東京宝塚劇場にて、「夢の浮橋/Apasionado!!」を観劇してまいりました。
ついこの間始まったばかりと思っていたこの公演も、ふと気がつくと、早くも明日で千秋楽!?(@ @;; や、ヤバイ、まだ何も書いてない(汗)と、いきなり焦りだしました。
(新公の後で一回途中まで書いたんですけど、あんときも消えたんだよな……)
とりあえず、作品についてのおおまかな感想は先日(新公のときにも)書きましたので、いきなりキャストごとに感想を書かせていただきます。
本公演と新人公演を併記させていただきますが、とにかく演出意図(というかテーマ?)がかなり違う作品でしたので、同じ役でキャストを比較しているつもりは全くありませーん!そのあたりは誤解なさらないよう、ひらにお願いいたしますm(_ _)m。
あ!!でも、その前に、ちょっとだけショーの話を。
ちわわ、カッコイイよーーーっ!!
愛しい85期がまた一人減ってしまうだけで悲しいんですけど、それにしても今回のショーでのちわわの扱いは「破格」ですよね。ヴァンピーロ伯爵の場面のファンタスマリーダー、ラグリマでの紫乃ちゃんとの高いリフト、ロケットセンター・・・藤井さん、愛してくれてありがとうね。
すごく嬉しかったです。ええ本当に。モニカ、ジョーダンと良い芝居をするようになってきた矢先の卒業で寂しいかぎりですが、これだけ餞になる公演で卒業できるのは幸せだな、と思います。85期は、どの組も幸せに卒業していて嬉しいよぉ(^ ^)。
紫乃ちゃんも、良い笑顔で踊っていて、なんだかとっても癒されました。
フロルのダルマで久しぶりに(ロケット卒業してから初めて…だよね?)見た脚は、相変わらず長くて形がキレイで(*^ ^*)。いやー、これまたありがとう藤井さん(^ ^;ゞ。
匂宮(瀬奈じゅん/明日海りお)
麻子さんの匂宮は、華やかで悪戯好きで憎めない、なんとなく、原作の頭の中将を連想させる部分がありました。薫への競争意識を表に出しているのは、原作のイメージに近かったかな?なんというか、甘えたでわがままなふうに見える芸風にあわせて、そういう匂宮をちゃんと大野さんが演出してくれていたと思います。
ただ、結構野心家っぽく見えた一面があって、至高の椅子に座ることを拒否するのが、なんていうか「あなたしかいなんです!」と言ってほしいわがまま王子、みたいに見えたんだよな…でも、そんな我侭で小心者なところも匂宮の魅力のうちなんだからいいのかな(^ ^;
薫と並び称され、薫へのライバル意識から自分の衣に香を焚き染める…というあたりも納得できる可愛らしさのある匂宮でした。
ただ、光る君のようでありたいという気持ちが行き過ぎて、光る君と同じ罪を犯すことへの障壁が低くなってしまった、という解釈なのかなあ?ラストに至って、突然皇統を継ぐことを受け入れるのは良いんですけど、気持ちよーく“罪”に浸った後ろ向きなラストになってしまったのは違和感がありました。個人的には、ああいう救いようのない後味の悪いラストも嫌いではない(外部作品ではよくあるし)んですが、タカラヅカで観たいとは思わないんですよね……。
でも、今回に限ってはあれはあれでアリだったのかな、と思い直しました。だって、30分の休憩を挟んで男役ダルマ祭りなラテンショーがあるんだもん!!(笑)。誰だってご機嫌で帰りますよ!…ってなわけで、大野さんの勝ち(^ ^)。
みりおくんの匂宮は、あのメンバーの中では圧倒的に華やかで、目を惹く存在でした。ただ、あまりにも匂宮が華やかすぎて、“匂宮と薫が並び称される”という設定に疑問が残ったのは、原作的にはどうなんでしょうね。
…でも、ひとつの独立した作品としては、アリな設定なんですよね。本公演に比べて、原作との親和性の少ない、その分大野さんらしさのある物語になっていたと思います。
彼の意図がどちらにあったのかはわかりませんが。
圧倒的で、華やかで、なのに至高の椅子に座ることを恐怖する匂宮。
その匂宮を凌駕せねばならない兄宮の苦悩。
夕霧右大臣の「視野がお狭うございますな。光る君であれば、率先して宇治御幸を盛り上げてくださいましたでしょうに」という台詞の重みと、そう言われてしまう二宮の気持ちが痛々しかったです。確かに、宇治御幸を守り立てる華やぎが、宇月くんの二宮には足りないことが明白で。その台詞を言いながら、ちらっと匂宮を思い浮かべる重臣たちの目と、居たたまれない二宮の痛みがつらかったです。
「民に楽しみを与えてやる」ためには、生真面目で面白みのない皇子よりも、圧倒的に華やかなスターが必要なのだ、という理屈があまりにもタカラヅカで、目の前に明日海りおが立っているだけで悲しいほどに説得力がありました。
そして、真顔で「兄上だって十分盛り上げられますよ」とか言ってしまいそうな匂宮、そんなこと言われて、笑ってかわすことなど出来そうにもない生真面目な二宮、という組み合わせは、本当に見事としか言いようの無いキャスティングで。……上宮王家の剣を渡す二宮も、受け取る匂宮も、どちらも哀れで痛々しくて、たまりませんでした。
薫との関係も痛かったなあ。宮廷の評価も、薫自身の自覚も、“匂宮と並び立つ”ことなど思いもよらないだろうに、匂宮ひとりがこだわっている。「光る君」の直系の息子である薫、という存在に(実際には血のつながりはないにも関わらず)。
薫の真似をして香を焚き染め、薫の女に手を出して……そうやって、匂宮が追いかける薫は、現実の薫ではなく、「光る君の息子」である薫。匂宮は、大君の形代として浮舟を手元に置く薫を責める権利などないのです。匂宮自身、薫を光る君の形代として欲しているのだから。
だから、ラストに至って匂宮は、世界を救うために至高の椅子に座る決心をし、
……その代償に、薫の人生と未来を自分のものにする。
そうまでして座らねばならない椅子であり、
薫にとっても、それを差し出してまで匂宮を座らせねばならない椅子だった。
それでも。
匂宮はあくまでも自分で罪の椅子に座ることを択んだのであり、誰かに強制されたものではないことがわかっている。
だから、彼は不幸に浸らない。ピンと背を伸ばして、肩を張って、すべての民の罪を背負って壇をあがる。
壇の上に待つものが、罪深き闇であったとしても、
自分の背中をじっと見守る薫の存在を、知っているから。
薫( 霧矢大夢/光月るう)
いやー、きりやんもるうちゃんも、本来のキャラクターとしては薫じゃないと思うんですよね。
薫が主人公の「宇治十帖」で、匂宮を演じるのが本来のニンという気がします。
でも、なかなか面白い配役でした。原作どおりではない舞台ですから、こういう薫もありだし、素敵だったと思います(*^ ^*)。
きりやんの薫は、とにかく登場の「時雨」の歌が印象的で。いつものことながら素晴らしい歌唱力で、薫、という人物を心に刻み込まれたような気がします。いい歌ですよねぇ…(しみじみ)。花組公演を観に遠征して以来、ずっと頭の中で鳴り続けていた「太王四神記」の音楽の数々が、「夢の浮橋」を観て以来ぴたっと息を潜めて、薫の「時雨」の歌と、浮舟の歌ばかりが回っています。カラオケに入ったら歌ってみたい!(^ ^)
で。
本公演では、浮舟は薫を愛しているんですよね。
薫を愛しているのに、大君の形代としか見られていないことが哀しい。弾けない琴を、「薫様をお慰めするために必要だから」練習しようとする。なのにどうしてもうまく出来なくて、「私は何のためにこのお邸にいるんだろう…」と悩んでいる。
だから、本公演の薫は、すごく冷たい感じがするんです。浮舟が愛しているのは薫なのに、なぜ薫は!?って感じ。
でも。観ているうちにだんだんわかってくる。たぶん、薫が追いかけているのは匂宮なんですよね。愛しているかどうかはともかくとして(腐)、匂宮の関心を、自分一身に集めていたいとは思っているんでしょう。匂宮が他の人に関心を持つことに我慢ができない。だから、わざと自分の愛する女の情報を流して、誘うような真似だってしていそう……(←そういう腹黒いところも含めてすごく好き)
匂宮が「期待に応えるタチだ」ということを、知っているから。
浮舟のことは愛しているけれども、大君の形代にしているつもりは無かったけれども、
薫には、どうすれば人を愛することができるのかわからなかった。彼は、誰にも愛されなかったから……何事にも無関心な母にも、血の繫がらない父(光る君)にも。
最初の「雲隠れ」の場面で、光る君は最初に匂宮に誘いをかけます。
匂宮に、自分と同じ“罪”の匂いを感じたのか?それとも、実際には自分の血を引かない息子より、実の孫を択んだのか。
いずれにしても、薫は自ら手を挙げてはじめて認められる。
だから。手を挙げなければ認められない、それが自分。ただそこに居れば認められ、愛してもらえる匂宮とは、違う……そう、思い込んでいる。
浮舟に対する不器用な愛し方は、そんな思い込みが感じられるのです(考えすぎ?)。
そして彼は、匂宮の醜聞を煽りたて、実際にはそれほどのことでもない事件を大事にして匂宮を追い詰める。
最終的に匂宮の関心を自分に向けるため、に。
新公での蘭ちゃんの浮舟は、幼すぎて、愛の意味がよくわかっていない存在でした。
“薫を慰めるために”いろいろがんばるのは同じなのですが、それに挫折したときの嘆きの意味が違う。
あくまでも、薫は自分の保護者であり、皇族の血を引く自分を大切に育ててくれた父母の恩に報いるためにはここを追い出されるわけにはいかない、という強迫観念のように見えました。
そんな、いつも無理をしている寂しい少女が、初めてステキなお兄さんに優しくされてころっと恋に落ちる。「忘れ雪」ですな(←違うから)。
だからなのか? るうちゃんの薫は、蘭ちゃん浮舟のことをちゃんと愛しているように見えて、もしかしたら大君の面影を追っているだけなのかも?と思わせるところもありました。その匙加減が絶妙だったような気がします。
優しくて、優柔不断で、あんまりはっきりしないタイプ。薫自身は、匂宮に対してそれほど思い入れがないように見えました。逆に、みりおくんの匂宮のほうが、薫に拘っていた印象。
薫が匂宮に拘っていない分、ラストで匂宮に全てを捧げる薫が、哀れに見えました。
でも、自己犠牲に酔ってはいないところが清々しくて、圧倒的な華を持った“日嗣の皇子”と、その影として生きる運命を選んだ薫、という構図に、二人の強い意志を感じたんですよね。
本公演は、薫の支配下に匂宮が下った印象があって、だからこそ、匂宮はあんなにも辛そうに(嫌そうに)壇をあがっていくんだろうな、と思ったのですが……。これはこれで、「雲隠」で夕霧の命ずるままに壇を登る光る君にかぶって、興味深いラストだな、と思いました。
浮舟(羽桜しずく/蘭乃はな)
浮舟の芝居については上でも書いちゃいましたけど。
しずくちゃんは、なんというか、はっきり自分の意思を持った女として浮舟を演じたいんだろうな、と思いました。
最初の出会いで、暗闇なのに匂宮の正体を見破ったときや、「私を介さず、直接じゃれあってくださいな」と言うときのコケティッシュなイメージが。
それでいて、琴を弾くときの自信無さげで不安定な感じのギャップが、すごく魅力的。
薫を愛しているんだな、と、そこはしっかり作りこんでいながら、優しくて親切な(本当の関心がないから出来る優しさだとわかったうえで)お兄さんにふらっと揺れる女心をきちんと表現できるひと。
まっすぐに愛と向かい合える強さは、彼女の強みだと思います。
先日観たときは、風邪でもひいたのか声がずいぶん不安定で残念でしたが、次のバウ公演を楽しみにしています!!
蘭ちゃんの浮舟は、もうとにかく可愛かった!!(デレデレ)
紅梅の姫君と同系列の役作りではありましたが、きちんとしずくちゃんの芝居に引きずられない蘭ちゃんらしい(新公らしい)浮舟をつくっていたのが頼もしいです。
ショーでは必要以上に強気で元気でいっぱいいっぱい(*^ ^*)な蘭ちゃんなので、小宰相も観てみたかった気がしますが、今回は浮舟で正解だったかな?こちらもバウなんですよね。楽しみだなあ☆(←チケット取れるんですか?)
…うわっ、まさか3人しか書けないと思わなかった(涙)。
明日が千秋楽なのにーーーっ、ごめんなさい!しばらく引っ張るかもしれません(T T)。
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ついこの間始まったばかりと思っていたこの公演も、ふと気がつくと、早くも明日で千秋楽!?(@ @;; や、ヤバイ、まだ何も書いてない(汗)と、いきなり焦りだしました。
(新公の後で一回途中まで書いたんですけど、あんときも消えたんだよな……)
とりあえず、作品についてのおおまかな感想は先日(新公のときにも)書きましたので、いきなりキャストごとに感想を書かせていただきます。
本公演と新人公演を併記させていただきますが、とにかく演出意図(というかテーマ?)がかなり違う作品でしたので、同じ役でキャストを比較しているつもりは全くありませーん!そのあたりは誤解なさらないよう、ひらにお願いいたしますm(_ _)m。
あ!!でも、その前に、ちょっとだけショーの話を。
ちわわ、カッコイイよーーーっ!!
愛しい85期がまた一人減ってしまうだけで悲しいんですけど、それにしても今回のショーでのちわわの扱いは「破格」ですよね。ヴァンピーロ伯爵の場面のファンタスマリーダー、ラグリマでの紫乃ちゃんとの高いリフト、ロケットセンター・・・藤井さん、愛してくれてありがとうね。
すごく嬉しかったです。ええ本当に。モニカ、ジョーダンと良い芝居をするようになってきた矢先の卒業で寂しいかぎりですが、これだけ餞になる公演で卒業できるのは幸せだな、と思います。85期は、どの組も幸せに卒業していて嬉しいよぉ(^ ^)。
紫乃ちゃんも、良い笑顔で踊っていて、なんだかとっても癒されました。
フロルのダルマで久しぶりに(ロケット卒業してから初めて…だよね?)見た脚は、相変わらず長くて形がキレイで(*^ ^*)。いやー、これまたありがとう藤井さん(^ ^;ゞ。
匂宮(瀬奈じゅん/明日海りお)
麻子さんの匂宮は、華やかで悪戯好きで憎めない、なんとなく、原作の頭の中将を連想させる部分がありました。薫への競争意識を表に出しているのは、原作のイメージに近かったかな?なんというか、甘えたでわがままなふうに見える芸風にあわせて、そういう匂宮をちゃんと大野さんが演出してくれていたと思います。
ただ、結構野心家っぽく見えた一面があって、至高の椅子に座ることを拒否するのが、なんていうか「あなたしかいなんです!」と言ってほしいわがまま王子、みたいに見えたんだよな…でも、そんな我侭で小心者なところも匂宮の魅力のうちなんだからいいのかな(^ ^;
薫と並び称され、薫へのライバル意識から自分の衣に香を焚き染める…というあたりも納得できる可愛らしさのある匂宮でした。
ただ、光る君のようでありたいという気持ちが行き過ぎて、光る君と同じ罪を犯すことへの障壁が低くなってしまった、という解釈なのかなあ?ラストに至って、突然皇統を継ぐことを受け入れるのは良いんですけど、気持ちよーく“罪”に浸った後ろ向きなラストになってしまったのは違和感がありました。個人的には、ああいう救いようのない後味の悪いラストも嫌いではない(外部作品ではよくあるし)んですが、タカラヅカで観たいとは思わないんですよね……。
でも、今回に限ってはあれはあれでアリだったのかな、と思い直しました。だって、30分の休憩を挟んで男役ダルマ祭りなラテンショーがあるんだもん!!(笑)。誰だってご機嫌で帰りますよ!…ってなわけで、大野さんの勝ち(^ ^)。
みりおくんの匂宮は、あのメンバーの中では圧倒的に華やかで、目を惹く存在でした。ただ、あまりにも匂宮が華やかすぎて、“匂宮と薫が並び称される”という設定に疑問が残ったのは、原作的にはどうなんでしょうね。
…でも、ひとつの独立した作品としては、アリな設定なんですよね。本公演に比べて、原作との親和性の少ない、その分大野さんらしさのある物語になっていたと思います。
彼の意図がどちらにあったのかはわかりませんが。
圧倒的で、華やかで、なのに至高の椅子に座ることを恐怖する匂宮。
その匂宮を凌駕せねばならない兄宮の苦悩。
夕霧右大臣の「視野がお狭うございますな。光る君であれば、率先して宇治御幸を盛り上げてくださいましたでしょうに」という台詞の重みと、そう言われてしまう二宮の気持ちが痛々しかったです。確かに、宇治御幸を守り立てる華やぎが、宇月くんの二宮には足りないことが明白で。その台詞を言いながら、ちらっと匂宮を思い浮かべる重臣たちの目と、居たたまれない二宮の痛みがつらかったです。
「民に楽しみを与えてやる」ためには、生真面目で面白みのない皇子よりも、圧倒的に華やかなスターが必要なのだ、という理屈があまりにもタカラヅカで、目の前に明日海りおが立っているだけで悲しいほどに説得力がありました。
そして、真顔で「兄上だって十分盛り上げられますよ」とか言ってしまいそうな匂宮、そんなこと言われて、笑ってかわすことなど出来そうにもない生真面目な二宮、という組み合わせは、本当に見事としか言いようの無いキャスティングで。……上宮王家の剣を渡す二宮も、受け取る匂宮も、どちらも哀れで痛々しくて、たまりませんでした。
薫との関係も痛かったなあ。宮廷の評価も、薫自身の自覚も、“匂宮と並び立つ”ことなど思いもよらないだろうに、匂宮ひとりがこだわっている。「光る君」の直系の息子である薫、という存在に(実際には血のつながりはないにも関わらず)。
薫の真似をして香を焚き染め、薫の女に手を出して……そうやって、匂宮が追いかける薫は、現実の薫ではなく、「光る君の息子」である薫。匂宮は、大君の形代として浮舟を手元に置く薫を責める権利などないのです。匂宮自身、薫を光る君の形代として欲しているのだから。
だから、ラストに至って匂宮は、世界を救うために至高の椅子に座る決心をし、
……その代償に、薫の人生と未来を自分のものにする。
そうまでして座らねばならない椅子であり、
薫にとっても、それを差し出してまで匂宮を座らせねばならない椅子だった。
それでも。
匂宮はあくまでも自分で罪の椅子に座ることを択んだのであり、誰かに強制されたものではないことがわかっている。
だから、彼は不幸に浸らない。ピンと背を伸ばして、肩を張って、すべての民の罪を背負って壇をあがる。
壇の上に待つものが、罪深き闇であったとしても、
自分の背中をじっと見守る薫の存在を、知っているから。
薫( 霧矢大夢/光月るう)
いやー、きりやんもるうちゃんも、本来のキャラクターとしては薫じゃないと思うんですよね。
薫が主人公の「宇治十帖」で、匂宮を演じるのが本来のニンという気がします。
でも、なかなか面白い配役でした。原作どおりではない舞台ですから、こういう薫もありだし、素敵だったと思います(*^ ^*)。
きりやんの薫は、とにかく登場の「時雨」の歌が印象的で。いつものことながら素晴らしい歌唱力で、薫、という人物を心に刻み込まれたような気がします。いい歌ですよねぇ…(しみじみ)。花組公演を観に遠征して以来、ずっと頭の中で鳴り続けていた「太王四神記」の音楽の数々が、「夢の浮橋」を観て以来ぴたっと息を潜めて、薫の「時雨」の歌と、浮舟の歌ばかりが回っています。カラオケに入ったら歌ってみたい!(^ ^)
で。
本公演では、浮舟は薫を愛しているんですよね。
薫を愛しているのに、大君の形代としか見られていないことが哀しい。弾けない琴を、「薫様をお慰めするために必要だから」練習しようとする。なのにどうしてもうまく出来なくて、「私は何のためにこのお邸にいるんだろう…」と悩んでいる。
だから、本公演の薫は、すごく冷たい感じがするんです。浮舟が愛しているのは薫なのに、なぜ薫は!?って感じ。
でも。観ているうちにだんだんわかってくる。たぶん、薫が追いかけているのは匂宮なんですよね。愛しているかどうかはともかくとして(腐)、匂宮の関心を、自分一身に集めていたいとは思っているんでしょう。匂宮が他の人に関心を持つことに我慢ができない。だから、わざと自分の愛する女の情報を流して、誘うような真似だってしていそう……(←そういう腹黒いところも含めてすごく好き)
匂宮が「期待に応えるタチだ」ということを、知っているから。
浮舟のことは愛しているけれども、大君の形代にしているつもりは無かったけれども、
薫には、どうすれば人を愛することができるのかわからなかった。彼は、誰にも愛されなかったから……何事にも無関心な母にも、血の繫がらない父(光る君)にも。
最初の「雲隠れ」の場面で、光る君は最初に匂宮に誘いをかけます。
匂宮に、自分と同じ“罪”の匂いを感じたのか?それとも、実際には自分の血を引かない息子より、実の孫を択んだのか。
いずれにしても、薫は自ら手を挙げてはじめて認められる。
だから。手を挙げなければ認められない、それが自分。ただそこに居れば認められ、愛してもらえる匂宮とは、違う……そう、思い込んでいる。
浮舟に対する不器用な愛し方は、そんな思い込みが感じられるのです(考えすぎ?)。
そして彼は、匂宮の醜聞を煽りたて、実際にはそれほどのことでもない事件を大事にして匂宮を追い詰める。
最終的に匂宮の関心を自分に向けるため、に。
新公での蘭ちゃんの浮舟は、幼すぎて、愛の意味がよくわかっていない存在でした。
“薫を慰めるために”いろいろがんばるのは同じなのですが、それに挫折したときの嘆きの意味が違う。
あくまでも、薫は自分の保護者であり、皇族の血を引く自分を大切に育ててくれた父母の恩に報いるためにはここを追い出されるわけにはいかない、という強迫観念のように見えました。
そんな、いつも無理をしている寂しい少女が、初めてステキなお兄さんに優しくされてころっと恋に落ちる。「忘れ雪」ですな(←違うから)。
だからなのか? るうちゃんの薫は、蘭ちゃん浮舟のことをちゃんと愛しているように見えて、もしかしたら大君の面影を追っているだけなのかも?と思わせるところもありました。その匙加減が絶妙だったような気がします。
優しくて、優柔不断で、あんまりはっきりしないタイプ。薫自身は、匂宮に対してそれほど思い入れがないように見えました。逆に、みりおくんの匂宮のほうが、薫に拘っていた印象。
薫が匂宮に拘っていない分、ラストで匂宮に全てを捧げる薫が、哀れに見えました。
でも、自己犠牲に酔ってはいないところが清々しくて、圧倒的な華を持った“日嗣の皇子”と、その影として生きる運命を選んだ薫、という構図に、二人の強い意志を感じたんですよね。
本公演は、薫の支配下に匂宮が下った印象があって、だからこそ、匂宮はあんなにも辛そうに(嫌そうに)壇をあがっていくんだろうな、と思ったのですが……。これはこれで、「雲隠」で夕霧の命ずるままに壇を登る光る君にかぶって、興味深いラストだな、と思いました。
浮舟(羽桜しずく/蘭乃はな)
浮舟の芝居については上でも書いちゃいましたけど。
しずくちゃんは、なんというか、はっきり自分の意思を持った女として浮舟を演じたいんだろうな、と思いました。
最初の出会いで、暗闇なのに匂宮の正体を見破ったときや、「私を介さず、直接じゃれあってくださいな」と言うときのコケティッシュなイメージが。
それでいて、琴を弾くときの自信無さげで不安定な感じのギャップが、すごく魅力的。
薫を愛しているんだな、と、そこはしっかり作りこんでいながら、優しくて親切な(本当の関心がないから出来る優しさだとわかったうえで)お兄さんにふらっと揺れる女心をきちんと表現できるひと。
まっすぐに愛と向かい合える強さは、彼女の強みだと思います。
先日観たときは、風邪でもひいたのか声がずいぶん不安定で残念でしたが、次のバウ公演を楽しみにしています!!
蘭ちゃんの浮舟は、もうとにかく可愛かった!!(デレデレ)
紅梅の姫君と同系列の役作りではありましたが、きちんとしずくちゃんの芝居に引きずられない蘭ちゃんらしい(新公らしい)浮舟をつくっていたのが頼もしいです。
ショーでは必要以上に強気で元気でいっぱいいっぱい(*^ ^*)な蘭ちゃんなので、小宰相も観てみたかった気がしますが、今回は浮舟で正解だったかな?こちらもバウなんですよね。楽しみだなあ☆(←チケット取れるんですか?)
…うわっ、まさか3人しか書けないと思わなかった(涙)。
明日が千秋楽なのにーーーっ、ごめんなさい!しばらく引っ張るかもしれません(T T)。
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