赤坂ACTシアターにて、宙組公演「逆転裁判2」を観劇してまいりました。



フェニックス・ライト(蘭寿とむ)、ロッタ・ハート(美風舞良)、裁判長(風莉じん)、ディック・ガムシュー(春風弥里)、マヤ・フェイ(すみれ乃麗)の5人は、パート1から同役で続演。
せーこちゃん(純矢ちとせ)は、前回も出ていたけど役が全然違ってて、あと出ていたのは、光海舞人、天輝トニカ、紗羽優那、千紗れいな、七瀬りりこ…の、5人だけ?(抜けている方がいらっしゃったらごめんなさい!)

美羽あさひちゃんや七帆ひかるくんたち、卒業されてしまった方も多いんですけど(T T)、改めて思い出してみると、すっしーさん(寿つかさ)をはじめ、博多座組に回った人が多かったんですよねぇ。「逆転裁判」で覚えたのに、「薔薇に降る雨」では見つけきらなかった可愛い下級生たちが、博多座ではすごく目について幸せでした(^ ^)。





ゲーム「逆転裁判」と宝塚とのコラボ作品、第二弾。
正直、柳の下に二匹目のどじょうはいるのか?と思いながら観にいったのですが。




蘭トムのフェニックス・ライトは、やっぱり優しくて可愛くて、魅力的でした(*^ ^*) 今はもう居ないレオナに捕らわれすぎていて、ライトの一番いいところを封じられたまま、どうやって生きていくか…みたいなテーマがちょっと微妙でしたけど、でも、やっぱり可愛い♪また逢えて、良かったです♪

いやー、もしパート3が実現したら、祐飛さんも犯人役か何かで出演しないかな(^ ^)。「古畑任三郎」みたいに、特別ゲスト待遇でどうでしょう。結構嵌ると思うんだけどなー。




ともちん(悠未ひろ)のエッジワースは、予想外に外見も嵌っていたし、良かったと思うんですよね。ちょっと色気が洩れすぎてて、あまりクールなキャラではなくなってましたけど(^ ^)。私はゲームを知らないのですが、原作ファン的にはどちらがイメージ近いのかなあ。

ただ。今回のエッジワースは、あまりにもパート1とキャラクターが違いすぎていて、違和感はかなり強かったですね。役者が違うのもあるんですけど、それ以前に、脚本的に根幹が別人になっていたので。
まぁ、さりげなくライトが「あいつ、よく喋るようになったな」などと突っ込んだりしてくれるので、全く繋がらないということはないのですが。「あの事件(レオナ公判)で人生が変わったんだ」みたいなことも本人がちゃんと説明してくれるんですけど、『人が変わった』という芝居を、実際に違う人がやるのは難しいよなあ……というのをしみじみと思いました。




せーこちゃんは、前回はレオナの妹で、事件全体のキーになる人物でしたが、
今回は、最初の公判の被告人・アレイア先生(光あけみ)の娘ルーチェという、まったくの新キャラ。弁護士志望で、ライトに憧れていて、でも、恋人(七海ひろき)もいて、、、という、割とありがちなキャラでした。
母親を救うためにライトの依頼人となり、母親は無事嫌疑が晴れたものの……という、脚本的には物語りの真ん中に常に絡んではいるのですが、あまり“ヒロイン”という感じではなかったですね。恋愛も絡まないし、ライトと出会ったことで人生が変わるわけでもないし。
どうせなら、モニカ(レオナの妹)のままでよかったんじゃないか、という気がします。レオナを喪った彼女を救えるのは、ライトだけだろうと思うし。モニカなら、アレイア先生を知っていてもおかしくないし……。
せーこちゃん自身は、美人だし歌も芝居もできる素敵な娘役さんなのに、いくらなんでもルーチェじゃどうにもやりようがない(T T)。本人の能力でカバーできる範囲を超えていると思いますね。もう少しなんとかしてあげて欲しかったなあ……>鈴木さん


ルーチェがあんな役なら、藤咲えりちゃんのフランジスカ・ヴォン・カルマの方が、よっぽど『女主人公』としてのヒロイン役に相応しい役だったような気がします。
主人公(ライト)が今でも一途にレオナを愛し続けているという設定自体がかなり宝塚ばなれしているわけで。だったら、いかにも宝塚作品のヒロインっぽいルーチェというキャラを出してくるよりも、全く宝塚ヒロインらしくない冥ちゃんを作品の女主人公に据えて、恋愛を絡ませずに裁判での闘いを中心に描いた方が面白かったのでは、と思うのですが……。

その、フランジスカ・ヴォン・カルマの藤咲えり。わたしはゲームも漫画も読んではいませんが、キャトルレーヴに売っていた漫画の表紙だけは見たんですね。表紙に出ている冥ちゃん(三巻だったかな…?)のイラストを見て、思わずふきだしました。えりちゃん、GJ!!すげーそっくりです。何がって、美しいボディラインと脚線美が。
金髪ボブの鬘も良く似合うし、大人っぽい美人で、あの衣装が良く似合って、、、いやー、ホント素敵でした。(はぁと)(熱弁)




美風さん・風莉さん・みーちゃん(春風弥里)・れーれ(すみれ乃麗)の続演軍団は、さすがの余裕、という感じでした。それぞれに皆パワーアップして、みーちゃんはセンターで一曲あったり、美風さんはいろいろバイトしていたり、同じ役とはいえ、ちゃんと工夫されていたと思います。
しかし。
ふとした疑問なんですが。みーちゃんの刑事がカリフォルニアに居るのは「人事異動で」ってちゃんと本人が説明していたけど、裁判長閣下はどーしてこちらに……?




かいちゃん(七海ひろき)は、ルーチェの恋人・ローランド・スミス。いやー、格好良かったです。前から気になってた人だし、「薔薇に降る雨」の新人公演でかなり惚れてた自覚はありましたが……落ちましたね。ええ。
いろんな矛盾のある役なんですけど、その矛盾を吹き飛ばしてしまうだけのパワーを見せてくれたのが嬉しかったです。なんというか。小さくまとまらないで、大きく掴みに来たことを評価したいな、と思います。…ちょっとキャラが複雑(?)すぎて、場面ごとに別人になってしまったきらいはありましたが、大事なところはちゃんと抑えてくれたので、気持ちよく感情移入できました。
…でも、髪は、プログラムくらいの方が似合うと思うなー。…あんまり長いと、それだけで胡散臭くなっちゃうし、ね(^ ^;ゞ





それ以外では、メアリー・ウェーバー(最初の事件の被害者の秘書)役の美影凛さんと、殺し屋役の光海舞人さんくらいしか本当に役がなくて、あとは皆、「陪審員」とか「若者」とか、そんなんばっかり。まぁ、陪審員たちはとにかくずっと舞台上にいるので、贔屓組だったら十分な出番なんですけどねぇ。まだ下級生覚えていない猫には、哀しい感じでした。
二幕の裁判で、下手の陪審席の一番下手にいる可愛い娘役さんはどなただったんでしょうか…。
過去のライトの愛月ひかるさんは、顔がみえなくて残念なんですけど、後姿でスタイルの良い人だなあと思いました。でも、手下役とかで見つけきれなかった(T T)。あと、若者で目についたのは安里舞生さんかな。あまり確信はありませんが、多分。スタイル良くてびっくりしました。






…と、ゆー感じで。

キャストはそれぞれ、続演の人もはじめての人も、みなさん良くやっていて、とても良かったのですが。
今回のパート2は、残念ながら、脚本的にはパート1とは大きな差があって、ちょっと残念な出来だったな、と、思いました。これが、見終わった後の正直な感想、です。

パート1は、なんだかんだ言っても、レオナ(美羽あさひ)との愛や、エッジワース(七帆ひかる)との友情など、テーマになる“想い”がはっきりしていたんですよね。で、なによりも、ライトの“信じる”想い、レオナを、エッジワースを、とことんまで信じる気持ちの強さが全編を貫いていて。
だから、いろんなお遊びや細かいギャグも、その太い幹があればこそ、きちんと枝葉として働いていたのですが。

そう。パート1が面白かったのは、もちろんゲームの設定をうまく舞台に取り込めたことや、キャラクターが嵌っていたことなど、いろんな条件がうまく噛み合っていたからこそなのですが。でも、やはり脚本自体が舞台作品として良くできていたことが大きいと思うんですよね。あちこち綻びはありつつも、そこには圧倒されるほどの純粋な「愛」があり、「信じる」心があったから。ライトが“信じた”からこそ、レオナもエッジワースも、喪ったと思い込んでいたモノを取り戻し、新しい一歩を踏み出すことができたのだ、という展開が。

そして、彼らが新しい一歩を踏み出したからこそ『真実』も『蘇った』のだし、ひいては『事件』も『解決』したのだ、というところまで、綺麗につながっていたから、ラストに物凄いカタルシスがあったんですよね。


でも。

パート2で一番残念だったのは、フェニックス・ライトの一番のパワーの源である“信じる”という能力について、その対象となるべき人物がいなかったこと、でした。

ライト自身は変わっていないのに、優しさも可愛らしさも何も喪っていないのに、“信じる”対象を見失ったことで、自分の一番の能力の発揮のしようがなくなってしまう。
最初の被告人となるアレイア先生のことは信じているんですけど、それは別段、何の障害もなく普通に信用しているだけで、特に語るようなことでもないし。
二幕で弁護を担当する人のことは、そもそも全く信じていない。むしろ、有罪にしてやりたいくらいの勢いです。

“信じる”ものを喪ったとき。“何があっても信じ抜く”という能力を封じられたとき、ライトの切り札となるものは何なのか。
それは本来、宝塚なんだから、『愛』であったり、そういう“何か”であってほしいんですよね。でも、ライトは『愛』もレオナに捧げてしまって残っていない。そういうときに、彼は何をもって闘うのか?


それはエッジワースも同じなわけで。彼は、レオナ公判まで自分のテーマソングだったはずの「私が決めたルール」という主題歌を喪っている。どういう基準(ルール)で判断したらいいのか、根本的なところが揺らいでしまっているんですよね。
そういうときに、何をもって闘うか。ライトとエッジワースの、悩みの根幹は同じなわけです。
だから二人はもう一度闘う。法廷という戦場で。

でも。
……二つの裁判を経ても、結局答えは出ていない、と思うんですよ。
なんとなく終わった感が強くて。二人の悩みは、全然解決してないじゃん!!と思う。
エッジワースは、自分の悩みは放置したまま、冥ちゃんの悩みだけ解決してあげようとするし。
ライトもまた、しかり。



なんとなく闘って、なんとなく裁判が終わって、なんとなく、“ま、これからもがんばろうね”的な、生温いラストシーンになだれ込む。
お約束っちゃお約束なんですけど、そういう安易なラストに持ち込むんだったら、最初からそんなテーマを堕さなければいいのに、と思いました。
エッジワースを出さないで、レオナの名前も、回想シーンだけにして。
レオナとの恋はきちんと終わらせて。連作ものの探偵小説は、作品ごとにヒロインが違うのが当たり前なんですから、割り切ってそうすればいいと思うんですよね。
エッジワースを出さなくても、冥が居れば話は進められるんですから。


ライトの一番の力は、“信じる”力。
だから、どうか。どうか、信じさせてあげてほしい。

あの、優しくて不器用で一生懸命で、誰よりも可愛らしい、あの男に。



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