今日、たまたま本屋に寄ったら、波津彬子さん著「幻想綺帖」第一巻が出ていたので、買ってみました。



いや、波津さんは以前から好きなんですが、なぜここであえて取り上げたかというと。

この本の帯に、来年2月の朝海ひかるさん主演「MATERIAL」(荻田浩一演出)の原作が波津さんの「雨柳堂夢咄」だと書いてあったからなんです。

……すみません、情報に疎くて。
朝海さんが荻田さん演出のダンスアクトに主演されることは勿論存じ上げていたんですが、「雨柳堂」とは全く結びついていなかったので、もの凄く吃驚いたしまして。
「雨柳堂夢咄」、私は連載第三回目くらいからの熱烈なファンなんです(汗)。まさか、あんなマイナーな(今にも消滅しそうな途切れがちの出版状況だった)作品を舞台化しようなんて猛者がいたとは……

いや、というか、やっぱり荻田さんはどっか私と趣味が近いところがあるんじゃないか、と(汗)(荻田さんの信者の方、本当にすみません)。「雨柳堂」といい、「蜘蛛女のキス」といい、なんだかすごいなーと思ってしまいます。「蜘蛛女のキス」も、「日本最終公演」とまで銘打たれてたのに再演しちゃったんだもんなあ。凄いよなー、とゆー感想しかでないんですが。
ここまできたら、いっそのこと○○も○○も……と思ってしまう今日この頃(^ ^;ゞ
「蜘蛛女のキス」といえば……来年の再演の蜘蛛女は、金さんなんですよね。コムさんも良かったけど、また違う「蜘蛛女のキス」が観れるのがとても楽しみです♪




「雨柳堂夢咄」は、“この世のものならぬモノを見、声を聞く”不思議な少年・蓮を主人公に、彼の祖父が営む骨董店「雨柳堂」を舞台にした連作短編集で、単行本にして12巻まで出ています。朝日ソノラマの美麗な大型本と、最近文庫にもなって、もう全巻文庫化したのかな?
ここ数年(?)雑誌「ネムキ」の連載も止まっていたのですが、ここに来て再開したのは舞台化の恩恵もあるのでしょうか?だとしたら、荻田さんと朝海さんには心から感謝!ですね。早く新刊が出ますように♪


「雨柳堂」には視覚的に美しい物語がたくさんあるので、うまく舞台化してほしいなあと思います。
……でも、梅田芸術劇場のコムさんの写真は、蓮ファンとしてはちょっと受け入れがたい(T T)。それとも、コムさんは蓮じゃないのでしょうか…?
蓮は、神ではなく、魔性の生き物でもなく、でも、ただの“ちょっと不思議な能力を持つ少年”というわけでもない、曖昧で運命的な存在。「銀の三角」のラグトーリンの同類でありながら、普段は、ごく生真面目で祖父思いの好青年、ってところがツボなんだけどなあ……。

基本的に、どの物語も主人公は別にいて、蓮自身はただの狂言回しなんですが……あれを舞台化するとしたら、オムニバスにいろんな咄をつないで、朝海さんだけが通し役で蓮として踊る……みたいな感じになるんでしょうか。お芝居ではなく“ダンスアクト”だから、ラストに脚本的な結論がなくても問題ないでしょうし。




まぁ、でも、舞台とは関係なくても、幻想小説やファンタジーがお好きな方なら波津作品は絶対気に入ると思いますので(^ ^)。ぜひ機会がありましたらご一読くださいませ。
ちなみに、波津さんの作品で「雨柳堂」以外の私のお勧めは、プチフラワーの「異国の花守」シリーズと「パーフェクト・ジェントルマン」、女性の情念を描いた「水に棲む鬼」…あたりでしょうか。まぁ、基本的にどれも好きなんですが(^ ^)。



ここまで既刊について書いておいて、なんだか今更ですが……

今回の新刊「幻想綺帖」は、中国の奇談や泉鏡花・芥川龍之介らが書いた幻想的な短編を漫画化したものを集めた短編集。有名どころでは「山月記」や鏡花の「化鳥」が入っています。あと、個人的には、いかにも波津さんらしい展開の「藤の杜のおぢい」や、芥川原作の「夜半の膳」のトボけた後味、ミャンマー生まれの英国作家・サキの「開いた窓」のシンプルなオチの見事さ、などが面白かったです。サキの作品は、たぶん原作も面白いんでしょうけれども、絵で見てこその怖さ・面白さもあるので、他の作品も漫画化してほしいなあと思ったり(^ ^)。


テーマがあるような無いような、ちょっとオムニバスな感じの短編集ですが、そのごった煮感も波津さんらしいといえば波津さんらしい感じ。ただ、いつもだと単行本にはあとがきの替わりに「日々平安 波頭濤子先生の日常」という日常漫画がついていて、これが非常に面白いのですが、今回は作品が難しいせいか、作品解説に終始した普通の“あとがき”だったのがちょっと残念(涙)。




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