新橋演舞場にて「ガブリエル・シャネル」を、そして
ル・テアトル銀座にて、ミュージカル「COCO」を観劇して参りました♪


ガブリエル・ココ・シャネル。シャネルの創始者にして、モードの女王の人生を描いた二つの舞台が、ほぼ同時に、しかもどちらも宝塚OGをタイトルロールに迎えて上演される。これって、ただの偶然なんでしょうか?それとも何か仕掛け人がいたんでしょうか。
巴里のカンボン通りに最初の帽子店「シャネル・モード」を開店したのが1909年。今年は「シャネル」ブランドの誕生百周年だということで、彼女に関するいろんな企画が出るのは当然かもしれませんが、それにしても、日本だけでも舞台が二つに映画が三つ!!すごいなあ……。




新橋演舞場の「ガブリエル・シャネル」は、タイトルロールを大地真央、相手役として若くして亡くなった恋人アーサー・カペル(今井翼)を設定して、彼女の一生(20代から70代にしてモード界に復活する直前まで)を回想録の形で上演。制作は松竹。

ル・テアトルの「COCO」は、タイトルロールを鳳蘭、相手役は特におかず、70代でモード界への復活を目指すところから始まって、アメリカで受け入れられるまでのごく短い期間を濃密な人間関係と共に描き出す。
アンドレ・プレヴィン作曲、アラン・ジェイ・ラーナー(「マイ・フェア・レイディ」)脚本、主演キャサリン・ヘップバーンで、1969年に初演されたブロードウェイミュージカル「COCO」。
今回の翻訳・演出は、G2。




「ガブリエル・シャネル」が、若い頃から70代までの彼女の外面を割と淡々と描き出すのに対して、「COCO」は、「ガブリエル・シャネル」のラストにあたる、復活コレクションの準備から始まって、時折思い出話をはさみつつ、若いモデル(湖月わたる)との心の交流を中心に描かれていて、内面に踏み込んだ面白いテーマだったと思います。
私は先に「ガブリエル…」を見て、彼女の生涯のだいたいを頭にいれてから「COCO」を観たので、すごく面白かったです。彼女の生涯についてはほとんど知識が無かった(ココ・シャネルとガブリエル・シャネルは別人だと思ってたよ……恥)ので、この順番がとっても正解でした(^ ^)。「COCO」を先にご覧になる方は、もしかしたらあらかじめプログラムを読んでおいたほうがいいかもしれません。



どちらも興味深い作品でしたが、個人的には「COCO」が非常に印象的で、面白かったです。
まだご本人が生きている時代(1969年)に、これだけの作品を創ったブロードウェイってすごいなあ、と思いました(^ ^)。





それでは、簡単に、出演者について。まずは、新橋演舞場「ガブリエル・シャネル」


■大地真央(ガブリエル・シャネル)
いやーーーー、若い!!
1973年初舞台の59期。えーっと、えーっと、祐飛さんが78期だから、、、、
いえあの、タカラジェンヌはフェアリーだなあ、と、とっくに卒業された真央さんを見るたびに思います。どうして年をとらないんだろう……(謎)

最初が70代、そこから20代に戻って、さらにいったん少女時代まで戻ってから、30歳でドーヴィルに新しい店を開いたところまで飛んで、一幕が終了。
二幕はほぼ時系列に沿って、第一次世界大戦終結とアーサー・カペルの死 ⇒ 30代から40代の女盛りでの、芸術家たちのサロンでの華やかな活躍ぶり ⇒ お針子たちのストライキで店をたたんだ50代 ⇒ 冒頭のスイスの別荘に戻り、モード界への復活を力強く誓う70代のココを描いて、幕。

この華やかな人生の中で、もしかしたら一番似合っていたのは、一番最初の20代のときかもしれない……妖怪め(^ ^; 
とにかく、「70代」が似合わないことにもびっくりしました。この人は、本当に60歳70歳になってもまだハタチの小娘ができてしまいそうな怖さがありますね(汗)。
美しさ華やかさは文句無く、二幕の芸術家たちのサロンでの美しさは圧倒的でした♪


■今井翼(アーサー・カペル)
舞台の彼は、「SHOCK!」くらいしか観たことなかったのですが、思っていたよりずっと包容力があって、紳士的で魅力的な男でした。うん、すごく良かったです。私生児だという事実をきちんと受け入れて、それでも諦めずに、夢をかなえるために正面から闘っていく強さをもった男。ガブリエルの強さは、彼から受け継いだものもあったんだろうなあ、と思わせてくれる“ボーイ”でした(^ ^)。
それにしても、この人と並んで恋を語っても違和感の無い真央さんは、やっぱり妖怪なんじゃないか?と思う……。


■高橋恵子(ガブリエルの親友ミシア/20代のガブリエルが働くカフェのマダム)
美しく年を重ねた女優、そのものでしたね。美しいわ華やかだわ、素晴らしかったです。「自分では何も創らずに、才能のある人を見出して引き合わせては、そこで何かが生まれるのを愉しんでいるような人」とご自身がプログラムでミシア役について語っていらっしゃいますが、舞台上のミシアの、掴みどころの無いふわふわした存在感が面白かったです。根っからの貴族で、芸術の庇護者にして導き手、という、本来の意味での“パトロン気質”を持った美女でした。
実在のミシアとガブリエルの年齢関係はどうだったんでしょうか。真央さんと高橋さんだと、……親友、というより、養母と養女みたいな印象もありましたが……(^ ^;ゞ。



■彩輝なお(ガブリエルの年下の叔母、アドリエンヌ)
美しい!!そして歌も良かった!!
サエコさんは、女優の音域ならそこそこ歌えるんだなあと思いました♪男役時代から声は好きだったんですよね♪
しっかし、美女だなあ……。最初の登場が、20代でカフェの女給なんですけれども、あの時代のパリの服装、マキシ丈のスカートにフリルのブラウスみたいな格好が異常に似合う。しかも、お下げですよアナタ!!
可愛かったーーーー(壊)。
ガブリエルと常に行動を共にし、店が大きくなってからは事務方の長みたいな立場であれこれを取り仕切っている姿もカッコよかったんですが、なんたって私が感動したのは、2幕ラスト近くで、ガブリエルを訪ねてくる場面。
ほとんど外見年齢の変わらないガブリエルに対して、思い切った老けメイクと仕草で、可愛らしいおばあちゃんを演じていたのですが。すごい、本当に可愛いんですよ~っ! 声もきちんと芝居を作っていて、実にいい芝居をしていました。……ガブリエルよりいつのまに歳上になったの?っつー気はしましたが(苦笑)。

卒業してからのサエコさんは、観るたびにいい仕事をしていて感心します。美人だし芝居できるし、歌もなんとかなりそうだし、これからのご活躍を楽しみにしています!!


■葛山信吾(スイスの山荘で、70代のガブリエルの回想を聞いている作家)
語り手というか説明役として、ちょこちょこと舞台に出てくるのですが、語り口調といい声といい、ホントに素敵でした(*^ ^*)。


■升毅(ガブリエルの最初の恋人、エティエンヌ・バルサン)
典型的なルネッサンスの男……ってことになるんでしょうか。女が外に出て自己表現することをよしとせず、自分の隣で「自慢の美人」として微笑んでいてほしいと願うタイプ。
尊大だけれども嫌味のない、率直な、でも“時代遅れの”男でしたね。真央さんとの丁々発止ぶりは、さすがの迫力でした。翼くんには、真央さんの恋人はできても、対向者を演じるのはちょっと無理だよなあ、、、と、“役者の格”みたいなものについて考えさせられましたね。
ドーヴィルに最初の店を出したのはエティエンヌの援助だったわけで、彼は非協力的だったわけではないんですよね。ただ、彼が許したラインが、ガブリエルにとっては物足りなかっただけで。
そういう意味で、分不相応な恋人を持ってしまって可哀相な男だなあと思いました(汗)。

……調香師のポーが升さんなことは、プログラムを見て初めて知りました。全然気がつかなかったよーーー(↓)


■華城季帆(ガブリエルの妹、アントワネット/シャネルの店の店員)
ちゃきちゃきした勢いの良さが、役によくあっていたと思います。それにしても、大地・彩輝とひけを取らないスタイルの良さはさすがですね♪
「タイタニック」でも思いましたが、こういう癖の有る女役だと、こんなに良い芝居をする人だったんですねぇ……。“娘役芝居”っていうのは難しいものなんだなあ、と、なるちゃんを観ているとしみじみと思います(^ ^)。





なんだかだいぶ長くなってきましたが(汗)、続けて「COCO」です。


■鳳蘭(ココ・シャネル)
そんなに長い期間の物語ではないので、年齢は変わらず。こちらは1964年初舞台の50期。真央さんとは9年違うんですね。70代には勿論全然見えませんが、よくも悪くも、現実社会の中で遣り手のビジネスウーマンとしてやってきた誇りと自信を感じさせる、貫禄と現実感のあるココでした。
スケールの大きさや迫力、目力の強さが、「ココ・シャネル」という、時代を変えた、いえ、時代を超えた天才的な美女にマッチしていて、アタリ役だったと思います。うん。すごく格好良い女で、素敵だったなあ~!


■湖月わたる(モデル志望の女の子、ノエル)
登場時の垢抜けない田舎娘から、後半の、ココによって洗練されたショートボブの現代的美女までの変化感がすごく良かったです。ココに憧れ、ココの生き方に憧れて、でも自分はそんなふうには生きられない……という切なさがもう少しあると、良かったのになあと思ったのですが、逆に、ノエルが能天気だからこそ、ココの切なさが生きるのかもしれない、と思ったりもしました。

この二人のドラマのラストは、ネタバレになるので伏せておきますが、個人的にはすごく感動しました(*^ ^*)。鳳さんが本当に素晴らしかった!!


■鈴木綜馬(シャネルの会計士、グレフ)
カッコイイです(←当たり前です)
“マドモアゼル”ココを、あるいは「シャネル」ブランドを守ろうと、あれこれ手を尽くすグレフ。彼は彼なりにココを愛しているんだろうなあ、と思わせてくれたのが面白かったです。愛人の話を語り、妻へのプレゼントを抱えたままココの話を聞く、彼。年齢的にはココよりだいぶ(?)若い設定だったかと思うのですが、いかにもフランス男らしい伊達っぷりが素晴らしかったです。
ああ、この人は本当に、なにをしても素敵なんだなあ……(*^ ^*)

個人的に、わたるさんが現役時代に外部出演した「フォーチュン・クッキー」がすごく楽しくて大好きだったので、わたるさんと総馬さんの絡みが少なかったのが残念でした。そういえば、あの時のわたるさんの、「元気でめげない」キャラクターは、今回のノエルともかなり近いかも(^ ^)。


■今陽子(シャネルの事務方の長)
「ガブリエル・シャネル」ではサエコさんが後半やっていた役…のような気がします。全然違いましたけどね。長年ココのそばで働いてきた彼女は、ココが沈黙を守った15年間、何をしていたんでしょうね。家庭に戻って娘を育てていたのかな?(^ ^)
歌が凄いのはもちろん良く存じ上げていましたが、芝居もさすがですね。老女の役でしたが、実に自然に、「数十年間働き続けてきた」女性で、すごく良かったです。
綜馬さんともども、歌が少なかったのがちょっと残念(↓)


■岡幸二郎(シャネルの店に雇われた若いデザイナー、セバスチャン)
相変わらずぶっ飛んでて素敵でした(^ ^)。服も、髪も。
二幕の冒頭に丸々一曲ソロがあるのですが、もう私は、この人の歌を聴けるだけで幸せなので(笑)。どんなにぶっ飛んだ役でもOKです♪っていうか、ご本人がすっげ幸せそうでした(*^ ^*)
実際、作品にとって必要な役割はしっかり果たしてくれたと思います。さすがだ…。


■大澄賢也(ノエルの恋人、新聞記者のジョルジュ)
「ガブリエル・シャネル」のエティエンヌと同じタイプの男。ココの恋人ではなくノエルの恋人ですが、そもそもこの話はココとノエルが同じような境遇で、ココはノエルを“昔の自分を見ているような”気分で眺めているという設定なので、これはたぶん、ココにとってのエティエンヌなんだろうと思うんですよね。
で、そういう目で観ると、大澄さんっていうキャスティングは、ちょっと微妙だったのかなあ、と。大澄さんって、不思議とまともな男には見えないタイプなので……。
役者としての大澄さんは素晴らしいですし、この役も実に彼らしく演じていて面白かったんですが、彼を愛していることでノエルの格も下がってしまうように見えるのがちょっとマイナスかな、と。……なら誰が良いんだ?と言われると困ってしまうんですけどね(^ ^;ゞ


■小野妃香里(シャネルの店のモデル/ココの秘書、ドゥガトン)
長身美形で踊れるアンサンブルスターといえばピカリさん。声が個性的なので、一言喋るとすぐ判るんですが、ドゥガトンは咳払いしかしないんだもんなあ……(; ;)


■初嶺麿世(シャネルの店のモデル)
アンサンブルのモデル役の一人で、特に目立つ場面とかは無かったのですが、とにかく可愛かった!「A/L」で卒業されたときは「かっこいい男役になって…」と思ったものですが、やっぱり可愛いなあ(*^ ^*)。
モデルが皆長身ぞろいだったので、まよちゃんはやっぱり小柄でした(苦笑)。そんなところも可愛い♪



単品でも面白かったんですが、二本とも観ると、その視点の違いように驚きます。
ガブリエル・ココ・シャネル。毀誉褒貶の中を敢然と泳ぎきった、エネルギッシュでパワフルな女性。今自分たちが着ている服も、基本を作ったのはシャネルだと言っても間違いではないんすよね。素材的にも、デザイン的にも。

一人の女性について、これだけ違うテーマでドラマが作れる。
まずそれが、凄いことなんだと思いました。ココ・シャネル、万歳★


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コメント

nophoto
夜野
2009年7月20日0:27

お久しぶりです。
なんだか、ここ最近の観劇公演が、かなりかぶっていると思い、コメント差し上げました。みつきねこさまのブログを読んで、なるほど…と新たな視点に気がついて、とても面白いです。
私もWでシャネル公演、観劇してきました。ようやく感想を書きましたので、よかったら、ご覧になってくださいね。

みつきねこ
2009年7月20日2:34

夜野様、コメントありがとうございます★
最近本当にかぶってますね(^ ^)。今度ぜひ、ご一緒に観劇したいです。
この二作品は、本当に面白い試みでしたね。映画も観たくなってしまって、困っております(^ ^)。

いつも夜野さまのブログを参考にして観るものを選んでいるので、またたくさん書いてくださいねっ♪