星組さんの休演者のニュース、…心配です、本当に。
どうぞお大事に。そして、これ以上広がることのないように、祈っています。




そして。
東宝からは遠く離れた、宙組博多座公演「大江山花伝」。


ショーの方は一通り書き終わったので、今度はお芝居のほうを(^ ^)。
舞台と原作、両方のネタバレをしておりますので、あらかじめご了承くださいませ。



木原敏江原作の、往年の柴田侑宏作品。演出は中村暁。
どういう経緯で祐飛さんのプレお披露目がこの作品に決まったのかは判りませんが、きっと柴田さんは、祐飛さんが茨木を演じることを心から喜んでくださったに違いない!、、、と、勝手に思っていたりします。
とにかく祐飛さんがスターになれたのは、柴田作品との相性の良さというのは絶対にあると思うので。
最初の大役は「チェーザレ・ボルジア」の新公マキァヴェッリだったそうですし、私が落ちたのは全ツのミケロットでしたし、「黒い瞳」のプガチョフは決定打だし(^ ^)。
ちょっと飛んで「飛鳥夕映え」の鎌足と石川麻呂、「あかねさす」全ツの中大兄。どれも“ちょっと美味しい役”ではなく、きちんと物語のある、素晴らしい役で。
こういう役で、祐飛さんは育てられたんだなあと思います。だからこそ、「哀しみのコルドバ」のリカルドを、あれだけドラマティックに演じられたんだろうな、と。

だから、お披露目作品も柴田作品だったのはとても嬉しいです。

でも。
どうして月組中日「紫子」は大野さんが演出されるのに、博多「大江山」は中村さんなの?(涙)プレお披露目っていう条件は一緒なのにー(嘆)。





■プロローグー夢の藤波ー

緞帳があがると、檀の上に白と金の衣装を着た茨木が背を向けて立ち、美しいコーラスが、物語を語り始める……

♪藤波の藤波のうつろう時の夢なれや
♪ああ夢なれや


この作品は、どちらかというと舞踊詩に近い、というか……語り部がいなくて、その代わりにカゲコーラスがいろいろ説明をする構造になっています。だから、カゲコーラスをBGMだと思っていると全然話がわからずに終わる(^ ^)。
原作自体がわりとポエティックなつくりなので、こういう構成にしたんだろうなあとは思うのですが……原作を知らない方は、どう思われたのでしょうか。



壇上の茨木が、ゆうるりと振り向いて扇を外す。

♪月影にうつろう花のおもてこそ

びょうびょうと風が啼くような、寂しげな声。
あまり艶のない祐飛さんの声には、こういう使い方があるんだなー、なんて思っているうちに、上手袖から藤子(野々すみ花)、下手袖から渡辺綱(北翔海莉)が登場。三人の連舞に。

♪ほろほろと うす紫の 
♪ほろほろと 身に降りかかり

明朗とした緩やかな音楽に合わせて舞う三人。私には日本舞踊の素養がまったくないので得手不得手はわかりませんが(汗)、同じ振りなのにそれぞれに微妙に違っていて、たおやかな茨木、勇壮な綱、気の強いな藤子、というキャラクターがちゃんと出ていたような気がします。

♪とけてはかなきうす紫の
♪夢の狭間にたゆたいて
♪後に残るは風ばかり

初見ではただただ綺麗なオープニングだなあと思ったんですが、二回目からは、ラストを観ているのですごく切ない。
絶望が浄化されて、ここにあるのは、ただ夢幻ばかり、だから。


この場面の歌詞は、プログラムにも明記されているとおり、原作のラストのひとコマでの綱の述懐…というか、物語を〆る言葉を元にしています。
ちょっと言葉の順番が違うくらいでほぼ同じなんですけど、一つだけ“ふじむらさき”を“うすむらさき”に変えてるんですよね。音で聴くと濁音の濁りが目立つからなのか、柴田さん的には深い意味があったのか……。



■第二場 酒呑童子、襲う

幕が降りて、幕前で華やかな貴族たちの宴が始まる。

♪この世をばわが世とぞ思う
♪望月の欠けたることのなしとおもえめ

有名な藤原道長の歌を歌う三人の女官は、真ん中が百千糸、下手に綾瀬あきな、上手に瀬音リサ。口火を切るももちさんのソロが、とてもなめらかな、コロコロとした可愛らしい声で、良かったです。ももちさんはこの公演、たくさん歌がありますけれども、個人的にはここが一番好きかも。
あきなちゃん、リサちゃんのコーラスが、とても可愛い(*^ ^*)。

後ろに居並ぶ姫君たちと貴公子たち。えーっと、花道の姫君たちは、結乃かなりちゃんと咲花莉帆さんが上手、舞花くるみちゃんと愛咲まりあさんが下手……だったかな?違っていたらすみません。

バチバチっという効果音が入って、照明が明滅。姫君たちが一人づつ、鬼の神通力で操られて、くるくると回りながら袖へ駆け抜けていく。
カゲで「ああっ!」とか、「姫君が!!」とか、いろんな声が入るのですが、あそこは録音なんでしょうか…?誰が喋っているのか全然わかりませんが(涙)。とりあえず、姫君たちのさらわれていくタイミングと、「○○が!」という悲鳴のタイミングは全く関係なかったです。
若い公達は、さらわれた姫を追うでなく、ただ舞台の真ん中に固まって震えているばかりだし(汗)。

そうこうしている間に姫君は全員さらわれて、公達も逃げ出します。そして、紗幕があがると、幕のうちには、見栄をきった鬼たちが。

何も無い広い空間での、シンプルなせりの使い方が見事です。
姫君(愛咲まりあ)を腕に抱えてふてぶてしく笑う酒呑童子(十輝いりす)を中心に、上手に羽黒(天羽珠紀)と佐渡(天玲美音)、その外側に五蔵(風羽玲亜)。下手は天竜(珠洲春希)と仏(蓮水ゆうや)、その外側には六歩(月映樹茉)。
初日は皆さんお化粧がとってもステキで、どうなることかと思ったものですが(汗)、巧くなったのか、私が見慣れたのか、皆すごく格好良かったです(真顔)。キメポーズも決まってる(はぁと)。
鬼たちが美形ぞろいで、すごく幸せ♪♪




プログラムを見ると、幕が降りて鬼たちが駆け去り、それを追う頼光四天王が両花道から登場して悔しがるところまではこの場に入るみたいですね。
で、ここで攫われたのは?と訊かれて「堀河の二の姫と紅少将」と応えているところを見ると、花園衛門が攫われた中に居たのは気のせいだったのかな、ねぇ、公時?(^ ^)。



■第三場 勅命、下る

藤原保昌(雅桜歌)が上手に登場。涼しげな切れ長の目元がかっこいい♪
頼光登場を告げたところで、場面は切り替わって源頼光(寿つかさ)の邸に。

綱、公時(鳳翔大)、季武(鳳樹いち)、貞光(澄輝さやと)が下手に並んで座る姿が、なかなかキまるようになりましたね。頼光さまも、服装は公家風のままだけど、だいぶ雰囲気が武士らしくなった気がします。ちょっとしたことなんでしょうね、こういうのは。
基本的に、綱は押し出しの良い立派な若大将、公時が搦手の立役者、季武と貞光は元気いっぱいの若武者、という感じなんでしょうか。鬼の妖術を警戒する季武は、慎重で考え深い性格設定を表しているんでしょうけれども、さりげなく怖がり設定を加えて笑いを取っているのはさすがです。土壇場に弱いタイプなんだろうなf^_^;。
おおらかで華やかで、あまり考え深くはなさそうな貞光さんは、とても可愛いです♪


大事なことをあれこれと説明する公時。柔らかくて深みのある声なので、普通に喋るぶんには良いけど、見栄をきるには向かないなあ…と残念に思っていたのですが、だいぶ良くなりましたね♪まだちょっと手に汗握りましたけどf^_^;



ひとつきばかり前の、茨木童子との邂逅を指摘された綱。「…はかりしれね奴」と呟きながら、何がそんなに引っ掛かるのか、自分でもわからない。ただ、茨木は気になる。…そんな逡巡を見せながら、場は回想場面へ。




戻り橋からは、長くなりそうなのでいったん切ります。


公演もあと三日間、ですね。
何事もなく千秋楽を迎えられますように……。


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