宙組さんの千秋楽パレード(←トップさんの退団ではないから、パレードとは言わないのかな?)に行ってきました。



…寒かった…(^ ^;



でも、最後の大階段を無事に降りられたみなさんの、輝くような笑顔に出会えて、その間は寒いのも忘れていました。
その中でもとくに、私にとって長いこと宙組さんを観にいくお目当てであり続けてくれたたっちんときみちゃん。
いままでどうもありがとう!!
そして、これからもよろしくお願いしまーす!(←卒業しても舞台に立ち続けて、あの声を聴かせてくれると信じてます ^ ^)







そして、「銀ちゃんの恋」のつづき。



……もう年末で、次の公演の初日も目の前なので、さくさく進めなくてはならないことは判っているのですが。
ちょっとだけ、関係のない本の話を先にさせていただきます。
浅田次郎の「月のしずく」(←あらためてココに書くと、すごいタイトルだな…)。

不器用な男と突っ張った女の情の流れを丁寧に描いた掌編7編の短編集ですが。
タイトルになった「月のしずく」の主人公が、なんだかものすごーーーくヤスにかぶりました。

まぁ、この作品の主人公は、何十年も埋立地のコンビナートで積み込み作業をやってきたブルーカラーなのであって、夢を抱いて映画界へ飛び込んでいった大学出のインテリ役者とは全然違うのですが。
その不器用な誠実さ。打っても響かない、鈍重なまでの純粋さ。美しい“都会の”女に手も出さない純情さ。なにもかもがヤスにかぶる(汗)。
みつるくんのヤスは美形でかっこいいので、小夏とそこまで距離があるように見えなかったけど、本来はこのくらい距離感がある二人なんだろうなー、と、あらためて思いました。



もう何年も前に読んだ本なのに、今回たまたま読み返すまで、そんなこと全然思いませんでした。この短編集自体は、直木賞を獲った「鉄道員(ぽっぽや)」と同じ時期に書かれた短編を集めたもので、「鉄道員」と良く似た世界観の作品集なのですが、正直、そんなには印象に残っていなかったみたい(^ ^;
なんだか、どれもこれも似たような、出来過ぎなご都合主義パターンだと思っていたんでしょうね。

でも、数年ぶりに読み返してみて、一作ごとに泣いてしまった(汗)。

以前読んだときは、たぶん、女性の側に感情移入して読んでいたんだと思います。まだ若かったんだな私。
でも、今回は完全に、冴えない不器用な中年男の側に立って読んでいたみたいです。なんだかそういう、祈りにも似た純粋な想いは叶ってほしい、と思ったんですよね、心から。
で、最後に叶ってしまって、泣いてしまう、と。

そこで素直に泣ける自分が、ちょっと可愛いな、と思ったりする(←え?)
……つまり、年齢を重ねてオヤジ化したってことなんですけどね……?(T T)。






もとい。
ちょっと気を取り直して。

「銀ちゃんの恋」第11場 人吉の盆踊り

舞台下手の檀の上で、ソロを歌うのは初姫さあや。
この場面だけは、“秘書・中山”ではなく村娘の一人として、明るいチークを丸くいれ、眉も(多分)描き直してして、実に可愛らしい。一幕はもう出番ないもんね♪
本当に可愛いです、さあや。ソロが聴けて嬉しい!!

そして、上手の奥で大きな和太鼓に撥をふるうイナセな男役、輝良まさとくん。
いやー、マジでかっこいいっす。元宙組の暁郷くんが空けてった穴を、ちょっと埋めてくれそうなかっこよさ(笑)。他の場面では“ユミコ(彩吹真央)さんに似てるー”と思っていたのに、ここだけGOくんを思い出しました。ちょうどGOくんの卒業公演で着物姿を観たばかりだったからかな?

手前の平場では、他のメンバーが普通に浴衣着て盆踊りを踊っているわけですが……
ふみか(紫峰七海)、その色気は無駄だから!これ歌垣じゃなくて盆踊りだから!!何か間違ってるよ、その流し目っっっ(逃)

マメ(日向燦)ちゃんは、パンチパーマを隠すためか?豆絞りでしっかり鉢巻していて可愛かったです。ちょっと特徴のある腰の入り方なので目立つ目立つ(^ ^)。だいもん(望海風斗)も鉢巻してたっけか…?ごめんなさい、時間がたったのでだいぶ忘れてますね。いつも(初輝)よしやくんとアーサー(煌雅あさひ)の笑顔に癒されたあたりで終わるんだよね……。結構長いようで短い場面でした。
娘役さんとのカップリングも一通りチェックしていたのになあ……海馬よ戻ってこーい。




全員が前を向いてポーズをきめると、音楽が止まる。
壇上で、一歩下がって軽くお辞儀をして、くるっと振り向いてぱたぱたと降りる、という動作をごくごく自然にやってのけるさあやは、ほんとうに可愛いなあと毎回デレデレしてました(笑)。

太鼓の輝良くんも下手にハケて、次に出てくるときはさあやと手をつないでいます
……ありがとう石田さん。




ヤスの兄嫁、玉美(月野姫花)と、母(邦なつき)が登場。
玉美さんは、ずっと故郷に帰ってもこなかった次男が突然嫁を連れて帰ってきたことに動揺している田舎娘。それでも、“田舎でもミス○○になったとよ!”といばるだけの美貌があって、どちらかといえば素朴でかわいい、そして、小夏に対抗しようと背伸びして買ってきた派手なドレスやバッグが似合わない……というキャラ付けがあればいい役なのですが……
この役だけは、石田さんもうまく演出できなかったんだなーと思ってしまいました。
いくら頬が真っ赤なおてもやんメイクをしても、ドレスが普通に似合ったらつまんないからっっ!!“玉美”=おてもやんに奇抜なドレス、というのは単に初演での脚本解釈の結果なわけで、今回の公演はそこにこだわる必要なかったし。もっと役割を考えてほしかったなあ。
さあやがやるならあれでいいんだけど。姫花ちゃんがやるなら、もっと違うアプローチがあったはず。

姫花ちゃんは、断然「ししとう」のマダムが可愛かったです♪♪大人っぽい役もできそうだし、台詞もだいぶうまくなったし、次の新公が楽しみ~♪♪





壇上に、団長(白鳥かすが)とヤス(華形ひかる)と小夏(野々すみ花)が登場。
ちいさな顔にでっかいモミアゲをつけて、顔半分隠していたちあきも、この後出てくる自治会長(悠真倫)も、私は最初に観たとき、しばらく誰だかわかりませんでした(滝汗)。
いやホントに。

監督と助監督、ホント役者だよこの二人…。




久しぶりに「大勢のファン」の前に立った、“落ち目の女優”小夏。
生まれて初めて「ファン」の前に立った“大部屋”のヤス。
スーツをすっきりと着こなしたハンサムなみつるくんは、ほんのちょっと“ヤスとしてどうなの?”と突っ込みたくなったりもしましたが(^ ^;、小夏と並んだ立ち姿が、本当におままごとか立雛みたいなのがツボでした。もう、これはヤスと小夏をまとめるしかないよねぇ、というか。

“普通に結婚に憧れる、ただの女だったのね…”という小夏の述懐が、表向きじゃない本当の本心だった、というのは「蒲田行進曲」的にはかなり冒険な解釈ですけれども。
これは宝塚的には「当然」の解釈なので、あまり違和感はなかったです(^ ^)。


いやー、二人の挨拶が終わって、ハケていく村人たちのカップリングも楽しかったのに、本当にすっかり忘れてしまったわ……。
とりあえず、さあやと輝良くんはずーっと手をつないでいたのは間違いないけど(はぁと)




小夏と邦さんの場を経て、寝室へ向かう小夏。
姑にも頭を下げた小夏の気持ちは、たぶん、ヤスのプロポーズを受けたときから変わっていない。
ただただ「すまない」と思う気持ち。
このお腹の子は、あなたの孫ではないのに、と。

でも。
それでも諦めることはできないから。
この子は私の子、だから。



姑との手打ちを終えて、夫の許へ向かう小夏。
布団が二つ並べられた客間で、寝たフリをしたヤスが待つ。
小夏が来る前に、むっくりと起き上がって、離れたもう一つの布団を近寄せようとするヤスが可愛かった♪あの布団、公演が日を重ねる毎に離れていくように見えたのは気のせいでしょうか?
装置さんの愛の鞭かと思っていたのですが(^ ^)。

あと、この芝居全体を通して「部屋」のセットは一つしかないので、『ヤスの部屋』に貼ってあった「二十四の瞳」のポスターを暗闇の中ではがしている装置さんが毎回ツボでした(吊りものに貼ってあるので、降りてこないと外せない)。1回か2回、巧く外せなくて焦っていたことがあったので☆



戻ってきた小夏を、狸寝入りで迎えるヤス。
そんなヤスに気づいていて、きちんと正座して床入りのご挨拶をする小夏。

「小夏!」と、初めて呼び捨てに呼ばれる喜び。
それが、小夏の選択。




抱き合う二人を最後にライトが落ちて、暗闇の中で会話が流れる。

「銀ちゃんって、どんな顔してたっけ…?」

ミニスクリーンにフラッシュバックする、回想シーンの映像。
銀ちゃんの、貌。


小夏の中には、まだヤスとの思い出はなにもない。
空っぽな自分。

ひとつひとつ、埋めていこう、と。
そう思いながら、それでもやっぱり、捨てなくてはいけないポートレートにひっそりと涙を流す。

「もう、忘れちゃった……」



その甘い睦言を、あんなにも純真な声で語れる野々すみ花は、やはり天性の女優なのだと思いました。





そして、闇の中を音楽が流れて、
客席にピンスポット。

紫乃シャツにシルバーの柄ベスト、黒の柄々ジャケット、紅いパンツ。
倉丘銀四郎の登場。



ちょっと猫背な後姿。
一人でいるときの銀ちゃんは、それまでの、ヤスや朋子が“視た”銀ちゃんとは違って、ひどく頼りなく、不安げにみえます。
たぶん、それが本当の「倉丘銀四郎」、小夏の前でだけはチラッと見せるかもしれないけれども、橘や、大部屋連中がいるところでは絶対に表に出ることのない、本当の。
人前では「俺が二枚目、俺が看板!」と思っていなければ立っていることもできない、それほどのプレッシャーの中を生きているはずの“スター”が、
このときだけはただ一人、不安に押しつぶされそうになりながら、呟くように歌う。



なにもかもうまくいかない、と。
足元に缶ジュースの空き缶あたり転がってきたら、おもいっきり蹴っ飛ばしそうな風情で。




それでも、なにも諦めたわけじゃない。
また一歩一歩、進んでいけばいいだけだ…と。

気を取り直して、ダンベルを掴もうとする銀ちゃん。

そんな銀ちゃんに、後ろから声をかける小夏。






小夏を見つけて、ふわっと微笑む銀ちゃんが、もう可愛くて可愛くて、
…その時点で、すでに泣きそうでした、私。



朋子の愚痴をこぼして、
撮影中止になった階段落ちの場面をぼやいて、


落ち込んでいる銀ちゃんを慰めようと、話題を変えるために自分の結婚式を持ち出す小夏。
それに乗って、とことん落とす銀ちゃん。
それでも、ささいなからかいに小夏は動じない。もう決めたことだから大丈夫。銀ちゃんが何をいっても、今更、あたしは気にしない。


そんな二人の、あやういけれども楽しげな会話。
ふと通りがかったヤスも、別に何かを邪推したわけでもなんでもなく、“ちょっと話が盛り上がってるみたいだから、一段落ついたら出て行こう”くらいの軽い気持ちで立ち止まる。

なのに。

最初のうちは、何も考えず、二人の会話の面白さにふつーに笑っていたヤスが、
ふ、と表情を硬くする。

「ほんとは、こうなるはずだったのに、ね……」


気負っていた小夏のキレイな唇から、ふ、と零れたひとこと。

それはただの軽口で、すみ花ちゃんの小夏にとっては、“終わったこと”なのに、
それでも、ヤスの口許は引き結ばれ、視線は足元に投げられたままで。




「真っ白なウェディングドレスに身を包んだあたしと」

「パリッとタキシードを着た、

                        ……俺が、いるんだ」




一瞬の、間。


その台詞を物陰で聞いているヤスの、
半瞬、その情景に納得して宙を視る、その不自然なほどの自然さ。





銀ちゃんが、いかにわがままで、自分勝手で、ジコチューで、どうしようもない男であるかを明快にあらわしながら、
だけど、愛さずにいられない存在であることも、如実にわかる、あの一瞬。



「銀ちゃん…あんたあたしに何をしたか、わかってんの!?」

銀ちゃんをなじる小夏。

「俺にはもう、お前しかいないんだ!お前、俺の背中に浮かぶ孤独が見えねぇのかっ!?」

小夏をなじる銀ちゃん。


……物陰で聞いている、ヤス。





3人の姿が同時に視られない自分の眼の構造が、うらめしや(T T)。






ヤスの澄んだ瞳に映る、銀ちゃん。
ヤスの、真っ直ぐな視線を受け止めることができる、銀ちゃん。
そんな、みつるくんの描きだす“銀ちゃん”という夢に、祐飛さんの銀ちゃんが、ぴったりと嵌ってくれたことが嬉しかった。




小夏の名台詞、「だって銀ちゃん!」を、「女は傍に居てくれる人がいいの」を、完全に子供の泣き顔で、泣き声で言ってのけたすみ花ちゃん。

子供がえりした「女優」の泣き顔が、崇高なくらい可愛くて。
もう元には戻れない二人が、ただただ子供のように泣きながらお互いを探しているさまが。
何も見えない闇の中で。
将来も、子供も、未来も、何ひとつ見えない暗闇の中で、ただお互いの手を求めて彷徨っている魂、が。



「莫迦野郎~っ!」

と、高校生の捨て台詞のような台詞を吐いて逃げ出す銀ちゃんが、本当に可哀想でした。

完全に小夏の目線で銀ちゃんを見送っていた自分。追いかけてって抱きしめてあげたい、と、どれほどそう望んでも、それだけはどうしてもできない小夏。
銀ちゃんが可哀想で、でも追いかけられないのは、それが銀ちゃんのためにならないから、で。

銀ちゃんが精神的にあれほど子供でなければ、もう少し違う関係を結べたはずの、二人。
逃げるしかできない銀ちゃんが憐れで、追いかけられない小夏が惨めで。



初演のビデオを観たときは、物陰で見ている幸ちゃんのヤスが切なくてどうしようもないほどだったのに、今回はある意味、観客として『小夏がヤスを選んでいる』ことを知っているから、みつるくんに対しては「そんなに思いつめなくても本当は大丈夫だよ?」とか言いたくなってしまったんですよね(汗)。
そんな単純なものじゃないことは、重々わかってはいるのですが。




「ヤスのものは俺のもの」だと思ってい、銀ちゃん。
「俺のものは全て銀ちゃんのもの」だと思ってい、ヤス。




「……俺、階段落ち、やるよ……」

ぼそりとそう呟くまでの、ヤスの葛藤が。
小夏と銀ちゃんを秤にかけて銀ちゃんを選んだ、ヤスの葛藤が。

……結局は一番、痛々しくて、哀れでした…(T T)。






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