花組東宝劇場公演「太王四神記」について。
第8場 ヨン・ガリョ邸
いきなり下手に可愛い女の子たちが現れ、踊っているところから始まる場面。
宴に華を添えるため、選りすぐりの侍女たちを余興に踊らせてみた…みたいな設定なんでしょうか。このメンバーだと銀ちゃんチームの菜那くららちゃと桜帆ゆかりちゃんがかろうじてわかるくらいかな。…がんばって覚えなくては。
本舞台に光が入ると、ヨン家のメンバーと宴の客---各部族の族長たちが登場。
ヨン家(ヨン・ガリョ)は、五部族会議のリーダー的な地位にあるようですね。大和朝廷における蘇我氏みたいな感じなのでしょうか。しかーし大和朝廷では、蘇我氏の人間は王にはなれない(娘を王妃にして、王妃が王の死後王位を埋めることはできても、その子供は王になる権利がない)んですけど、高句麗は違ったんでしょうか…。
招く側は、ヨン家の主・ガリョ(夏美よう)、奥方セーム(花野じゅりあ)。
招かれたのは、各部族の長(ソノ部族長・眉月凰、スンノ部族長・紫陽レネ、カンノ部族長・夕霧らい)。
…ちなみに、チョ・ジュド(紫峰七海)は明らかに「招く側」なんですけど、彼はヨン家の家司なんでしょうか。それとも、他家の貴族で、ただヨン家側についているというだけなのでしょうか…。
3部族の長に対する態度がかなり上から目線なので、ヨン家の家司ってことはないような気もしつつ、歴史的には、王宮で強大な権力を持つ家があると、そこの家司が王家直参より立場が上になるのも良くあるコトなので、なんとも言えないですよねぇ。
こういう、細かい人間関係の積み重ねが、ドラマには描かれていたんだろうなあと思うんですけどねぇ……本は読めても、映像は無理だわ私(涙)。
えっと、理屈はおいといて。
青・黄・緑の色鮮やかな衣装に身を包んだ長たちが皆素敵です(はぁと)。
それぞれの色の持つ意味については以前ちらっと書きましたが、なんだか、そんなことどうでもよくて、それぞれのキャストに一番似合う色を着せたんじゃないか、と思っちゃいました(^ ^)。
すっとした二枚目の王子には、クールでシンプルな藍の衣装。髪もすっきり下ろして、見ようによっては3人の中で一番若々しい。上級生だけあって口火を切るのは彼が多いんですが、重みがあって素敵です♪
貫禄のある男前なレネさんには、ちょっと派手目な山吹色の衣装。髭も濃い目で、ちょっと南方系?とか勝手に思っています。台詞はそんなにないんですけど、芝居巧者だけあって小池さんに頼られているなぁと思います。彼が入っているから、族長たちの芝居はすごく安心して観ていられる♪
そして、可愛い童顔のらいらいは、明るい緑の衣装に作りこんだ髪、作りこんだ髭で、物凄く作りこんだ“中年男”を演じています。……色っぽいんだこれが(*^ ^*)。なんだか、なまめかしいの。声が高いせいか、若くして家を継いだ青二才みたいにも見えるんですけど、あまりにもオジサマの色気がありすぎて、ちょっと年齢不詳な感じです(笑)。でもカッコいい!!
……つい数ヶ月前はマコトだったなんて想像もできない変わりっぷりで、観るたびにびっくりするんですよね。(らいらいより、あの「二枚目イルス」がトメさんだったコトの方が衝撃的だけど)
3人とも、美人でスタイルよくて衣装映えするメンバーですよね☆意外と若いんですけど、よく健闘していると思います。組長のヨン・ガリョに位負けしないで立てているんだから大したもんだ!
チョ・ジュドのふみかちゃんは、立場はいまひとつよく判りませんが、ヨン・ガリョにとっては頼りになる参謀、って感じなんですよね?情報を集めてきて、打つべき手を考えてくれる人。
ホゲがヨン家を継ぐときには、もしかしたらイルスがその立場に立つのかもしれません。……そう思うと、ちょっと悶えてしまう(汗)。
この宴の目的は、具合の悪いヤン王が近く逝去することを見越して、その後の族長会議での後継者決めの流れを、あらかじめホゲ即位の方向に誘導しておこうというもの。
無論、酒だけではなく、お持ち帰りいただく金塊とか、そういうお土産もご用意しているでしょうし、強大な西域の商人とのつながりを見せ付けておこぼれの期待をもたせ、とにかくヨン家について損はないと思わせる。
チョルロ部族が反対したとしても、3家がヨン家につけば問題ないのですから……。
話をそちらへ持っていこうとするガリョ&チョ・ジュドの老獪さと、あまり深く考えずに「うちの息子」自慢をし始めるセームの可愛らしさが、たまらなく素敵です☆
宴が盛り上がっているところに、侍女が入ってくる。
「奥方さま、タムドク王子がお見えです」
取次ぎを待たずに、タムドクとコ将軍があがりこんできて、人払いを願う。
まぁ、ここで説明されるセームの行動は、無計画にもほどがあるんですけどねぇ…。
最初、医者に王家の証の指輪を与えたセーム。指令はおそらく、「兄上の命を縮め参らせよ」。
なので、医者は薬草茶にトリカブトを仕込む。お茶なんだから多分葉っぱを使ったんでしょう。葉は根に比べて毒性が弱いし、直接食うんじゃなくて煎じたものをさらに煮出して飲むだけで、そう簡単に死ぬはずがない。トリカブトは激烈な急性毒ですが、慢性毒としての効きはそんなに良いものではないので。
具合は悪くなったものの、なかなか死なない兄。なので、これまたヨン家の紋章入りの金を形のままで与え、「もっと強烈な毒」を飲ませるよう依頼をした。
頼むから、大事な息子のためにも、もう少し頭を使ってください>奥方様
なぜそんな杜撰な計画で今までばれなかったのか疑問。ヤン王は、人間不信がひどすぎて側近がいなかったんでしょうか。少なくとも、愛されて尊敬されている王なら、こんなことにはならないよなあぁ……。
この場面を見ながらいつも思うことがあります。
セームは、息子(ホゲ)を愛しているんだろうか?
彼女にとって、ホゲは自分の分身であり、自分が女の身であったが故に果たせなかった宿願(王になる)を果たすための道具だった。
可愛くて優秀で勇猛な息子を自慢には思っても、それは、騎馬兵が立派な愛馬を愛するのと同じ気持ち。そう、彼女は母性のない女だと思うのです。いつでも自分が一番で、息子に対しても見返りを求めるタイプ。愛してあげるから強くなりなさい、愛してほしいなら王になりなさい。王にならないあなたには何の価値もないわ、と……。
これがじゅりあの個性なのか、セームの元々のキャラクターなのか判然としませんが、私としては、セームにじゅりあを配した時点で小池さんの狙いだったと思いたいところです。
生まれて三日で母を亡くし、政務に忙しい父を遠く見ながら一人寂しさを噛み締めていたタムドク。
若く美しく高貴な母に構われ、可愛がられ、ペットのように世話をやかれて、でも「愛されて」はいなかったホゲ。
二人の少年が出会ったときには「君が王なら僕は将軍になる」と言ったホゲ。
たぶん、高句麗という国にとっても、それが一番幸せな形だった。紆余曲折の末、ふたたびタムドクの胸の中に戻ったホゲは、もう一度同じ歌を歌う。人々の幸せを望むなら、それが一番良い形だった、と気づいて。
でも。
この場面の前、大人になったタムドクとホゲは、お互いに愛し合い、許しあいながら、それでも「君が王なら僕は将軍になる」とは言ってあげられなくなっている。自分自身の気持ちとしては言いたくても、周囲の思惑や相手の気持ちが読めてしまう優しい二人の青年は、お互いに相手に対しても自分に対しても嘘を吐くしか、ない。
王位を継ぐために学ぶべきことは多く、それに追われるあまり「普通であること」に憧れを抱くタムドク。
母に愛してもらうには王になるしかなく、そのために塀の上で一人自主練を繰り返していた、ホゲ。
「君が王なら、僕は平民になる」
大臣にも、将軍にも、なってあげられない。君を喜ばせるためならそうしてあげたいけれども、多分、無理なんだ……だから。
俺がお前を疑うなんて、あるわけない!」
そうさ、あるわけがないんだよ、……君と僕と、この世にただ二人だけでいられるのならば。
そうしてタムドクは、親友の母、自分の叔母の胸に刃をあてる。
あなたがホゲを愛しているなら、彼の名誉をお守りください。
……ホゲを、あなたの息子を、愛してあげてください、と。
「流言飛語を懼れ、医者は極刑に処しました」
無言でセームに自決をほのめかしながら、タムドクは急いで邸を出ようとする。
ホゲが帰ってこないうちに、と。
……願いも虚しく、ちょうど帰ってきたホゲにばったり出会う。
「どうした?」
屈託のない笑顔で話しかけてくるホゲ。この二人は、ガキ大将ともやしっ子、に近い関係なんだろうなと思うんですよね。ホゲはどちらかといえば支配的な攻めキャラで、騎馬隊長のチョク・ファンがつっかかったときも庇ったように、今までずっと弱っちいタムドクを外部の暴力から守ってきたんだろう、と。
彼は、タムドクが実は自分と同じチュシンの星の許に生まれたことを知っているし、武芸も本当に女しか相手にならないほど酷いわけではない(自分には及ばないにしても)ことも知っているのだから。
タムドクは、本当の本気でホゲと刃を交えたことがないことは自覚しているにせよ、基本的にはホゲの言うとおりにして生きてきた。それがこのとき、初めてホゲに秘密を持つわけです。
自分が本来ホゲより上の立場(皇子)であること自体も長い間彼の瑕であったのでしょうけれども、今はそれにホゲの母を奪ったという秘密が加わる。
常に自分の前に居て、向かい風から守り、自分を引っ張ってくれていたホゲを、超えたくない。
このときのタムドクは、まだほんの子供なのです。
一人で街に出たことがない。
一人で城の外に出たことがない。
まだ父親の腕の中から出たことがない、子供。
そして。
ホゲもまた、この時点ではなにも気づいていない。
タムドクの闇にも、
……自分のうちの深い闇、にも。
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第8場 ヨン・ガリョ邸
いきなり下手に可愛い女の子たちが現れ、踊っているところから始まる場面。
宴に華を添えるため、選りすぐりの侍女たちを余興に踊らせてみた…みたいな設定なんでしょうか。このメンバーだと銀ちゃんチームの菜那くららちゃと桜帆ゆかりちゃんがかろうじてわかるくらいかな。…がんばって覚えなくては。
本舞台に光が入ると、ヨン家のメンバーと宴の客---各部族の族長たちが登場。
ヨン家(ヨン・ガリョ)は、五部族会議のリーダー的な地位にあるようですね。大和朝廷における蘇我氏みたいな感じなのでしょうか。しかーし大和朝廷では、蘇我氏の人間は王にはなれない(娘を王妃にして、王妃が王の死後王位を埋めることはできても、その子供は王になる権利がない)んですけど、高句麗は違ったんでしょうか…。
招く側は、ヨン家の主・ガリョ(夏美よう)、奥方セーム(花野じゅりあ)。
招かれたのは、各部族の長(ソノ部族長・眉月凰、スンノ部族長・紫陽レネ、カンノ部族長・夕霧らい)。
…ちなみに、チョ・ジュド(紫峰七海)は明らかに「招く側」なんですけど、彼はヨン家の家司なんでしょうか。それとも、他家の貴族で、ただヨン家側についているというだけなのでしょうか…。
3部族の長に対する態度がかなり上から目線なので、ヨン家の家司ってことはないような気もしつつ、歴史的には、王宮で強大な権力を持つ家があると、そこの家司が王家直参より立場が上になるのも良くあるコトなので、なんとも言えないですよねぇ。
こういう、細かい人間関係の積み重ねが、ドラマには描かれていたんだろうなあと思うんですけどねぇ……本は読めても、映像は無理だわ私(涙)。
えっと、理屈はおいといて。
青・黄・緑の色鮮やかな衣装に身を包んだ長たちが皆素敵です(はぁと)。
それぞれの色の持つ意味については以前ちらっと書きましたが、なんだか、そんなことどうでもよくて、それぞれのキャストに一番似合う色を着せたんじゃないか、と思っちゃいました(^ ^)。
すっとした二枚目の王子には、クールでシンプルな藍の衣装。髪もすっきり下ろして、見ようによっては3人の中で一番若々しい。上級生だけあって口火を切るのは彼が多いんですが、重みがあって素敵です♪
貫禄のある男前なレネさんには、ちょっと派手目な山吹色の衣装。髭も濃い目で、ちょっと南方系?とか勝手に思っています。台詞はそんなにないんですけど、芝居巧者だけあって小池さんに頼られているなぁと思います。彼が入っているから、族長たちの芝居はすごく安心して観ていられる♪
そして、可愛い童顔のらいらいは、明るい緑の衣装に作りこんだ髪、作りこんだ髭で、物凄く作りこんだ“中年男”を演じています。……色っぽいんだこれが(*^ ^*)。なんだか、なまめかしいの。声が高いせいか、若くして家を継いだ青二才みたいにも見えるんですけど、あまりにもオジサマの色気がありすぎて、ちょっと年齢不詳な感じです(笑)。でもカッコいい!!
……つい数ヶ月前はマコトだったなんて想像もできない変わりっぷりで、観るたびにびっくりするんですよね。(らいらいより、あの「二枚目イルス」がトメさんだったコトの方が衝撃的だけど)
3人とも、美人でスタイルよくて衣装映えするメンバーですよね☆意外と若いんですけど、よく健闘していると思います。組長のヨン・ガリョに位負けしないで立てているんだから大したもんだ!
チョ・ジュドのふみかちゃんは、立場はいまひとつよく判りませんが、ヨン・ガリョにとっては頼りになる参謀、って感じなんですよね?情報を集めてきて、打つべき手を考えてくれる人。
ホゲがヨン家を継ぐときには、もしかしたらイルスがその立場に立つのかもしれません。……そう思うと、ちょっと悶えてしまう(汗)。
この宴の目的は、具合の悪いヤン王が近く逝去することを見越して、その後の族長会議での後継者決めの流れを、あらかじめホゲ即位の方向に誘導しておこうというもの。
無論、酒だけではなく、お持ち帰りいただく金塊とか、そういうお土産もご用意しているでしょうし、強大な西域の商人とのつながりを見せ付けておこぼれの期待をもたせ、とにかくヨン家について損はないと思わせる。
チョルロ部族が反対したとしても、3家がヨン家につけば問題ないのですから……。
話をそちらへ持っていこうとするガリョ&チョ・ジュドの老獪さと、あまり深く考えずに「うちの息子」自慢をし始めるセームの可愛らしさが、たまらなく素敵です☆
宴が盛り上がっているところに、侍女が入ってくる。
「奥方さま、タムドク王子がお見えです」
取次ぎを待たずに、タムドクとコ将軍があがりこんできて、人払いを願う。
まぁ、ここで説明されるセームの行動は、無計画にもほどがあるんですけどねぇ…。
最初、医者に王家の証の指輪を与えたセーム。指令はおそらく、「兄上の命を縮め参らせよ」。
なので、医者は薬草茶にトリカブトを仕込む。お茶なんだから多分葉っぱを使ったんでしょう。葉は根に比べて毒性が弱いし、直接食うんじゃなくて煎じたものをさらに煮出して飲むだけで、そう簡単に死ぬはずがない。トリカブトは激烈な急性毒ですが、慢性毒としての効きはそんなに良いものではないので。
具合は悪くなったものの、なかなか死なない兄。なので、これまたヨン家の紋章入りの金を形のままで与え、「もっと強烈な毒」を飲ませるよう依頼をした。
頼むから、大事な息子のためにも、もう少し頭を使ってください>奥方様
なぜそんな杜撰な計画で今までばれなかったのか疑問。ヤン王は、人間不信がひどすぎて側近がいなかったんでしょうか。少なくとも、愛されて尊敬されている王なら、こんなことにはならないよなあぁ……。
この場面を見ながらいつも思うことがあります。
セームは、息子(ホゲ)を愛しているんだろうか?
彼女にとって、ホゲは自分の分身であり、自分が女の身であったが故に果たせなかった宿願(王になる)を果たすための道具だった。
可愛くて優秀で勇猛な息子を自慢には思っても、それは、騎馬兵が立派な愛馬を愛するのと同じ気持ち。そう、彼女は母性のない女だと思うのです。いつでも自分が一番で、息子に対しても見返りを求めるタイプ。愛してあげるから強くなりなさい、愛してほしいなら王になりなさい。王にならないあなたには何の価値もないわ、と……。
これがじゅりあの個性なのか、セームの元々のキャラクターなのか判然としませんが、私としては、セームにじゅりあを配した時点で小池さんの狙いだったと思いたいところです。
生まれて三日で母を亡くし、政務に忙しい父を遠く見ながら一人寂しさを噛み締めていたタムドク。
若く美しく高貴な母に構われ、可愛がられ、ペットのように世話をやかれて、でも「愛されて」はいなかったホゲ。
二人の少年が出会ったときには「君が王なら僕は将軍になる」と言ったホゲ。
たぶん、高句麗という国にとっても、それが一番幸せな形だった。紆余曲折の末、ふたたびタムドクの胸の中に戻ったホゲは、もう一度同じ歌を歌う。人々の幸せを望むなら、それが一番良い形だった、と気づいて。
でも。
この場面の前、大人になったタムドクとホゲは、お互いに愛し合い、許しあいながら、それでも「君が王なら僕は将軍になる」とは言ってあげられなくなっている。自分自身の気持ちとしては言いたくても、周囲の思惑や相手の気持ちが読めてしまう優しい二人の青年は、お互いに相手に対しても自分に対しても嘘を吐くしか、ない。
王位を継ぐために学ぶべきことは多く、それに追われるあまり「普通であること」に憧れを抱くタムドク。
母に愛してもらうには王になるしかなく、そのために塀の上で一人自主練を繰り返していた、ホゲ。
「君が王なら、僕は平民になる」
大臣にも、将軍にも、なってあげられない。君を喜ばせるためならそうしてあげたいけれども、多分、無理なんだ……だから。
俺がお前を疑うなんて、あるわけない!」
そうさ、あるわけがないんだよ、……君と僕と、この世にただ二人だけでいられるのならば。
そうしてタムドクは、親友の母、自分の叔母の胸に刃をあてる。
あなたがホゲを愛しているなら、彼の名誉をお守りください。
……ホゲを、あなたの息子を、愛してあげてください、と。
「流言飛語を懼れ、医者は極刑に処しました」
無言でセームに自決をほのめかしながら、タムドクは急いで邸を出ようとする。
ホゲが帰ってこないうちに、と。
……願いも虚しく、ちょうど帰ってきたホゲにばったり出会う。
「どうした?」
屈託のない笑顔で話しかけてくるホゲ。この二人は、ガキ大将ともやしっ子、に近い関係なんだろうなと思うんですよね。ホゲはどちらかといえば支配的な攻めキャラで、騎馬隊長のチョク・ファンがつっかかったときも庇ったように、今までずっと弱っちいタムドクを外部の暴力から守ってきたんだろう、と。
彼は、タムドクが実は自分と同じチュシンの星の許に生まれたことを知っているし、武芸も本当に女しか相手にならないほど酷いわけではない(自分には及ばないにしても)ことも知っているのだから。
タムドクは、本当の本気でホゲと刃を交えたことがないことは自覚しているにせよ、基本的にはホゲの言うとおりにして生きてきた。それがこのとき、初めてホゲに秘密を持つわけです。
自分が本来ホゲより上の立場(皇子)であること自体も長い間彼の瑕であったのでしょうけれども、今はそれにホゲの母を奪ったという秘密が加わる。
常に自分の前に居て、向かい風から守り、自分を引っ張ってくれていたホゲを、超えたくない。
このときのタムドクは、まだほんの子供なのです。
一人で街に出たことがない。
一人で城の外に出たことがない。
まだ父親の腕の中から出たことがない、子供。
そして。
ホゲもまた、この時点ではなにも気づいていない。
タムドクの闇にも、
……自分のうちの深い闇、にも。
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