花組全国ツアー公演「哀しみのコルドバ/RED HOT SEA2」。

本当は、お芝居についてはもう少しこなれたのを観てから書こうと思っていたのですが、とりあえず“初見の印象”を残しておきたいと思います。
あまり深く考えていませんので、ご容赦くださいませ。




まとぶんのエリオは文句なく格好良かった!
初回はカポーティには弄ばれちゃってましたが(^ ^)、二回目は良かったし。闘牛士の衣装が良くお似合いで素敵♪


ただ、本来エリオってもう少し“飛びぬけた”存在感みたいなものがあってもいいんじゃないかな、と思いました。
回りの若者たちとはレベルが違うっていう感じがほしい。現実にも81期で“トップスター”のまとぶんと、88期以下の、せいぜい“新進スター”とか“若手スター”と呼ばれるメンバーなわけですから、それだけの差を見せ付けてほしかったなあ……、と。

まとぶんのエリオは、心が熱くて、思いやりがあって、優しくて、すごくいい“兄貴”なんだけど……なんていうのかな、「黙って前を歩く」タイプには見えなかったんですよね。
わいわい騒ぎながら「一緒に走ろうぜ!!」みたいな(←例えが古い)、熱血系のリーダーに見えたのです。




初日の感想でも書きましたが、そもそもこれは、ものすごくサヨナラ色の強いお芝居だと思うんです。
初演はわかりませんけど、今回の脚本は再演を参考にしたものみたいですし、そういう前知識が無くても、若いマタドールたちがエリオの選択を責める場面のやり取りをみればそういう印象を抱かないわけにはいかない。

で。若い彼らに「道標を喪って、俺たちはどうしたらいいんだ!」とまで言わせている以上、エリオと他のメンバーには、立ち位置にある程度差がないとおかしいんです。「皆の憧れ」である「エル・マタドール」グラン・エリオ、という位置にいてあげなくてはならない、その重圧とプレッシャーに負けない輝きが、必要だった。
それこそ、「My Dear New Orleans」でのトウコさん←→礼音くん以下と同じくらいの差があっても良かったんじゃないか、と。



そういうのは元々のキャラクターの問題もあるし、今のままでも、話が成立しないわけではないので、別にいいんだよ、とも思うんですけどね。
熱血で優しいまとぶんは、素直に「素敵だなあ~」とうっとりできるし(*^ ^*)。


でも。
たとえば、ビセントの行動を見ながら、エリオが「俺は絶対にあんなことはしない」とか言ったりすると、つい「いや、お前は絶対同じことするからっ!!」 とか突っ込みたくなるわけですよ(苦笑)。



もちろん、最終的にエリオは“ビセントと同じこと”をしてしまう、という物語なので、間違ってはいないんですが……
柴田さんの描いたドラマは、『絶対にそんなことをするはずもなかった、冷静な(責任感のある?)男が、恋ゆえにそういう行動に走ってしまった』っていうものだったんじゃないのかなー?、と思ったのです。
……違っていたらすみません(汗)。





なんでそんなことにこだわっているのか、というと、ロメロ役が二番手になっていたから、なんですよね。

初演は、ビセントの日向薫さんが二番手、フェリーペの紫苑ゆうさんが三番手…だったんですよね?
実際、観ていてもたしかに、ビセントの方が物語の本筋に絡む役どころで、良い役だと思いました。ロメロも本筋には絡むけど、「ロメロのエピソード」が無い。とにかく彼は「エヴァのパトロン」であるという現実のみに留まって、過去(エヴァとの出会いとか)は一切語られない。
たしかにエリオの恋敵ですけど、そもそもエリオとエヴァの恋が実らないのはロメロのせいではないわけですから。

むしろ、ロメロは最後に二人の恋の行く末を見届け、語り継ぐ立場にたつことになる。



……この人の印象は、立ち位置がだいぶ違うけど「うたかたの恋」のジャン・サルバドルに近いのでは?と思いました。
柴田作品によく出てくる、「主人公を語る」語り手、という存在。

この役が二番手に来るのは、それだけ「エリオ」の存在を大きなものにしたいんだろうな、と思ったんです。
ビセントには、彼自身のエピソードがあるから、彼の存在が物語の中で大きくなる。でも、ロメロはただエリオを語るためだけに居るんです。
彼にはエリオを語ることができる。
…いやむしろ、彼にしかエリオを語ることができない。ロメロは、エリオに相対する位置に立つ唯一の男だから。
ビセントも、他の若い仲間たちも、ただ『輝ける星』『遠い目標』でしかないエリオのことを語ることはできない。
アントンは、逆にあまりにも上すぎて、これまた語るのは難しい。



結局、この「哀しみのコルドバ」という物語は、エリオの物語なわけです。
ロメロだって、別に狂言回しとして彼の人生を説明するわけじゃない。ただ、最初と最後に惜別の言葉を贈るだけ。
でも、その言葉を語る権利があるのは、ロメロだけ。
だから、彼が二番手になる。他の人には出来ないから。



今みたいに、エリオがすっかりチームの一員として楽しそうに動いてしまうと、最後の惜別の言葉もロメロじゃなくてビセントなりぺぺなりバシリオなり、そのへんの誰かが言えばいいじゃーん、とか思ってしまうのですが。
やっぱり、脚本的に考えるとロメロが言うのが自然。だから、まとぶんにも、もう少し『周りのメンバーとは格が違う』孤独感があった方がいいのではないか、と思ったりしたのでした…。



いやあの。
なんかいろいろ理屈をこねてますけど(汗)、私は、まとぶんには本当は孤独が似合うんじゃないかと思っているのですね。
優しいけど、あたたかいけど、オラオラ(^ ^)だけど、ちょっと周りに壁がある感じ。

中日「メランコリック・ジゴロ」がそんな印象だったのもありますし、「花のいそぎ」で背負っていた孤独の影がとてもしっくりきたし。
実は「ガイズ・アンド・ドールズ」とか、似合うんじゃないかと思っています。……駄目ですかね(^ ^;ゞ



あ、でも、苦言が一つ。
台詞の語尾が早口になりがちなのと、感情が高ぶったときに台詞の最後を切り捨てるように言うのは、やっぱり悪い癖のような気がします。
台詞がすごく一本調子に聞こえるし、感情的な乱暴な台詞に聞こえてしまう。本当に感情が高ぶったときのキメ台詞だけならいいんですけど、ちょっとしたことでもそれが出るのがすごく気になる。
エリオは落ち着いた大人の役だから、あんまりああいう喋り方をしないと思うし。

メランコリック…ではあまり気にならなかったのですが、トマス、タムドクと増える一方なので、ぜひこの機会に気をつけて欲しいです!






で、リカルド・ロメロ。

常に上から目線の貴族らしい傲慢さはあるけれども、あくまでも誠実で生真面目な、騎士道精神にあふれた男。

いやあ、格好良かったです。
『立っているだけで絵になる男』って本当に居るんだなあ、と、惚れ惚れ(←贔屓目)

もう少し、エリオとロメロの魂のふれあいを描いてほしかったな、と思ったくらい、立ち位置の違う二人の男はどちらも魅力的でした。
なんというか。ちょっと違うけど、「キーン」のプリンス・オブ・ウェールズとキーンの関係を連想したんですよね……。

エリオは、「貴族」であるロメロに対して、特に何の感慨も抱いていない。
憧れも、羨望も、感謝も、むろん、憎しみもねたみも、怨みも、恨みも、何ひとつ。
彼には「マタドール」という職業を通して得た確かな実感と、そして栄光があるから。彼には自信がある。金持ちの貴族のパーティに呼ばれて、「すげぇ!」とは思っても、畏まったりする必要がない。それは彼にとっては“別世界”だから。「来てやったぜ」と思うほど傲慢ではないけれども、彼らの仲間入りをしたい!とか、なにがしの金を引き出してパトロンに…とかは考えていない。

それに対して、ロメロには「エル・マタドール」であるグラン・エリオへの憧れと、「卑しいマタドール風情」である同じ男への蔑視、両方の感情がある。髭はつけていても(超男前なんですよコレが!!/壊)、年齢的にはそんなに上っぽくつくっていないのは、この「憧れ」を素直に見せるためなんだろうな、と思いました。
それでも、エリオの前世代のアントン(組長)が彼にとっては絶対的なスターで、エリオは次世代だ、というのははっきりと見せつつ、「アントンの技を受け継いだエリオ」というスタンスで応援している。……とっても正しいタニマチの姿なんですよねぇ(^ ^)。

そういう、ちょっと微妙な男心を、少ない出番と動きで見せていくのは、難しかったと思うのですが。
……祐飛さん、さすがでした。うん。存在感の重さと甘さのない折り目正しさが、見事でしたわ。トップになってしまうとこういう役はやれないので、最後に観ることができて嬉しいです♪






彩音ちゃんのエヴァは、前半の大人っぽい方向の役作りで最後まで通したほうが魅力的なんじゃないかと思います。すぐに可愛くなりすぎる。っていうか、全体に甘すぎ。あれじゃあロメロがいたいけな少女を無理矢理さらってきた悪人みたいじゃないか(涙)。
エヴァは無体なことをされた純真な乙女じゃないわけで。彩音ちゃん、あの名場面「愛の無い結婚」のクールなキャラを忘れないでいてほしいです…。


みわっちのビセントは、みわっちの優しさがにじみ出ていてとても魅力的でした。きらりんとのラブシーンも色っぽく切なくて、回を重ねるごとに良くなりそう。

一花ちゃんのアンフェリータも良い役でとても可愛くて似合っていたんですが、ちょっと軽やかすぎたかな。歌は、ちょっとマイクの位置を見直したほうがいいかも。
れみちゃんのソニアも、ちゃきちゃきした下町っ娘らしさが出ていて良かったです。さりげなく母親を庇う仕草がとても可愛い(*^ ^*)。もともと凄い美人なんですけど、髪型はまだ工夫の余地がありそう。

京さんのエリオママは素晴らしい。絵莉さんも、ぜひ千秋楽までに京さんに太刀打ちできるよう、がんばっていただきたいです。



王子(眉月凰)のセバスチャン伯爵は嵌ってました。かっこいい(*^ ^*)でも、ちょっとロメロとキャラが被る感じはあったかな?ビセントが「法務大臣(?)に逆らったんだから、(いくら正規の決闘だったといっても)今後はちょっとしたことで仕返しされるに違いない!」みたいなことを言って何もかも捨てて逃げるんですけど、観ていて「いや、王子は紳士だからそんなことしないと思うけど……」って思っちゃったんですよね(^ ^;ゞ。
それだと話がおかしいので、もう少し貴族のいやらしさを出したほうが良いのでは、と思います。


フェリーぺのめおちゃん(真野すがた)は、すっきりとした佇まいがロメロの静けさと似合ってて、「親戚」っていうのが納得でした。ホントにコスチューム似合いますねー!
とりあえず、決闘がなし崩しに終わった後、ロメロにマントを着せ掛けるフェリーぺが超萌え(←日本語間違ってるよ!)。ある意味似合うよなあ、この二人…。



百花繚乱な娘役さんたちも、役として目立つ役はあんまり無かったけど、2,3人で喋る場面がたくさんあって、皆とても可愛かったです。聖花まいちゃん、はるちゃん(天宮菜生)、(華月)由舞ちゃん、遼かぐらちゃん、瞳ゆゆちゃん、白姫あかりちゃん、花蝶しほちゃん、、、、みんなみんな、本当に可愛い(はぁと)。


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