異人(まれびと)と出会う夏
2009年7月10日 演劇シアタークリエにて、「異人たちとの夏」を観劇してまいりました。
原作は山田太一氏の小説。演出は最近ひっぱりだこの鈴木勝秀。いやー、私は彼の演出好きなんですけど、それにしても多いなあ。演出ってこんなに次から次と手がけられるものなのか、と驚くほどです。
登場人物は7人。
主人公のドラマ作家(椎名桔平)、同じビルに暮らす女(内田有紀)、主人公の父親(甲本雅裕)と母親(池脇千鶴)、主人公に仕事を依頼するプロデューサー(羽場裕一)、主人公の元妻と、すき焼きやの仲居(二役で白神直子)。
緊張感のある、いい舞台でした。
椎名さんもよかったけど、なんといっても、とうに亡くなったはずの主人公の両親が素晴らしかったです。亡くなった当時の姿のまま、自分が死んだことを知らないかのように、あたりまえに浅草の片隅に暮らしている二人。
ただただ仲が良くて、幸せそうで、愛に溢れた、温かな空間。
そんなものを、何のセットもはったりがましい演出もなく、ただ台詞と表情と仕草の間だけで表現してくれました。
主人公が、自分の不調を自覚し、その原因(←異界との交流)にもうすうす気づいていたにも関わらず、逢いにいかずにはいられないほどの、温かさ。
人間というのは、親というのは、ここまで盲目に子供を愛することができるのだ、と。
なんのみかえりも求めることなく、ただただ、無尽蔵に愛を与えることができるいきものなのか、と。
主人公が後半に呟く、「彼らが生きていたなら、こんなに大切に思ったかどうかわからない」という台詞が、あまりにも真実で。
いつかきっと、今の自分の親に対する気持ちを悔やむんだろうなあ、と、そんなことを考えながら。
(とりあえず、家に帰って電話してみたりしましたけど/苦笑)
原作では、『浅草』という猥雑で生暖かい空間のイメージを媒介に使って、異界につながるドアの雰囲気を出していたのですが。
舞台では浅草のイメージはあまり使わず、むしろ、そこにあるのは「昭和」っぽさ、だったような気がします。ちゃぶ台に座布団とか、メニューの択び方とか。団扇の使い方とか、「ご馳走といえばすき焼き」なところとか。
そして。
愛に満ちた『異界』とは完全に対照的な、主人公が普段暮らす建物の、無機質な冷たさ。
オフィスビルっぽい生活感のなさが、同じ建物に住まうヒロインの寂しげな佇まいやファンタジックな存在感とともに、コントラストとして強く印象的でした。
ヒロイン格の内田有紀の美しさと不安定さも良かったし、羽場裕一や白鳥直子の確実な現実感も良いバランスでした。いい脚本とスタッフをそろえて、キャラのあった良い役者をそろえて、しっかり仕上げた佳作だったと思います。
唯一不満を言うなら、「胸元のひどい火傷の痕」をトラウマにしているはずのヒロインの衣装が、すべて大きく胸元のあいた衣装だったことでしょうか。疵痕の位置にもよりますが、トラウマになって「絶対に視ないで」と言うほどだったら、屈んだら丸見えになっちゃいそうなあんな服、着ないとおもうんだけどなあ……。
……まぁ確かに、隠したら勿体無いようなラインではありましたが(眼福、眼福♪)。
映画は観ていないので、そちらを先に観ていたときにどう思うかはわかりませんが。
作品として良く出来た、おもしろい舞台だったと思います。役者としての椎名さんも、さすがの貫禄で素晴らしかったです♪
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原作は山田太一氏の小説。演出は最近ひっぱりだこの鈴木勝秀。いやー、私は彼の演出好きなんですけど、それにしても多いなあ。演出ってこんなに次から次と手がけられるものなのか、と驚くほどです。
登場人物は7人。
主人公のドラマ作家(椎名桔平)、同じビルに暮らす女(内田有紀)、主人公の父親(甲本雅裕)と母親(池脇千鶴)、主人公に仕事を依頼するプロデューサー(羽場裕一)、主人公の元妻と、すき焼きやの仲居(二役で白神直子)。
緊張感のある、いい舞台でした。
椎名さんもよかったけど、なんといっても、とうに亡くなったはずの主人公の両親が素晴らしかったです。亡くなった当時の姿のまま、自分が死んだことを知らないかのように、あたりまえに浅草の片隅に暮らしている二人。
ただただ仲が良くて、幸せそうで、愛に溢れた、温かな空間。
そんなものを、何のセットもはったりがましい演出もなく、ただ台詞と表情と仕草の間だけで表現してくれました。
主人公が、自分の不調を自覚し、その原因(←異界との交流)にもうすうす気づいていたにも関わらず、逢いにいかずにはいられないほどの、温かさ。
人間というのは、親というのは、ここまで盲目に子供を愛することができるのだ、と。
なんのみかえりも求めることなく、ただただ、無尽蔵に愛を与えることができるいきものなのか、と。
主人公が後半に呟く、「彼らが生きていたなら、こんなに大切に思ったかどうかわからない」という台詞が、あまりにも真実で。
いつかきっと、今の自分の親に対する気持ちを悔やむんだろうなあ、と、そんなことを考えながら。
(とりあえず、家に帰って電話してみたりしましたけど/苦笑)
原作では、『浅草』という猥雑で生暖かい空間のイメージを媒介に使って、異界につながるドアの雰囲気を出していたのですが。
舞台では浅草のイメージはあまり使わず、むしろ、そこにあるのは「昭和」っぽさ、だったような気がします。ちゃぶ台に座布団とか、メニューの択び方とか。団扇の使い方とか、「ご馳走といえばすき焼き」なところとか。
そして。
愛に満ちた『異界』とは完全に対照的な、主人公が普段暮らす建物の、無機質な冷たさ。
オフィスビルっぽい生活感のなさが、同じ建物に住まうヒロインの寂しげな佇まいやファンタジックな存在感とともに、コントラストとして強く印象的でした。
ヒロイン格の内田有紀の美しさと不安定さも良かったし、羽場裕一や白鳥直子の確実な現実感も良いバランスでした。いい脚本とスタッフをそろえて、キャラのあった良い役者をそろえて、しっかり仕上げた佳作だったと思います。
唯一不満を言うなら、「胸元のひどい火傷の痕」をトラウマにしているはずのヒロインの衣装が、すべて大きく胸元のあいた衣装だったことでしょうか。疵痕の位置にもよりますが、トラウマになって「絶対に視ないで」と言うほどだったら、屈んだら丸見えになっちゃいそうなあんな服、着ないとおもうんだけどなあ……。
……まぁ確かに、隠したら勿体無いようなラインではありましたが(眼福、眼福♪)。
映画は観ていないので、そちらを先に観ていたときにどう思うかはわかりませんが。
作品として良く出来た、おもしろい舞台だったと思います。役者としての椎名さんも、さすがの貫禄で素晴らしかったです♪
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