宝塚宙組新人公演「薔薇に降る雨」(東京宝塚劇場)の続き。




ジャスティンのフィアンセ、ヘレン(美羽あさひ)に、せーこちゃん(純矢ちとせ)
いやぁ、もう、本当にとっても良かった(はぁと)!
かいちゃん(七海ひろき)のところにも書きましたが、本公演と新人公演で一番違っていたのはジャスティンとヘレンの関係だったような気がするんですよね。
母親が張り切って作ったケーキを、「どうするの?」と訊かれて「…いらないんなら片付けるわ」というヘレン。その一瞬の躊躇い、ケーキを載せた盆を持ち上げようとする細い腕のしなり方、落ちた肩……ジャスティンとの気持ちのすれ違い。目を瞑ってやり過ごそうとするのに、つい怖いものを見てしまう。
うなだれた背中に零れ落ちる、抑えきれない不安と、不信。

本役のまさみちゃんは、もうちょっとこの場面はサラッとやっていたような気がします。少なくとも、私はあまり印象に残りませんでした。…何を観ていたんだ私(汗)。
まさみちゃんは、ここよりも、最初のカフェでのさりげない会話が印象に残っています。わがまま押し付けがましさが個性的で可愛かったので。

せーこちゃんは、逆にカフェのシーンは“ごく普通”なんですよね。素直にジャスティンの話を聞いているだけ。なんとも思っていない。…ジャスティンにとってへレンが空気だった以上に、ヘレンにとってもジャスティンは空気だったんじゃないかな、と思いました。だからこそ、彼の心がそこにないことに全く気づかないのだ、と。

カフェでヘレンと別れたジャスティンに、襲い掛かる「裏切り」のコーラスが、新人公演ではとても辛く聴こえました。へレンが一途にジャスティンを愛しているのに、ジャスティンが一方的に裏切っている、っていう話じゃないことが痛々しくて。
しかも、その歌が聴こえるのはジャスティンだけ。ヘレンには聴こえない。

…せーこちゃんのヘレンの、大人びた落ち着きと、子供のような脆さの同居。怖いものから眼をそらそうとして、でもそらしきれない。母親のせいにしているけど、本心はそうじゃないことを知っている。
言い訳はしているけれども、真実はただ一つ。
あたしはアメリカにはいけない。
この男に、人生を賭けられない。
この男を、信じきることができない。
……だから、行けない。

正塚さんは、男役にはあまり嘘を言わせない作家だという話を、以前(「銀ちゃんの恋」の石田さんとの比較で)書いたような気がしますが、思い返せば、娘役には結構嘘を言わせているんですよね。今作は、イヴェットもヘレンも結構な嘘吐きだと思うんです。どちらも、男と一緒に行けない理由を、親のせいにする。
理由は親への愛だとしても、結局は自分が選んだ途なのに。


オフィスでただ一人、灯りも点けずにジャスティンの帰りを待つヘレン。
ソファに埋もれた細い身体の、存在感のなさに驚きました。パーティーが終わってオフィスに戻り、着替えを始めようとするジャスティンの、頭の片隅にもいなかったヘレン。
口元に薄い笑みを刷いて、イヴェットの幸せを祈るジャスティンが、ヘレンに気づいた瞬間に浮かべた苦々しい笑み。彼はもう、イヴェットとの恋は乗り越えたつもりだった。ヘレンと二人で、夢を追いかけるために。なのに、今この瞬間に、俺は彼女のことなど忘れていた……その、事実が、彼を苛む。
ヘレンが彼を責める、一言一言と、同じ重さで。

かいちゃんのジャスティンは、とても優しい。
残酷なまでに、やさしすぎる。
やさしくて、正直で、残酷で。
ヘレンが壊れていくのを、おろおろしながら見守ってくれるので、ヘレンも思う存分、壊れることができる。

空気なのに。
空気だったのに。
空気を喪ったら、誰も生きてはいけないのに……。

泣くだけ泣いたヘレンは、きっとしばらくは落ち込むだろうけど、案外すぐにまた新しい恋をはじめられるんじゃないかな、と思ってみたりして。

…そう、もしかしたら、ヴィクトールあたりと?
なーんて、そんな妄想に走ってしまうほど、せーこちゃんのヘレンの絶妙なバランス感覚がとても好きです。



次の大劇場公演は、「カサブランカ」。
91期の野々すみ花ちゃんが演じるイルザを、新公で射止めるのは誰なんでしょうね。
ちさきちゃんはもう2作やっているから、、、、ラスト89期のせーこちゃん?すみ花ちゃんと同期のエリちゃん?92期のれーれ?それとも……?
その三人なら、誰がきてもすごく楽しみ。いえ、もちろん、他の人でも楽しみなんですけど(汗)、すみません、あまり知らなくて……(勉強中)。



ヘレンのママ(美風舞良)は、妃宮さくらちゃん。
難しい役だと思うのですが、なかなか良かったです。歌がなくて残念!
あまりに可愛いので、最後のご挨拶で並んだ時は誰だかわかりませんでした(汗)ママには見えないわ(汗)。

最初のクラブでの、公爵夫人の連れもさくらちゃんがやってましたよね?
なかなかの美人だし、曲者感があって、とっても良かったです♪



ジャスティンの秘書(?)モニーク(華凜もゆる)は、舞姫あゆみさん。
本役の華凜さんは、もの凄く個性的で素敵な不思議ちゃん、って感じでつくっていらっしゃいましたが、新公はちょっと思い込みの激しい可愛子ちゃんだったような?本役さんの、あのなんともいえない存在感はなかったですが、舞姫さんは舞姫さんらしくて、可愛いかったです。

その後ろであれこれと小芝居していた社員①(珠洲春希さんの方かな?)の光海舞人さんが、なんだかすごく目を惹きました。面白くて。
娘役さんは千鈴まゆちゃんくらいしかわからないのですが、相変わらず可愛いなあ☆もう一人、なかなか可愛いひとがいたような気がするのですが……あれは誰だったんだろう…。



会計士(七帆ひかる)は、星吹彩翔さん。
なんということもない役ですが、有能なデキる男って感じがしたので、良かったんじゃないかなあ、と。うーん、本公演を観て思っていた以上にしどころのない役だなあと思ってしまった…。
顔はしっかり覚えたし、お芝居が好きそうな雰囲気も感じたので、博多座を楽しみにしています♪




画期的な新素材を開発したのに、特許取得に失敗して夜逃げしたボヌー(十輝いりす)に、風羽玲亜さん。
十輝くんのボヌーは、なんだか凄い儲け役!!という感じだったのですが、新公は割と普通の役に見えました。
そうはいっても、風羽さん、やっぱりかっこいいなあ(今回、プログラムの写真は微妙に失敗っぽいけど…)。うん。達者な人ですね、彼女も。もう少し叫び芝居に走らないで緩急がつけられるともっと良かったかなと思いますが。


ボヌーの奥さん・アガサ(愛花ちさき)に、琴羽桜子ちゃん。
いやー、やっぱり琴羽さんの芝居は良いなあ~!ちょっと痩せた…のかな?険のあるお化粧が似合ってて、娘の世話と逃亡生活に疲れ、やつれた感じをうまく出していました。美人じゃないけど、役者として美しいひと。
喋り方にもう少し自暴自棄感があると良いんだけどな、と、これは本公演を観たときにも思ったのですが。もっと琴羽さん色を出しちゃっても良かったような気がします。




イヴェットに求愛する富豪・グザヴィエ(悠未ひろ)に、澄輝さやとさん。
……「抱擁の男」の方がカッコよかったし、印象に残りました……。
ともちんの役って難しいんですねぇ。なんていうか、独特の色香があるんだな、ともちんって。そういう、強制的に眼を惹くものがないと、難しい役ばかり……。


ジャスティンがグザヴィエと話しているところに現れる警官(風莉じん・蓮水ゆうや)が、雅桜歌さんと月映樹茉さん。
逆転裁判で目についた雅さん、やっぱり美形だわ☆
月映さんはやっぱり芝居上手だなあ~!貫禄があってよかったです。



その他の役では……
イヴェットの家の女中頭?(大海亜呼)は、美影凜さん。
滑舌もはっきりしていて良かった。大人っぽい美人ですね。

グザヴィエのボディーガードは、咲真たかねさんと松風輝さん。
咲真さんがたまちゃん(天羽珠紀)の役かな?滑舌がよくて、お、と思ったのに、、、、この人も卒業ですか(; ;)。なんだかなあ……。

せっかく「逆転裁判」で覚えた花音舞ちゃんとか瀬音リサさんとか、全然どこにいたのかわからなかった(涙)かろうじて、今回で卒業する萌野りりあちゃんが、コロスと女中に居るのに気づいたくらい(涙)。あ、もちろんクラブの場面のコンパニオンは視ましたよ♪眼福、眼福。

天輝トニカさんも、社員とかの大勢口だけでしたよね?なんだか勿体無いような気がします。
正塚さんだから、仕方が無いのかなあ(↓)




こんなところでしょうか。

よくまとまった、良い新公だったと思います。田渕さんの功績なのか、メンバーががんばったのか、両方なのか……多分両方なんでしょう(^ ^)。
本公演も、あと2週間。千秋楽までしっかりがんばって、舞台を楽しんでください。
卒業生のみなさまや、そのファンのみなさまにも、素敵な思い出となりますように。



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