心よりお悔やみを申し上げます。



中島梓さん=栗本薫さんとして、いったい何冊の本を書かれたのか、誰か数えた方はいらっしゃるのでしょうか?
56年と言う、今の時代に決して長いとは言えない一生の間に、いったい何人分のエネルギーを費やされたのか。本だけではなく、ネットでも精力的に活動して巨大コミュニティを運営し、舞台脚本を何本も書き、演出もし、音楽も創り…

二つのペンネームを駆使して次から次と本を出し、さらにネットにも、毎日毎日大量の文字をアップされていた、偉大なるクリエーター。



練りに練ったものではなく、ただ身体の裡からあふれ出してくる“何か”を、叩きつけるように形に成していく彼女のクリエートは、時として粗が多く不完全なものに見えたこともありました。そんなこともあって、ここ数年はあまり読んでいなかったというのが正直なところです。

だけど。
あれだけのパワーとエネルギーを持つクリエーターは、しばらく現れることはないかもしれない、と思うと、とても寂しくなります。

何度も癌の手術をして、闘病記も書いていた。なのに、私は彼女がこんなに早く儚くなるとは夢にも思っていなかったみたいで。
還暦、いえ米寿も過ぎてからになるかもしれないけど、今まで勝手気ままに溢れ出てきて彼女を煽りつづけた“才能”が落ち着いて、彼女の感性がじっくりと物語に向かい合う時間をが来る日を、ただひたすらに待っていたような気がします。


有り余る“創造”のエネルギーが、彼女の生命を削っていたことは、今にして思えば明白なのに。





私が一番最初に読んだ彼女の作品は、たぶん「やさしい密室」だと思います。図書館で、本棚の隅から隅まで片っ端から読んでいた時代なので、順番はあまりよく覚えていませんが……
その頃出ていた本を片っ端から読んで、嵌ったのが「心中天浦島」でした。「グイン・サーガ」も「ぼくらの時代」や「猫目石」などの推理小説も好きでしたけど、やっぱり彼女は、初期のSF短編に秀逸なものが多いと思います。「心中天浦島」所収の「遥かな草原に…」も印象的でしたし、「レダ」も好きだった(*^ ^*)。



「心中天浦島」については、後年「さらしなにっき」所収の「ウラシマの帰還」と、それに関する後書きの著者コメントを読んで哀しい思いをしたりもしましたが……(T T)。でもそれも、ある意味“良い思い出”だったりします。作品は、発表された瞬間に作者の手を離れて読み手のものになるんだな、と納得したりして。
自分が創った物語世界に執着しない栗本薫は、やはり巨匠たる器だったってことなのだろうな、と、今では思います。(自分はなかなかそんなふうに思い切れない…)




話がちょっと飛びますが。

先日、シアター1010で、「The Game Of Love ~恋のたわむれ~」を観劇してまいりました。


ミュージカル俳優の岡幸二郎さんが主演格(友人役の今井清隆さんとW主演みたいな感じでしたが…)で、5人の“美女”(寿ひずる、彩輝なお、紫城るい、菊池美香、小笠原一葉)たちとの“恋のゲーム”の思い出をたどる…みたいな作品。
作品としても大変よく出来た実に面白いミュージカルで、キャストも皆嵌り役で、こんな短期間の公演だったことが悔やまれてならない…という思ったのですが(涙)。


ちょうど日記で感想を書こう!と思った日に、直接は全然関係ないんですけど、観劇したときには思いもよらなかったニュースが飛び込んできたことに驚きました(T T)

岡さんと中島さんの間には、(私にとっては)浅からぬ縁があるので。

……岡幸二郎さん、といえば、まずは「レ・ミゼラブル」のアンジョルラス!という方が今でも多いかと思うのですが。
猫にとって、アンジョルラスの次に来たのが、ミュージカル「グイン・サーガ ~炎の群像~」のイシュトヴァーン、でした。中島梓作・演出のこの作品は、、、ご存知ない方も多いんでしょうねぇ…。今にして思えば結構豪華キャストだったんですが。

作曲もほとんど中島さんご自身がなさってて、イシュトヴァーンのソロナンバー「消えた蜃気楼」は本当に本当に本当~~~っ!!に!!素晴らしい名曲でした。
歌った岡さんの才能ももちろんですけれども、本職ではないはずの中島さんのメロディラインが本当に美しくて、役にも役者にもぴったり合っていて……本当に才能のある人なんだなあ、としみじみ感動したんですよね。

そんなご縁もあって、私は岡さんを見るたびに私はイシュトヴァーンを思い出すので、このタイミングでのニュースに、とても驚いたのでした…。


#宝塚ファン的に、ミュージカル「グイン・サーガ」について「ナリス様は紫苑ゆう様しかないって作者自ら書いてたくせにっ!!」と怒りの対象だった、ってのは本当でしょうか?
あ、ちなみに、朝香じゅんさんのアムネリスがとても綺麗で素敵でした(*^ ^*)♪

#中島さんからは逸れますが、アンジョルラス、イシュトヴァーンと来て、猫の思う岡幸二郎ベスト3の3つ目は、「真説・カサブランカ」だったりします。……どなたにもわからない話ですみません(汗)。






一人の偉大なクリエーターの死去を悼み、完結していないシリーズたちの今後に心を痛めつつ、
ただただ昔の本を引っ張り出しながら、ご冥福をお祈り申し上げたいと思います。

たくさんの素敵な物語たちを世に送り出してくれて、本当にありがとうございましたm(_ _)m



コメント

nophoto
hanihani
2009年5月29日19:19

私は栗本薫さんのファンでした。

で、岡さんのイシュトバーンってシアターアップルでやったミュージカルじゃありませんでした?
中島さんが作曲もされたとプログラムにあってすごいなぁと驚いたのが
思い出です。キャストも選んでましたよね、ちゃんと。

さらに、「The Game Of Love ~恋のたわむれ~」もオシャレな公演でした。
岡さん、今井さんで観にいったのですが・・・
いーちゃん、あなたって最高だぁ!!
終演後のトークショーも楽しかったです。治田さんはいまやすっかりトークショーの司会者ですね。
さえちゃんが高い声で歌っていて、なんかすごくキレイで出てきた瞬間に
「誰?」と、驚いちゃいました、ふふ
るいるいは自分の場面も、そしてトークも本当に可愛かったですし、
お仕事が順調に続いていますよね。

北千住に詳しくないので、丸井のレストランで食事するのですが
毎回おいしくなくて悲しかったのです。
ところが、3Fかな?雑貨屋さんのついてるcafeがあたりでした。
色々周囲の人のをみても、どれも美味しそうでしたよ~

みつきねこ
2009年5月30日1:30

>岡さんのイシュトバーンってシアターアップルでやったミュージカルじゃありませんでした?

だと思います。たぶん。
『グインの出てこないグイン・サーガ』でしたが、キャストも豪華で面白かったですよね♪ヴァレリウスの駒田はじめさんは、あれで初めて存在を知りました。

アムネリスのルコさんのほかにも、OGではリギアの福麻むつ美さんがいらっしゃって、本当に素敵だったし、小鈴昌記さん、大谷美智浩さん、小関明久さん、原田優一さんら、後のレミゼメンバーがたくさん出ていました。当時はなんとも思いませんでしたが、今になって栗本氏の人脈の広さと目の確かさに感心してしまいます


『The Game Of Love ~恋のたわむれ~』も、良かったですよね!
公演も短かったし、ネットでもあまり話題になっていない公演ですが、とても楽しめました。個人的には、サエちゃん超ブラボー!で幸せ(^ ^)音楽も良かったし、キャストも良かったし、また再演してほしい(祈)
私もトーク付きの回に行きたかったなあ…。

nophoto
通りすがりで失礼致します。
2009年5月30日3:33

栗本薫氏の小説大好きでした。
此所見て知りました。薫氏の訃報。
完結後にまとめ読みしようと思っていたグインシリーズ。
最近チェックしてないですが、未完のままなのでしょうか。。。

驚きのあまり、書込してしまいました。

みつきねこ
2009年5月31日0:36

はじめまして!コメントありがとうございますm(_ _)m..

グイン・サーガは、今年の4月に出た126巻「黒衣の女王」が最新巻で、まだ完結のきざしは無いみたいです(私も読んでいませんが)
せめて構想ノートみたいなものがあれば出版してほしいですね!すべての伏線が解き明かされることはないでしょうけれども、いくつかの重大な謎だけでも知りたい……。