動上の意味がないとか?
いろいろ難しいです。……っていうか、映画を観なくては(^ ^;。
貴重な観劇のお時間に確認してくださってありがとうございます♪
次回観劇(…は新公だから、その次)の楽しみが増えました。
この【10】で、私の疑問がかなり解決しました!ありがとうございました!!
フェラーリの荷抜きを皮肉ってるのは分かったのですが、ここにある
バーボンとどう関係あるの?と思ってました。こちらを読んで謎が解けました!
ここの「そりゃ眠れないな」という言い方がリックらしくて、すごく好きです。
サムのピアノも、手入れでピアノの中も見てもよさそうなのに、なんで
見つからないのかな?とチラッと思っていたんです。
手入れの時にはピアノそのものが店になかったのか…
いろいろ分かって楽しいです。次回がますます楽しみになりました。
コメントありがとうございます♪じゃあ、新公の日は同じ屋根の下に居るんですね♪♪
お互い、素敵な時間を過ごせるといいですね♪
私も、「そりゃ眠れないな」という台詞、めっちゃツボです!いいですよね~♪
ピアノは、サムが運んでくるんですよー。私、初見のときふき出しちゃいました!「そこにあるのに!!!」って思って(^ ^)。