博多座公演「大江山花伝」 続きです。…まだ先は長いなあ…すみません。



■第十場B 綱、頑張る(岩屋の裏庭)

紗幕があがって、“雨ざらしの杭”(←どう見ても岩ですが…)につながれている綱(北翔海莉)にスポット。
……おかしいなあ。どうして萌えがないんだろう。長髪の美形が身動きできないよう縛られてるっていうのに(←何を期待しているんだお前)


この場面は、前場の胡蝶の台詞(「降ってきたねェ…」)を受けているんですよね。ちょうど雨が降り出したところ。ですが、場面転換の前に公時(鳳翔大)と広次(風馬翔)の会話が挟まるので、ちょっと解りにくくなってます。初演もこういう演出だったのでしょうか。
まだ姫たちが居る間に、舞台の反対側で公時と広次の会話を入れて、で、全員はけてから胡蝶の台詞で暗転して雨の音が大きくなり、それがすっと引いてライトイン、の方が、すんなり入れると思うのですが。




岩につながれたまま、降り出した雨を気にする綱。
そこに、蓑と食べものを持って、藤の葉(野々すみ花)が走りこんでくる。いきなり「遅くなりました!」と言うのでちょっと吃驚してしまいます(^ ^)。確かに、雨が降り出してからちょっと間があるんですけどね。

茨木童子の身の回りの世話をさせられている彼女は、結構自由もあれば時間の余裕もあるのでしょう。自分が無理矢理ついてきたばかりに、綱さままで鬼たちに見つかってしまった、と恐縮している藤の葉は、共に暮らすうちに解ってきた鬼たちの弱点を語りきかせます。
「鬼たちは、みんなが皆お酒を呑みます。だから、酔いつぶしてしまえれば…」
必ずお救いしますから、時をお待ちくださいませ、と。



全般的にキリッとした二枚目に役作りしているみっちゃんですが、ここでの藤の葉との会話は、間のとりかたも声の調子も、二枚目半から三枚目すれすれといった感じ。確かに、原作でも綱はちょっとコミカルな部分を担当してはいるんですけどね。でも、綱という男は、本人が面白いんじゃなく、あくまでも生真面目で実直で“真っ直ぐ前にしか進めない”猪タイプ、なんですよね。そこが、猫のように回りくどくて後ろ向きな茨木にとっては、すごく微笑ましいというか可笑しい、という存在なので。もっともっと、まっすぐにひたすら愚直にやっても良いのになあ、と思ってしまいました。
前半の活躍場面では、すごく硬軟自在で有能な武人に見えるのに、ここだけコミカルな感じになるのがちょっと勿体無かったのかも?いや、でも、切り替えの早さはさすがだなと思うんですけどね(*^ ^*)。

とにかく、鬼チームのチームワークが良すぎるので、このあたりの綱は、たった一人、敵陣で孤軍奮闘!という感じなんですけど(^ ^;、がんばっていただかないとラストシーンにつながらないので。笑顔ひとつで茨木を惚れさせてほしいな、と(←おい)


…などと呟きつつ、

「綱さまが掴まったのも、元はといえば私が無理についてきたから…」
としおらしくうなだれる藤の葉に、
「いや、そなたのせいではない。たかをくくって一人で乗り込んできた自分が間違っていたのだ」
と雄々しく言う綱は、ホントに格好良い、です(*^ ^*)。





藤の葉と綱が語らう場に、ふと現れる茨木童子。
「酒呑童子に見つかると面倒だぞ」
さりげなく、藤の葉を差し向けたのは自分であることを匂わせつつ、危険を知らせる。察しよく持って来た蓑笠や食べ物を持って立ち去る藤の葉。ちょっとだけ残念そうに、藤の葉を見送る綱が可愛い(^ ^)。


茨木が通りすがりに物陰から眺めていた胡蝶を呼んだところに、仏(蓮水ゆうや)と佐渡(天玲美音)が、都の姫たちを連れて通りがかる。
二人は、ここに綱が捕らわれていることを忘れていたんでしょうかねぇ?姫たちを連れてどこかへいく途中っぽかったけど、わざわざここを通ったのは何故なのかしら。

「茨木童子、この野郎(綱)を、いつ叩っ斬りますか?」
佐渡に問われた茨木は、微かに笑んで、
「…俺がその気になったときに」
その台詞を聞いて、ふと顔をしかめる話題の主、綱。



このあたりの場面で、綱を探しにきた公時がセットの奥に登場して、綱を見つけて喜び、声をかけようとして、茨木がいることに気づき…という細かい芝居をしているのですが。
…なんだか、出早をしてしまったように見えて仕方がなかった…(ごめんね、大ちゃん)
しかも。
初日はそれだけの場面だったと思うんですけれども(多分)。二週目に観たときには、仏に追い立てられて上手袖にはけようとする花園衛門(愛花ちさき)を見つけた公時が、これまた声をかけようとする、という芝居が加わり、さらに、花園衛門も公時に気がついて、お互い言葉は交わさないまでもお辞儀をしてハケる、という、長い芝居になっていたんですよね。
これは、中村さんの演出?正直、花園衛門と公時の場面は後にあるので、ここはスルーした方がキレイだったのに、、と思ったのですが……。




姫たちを追って仏たちが立ち去ると、茨木は胡蝶も追い払う。
…茨木に「あっちへ行ってろ」と言われて、「んっ…」と不満げにしなをつくる胡蝶も、めっちゃ可愛いです(*^ ^*)。

胡蝶を見送る背中に、綱が声を掛ける。
「…あのとき、なぜ俺を助けた?」
面倒くさそうに応じる鬼。
「言ったろう。退屈しのぎだと」
「お前ほどのものが、何故あんな非道いことを?」
真顔で問う綱に、ちょっとおどけたような口調で、
「嫌といえば親父様が怖いし」
そのまま、ふと貌を曇らせて。
「……自ら狂うて、忘れたいことも、ある」


茨木の心の闇は、綱には想像もつかないんでしょうね。
ふと自嘲の笑みを唇に刻みつつ、綱の顔を見て
「それに忘れるな。俺も茨木童子。大江山の鬼だ」
と強い声で告げる茨木の、生温くて昏い、深い闇なんて。

そんなものと縁のない綱だからこそ、茨木も愛おしく思うのでしょうけれども。




それでも、何かを感じたらしく、無意識に話題を変えようとする綱。
「藤の葉を知っていたのか?」
…恐る恐る尋ねる綱の、不安げな貌が実に可愛いです(^ ^)。藤の葉への想いを告白する綱と、それを軽く受け流す茨木。それでも、人の外面ではなく本質を見ようとする綱の真直ぐな視線が、茨木にとっては、痛くもあり、甘くもあり、、、という感じなのでしょうね。


綱との会話に興じて、明るい笑い声さえあげる茨木。
そこにやってきた(通りがかった?)酒呑童子。愉しげな茨木の様子に、苛立ちを見せる。

…パパ?
あのぉ。それって、なんだか……綱に嫉妬しているようにしか見えませんってば………(汗)。



先ほど茨木童子に投げたのと同じ質問(何故都を襲うのか?)を、鬼の長にも率直に投げる綱。

そもそも、先に手を出したのは都人のほう、
我らの所業はただの復讐、
そんな説明を、素直に受け入れる綱。やっぱり、この素直さが『渡辺綱』という人物の魅力なんでしょうね。でも、それで納得したからといって、黙りはしないんですけど。
「都の人々すべてに罪があるわけではない!」
そんな正論に、反論できない酒呑童子。

激昂して綱に詰め寄る父を、咄嗟に止める茨木。
「父上!このものは私に任せると言われたはず!」
縛られて身動き取れない綱との間に立ちはだかる息子を見て、踵をかえす父親。

「お前に教えることがある。来いっ!」





茨木に付き従っていたはずの春風(蒼羽りく)と秋風(星吹彩翔)が、この場面では最初から酒呑童子と共に現れ、どちらかといえば茨木を追い詰める側に立つのが、不思議といえば不思議でした。
あの二人、もしかして、茨木が勝手なふるまいをしないように、酒呑童子がつけた監視役なんじゃないのか……?




■第十一場 父子の童子 

ここは、祐飛さん自身が「芝居とショーを通じて、一番きつい場面」だと仰っていた場面。
たしかに、あの大きな衣装で飛ぶわ回るわ、いつか怪我をするんじゃないかと心配でした(汗)。千秋楽が無事に終わって、良かったよ。


歌詞の内容は、結構深刻なんですよね。
人として生きるもならず、
父の息子として跡を継ぐだけの決心もつかない、

そんな茨木の、血を吐くような叫びに浸る場面、の、はず、なのですが……





…………この場面って、原作では、綱(と藤の葉)を庇う茨木に怒った酒呑童子が、息子を鞭で折檻する場面なんです(滝汗)。
あれええ?とがっかりしてしまった私は……なんか、この格調高い作品を鑑賞する資格に、だいぶ欠けているような気がします……(T T)(←自覚はあるのか)。






■第十二場a 茨木の告白

茨木と酒呑童子の連舞がキまって暗転、場面はまたもや、岩屋に近い路に。
転換の都合で暗転の時間が長めなのですが、暗転してすぐから、鬼たちの賑やかな歌声(主に五蔵?)が暗闇の中から聴こえてきます。

照明が点くと、すぐに「かかれーっ!」の号令が入り、下手側にたむろっている鬼たち(三田〜九呂)が上手袖から出てきた姫たちに襲い掛かるのですが。
姫たちの列の中ほどにいる千年杉(萬あきら)に、「コラァっ!!」と一喝されて、そのまま素通りして逃げていくのが、ホントに先生に見つかった中一男子そのもの(涙)で、めっちゃおかしい。
一緒に混ざっていた四面(花露すみか)だけ、逃げそびれてうろうろしているところを見つかって、
「女だてらに、お前まで!」
と叱られ、セットの裏に逃げていくんですけど、その途でさりげなく待っている九呂(風馬翔)の心配そうな顔が、ツボでした。楽の直前くらいに気がついたのですが、もう少し早くから観ておけばよかったなあ…。



鬼たちに襲われる心配もなくなった姫たちは、愉しげに水汲みの途を辿ります。
「酷い地獄が待っていると想っていたけど、あんたのような穏やかな鬼もいるのねぇ…」
落ち着いた様子で千年杉に話しかける伊勢式部(鈴奈沙也)。身の危険がないとなれば、人間の、いや、女の順応性というのは、もしかしたら鬼よりずっと上なのかもしれません。
落ち着いた声音で、回りの女たちも鎮めてしまう鈴奈さんの柔らかさは、さすがだなあと感心します。


ただ。

作品全体として考えると、ここで「鬼たちは必ずしも敵じゃない」ということを示してしまうので、頼光たち武将側の考えと、ギャップが生じてしまうんですよね……。
「そこまでしなくても良いじゃん!」と思ってしまうんです(- -;ゞ

まあ、原作と違って鬼たちを完全に滅ぼすわけではないので、そこはちゃんと解決されているんですけどね。人里はなれた山奥で、ヒトと鬼の共存を目指す、という物語になっているので。


……そうして、人との関わりを捨てられない茨木だけが、大江山に残る。
残る理由を、彼だけが抱いていたから……。




コメント

nophoto
hanihani
2009年9月17日13:57

>>残る理由を、彼だけが抱いていたから……。

うまい!!
ねこさま、シメの一行が利いてますね。またまた次の回に引っ張られちゃいましたよぉ~

もう明日から雪組が始まるんですが、博多座公演良かったなぁ(ぽわわ~ん)
って感じで、だめだ、気を引き締めないと・・・(笑)

早く続きお願いします、シルバーウィーク中には終わるのかな?

みつきねこ
2009年9月18日0:48

hanihaniさま、コメントありがとうございます♪
すみません、精進します(^ ^;。雪組公演が始まる前に終わらせるつもりだったのですが、
予想外に逆転裁判に嵌ったのが敗因でした(^ ^;;;;;

雪組さん、お身体大切にして、がんばってくださいねー(祈)。
ああ、また新公チケ探さねば。