銀河劇場にて、「炎の人~ゴッホ評伝」を観てまいりました。




…の前に、CSニュースの話を。
星組初日、流れましたね。テルくん、普通に歩いてましたよね?ああ、本当に良かった良かった。
最初の二人の場面が屋根(塀?)の上なのがかっこいいなあ~♪♪ホゲが凱旋将軍であることもさりげなく説明していて、小池さん巧いなあ。…あの様子だと、近衛隊士たちとの剣の稽古のエピソードはカットされているんですよね、きっと。カクダンとチョク・ファンの見せ場だったのに残念だ。
二幕がほとんど飛ばされて、いきなり青龍が始まったので驚きました。フィナーレは基本的に同じなんですね。白虎の衣装が、花組の時にいつかさんが仰っていた(2月5日の日記)とおり、『ホワイトタイガーっぽい虎縞』になっていたことに超受けました。小池さん、コメントまで読んでくれてる?(←違う)


最近総集編しか観ていなかったのですが。
……もしかして、お稽古場風景のともみんホゲは全部カットされてしまったのでしょうか。最後のフィナーレで礼音くんの隣にいる姿がちらっと映っただけだった(T T)。それとも、最初から映ってなかったの…?ううう、ちょっとだけでいいから観たかったのにー。いいじゃないか、稽古場風景くらい放送してくれても~(涙)。






……すみません。


話を戻しまして、「炎の人」について。

ゴッホとゴーギャンの葛藤をメインにした三好十郎の傑作のひとつで、劇団民藝の代表作の一つ。
演出は栗山民也。今回はホリプロ単独での制作で、民藝とは無関係のようですね。
銀河劇場が28日まで、その後は新潟・名古屋・大阪。市村さん、りゅーとぴあ(新潟)に行くこと多いなあ…。





この夏は、7月にジョルジュ・スーラを主人公にしたミュージカル(サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ)も上演されますが。

これを機会に、三谷幸喜の「Confidents -絆-」を再演しませんか? >誰に




もとい。
難しい作品ですが、珠玉のキャストをそろえたなあ、と思いました。

ゴッホ(市村正親)とゴーギャン(益岡徹)。
お互いの才能を認め合った、同格の芸術家同士として、南フランスのアルルで共同生活をはじめる二人。
ゴーギャンに傾倒しすぎて、その一挙手一投足を気にする……ほとんど、恋人の仕草の一つ一つ反応する繊細な乙女とやってることは一緒です。市村さんは、こういう“女の血が入った”男を演じさせると本当に抜群ですね。ザザ(ラ・カージュ・オ・フォール)でも思いましたが、単純に女っぽいんじゃないんです。でも、思考の動きがすごく女性的。女性的な思考の、しかも悪いところ(勝手に深読みして落ち込んだり、ヤツアタリしたり、、、)が典型的な感じで表現されるのが怖いくらいで。
別段、市村さんのゴッホは全然女性的じゃないし、作品的にもそっち系のイメージは全く無いんですけどね。不思議な感覚でした。



私はどうしても「Confidents」のイメージが抜けなくて、ついついゴッホが一番の天才で、ゴーギャンはその才能に打ちのめされている……と思ってしまいがちだったのですが、この作品はそういう話では全然無かったですね。
逆に、ゴッホがゴーギャンの才能に打ちのめされて、彼の評価の一言一言に本当に一喜一憂する、そのジェットコースターのような高低差の激しい感情の動きが、ある意味可愛かったです(^ ^)。
ゴーギャンのイメージは、男臭くて本能的な、粗野な感じ。生活能力のあるインテリ系の優男だった寺脇康文さんとは随分違いました。ゴッホの才能に打ちのめされた感はなく、ただ、彼の才能は認めて、信じていた感じ。ただ、揺れ動きがちで不安定なゴッホを歯がゆく思っていて、粗野なりに、ゴッホの精神状態を支えようという思いも感じられました。
ただ、そんなことよりも何よりも自分自身が大事で、自分自身の芸術を大成させることの方が重要だと思っているのが、とてもリアルに伝わってきて、その迫力がとても怖かったです。


芸術の神様は残酷で、彼らの精神的な安定には決して心を配らない。
芸術の神様に愛された人は、幸せにはなれない。
ゴーギャンの安定は社会的に一度破滅した後に与えられた安定だったし、
ゴッホは最後まで安定を知ることなく、どん底からどん底を渡り歩いた。

彼の心から去ることのなかった炭坑での経験。貧しさに縛り付けられ、生涯そこから抜け出すことのできなかったゴッホ。哀れだ、と思うことは簡単なのですが。
……でも、彼はその生活の中で、美しい数々のひまわりを遺した。
美しい数々の芸術作品を。蜉蝣のように儚い人の命よりもずっと永い寿命を持つ、“究極の美”のひとつのかたちを。

彼が生み出したいくつもの“美”は、今もなお、ひとびとの心の中に生きている。
彼が画布に篭めた、多大なエネルギーと共に。







市村正親(フィンセント・ヴァン・ゴッホ)
市村さんのベストアクトは、私の中では「ラ・カージュ・オ・フォール」のザザと「スクルージ」のタイトルロールだったんですが、この役もかなりのアタリ役でした。
…ただ、あまりにリアルすぎて、観ていて辛かったですけどね……。あまりにも、最初から最後まで心理的に悲惨なままなので。
あと、もう少し若い時代に演じてみてほしかったような気がします。ベルギーの炭坑での、若き日のエピソードが重要なので。

出炭量が減って閉山寸前の炭坑で、労働者たちの苦しみを目の当たりにし、「神が本当に居るのかわからなくなった…」と述懐するほど悩んでいながら。それなのに、死んだ息子のために一心に祈りを捧げる老婆を視て、絵を描かずにはいられなくなるまでの描写が、とにかく印象的で素晴らしかったです。
戯曲的に、ゴッホの生涯を描く作品にしては、この悲惨な炭坑でのエピソードが長すぎるよ……なんて思いながら観ていたのですが(社会問題を描きたがるタイプの作家なのかと思ったんです)、この場のラストの、床に這い蹲り、パンを包んでいた紙を破らんばかりの勢いでスケッチをする若き日の(←あんまり若くないけど/諦)ゴッホの姿を観て、すごく納得しました。
心に抱いていた理想や正義感、使命感の全てを擲ってでも“美”を捕えようとする彼の、その気持ちの純粋さが彼の芸術の原動力なんだなあ、と……。



益岡徹(ポール・ゴーギャン)
ゴッホに、その全身を賭けて憧れを捧げられるゴーギャン。
上にも書きましたが、実に男臭くてカッコいい、色っぽい男前。本能のままに生きているようで、自分の歩くべき途がはっきり見えているタイプでした。
かっこいいーーーー(*^ ^*)



荻野目慶子(シィヌ、ラシェル、看護婦)
美しくあだっぽく、だらしのない、身持ちの良くない、だけどものすごく母性的な女。
ゴッホみたいなタイプの男が執着しがちな女だなあ、と思いました。…彼女たちの実像は、どの程度わかっているんでしょうね。そんなに詳しく解っているってことは無いんでしょうけれども、すごくリアルな実在感があって、とても良かったです。

ラストシーンで静かに祈る看護婦が、「ジーザス・クライスト・スーパースター」のラストで十字架に祈るマリア(マグダラのマリア)を彷彿とさせて、その演出効果に感動しました。



今井朋彦(テオドール・ヴァン・ゴッホ)
気の弱いゴッホの弟。ひたすらに兄の才能を信じていながら、一緒に生活することはできない、哀れな男。ある意味、彼の存在と献身こそがフィンセントの精神を壊す一因でもあったという解釈があるので、なんだかひどく気の毒でした。
彼はただ、兄のために良かれと思って捧げただけなのに。……すべて、を。

ちょっと市村さんとは歳が離れすぎているような気もしましたが(汗)、私の抱いていたテオのイメージにぴったりで、いい人選だったと思います。気弱で常識人で、兄を愛しているけれどもそんなに我慢強いほうではない。そんな普通の、“弱い”人間。そんな彼が、とても愛おしく思えました。



銀粉蝶(炭坑の老婆、マダム・ルノウ、タンギイの妻)
私がコメントするなんておこがましい(汗)ベテラン女優の貫禄、とっくりと見せていただきました♪
炭坑の老婆は、ゴッホが道を歩き出すきっかけになる役なので、すごく印象に残りました。ハーグの港町の遣り手婆であるマダム・ルノウの嫌らしさも良かったし、タンギイの妻の、一見おとなしくみえるのに、強烈な存在感も素晴らしかった。
こういう人がいるから、芝居が面白くなるんですよね。うん、さすがでした。



大鷹明良(牧師、ワイセンブルーフ、画具屋のタンギイ)
この三役の中では、ハーグでゴッホを訪なうワイセンブルーフが面白い存在でした。ゴッホの才能を認めていながら、彼を守ろうとはしない常識人ぶり。
炭坑でのゴッホの苦しみを真っ向から否定する牧師とも、パリで貧しい画家たちを支援するタンギイとも違う、芸術を生み出す見者としての冷徹な意見。そんな一言一言に振り回されるゴッホの弱さが、ひどく可哀相に見えました。



原康義(モーヴ、シニャック)
ゴッホの従兄で、彼を支援していたモーヴ。パリ画壇で、スーラに続く点描画法の推進者の一人だったシニャック。どちらも、裕福で嫌味な人物として描かれていましたが、ゴッホとの対比が良く出ていて、面白い存在感でした。



さとうこうじ(ロートレック)
貴族の身でありながら、足の障害(小児麻痺?)によって社会的には抹殺され、芸術に生きたロートレック。「Confidents」といい、彼は当時から『偉大だけれども嫌味な芸術家』といわれていたんでしょうか?まぁ、家が家なので、金に困ったことはなさそうですが、絵そのものは認められていたのかなあ。
うーん、私、絵を見るのは好きなんですけど、当時の社会情勢とか彼らの社会的立場とかを知らなすぎですね(汗)。



渚あき(モリソウ)
美しかった!!滑舌もよく、裕福で権高い女芸術家が良く似合ってました。
娘役よりも、こういうどっしりと地に足のついた女役の方が似合いますね!宝塚時代よりもずっと格好良くて、素敵でした♪



斉藤直樹(炭坑のアンリ、ベルナール)
もともとダンサーさんなんですよね。動きがキレイで、ハンサムで声もいい。アンリの芝居も良かったです♪



荒木健太朗(学生)
「Studio Life」では小柄なせいか少年役が多いですけど、男っぽいゴツゴツした美貌なので、こういう“普通の青年”役の方が似合うなあ、と思いました。台詞回しとかもっと浮くかと思いましたけど、全然違和感無く、良かったです。思ったより出番は少なかったけど、カッコ良かった(はぁと)。



野口俊丞(炭坑夫、夫婦の客)
保可南(炭坑の女、夫婦の客)
二人とも、なんというか、しっかりした存在感がありましたね。タンギイの店に入ってきて「この絵の中のりんごを、一つだけ売ってくださる?」っていう夫婦が超おかしかった!!
…ゴッホたちが相手にしているのは、こういう人たちだったのか!?という驚きが新鮮(^ ^)。



「Confidents」を観た後、この時代の画壇については多少勉強したつもりだったのですが、またちょっと違う視点の物語だったので興味深かったです。

でも。

何はともあれ、「コンフィダント・絆」再演切望!…ってことで(^ ^;ゞ



コメント

nophoto
hanihani
2009年6月29日16:34

面白い話だったんですね、ゴッホとゴー:ギャンが同時期にこの世に生きていたって
すごい不思議な感じがします。

うーん、「コンフィダント・絆」再演希望に1票!

みつきねこ
2009年6月29日23:06

>ゴッホとゴーギャンが同時期にこの世に生きていたってすごい不思議な感じがします。

仰るとおりですよね……。同時期に生きて、そして出会った奇跡。
感謝しないといけませんね。

>「コンフィダント・絆」再演希望に1票!

ありがとうございます(^ ^)ことだまことだま♪