花組バウホール公演「フィフティ・フィフティ」ネタバレ感想。




第二場A(ジョナサンとヴィクター)
暗転して紗幕があがると、ジョナサン(華形ひかる)の事務所。
「これって詐欺じゃないの!?」
というキャシー(天咲千華)の叫びに、ジョナサンが
「冗談言っちゃいけない」
と窘めながら、“不動産ブローカー”の仕事を説明してくれる。

ホワイト夫人(鳳龍あや)に向かって、
「ブラウン夫人が、自分の土地を20万ドルで売りたいと言ってます」
と言って20万ドル貰い、もともと
「10万ドルであなたの土地を売ってほしい人がいるんですが」
と話していたブラウン夫人(銀華水)に10万ドル渡す、差額の10万ドルは俺のもの、というコミカルな歌を元気に歌うみつる。……歌うまくなったなあ(感涙)。

まー、ここは、揉み手して擦り寄るジョナサンよりも、それを大きな目を零れ落ちそうに見開いて見ているキャシーよりも、長い金髪の鬘を被ってキラキラしている銀華くんと鳳龍さんが、とってもキュートで素敵。ちょっと微妙な感じにくねくね(?)している二人が、もう、可愛くて可愛くて(^ ^)。お二人ともちょっとふっくら系なので、ぴっちぴちのタイトなミニワンピ姿がまた、……たまりません(^ ^;ゞ
お稽古場では爆笑していたであろうみつるくんが、上級生らしく真面目くさって歌い踊っているのもツボでした★

ナンバーが終わったあたりで、ひっそりと舞台奥のドアをあけて入ってきていたヴィクター(真野すがた)。場が落ち着いたところで、キャシーに声をかける。
「キャシー♪」
小さな花束を渡して、
「君は脚がキレイだから、ミニスカートがよく似合うねえ(はぁと)」
……天咲さんの脚は、どちらかとゆーと観賞用ではなく実用性重視の脚だと思うんだけど……と思った私は、ただのダルマ好きです。すみません。
「ヴィクター?そういう台詞は」
と可愛く笑顔で距離を詰めて、、、
「セクハラよ!」
一瞬にしてがらっと表情を変え、ドスのきいた響く声で言い放つキャシー。

天咲さん、本当に芝居巧くなったなあ~~!!(感心)本当に可愛いし、なんといっても声が良い。低いところを響かせてドスをきかせることもできるし、清純そうな裏声でもきちんと感情をのせて喋れる。「バレンシア」の新公ではあまりの棒読みにぶっ飛んだけど、ほんの数ヵ月後の全ツで吃驚するほど成長していたのは、偶然じゃなかったんですね(*^ ^*)。
あああ、残念だ……宙組で祐飛さんと芝居してほしかった……(T T)

「……嫌な世の中だな。女性の長所を誉めただけでそんなことを言われるようじゃあ、」
「結婚詐欺師は廃業か?」
「人聞きの悪いこと言うなよ。ジゴロって言ってくれ」

……詐欺師は犯罪者だけど、ジゴロ(=ヒモ)は寂しい女に夢を売る商売だ、っていう理屈ですかねぇ?
なにはともあれ。ちょっと唇を尖らせて「ジゴロって言ってくれよぉ~」と拗ねたように言うめおちゃんが可愛くて、何を言ってもあまり突っ込まずに放置しておいてあげよう、と思ってしまいましたが、あれは狙いなのか?(^ ^)。
石田さんにとって、めおちゃんってそういうキャラなんだろうなあ……(←すごく共感してます)。

ここで出てくる「女なんてなぁ」という石田さんの持論は、わざわざ公言しないで胸の底に隠しとけばいいのになあ、と思いました。本筋に関係ないしね。
石田さんも、こういうのが無ければ評価もかなり違うと思うんだけど……(←ファンなので、残念なのです)。あなたがその台詞を与えている言わせている二人も、実は女性なんだってこと、忘れないでほしい。(でも、こういうことを言わせちゃうところが石田さんらしい…ダメじゃん↓↓)


そこに登場する、モーリス(悠真倫)。
えらくチャラくて可愛い彼は、「ギャングの息がかかったフロント会社の、下請けの、そのまた孫請けの、トンネル会社の社員だぞー」と段々小さな声になるけど、いちおうギャングに分類される立場ではあるらしい。ジョナサンとヴィクター(っていうか、たぶん、主にジョナサン)が気に入っているらしく、自分の子分にならないかと誘ったりしている。

黒社会っていうのは、身分が定まった階層固定社会における、はみ出し者の受け皿でした。社会に適応できない若者を引き取り、家族として愛して兵隊に育てる。社会にとって必要な存在であったわけです。
でも、「行動の自由」を保障された自由社会においては、はみ出している人間にも“生きる権利”があるわけで。あえて制約の多い黒社会に所属して、苦労する必要が無いから、「グレているけど上下関係がめんどくさいから黒社会には入らない」連中が出てくる。
だから、「イマドキの若いもんは根性なくてよぉ~」という、モーリスの嘆きが出てくる。

そんなモーリスに、ギャングの“制服”について突っ込みを入れるジョナサン。
黒に白の縦ストライプのスーツは、ギャングの服装としてはそれほど派手なわけではないような気もしますが、まぁ、そのあたりはどうでもいいんだろうな(^ ^;

なにはともあれ、音楽と同時に黒服の男たち(彩城レア、煌雅あさひ、花峰千春)が登場して、ギャングのナンバーへ。……と思いきや、前奏でポーズ決めたところで終了(笑)。
いやー、ここのギャング三人が超かっこいいです(^ ^)。ちょっと「銀ちゃんの恋」の小夏のショーシーンを思い出しました。アーサー、めちゃくちゃスタイルがよくてカッコいい!!(壊)ネコちゃんも、スーツの補正がきれいにきまってて男前度アップ。花峰さんも、可愛らしい笑顔を帽子で隠すとえらくかっこいいのね。三人並ぶとアーサーが一回り大きくて、ネコちゃんと花峰さんはなんとなく似たようなスタイルなんですが、場面が終わってもヤル気満々なまりんさんに突っ込んでたのは、ネコちゃんでした。そういう役割分担か(^ ^)。

ちなみにこの場面、千秋楽のまりんさんは、音が止まってからも、てきとーな歌詞にてきとーなメロディでいつまでも歌い続けて、三回くらい拍手を貰ってました(^ ^)。あげくに「千秋楽くらいいいじゃねえか!」と自虐。ちょっと歌が長すぎたけど、気持ち良さそうだったからヨシとしましょう(←偉そう)

で、やりたい放題やったあげくに「今度新しく出来る銀行の業務妨害をしてくれ」という依頼をかるがる~しく伝えて、地図を渡してあっさり出て行く。このあたりの呼吸というか、間の良さには心底感心しました。「銀ちゃん」の監督も良かったし、まりんさんと石田さんって本当に相性がいいんだろうなあ…。



事務所に残されたジョナサンとヴィクターは、「しょうがねえなあ」と引き受ける羽目に。
“冷静で頭のいい”ジョナサンは、キャシーに『紙幣を(一部)燃やす』ことと、『紙幣を破る』ことを依頼し、ヴィクターには、女友達を集めるよう指示する。
「それで…?」
問うヴィクターに、軽く口の端に笑みを浮かべて
「銀行に両替させるのさ」
と言うジョナサンが、……ステキです(はぁと)。

袖からぞろぞろと出てきて、ヴィクターを取り巻く“レディ”たち。
その中には、……あれ?ホワイト夫人も、ブラウン夫人もいるんだけど、いいの?この二人はジョナサンの客であってヴィクターの客じゃないし、そんな悪事(いちおう合法的だそうだが)の片棒を担がせていいのか…?
……まぁ、楽しそうにやっているから、いいのか(^ ^)。

「破れた紙幣を交換して」「口座を開いて5ドルだけ貯金したいの」「私は1ドルだけ」「紙幣が燃えちゃったの」……窓口に長い行列を作って、口々に儲けにならいことを訴える“レディ”たち。
ちょっとあやしげな“美女”が何人か混ざった集団の中、ひときわ目につく長身美形のスタイルのいい美女は誰?と思ったら、舞月なぎささんでした。美人やなあ(*^ ^*)……などと女装メンバーを点呼するのに精一杯だったので、本当の美女たちをあまりちゃんと観られませんでした。残念。

彼女たちが札をもって並ぶ窓口には、銀行員のらいらい(夕霧らい)と天真みちるくん。
最初のうちは笑顔で応対しているのに、だんだん「?」と不安げな顔になって、おろおろしはじめて、、、「うわぁん、もう駄目だ~~!」となるまでの表情の変化が素晴らしい。天真くんの顔芸は言うに及ばずなんですけど、らいらいも、木漏れ日のような柔らかな笑顔が段々悲しげに歪んでいくところがすごく良かった。
ついついレディたちの面白さに目を奪われがちなシーンですが、銀行員たちに注目すると、ジョナサンたちは、凄く酷いことをしているんだなあ、と思わされます(- -;

ついに、対応をあきらめて窓口を閉め、「本日のところは、どうかこれで…」と、ジョナサンに頭を下げるらいらい。場面の最初の笑顔は跡形もなく、がっくりと背中を丸めて、札束の入ったアタッシュケースを重そうに抱えて。
「もう、クビだあ~」「待って~、ビリーさぁ~ん!」と叫びながら上手に駆け去っていく二人。二回目に観たときは、すごく遣る瀬無い感じがしました。この後の展開が、分かっていたから。



手伝ってくれた“レディ”たちに礼を配るジョナサンとヴィクター。
で、暗転すると、いきなり言い争ってる二人。シノギの金の分配でもめているらしい。
「アイディアを出したのは俺だぞ!」
「女たちを集めたのは俺だ!」
譲らない二人が取り合う札束を、横からかっさらうモーリス。
「そもそも話を持ってきたのは俺だよ~ん」
トボケた口調が緊迫感を切ってくれます。

そこに聞こえてくる、赤ん坊の泣き声。
いつの間にやら出かけていたらしいキャシーが、なぜか赤ん坊を抱いて帰ってきている。
……どこに捨てられていたのか知らないけど、なぜ拾ったんだキャシー。(←そうしないと話が始まらないからです)



慣れた手つきで子供をあやすヴィクター。…孤児院育ちだから、シスターの手伝いとかマメにしていたのかもね。

「しっかし子供を捨てるなんてなあ…。いっそ貧乏人は子供を作っちゃならなねぇって法律でも作りゃいいのに」
ぼやくモーリスに、真っ白い空気がアタリを包む。

「……モーリスさんの言うとおりだな」
ヴィクターの、低い、少しかすれた、声。

「そうしたら、俺たちみたいな不幸な子供が世に出ることもなかったかもしんねぇな」
しらけた空気を切ろうとするかのように、無理したように明るい、ジョナサンの、声。

この台詞。
初見のときはさらっと流してしまったのですが、二回目にかなりぐっときました。
『俺たちみたいな不幸な子供』と括っているけれども、ジョナサンとヴィクターの過去の傷が、実は全く違うものであることに、ジョナサン自身は全く気づいていないこと、に。

「俺たちみたいな不幸な子供」という言葉に、うなずきながらも昏い色を浮かべるヴィクターの瞳が、酷く痛々しくて。
幸せは同じ色をしているけれども、不幸の形は一人ひとり皆違う。何かで読んだそんな言葉を、思い出していました。




第二場B(回想)
暗い舞台中央に光がはいる。床にはいつくばって、絵を描いていた(?)少年時代のジョナサン(彩城レア)。
気配を感じて顔をあげる。輝くような、笑顔。
「おかあさん、お帰りなさい!」
転がるように母親(梅咲衣舞)に抱きつく少年。細い声が本当に怯えた幼い少年みたいで、感心しました。
母親の肩を抱く男(煌雅あさひ)に邪険に突き飛ばされて、訴えるように母親に縋りつく。
「ジョナサンか…あっちいってな」
ドスのきいた衣舞ちゃんの低い声が、もの凄く怖くて素敵です。しどけなく男にもたれて、巻いた赤毛をかきあげながら、縋りついてくる子供を振り払って、
「これでなんか買って食べな。しばらく帰ってくるんじゃないよ」
……美人で可愛いのに、ホントにいい役者だなあ、衣舞ちゃん。

泣き出したジョナサンに、黒い服を着た少女(花蝶しほ)が赤い傘を差しかける。
「クララ…」
「男の子は、泣いちゃだめ」
二人とも、小さな子供の口調が巧くて、臨場感がありましたね。
クララの両親が事故で死に、クララは今から遠い親戚の家に引っ越すという状況を簡単に説明して、
「ジョナサン、あたしのこと、忘れないでね」
という、幼いけれども神聖な誓い。

泣きそうな顔に微笑みを浮かべて、ジョナサンの手に傘を握らせ、迎えに来た男(花峰千春)のところに走っていくしほちゃんが、本当に可愛かったです。髪型も大人の二人(みつるくんとれみちゃん)に合わせていて、自然にこの二人の子供時代だと納得できる、いい芝居を見せてもらった気がします。



「……その後すぐに、母親は酒の飲みすぎで死んで、俺は孤児院に入れられた」
「その孤児院で、俺たちは出会った、ってワケ」

なんでもないことのように、軽い口調で語る二人の、お互い目をあわせない距離感が、とても印象的でした。

「俺たちは、ずっと探し続けていたんだ。俺たちの…」

なにを?とキャシーに問われて、ふと我に返る二人。
やっと目を合わせて、

「居場所、さ」


口の端だけ笑みをうかべて、二人交互に語る歌は、二幕でリフレインされるので、コメントはそのときに。
この場面では、割とよくあるパターンの歌だな、と思ったくらいでしたが、二回目からは泣けたなあ……。(涙もろくてすみません)



作品全体を通して、回想シーンはここだけなんですよね。
個人的には、孤児院でのヴィクターとジョナサンのシーンが無かったのがとても残念です。ヴィクターの心の傷の真実を、ビリーの部屋での言い争いまでとっておくためには、ヴィクターの子供時代をあまり詳しく描くわけにはいかないという事情はわかるのですが……観たかった(涙)。
出会ったばかりの頃は仲が悪かったに違いないのに(←なぜか確信している)、今みたいに仲良く一緒に行動するようになったのは、どんなきっかけがあったのかしら、とか、勝手にサイドストーリーを考えたくなったくらい、久々にツボなコンビでございました(^ ^)。




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