宝塚大劇場にて、月組公演「エリザベート」を観劇してまいりました。



前回の「エリザベート」月組版から、ちょうど四年。
あれはサエコさん(彩輝直)のサヨナラ公演。トート=サエコさん、シシィ=麻子さん、フランツ=ガイチさん(初風緑)、ルキーニ=きりやん、ルドルフ=祐飛さん、というメンバーでの上演。

あれからたった4年とは思えないくらい、全く違う「エリザベート」だったと思います。


今回のメンバーも、皆それぞれに魅力がありました。
とにかくかっこいいトート、
とにかく優しいフランツ、
とにかく…なんだろうな、なんだかすごく愛おしくなったルキーニ、
そして、二幕は歌も芝居もとても良かった、スタイル抜群のシシィ。

ルドルフは役替りで、もりえちゃん(青樹泉)とみりお(明日海りお)を一回づつ観たのですが、どちらも美形で切なくて、とても良かったと思います。




……なのですが。





公演を観て、一番印象に残ったことは。

黒天使がかっこいい~~~っ!
でした…(汗)

黒天使にハマりすぎて、センターの芝居を観ている余裕が全く(!)なかった猫には、主要5役の感想なんて書けるはずもなく……
ホントにすみませんm(_ _)m。東宝では今度こそしっかりと観て、ちゃんと感想書きたいと思っています!




黒天使のメンバーは、84期の桐生園加がトップ。あとは大きく離れて90期の響れおな・宇月颯、91期の貴千碧・紫門ゆりや、92期の煌月爽矢・鳳月杏、93期の星輝つばさ、娘役の麗百愛(91)と蘭乃はな(92)の合計10名。
真ん中が二人居る場合は、だいたい上手が園加で下手が宇月だったような。で、だいたい園加の隣にまんちゃんがいて、宇月くんと響くんが並んでいる感じ(*^ ^*)。いやあん、幸せだったわ(はぁと)

園加は、場面ごとの表情が豊かで、ダンスも色っぽくて華やか。まんちゃんもどちらかというとそっち系統ですよね。ちょっと観客をおどしつけるような表情をしたり、切なげにシシィの方を視ていたり、人間味のある天使たちでした。

逆に、響・宇月チームはダンスも表情も『クール&シャープ』。特に宇月の纏う空気の“闇”っぷりは実に見事で、本来の「死天使」のイメージに近かったような気がします。
響くんは、黒天使としてはちょっと斬新なヘアスタイルに凝った化粧で、一瞬誰だかわからないくらいキレイでした。スタイルはそんなに良くないけど、ダンスのキレはシャープで格好良かった~。

ゆりやん以下の男役さんたちは、とてもよくがんばっていたけど、まだまだ上4人に比べると表情が甘いなーと思うところが多かったです。笑うと可愛くなっちゃうし、無表情にしようとすると「がんばってる」ふうに見えてしまう。(いや、実際必死なんでしょうけど…)
みんな背も高いし、スタイルに恵まれているぶん、もっともっと格好良くなれるはずだと思うので。東宝まで、いろいろ精進してくださいね♪

娘役さんは、麗もえちゃんが園加&まんちゃんチーム、蘭ちゃんは宇月&響チームに入っていた印象。とにかく、蘭ちゃんのクールな美貌の男前さが凄かった。
前回一人だけ黒天使に混ざっていた城咲あいちゃんは、明らかに回りより一回り小さかったんですが、今回はあまり思わなかったなあ。比較的、男役としては小柄な天使が多いから?


振付は、ずいぶん変わっていたような気がします。
「愛と死の輪舞」とか、「たった一人の人間なのに 俺を震えさせる」とトートが歌うと後ろの黒天使たちがいっせいにぶるぶる震えだすのが面白くてしかたなかったんですが(^ ^;、ずいぶん良くなっていたと思います。
でも……せっかくダンサーを揃えているのにこの振付?(T T)、という印象はあまり変わらなかったかなー。もっと全面的に変えちゃっても良かっただろうに、と思ってしまいましたが…(しょぼん)。








そして、次に。
私の今回の公演での目玉配役は、実は二人いました。

4年前の新公で演じた役を本役で担当する二人の母親。ルドヴィカとゾフィー

いやーーーー、もうね、ルドヴィカ(美鳳あや)が可愛くて可愛くて(*^ ^*)。
視野が狭くて自慢やのうぬぼれやで、慌て者のおっちょこちょいで、気分やで前向きで。
……本当に可愛い☆

新公では歌に苦労していたみっぽーですが、4年もたつと巧くなるものなんだなあ、と感慨深かったです。一番好きなのは、結婚式のラストに「あなたがいるなら嵐も怖くない」と歌いながら皇帝と寝室へ向かうシシィを、満面の笑みで幸せそうにうっとりと見送っているところ。
もう、「皇后の母」としての栄誉とか、なにかそういうものを想像して幸せに浸りきっている小者っぷりが物凄く可愛いんです!!(^ ^)。

そして、その隣で心の底から心配そう&不安げに見送っているマックス(越乃リュウ)との対比が素晴らしい☆
過去の公演では、マックスだけじゃなくルドヴィカもちょっと不安げに見送っていた記憶があるんですが、みっぽーのルドヴィカは、本当に“満面の笑み”で見送っていて(苦笑)。なんというのか、この母親のポジティヴさとバイタリティを、シシィはちゃんと受け継いでいるんだなあ~、と思ったんですよね。だからこその「私だけに」なのだろう、と。



そして、ヘレネ(萌花ゆりあ)が良いです♪
可愛くて美人でスタイルもいいのに、絶対にフランツに選ばれることはない(!)という絶妙なキャラクターが、本当にぴったりでした。雪組の涼花リサちゃんも、“可愛いけどドジ”みたいなキャラを確立して説得力をあげてましたけど、ゆりあヘレネの、なんとも言葉では表現できない“駄目だこの娘は…”という感じ、本当に絶妙でした。

しっかし、月組の誇る美人の一人・副組長の花瀬みずか嬢に「うちの娘もっとキレイ」と歌わせて、しかもその娘(羽桜しずく)が間違いなく超美人だというあたり、配役の妙というかなんというか………
いやぁ、いろんな意味で面白かったです。はい。



ちなみに、シシィの弟たちは、舞乃ゆかちゃんと都月みあちゃん。「HollywoodLover」組の二人。この二人がじゃれているのを観ているだけで幸せになれること間違いなしです。本当に可愛いし、半ズボンもセーラー服も金髪のマッシュルーム鬘も、本当に本当に良く似合ってる(*^ ^*)



バイエルン公マックスは、色男でした☆
いやあん、娘を口説いちゃ駄目よパパっ!!
……シシィがファザコンになるのも仕方が無いな、と思わせる男っぷりでした(*^ ^*)。いやー二枚目だ!バートイシュルへ行く途中の花道で、家庭教師(音姫すなお)とさりげなーくいちゃいちゃしているのもツボでした。
そして、そんなこと(知ってても)気にもしていないみっぽールドヴィカの男前っぷりも素敵。「うちの旦那は色男だから女が放っとかないのよね、仕方ない」くらいに思っていそう。あの夫婦、なんだかんだ言いつつ、実はお互い惚れきっているような気がしています。はい。

それにしても、シシィはファザコンだし、フランツはマザコンだし、、、
困った夫婦だなあ(T T)


そして。
シシィもヘレネも弟たち二人もまん丸顔で、みっぽーの輪郭はどんだけ優勢遺伝なんだ!?と思ってしまった私(^ ^;ゞ。ナホちゃんの輪郭なんてひとかけらも遺伝しちゃいねぇ…。
性格的には、父親から受け継いだボヘミアンの血が濃いはずなんだが。






「二人の母親」のもう一人は、私の中でミュージカル「エリザベート」の影の主役ポジにいる皇太后ゾフィー(城咲あい)。
こちらも、新公ではまるっきり歯がたたなかった印象だったのですが。
……4年っていうのは、観客からするとあっという間なんですけど、役者からすると凄く長い時間なんですね。
あいちゃんがこんなにも素晴らしい女優になっていたんだな、と、本当に感慨深かったです。

「強く~厳しく~♪」の低音の響きそのものは、ちづさん(美々杏里)よりは聴こえるけどハマコさん(未来優希)には敵わない、といったところ。ちづさんは低いところもきちんと歌おうとして声にならなかった感じでしたが、あいちゃんは歌を捨てて地声のまま、ほとんど台詞のように演じていましたね。
喉を壊さないか心配ですが、芝居としては良かったと思います。



面白いなあ、と思ったのが、ゾフィーがあいちゃんだったことで、フランツのキャラクターに納得しやすくなったこと。
あれだけ美人で華やかでデキる母親がいたら、マザコンになっても仕方ないよね、と素直に納得できた のです(←私だけ?)。



ガイチさんのフランツは、優しくて責任感に溢れていて、なのにシシィという国母にはどうしたってなれそうにない女を愛してしまった苦悩…という印象があったんですよね。
雪組のユミコちゃんも、方向性としてはガイチさんと同じで、ただ、となみちゃんが天使だったので苦悩が深まっていたというか(汗)、そんな感じだったのですが。

きりやんのフランツは、なんの疑いもなく“ママに任せておけば良い”と思っている…ような気がしました。
最初の謁見の間での、ゾフィーの指示に対するフランツの応え。
「許可する」あの一言台詞を、あんなにも甘く優しい声で語るフランツを初めて観ました。
心の底から母の指示に納得して、信念を持って命じる声。




それが。

次第にシシィへの愛が卓越しはじめる……その想いが溢れたのが、「鏡の間」なのだと。

「鏡の間」で、フランツははっきりと母親ではなくシシィを選ぶと宣言する。
このとき彼は、「母親ばなれ」をした自分を意識したに違いない。
つまり、この「鏡の間」での彼はエリザベートと共に勝者であり、美しい皇后と共に「自立した我」の自覚をも得て、ヤル気まんまん!!なのですね。
ガイチさんやユミコちゃんが、『国』よりもシシィを選び、それによって国が滅びる運命を受け入れた、あの絶望的な選択を、このときのきりやんはしていないと思いました。


二幕冒頭頭のハンガリー戴冠は、シシィの絶頂であると共に、フランツにとっても絶頂だった。
彼は彼で、「やっと歩き出した 私だけの道を/邪魔はするな!」と歌いたいところでしょう。

ただ彼は、シシィと二人で勝利したと思っていた。
けれども、シシィは自分ひとりで勝利したと思っている……そのすれ違いが切ない、「私が踊るとき」でした…。




あれだけの思い切った老けメークをしながらも、「女」を丸出しにしてシシィを憎むゾフィーが、とても魅力的でした。
「帝冠の恋」というコバルト文庫を先日ご紹介しましたが、あの気の強い、麗しのゾフィー姫がそのまま育った姿が、あいちゃんのゾフィーなんだろうと思います。
ただ、彼女はたぶん、ルドヴィカのような意味では息子を愛しきることができなかった…。
彼女の愛は、若き日に遣い果たされてしまっていたから。

あいちゃんのゾフィーを観て、「影の主役」じゃなくゾフィー自身を主役にした作品を観てみたい、と思うようになりました。あいちゃん、一度そういう、一人の人間の人生を最初から最後まで歩むような役をやってみてほしいなあ…。




おっと。まさかこれだけで長くなるとは(涙)(っていうか、そろそろ学習しろ)。
えーっと、、、重臣たちの素敵さとかウィーン市民の元気さとかは、また後日。



コメント

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ももた
2009年6月18日10:36

こんにちは。ずっと以前に鳳月杏くんの記事でコメントさせていただいたことがある、ももたと申します。

私もちょうど1年くらい前に「帝冠の恋」を読んで、すっかり「シシィよりゾフィ派」(苦笑)になってしまっていて、今回のあいちゃんゾフィーは観る前からすごーく楽しみにしていました。
本当に、おっしゃるとおり、

>あの気の強い、麗しのゾフィー姫がそのまま育った姿が、あいちゃんのゾフィー

だと思います。
だから、(ただでさえ配役の件などで判官びいきが入ってしまっているせいもありますが・・・)ものすごくゾフィに肩入れして観てしまって。

「帝冠の恋」のラストのバート・イシュルの場面で、若い2人に昔の自分たちの面影を重ね、彼らにこの国の将来を賭けてみようと決意したゾフィーの想いを知っていると、もう、フランツとシシィが歯がゆくて・・・(笑)
そりゃ、期待した嫁があんなだったらいろいろ口出ししたくもなるだろうな、と同情してしまいます。

そうそう、リヒテンシュタインは、「帝冠の恋」の中でゾフィーの生涯の親友となった忠実なリヒテンシュタイン=エステルハーツィ伯爵夫人と同一人物でいいんでしょうかね?
すーちゃんのリヒテンシュタインもまた、あの小説のイメージにぴったりでした。
今までの「エリザ」では、ゾフィーは皇太后でリヒテンシュタインはあくまでその臣下っていうイメージだったけど、今回は、あいちゃんとすーちゃんが同期だけに、身分の差を超えた2人の信頼関係みたいなものがより強く出てた気がするのですが・・・いかが思われましたか?

キリヤンフランツの第一声の「許可する」の甘く優しい口調も、ねこさまのご意見に全面的に同意です。
初見で聴いた時は、震えました。
黒天使の素晴らしさは言うまでもないですよね。

長文コメントで申し訳ございません。
感想続きも楽しみにしております。では。

みつきねこ
2009年6月19日1:13

ももた様
コメントありがとうございます!読んでいただけてとても嬉しいです。
あいちゃんのゾフィー、本当に良かったですよねっ(*^ ^*)。私も、あのバートイシュルでのフランツとの会話に篭められた想いを考えると、あの息子夫婦は本当に歯がゆいんだろうなあと思いながら観てました。…息子と嫁にしてみれば、「そんなの母上が勝手に決意しただけじゃないか」って感じなのかもしれませんけれども。

すずなのリヒテンシュタインは、まんまエステルハーツィ夫人でしたね!過去のリヒテンシュタインは“ゾフィの部下”という感じで、二幕ではシシィに同情的だった人も多いのですが、すずなは最後までゾフィとの友情の絆を貫いたな、と思いました…。
やはり、同期の絆は固いのかもしれませんね(^ ^)。

ああ、やっぱり「エリザベート」は面白いですね☆
っていうか、あの時代のウィーンそのものが、本当に興味深い都だったんでしょうね……。