日生劇場にて、「ラ・カージュ・オ・フォール」を観劇してまいりました。



塩田明弘さんは、「ラ・カージュ」を振らずしていったいどこにいらっしゃるのでしょうか?

……と思ったら、「エリザベート」を振っていらしたんですね。
名指揮者の、なんて無駄遣い。
軽やかで明快な音を真骨頂にするマエストロに、重厚で野心的なウィーンミュージカル……。
「レ・ミゼラブル」も、短縮版(2003年)から塩田さんが振っていらっしゃいますが、どうも無駄遣いな気がしてならないんですよね。彼に重厚な音楽が作れないとは言いませんが、あの音楽の軽さは本当に編曲が変わったせいだけなのか?と思ってしまうし。なにより、最高にゴキゲンで楽しい音楽を作れる人に、なにもこんな作品をやらせなくても……と思ってしまうのです。
まぁ、東宝的には一番の稼ぎ頭で“大事”な作品をマエストロに任せている、という認識なんでしょうけれども。


ああ、でも、「ラ・カージュ」は、塩田さんの出世作なのに~~~っっ!!まだ市村さんが卒業してもいないのに、指揮者が先に卒業するなんてあり得ない~(涙)。







……のっけから文句言って、すみません。実際に指揮を担当されていた井村誠貴さんには、何の不満もありません。ごめんなさい。





で、「ラ・カージュ・オ・フォール」。

初演からずーっとジョルジュを演じてこられた岡田眞澄さんが亡くなられてから、初めての上演。ダンディでおしゃれでステキなオジサマ、の代名詞のようなジョルジュ役を演じられる役者が他に思いつかなくて、「今度ラ・カージュが上演されるときにはもう市村さんのザザじゃないかも…」と思っていたのですが、まさかの鹿賀丈司さんのジョルジュが実現!!
鹿賀&市村の共演(しかも市村座長)なんて昔は想像も出来なかったのに、世の中っていうのはすごいですね。「ラ・カージュ」は基本的にザザが単独主役の作品なのに、よく鹿賀さんがOKされたな、と思いました。…まぁ、キャスト紹介の並びは一応ジョルジュがトップになっていたのは、東宝側も気をつかったのかな?(^ ^)。

市村ザザの「ファイナル」を飾るに足る、見事な公演でした。満足です。はい。
「もっとマスカラを!」の見事な芸を堪能できて幸せです。さすがの美貌も衰えは隠せませんが、それを気合でカバーしていらっしゃるあたりはザザそのものでした。
もう市村さんの「I AM WHAT I AM」が聴けないのかと思うととても寂しい。また「市村座」やってください!




鹿賀さんのジョルジュは、台詞も歌もあぶなげなく、包容力があってとてもステキでした。「砂の上のラヴレター」はさすが!の歌唱力。岡田さんに比べるともう少し情熱的な、優しいばかりではないジョルジュでかっこよかったです。
…それにしても。「かもめ」で復活を確認していたのでそんなに心配していたわけではないのですが、やはり最初の台詞がキレイに出たときにホッとしてしまうのは否めない。「ジキルとハイド」の時の衝撃はなかなか抜けないものみたいです。やはり、役者はあまりギリギリまで舞台に立つべきではないと思いますね。初めての観客が「おかしいな」と思うような状態で舞台に立ってほしくないです。後々まで不安を引きずってしまいますから。




ダンドン夫妻は、森久美子&今井清隆。無駄に美声のお二人、とても良かったです。
一人息子のジャン・ミッシェルは、山崎育三郎さん。今回の目当ては実は彼だったんですが、あの優しくて無力な感じがとても良かったです。このまま純粋で優しい青年のまま伸びていってほしいなあ…。



ジャン・ミッシェルの恋人・アンヌは島谷ひとみさん。「ガールフレンズ」に出ていらした方ですよね?本当に申し訳ないのですが、私は当たり前のように(ごめんなさい)池田有希子さん版を観にいったので、島谷さんは初めて拝見したのですが……(汗)。
さすが本職の歌手だけあって、キレイな声でした。ただ、踊りはもしかして初めてなのでしょうか?
この役は本来バレリーナの役で、たしかブロードウェイオリジナルはプロのバレリーナだったはず。私が初めて「ラ・カージュ」を見たときも元バレリーナの床嶋佳子さんで、歌はかなり大変なことになっていましたが、ワンシーンとはいえダンスの美しさに「このためのキャスティングだから仕方ないな」と思ったものです。
その前は遥くららさん・毬谷友子さん、そして床嶋さんの次が卒業直後の風花舞嬢と森奈みはるさん(1999年)。踊れないキャストは今回が初めてだったと思います。が……
やっぱりこの役は、踊れることが一番大事!!なんですよね(T T)。

歌もあるので全く歌えないバレエダンサーをキャスティングするのはちょっと疑問ですが、たいした歌があるわけでなし、あえて島谷さんを選んだ意味がよくわかりませんでした。
私は風花嬢のアンヌが一番好きでしたが、宝塚の娘役出身者でダンサーと呼ばれた方なら誰でも似合うでしょうにねぇ…。今だったら舞風りらちゃんとか、踊れるし歌えるし、ぴったりだと思うんですけど。他の仕事が入ってたのかな?




ジャクリーヌは香寿たつき。「ルドルフ」のラリッシュ夫人も良かったですが、今回もはまってました。
シャンタルの新納慎也、ハンナの真島茂樹をはじめとする「Folles」の皆様が、相変わらず最高でした。この作品は、なんたってこのレビューシーンを楽しみに観にいくのが基本です!!(力説)。
振付や衣装は新しくなっていたような気がしますが(すみません、詳細は覚えていません)、いつだって最高の、今となっては宝塚でも滅多にみられないほど完璧な「レビュー」なんですよね(*^ ^*)。また観ることができて、幸せです。




物語としても本当によくできているし、音楽も素晴らしい。いい作品だなあ、としみじみと思います。
本当はもっと毎年のようにやってほしい作品なのですが、なかなか上演されないのが残念。

特に今回は、市村ザザの「ファイナル」という売り文句がはっきりと出てしまった以上、新キャストが出るまでまた数年あいてしまうんだろうなあ……(T T)。


個人的には、次代のザザには、昨年「蜘蛛女のキス」で新境地をひらいた石井一孝さんを期待していたりするのですが。この役を切望していた岡幸二郎さんもいいけど、どうなるかな?(岡さんがザザの悲哀を演じられる役者になってくれるなら、それが一番嬉しいのですが……)



まぁ、先のことを考えても仕方が無いので。
とりあえずは、この貴重な公演を観ることができた自分の幸福に、乾杯♪




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