終わってしまった公演なのですが、先日、博品館劇場にて、ドラマプレイ「美しき背徳」を観劇しました。





DIAMOND☆DOGS ACTシリーズ第二弾、と銘打ったこの公演。去年の秋に上演された「ラストシーン」を私は観ていないのでなんとも言えませんが、今後も継続されるのでしょうか?なかなか面白い試みでしたが、個人的には、一幕がお芝居で二幕がショー、という宝塚スタイルは、すごく正解なのかもしれないな、と思いました。
ラストの短い数分間のショーシーンに、チケット代の3/4を払ったな、と思ってしまいましたもん。
皆さん普通に芝居できるし、脚本も興味深かったんですけど、「DIAMOND☆DOGS」の何が観たくて劇場に行くのかっていったら、やっぱりダンス(と歌)なんですよ私は…。劇場に入ってからストレートプレイだということを知って、ちょっと凹みました(汗)。
いや、面白かったんですけど。ホントに。

出演はDIAMOND☆DOGSフルメンバー+岩崎大(Studio Life)+加藤良輔。加藤さんは「テニスの王子様」でデビューされた方だそうで、そろそろ『ミュージカルファン』を自認するなら「テニスの王子様」が外せない時代になってきたなあ…と思いますね(^ ^;ゞ。うーむ、興味はあるんだけどなかなか暇がない……(そしてチケットもない、のかな?)





13年前の、夏。加々美与志也、という一人の男が、死んだ。
多額の遺産と、9人の男の子を遺して。

そして、13年が過ぎて。長男・悠平は、兄弟たちを呼び寄せる。
父親が死んだ、海近い崖に建つ旧い洋館に。
カモメたちが哀しげに啼き交わし、教会の鐘が寂しく響くーーーー函館の群青の海へ。

父親の死の真相を、知るために。


本妻の子:
・長男 悠平(岩崎大)
・次男 美宇(咲山類)

愛人その1の子:
・玲於(東山義久)

愛人その2の子:
・拓海(原知宏)

愛人その3(売春婦)の子:
・真樹(小寺利光)

愛人その4の子:
・双子の兄 心(森新吾)
・双子の弟 音(加藤良輔)

愛人その5(加々美家の家政婦)の子:
・涼(TAKA)

人工授精による子:
・リド(中塚皓平)



作・演出は友澤晃一。
ストーリーは、ぶっちゃけ栗本薫氏あたりが昔に書いていたような、あるいは篠田真由美氏あたりが書き続けていらっしゃるような耽美小説っぽいノリ。正直なところ、『この展開でいくなら、もう少し台詞の一つ一つに繊細な詩情があってほしかった』……とか思ったりしたところもありました。ちょっと説明口調が多かったので(いろいろ説明するところが多いので仕方ない面もあるんですけどねー)。役者たちは思ったよりもずっと芝居ができているのに、しかも、美形を揃えて(*^ ^*)明らかに『お耽美』を意識している作品なのに、脚本がお堅いんじゃあねぇ…。

しかも、それぞれに演劇的なバックグラウンドの違うメンバーが集まっているので、話し方やトーンがそれぞれ個性的すぎる。そのために、こういう緊迫感のある演劇をする上で必要な一体感が感じられず、ばらばらな感じがあったのも残念な気がしました。
9人のそれぞれの違いを、『同じ血をひいているけれども違う人生を歩んできたバラバラな兄弟』というイメージにつなげられるように巧く嵌めていけると、もっと面白くなったんじゃないかなーと思うんですけどね。ちょっと中途半端だった印象。

それと、クライマックスにきて愛憎が表沙汰になったり嫉妬が渦巻いたりし始めると、ちょっと観ていて引いてしまうのは……うーん、差別するわけじゃないけど、やっぱり『お耽美』っていうのは女性独特の世界なんでしょうか?と思ったりしますね。同じネタで同じメンバーで、「Studio Life」の倉田さんが作・演出だったらどんな作品になっただろうか?と、そんな、ある意味非常に下世話な興味を抱いてしまいました(^ ^;ゞ。



舞台装置は、基本一つ。崩れかけた教会をイメージしているように見えたのですが、話をきいていると、実は彼らの父親である加々美氏が生前住んでいた(そこで死んだ)豪邸……の、はず、で、あるらしい。その建物のイメージと現実の乖離の謎が、ちょっと篠田真由美氏の『建築探偵』シリーズっぽいなーと思ったりもしました。(多分関係ない)
演出は、ワンシチュエーションもの、ってことになるのでしょうか?セットは一つだけだし、時間もほとんど飛ばないし……(意識が飛んでいるかもしれません。すみません)
とにかく、上演中はずーっと彼ら9人(主に岩崎さん&リーダー)の会話を聞いているだけなのですが、台詞のないメンバーがちょこまか動き回るので、ついつい(いつもの癖で)追いかけて、気がつくと会話が飛んでいたり…ということがあったので、よく判っていないかもしれません(汗)。



岩崎さんは、ゲストなんですけど堂々たる主演に見えました。彼が兄弟たちを呼び集め、全てをコントロールしていくので。発散の場もなくて、なかなか難しい役でしたが、よくやっていたと思います。それにしてもカッコイイなあ(*^ ^*)。
……せっかく格好良かったので、フィナーレは別に出てくれなくても良かったのに……(小声)



リーダー(東山)は、まあ、よく動くしよく喋るし!!実は警察の関係者だという設定でしたが、ヤクザにも見えるし警察にも見える、という皮肉な立場が良く似合って、さすが胡散臭い役をやらせたら並ぶものは無い、と(←いやそんなことはないんですが)、そんな感じでした。


あと非常に印象的だったのは、威島真樹役の小寺さん。かなり高めの甘い声と、わざとらしく礼儀正しさを繕った雰囲気が実にぴったりで、加々美家の異常性をよく表現してくれていました。彼が喋るたびに不思議な空気が沸いてくるのが興味深かったです。うん。わざとオネエ言葉を使ったり小指が立っていたりするわけではないのに、、、本当に雰囲気なんですよね。不思議なものです。


水村心役の森さんも良かった。あのウザさがたまらない。こういう世界観の作品にはお約束のキャラクターではありますが、なかなか個性的で良かったと思います。うん。世界そのものに怯えきった風情がとても可愛かったです。
弟の水村音役の加藤さんは、ちょっとストレートプレイにはDIAMOND☆DOGSメンバーより更に不慣れな感じが漂っていましたが、それでも、あれだけの美貌があれば問答無用で「耽美」になれるんだな、と、そんなことに感心してみたりしました。


個人的に大好きなダンサー・中塚さんは、人工授精の子供、という特殊な役。……人工授精、といっても、なにも人工子宮で10月10日を過ごしたというわけじゃないだろうし、普通に代理母から生まれてしまえば普通の人として育つはずだと思うんですけど、設定的にはむしろアンドロイドのような、感情のない人形のような人間、というキャラクターでした。
中塚さんの、ダンサーとしての身体的な演技力というか表現力はDIAMOND☆DOGSの中でもダントツだと(ファンなので)思っていたりするのですが、…芝居、って、そういえば観たことないかも…?あの台詞回しは、アンドロイドのような人間、という設定だからああだったのか、あれしかできないからアンドロイドのようなキャラになったのか、微妙に不安になったりしました。




ラストのオチ…というか、『彼』の正体についてはほぼ読めていたので、特にどんでん返しという感じでは無かったのですが。何一つ解決していないのに、なんとなく『ちゃんと終わった』感があったのはすごいなー、と。
……もしかしたら、多少意識が飛んでいたのかもしれませんが……。




ラストのフィナーレは本当に格好良かったです。
お芝居は一幕で終わらせて、二幕はショーでよかったのにーーーーーー!!(それってどこの花組)

あああ、次のダンス公演、絶対行くぞ!!(決意)




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