ふと思い立って、久しぶりに「検索ワード一覧」をチェックしてみたのですが。
ここ数日、「大空祐飛」とか「ゆうひ」とかで検索して来てくださった方がひとりもいない(↓)。それどころか、宙組関係はカイちゃんのみ。データの保持期間が短いので、最近ニュースになった新公配役に集中するのは仕方ないとしても、なぜ、カチャでもえりちゃんでもなくカイちゃんなの?(- -;ゞ
それに。公演中の花組雪組が多いのは当然なんでしょうけど、やたらと真瀬くんが多いのは気のせい?だいもんでもあまちゃきでもなく真瀬くんってところに、この日記の性格が出ているような気がします。雪も、キングでもあゆちゃんでも咲奈ちゃんでも、残念ながら真那春人くんでもなく(T T)、あずりんがダントツだし。不思議です。



さて。そんな反省(どんな)をこめて、大空祐飛さんが主演した博多座公演「大江山花伝」の思い出を語らせていただきます。
これで最後にしますので、もう少しだけお付き合いくださいませ。

ちなみに、前回の日記はこちら。
http://80646.diarynote.jp/200909180349191114/

そういえば書き忘れてましたが、盗賊の六郎太(鳳翔大)が登場してすぐ、
「何をしている?さっさと歩け!」
というカゲ台詞を言っているのは、どなたなのでしょうか?冷酷そうな美声ですよねぇ~。
その後の、
「よっく見ておけ、皆のもの。逃げた者の末路はこうじゃ。…旅の若者、礼を言おうぞ!」
という偉そうな声は、タマちゃん(天羽珠紀)の声で合ってますか…?



■第十三場 綱、助かる

茨木のソロから暗転して、綱が縛られている岩屋へ。四天王の季武(鳳樹いち)と貞光(澄輝さやと)、綱の部下たち(美月遥、風馬翔)が、藤の葉(野々すみ花)に案内されて駆け込んでくる。
鎖を解き、服を調え……そして、綱の脇に膝をついて剣を差し出す風馬くんの、「御太刀を!」という感極まった声が、とても良かったです♪(^ ^;

少し遅れて、都の姫たちを連れた公時(鳳翔大)が登場。みっちゃんと抱き合って喜ぶ大くんが可愛いです。鬼たちの呑む酒に眠り薬を仕込み、姫たちを救い…と、八面六臂の大活躍をしていたらしい。
そういえば、綱って捕まっていただけで実は何もしてないですね(^ ^;ゞ。原作では、茨木と酒呑童子の会話から『鬼たちの力の源は酒だ』ということを知った綱が仲間に伝えて…となっていたから、公時たちは綱の指示どおりに動いていた印象だったのですが。柴田さんの脚本では、それ(鬼たちの弱点)を知るのは綱ではなく藤の葉で、彼女が全てのお膳立てをしたように見える。だから、相対的に綱のポジションが下がってしまうんですよね…。
なんだか、藤の葉が大江山の鬼たちを滅ぼす方向に積極的に動くのが不思議な感じでした。
柴田さんには、藤の葉視点では酒呑童子たちは茨木の敵になるというイメージあったのでしょうか?


公時たちに姫たちを連れて先に行くよう指示して、綱は、藤の葉を連れて帰るべく説得を始める。
断固として拒否する藤の葉。山に残る、と。頑なに首を振る藤の葉に、業を煮やした綱の声が、大きくなる。
と、そこに通りがかる茨木と、胡蝶。「呑もうか、二人で」「後でな」の約束をたがえず、したたかに呑んだ挙句に、胡蝶の方を借りてかろうじて歩く茨木が、可愛いです。

武勇には長けていても、女を口説くには不器用な綱(と藤子)に、
「早く立ち去れ」
と、冗談めかして言い捨てる茨木。切なく見守る胡蝶。
そんな鬼に、
「残念だぞ!」
と、微かな涙まじりに訴える、綱。

この後の4人の舞は、素晴らしい名シーンでした。

空蝉の衣を脱ぎ捨てて、茨木のもとへ駆け出す、藤子の心。
軽々と受け止めて、ひたと見凝めあいながら、少しづつ距離を縮めていく、鬼。
惹かれあい、引き寄せ合って、かたく抱きあう、筒井筒の幼馴染。

思い出はタイムマシン。薄紫の過去へ、連れて行ってくれる。

ゆうるり、と、時は止まり、そうしてまた、動き出す。
タイムマシンから降り立った鬼は、貌をそむけたまま、筒井筒の少女の手を切なげに離す。
冷たい空気の中に放されて、無意識にぬくもりを探す少女。
振り向いて、その懐へ戻ろうとする少女を、手を伸ばして留める、茨木。


俺は鬼だから。
だから、お前とは、行かない。

行けない、のではなく、
ここに、残る。この、大江山、に------。



薄紫に染まる世界の中で、
鬼であることをやめて人間に戻ろうとした鬼と、
愛するもののために鬼になろうとした少女が、
目を合わせることなく、同じ方向を視て、立ち竦む……。



■第十四場a 山攻め

音楽が切れて紗幕が降りると、幕前で兵士たちの山攻めのダンス。
頼光さま(寿つかさ)や公時以下の四天王はいいとしても、初日は本当に、鬼メークのままの下級生がたくさんいて、密かに大笑いしてしまいました。それが、わずか三週間でどんどん垢抜けて、みんな本当に凄かったなあ~~!(感動)。保昌(雅桜歌)も、確か初日は変だった筈なのに、お盆休みには完璧だったし(*^ ^*)。
娘役も下級生は殆ど入っていたので、本当に一人一人のメークの変遷が面白かったです~♪


途中、緋の長袴でセリあがって、頼光四天王と渡り合う茨木。
……そうか。この作品、来年の全ツに持って行くに違いない、と思っていたのですが、もしかして、セリがないとこの場面がやれないんじゃないか…?(袖から長袴で出てくるのは厳しそう)


■第十四場b 茨木と藤子、果てる(滝壷)

紗幕があがると、舞台奥に滝壷のセット。その前に緋色の長袴の茨木、上手側の山道に、酒呑童子と四天王が並ぶ。
「我々は大江山を棄てて逃げ延びる。茨木、お前も来い」
そう口説く父を、息子はきっぱりと切り捨てる。
「私は大江山に残ります」
ここは私の故里だから、と。

原作からの改変点で、一番大きいのはココですね。

原作では、眠り薬を盛られた鬼たちは、頼光たちによって大江山で根絶やしにされます。退治されてしまう、というのが正しいかな。
そして、酒呑童子を手にかけるのは、茨木童子その人。妖力をもつ酒呑童子は、そう簡単には倒せないから。その奥には、自分以外に負けてほしくない、そんな気持ちも、あるのかもしれません。
そしてもう一つ、綱に手柄を取らせたい気持ちもある、はず。自分が生きている意味を見出せない(喪ってしまった)から、せめて最期に一度くらい、ヒトの役にたってみようか、と、そんな感じで。


でも。柴田さんは、あえて鬼たちを旅立たせました。
以前の襲撃で喪ったものの復讐は、ほぼ終わった。気が済んだ。…もう、いい。
大江山は、都に近すぎる。誘惑も多すぎる。もっと山奥の、人とのつながりを持つ可能性の低いところへ行って、自分たちだけで生きてみよう、…と。

こうすることで、茨木の鬱屈は、基本的に『ある荘園』での事件だけということになるんですよね。
酒呑童子によって与えられた苦しみは、舞台では語られません。ただ、喪ったと思った藤子との未来と、『三年前の事件』が彼の心を苦しめるばかりで。

自分が鬼であったために、死なせてしまった女。
一瞬の激情に負けて、女を死へおいやった、罪。その罪の重さに耐えかねて、生きることに倦んでいた、鬼の心。




…そこに飛び込んでくる、藤子。
「茨木だけじゃない、皆同じ。あたしたちはみんな、鬼なのよ…!」

すみ花ちゃんが泣くと、世界が泣く。そう言ったのは、誰だったか。
本当にそのとおりだな、と思いましたね。この場面を観るたびに。
たった一人舞台に立って、滔々と長台詞を語り、茨木の鬱屈を引っくり返してみせる、女優。

「あなたこそ、人間らしい人間なのよ!」

鬼がヒトで、ヒトが鬼で。
恐ろしい鬼が、この世で一番『人間らしい人間』で。
この世で一番弱いヒトも、心の底には鬼を棲まわせている。


藤子を都に帰らせたかった茨木。
綱と一緒になればいい、と思っていたはずの、茨木。
だから、ここでもう一度逢うつもりはなかったはず、の。

この首くれてやろうと思ったが、そうもいかなくなった。
もちろん、この台詞が出る直接のきっかけは、藤子の死ではあるのですが。

おそらくはもう少し前、藤子の呼ばわりに応えて姿を見せたときに、その覚悟はしていたはず。
藤子には幸せになってほしいと思っていたのに。
鬼の自分と添うことが、彼女の幸せだとは思えないのに。

それでも、もう、この手を放すことはできないから。


愛している、……ふじこ。

うれしい、と呟いて事切れた藤子の、頬の火傷にそっと触れて。


おそらくは、ありがとう、と。


生きていてくれて、逢いに来てくれて、探しに来てくれて、
……ありがとう、と。



言葉にはできない茨木の悲しさが、滝に洗われて、とけてしまえば良いのに……。



■第十五場 綱、悲しむ

滝つぼに張られた注連縄が切れて、暗転。下手花道の綱に、スポット。

大江山に再びやってきた綱が、幻の茨木や藤子と語り合う。
連れて帰ることのできなかった女と、救うことのできなかった鬼。綱の悔恨は切ないです。彼が悪かったのではないに。
みっちゃんの歌は心に沁みますね。ユミコさんみたいな癒し系の声とも違う、キムちゃんみたいな火傷しそうに熱い音とも違う、舞台の空気に溶けていくような、優しい声。
二回に一回は涙を流しての熱演だった綱さまですが、あの、子供のような感情の爆発ぶりが、みっちゃんの綱なんだなあ、と微笑ましくも思いました(^ ^)



■第十六場 二人、翔ける

紗幕があがると、盛装した茨木と藤子が、幸せそうに舞う。
二人が本当に幸せそうで、涙が出ました。
というか。あまりにも幸せそうで、なんだか、妬けちゃいそうでした……(^ ^;ゞ


死んでしまった二人が天国で結ばれる、というこの手のフィナーレは、宝塚の悲劇作品のお約束ではあるのですが。
原作のラストも余韻があって好きなんですが、どちらかといえば綱の寂しさを前面に出して終わるので、こういうすっきりした幸せ感とはまた違う印象でしたし…。
……やっぱり良いですね、こうやって救われる、宝塚の世界観って。



なんだか、全編を原作と比較しながら書いてしまいました。
どちらが良い/悪いではない、ということだけ、最後にもう一度明記させてください!
数ある木原作品の中でも格別にファンタジックかつポエティックな物語を、柴田さんは随分リアルに、かつ叙情的にもってきたな、と思います。1時間40分という時間をもたせ、かつ役を増やすために、大江山の鬼たちの幸せな日々描いてしまったせいか。頼光・綱陣営よりも大江山陣営の方が深く描かれてしまって、最後の処理が難しくなってしまったきらいはありますが、全体の内容の濃さは、大したものだと思います。まさか『鬼の泉』が入るとは想わなかった(汗)。



こんなところでしょうか。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
なんだか書き漏らしたこともあるような気がしますが、とりあえずは最後まで書き終わってホッとしました。
で。宙組大劇場公演初日まで、あと一ヶ月と一週間。……そろそろ、CSの最初のレポート(組長さんとトップのトーク)が流れる、かな??まだかな??(ワクワク)


コメント

nophoto
kiriishi
2009年10月12日23:53

原作との比較しながらのお話興味深く読みました。ありがとうございます
大空さんの話題が「カサブランカ」制作発表後は少なく淋しい時期に博多座公演を思い出せたのも嬉しかったです

「大空祐飛」とか「ゆうひ」とかで検索して来てくださった方がひとりもいないのは、、「大空祐飛」とか「ゆうひ」で検索してもなかなか出ないからでは?
他ブログさんリンクからお邪魔しましてお気に入り登録させていただいたので今は検索の必要ないのですが、これだけはっきり名前を書いてくださると次は上位に出てくるかと楽しみに検索してみますね

みつきねこ
2009年10月13日1:52

kiriishi様、コメントありがとうございますm(_ _)m。
明日は、遂にニュースですっしーさんとの稽古場レポートが流れるみたいですね(*^ ^*)。
滅茶苦茶楽しみです!
なんとか「カサブランカ」開幕前に終わらせることができてホッとしています。最後はだいぶはしょってしまいましたが(^ ^;ゞ


そうか……この日記、「大空祐飛」で検索しても上位に上がってこないんですね。反省。
がんばって名前を出さないといけないんですね。今はどうなのでしょうか。ちなみに、たった今アクセス状況を見てみたら、「きりゆひ」で検索してきてくださった方がお一人いらっしゃいました。……えっと、何故そんなキーワードでうちが出るんだ?(きりゆひ大好きですけど、そんなこと書いたことありましたっけ…?)

nophoto
hanihani
2009年10月13日14:44

検索ワードって面白いですね。
私はあまり検索を使ってblogを探してないので、ふむふむと思いました。
例えば、探すときにはゆうひさんのファンの登録で繋げることのほうが多いかなぁ? 

博多座は楽しかったなぁ~といまだに思ってます。
でも世間は「カサブランカ」なんですね。

お金がなくて12月に大劇場に行かれないのか寂しいです・・・(涙)
ねこさまの初日の報告楽しみにしてますからねー(絶対に行ってね)

みつきねこ
2009年10月14日1:18

言われてみれば、私もあまり検索したりしないかもしれません。仕事ではよく使うのですが。
っていうか、最近あまりよそのブログを読んでないかも(汗)。

>博多座は楽しかったなぁ~といまだに思ってます。

楽しかったですねぇ~!!さすがに、一つの公演をあの回数観ることは二度と無いような気がします。身体は本当にキツかったですけどね(^ ^;ゞ
まだまだ、色々語りたいことはたくさんあるんですけどね…。


>ねこさまの初日の報告楽しみにしてますからねー(絶対に行ってね)

す、す、すみません……私、初日は行かない予定なんですよ……(T T)。上司が、まるで私の予定を知っているかのように13日に会議をいれやがりまして。おかげで、こないだからずーっと機嫌が悪いんです(↓)。