シアタークリエにて、「RENT」を観てまいりました。



「RENT」が東宝主催で上演される、と聞いたとき、私にはかなり強烈な拒否反応がありました。
「ええーーーーーっ!!」って感じ。
東宝でやる作品じゃない、と思ったんです。だって、「RENT」を創ることができるのは、いわゆるRENT HEADS、RENTフリークだけだと思うから。


……ごめんなさい!!
東宝のスタッフは、本当に良い仕事してくれました。

「ジキル&ハイド」と「レ・ミゼラブル」の短縮版で絶望して以来、東宝さんには何も期待しないようにしていたもんで、つい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。






作・演出のジョナサン・ラーソンが初演初日直前に亡くなった、というドラマで有名なこの作品。

でも、1996年のブロードウェイ初演から今日まで人気が続いているのは、どっかの三面記事みたいなドラマのおかげではなくて、ただ、この作品の持つチカラです。
だって「RENT」は素晴らしい。音楽も素晴らしいし、歌詞も良いし、なによりもテーマが本当に明快でストレートで、そして、純粋で力強い。

でも、素晴らしい作品を素晴らしい舞台に仕上げるには、スタッフ側にも作品そのものへの共感と愛、そして、その作品をよりよいものにするためにどんな犠牲を払おうとという意思がなくてはなりません。それがなければ、その素晴らしいテーマも観客には届かない。

そして、「RENT」には、関わるスタッフをそういう気持ちにさせるナニカがあるのだと思います。



今回演出を手がけたエリカ・シュミット。寡聞にしてお名前は知りませんでしたが、小さな舞台で良い仕事をしている方のようですね。この人に声をかけた東宝スタッフ、中でもプロデューサーの小嶋麻倫子さんには、心からの賞賛と感謝を捧げます。
ええ。「RENT」は「今」の物語だから、レ・ミゼラブルみたいに30年も同じ演出でやるべき作品じゃないんです。なのに、今でもほとんどの国では初演演出を踏襲してやっているはず。これだけ完成度の高い成功作品の演出を変えるのは勇気がいるうえに、変更にOKを出してくれるオリジナルの作者がいないんですから…。
しかも、演出を変えるとなった場合に相手にしなくてはならないのは、完全に伝説化しているジョナサン・ラーソンの“イメージ”。マークのマフラーを変えただけで文句が出るかもしれない。ミミのブーツを変えただけで、「そんなキャラじゃない!」といわれるかもしれない。そのくらい、観客の幻想も執着も強烈な作品なのですから。





でも。




演出は変わっても、やっぱり「RENT」は「RENT」でした。

切なくて痛い物語だったことには変わりは無いし、コリンズの絶唱に涙は止まらず、なのも、
終わったあとの爽快感も、変わらない。

衣装も違うしセットも違うし、キャストが違うだけじゃなくてアンサンブルの役の振り分けが全然違うから結構細かい所で印象が違ってましたね。男性が歌ってたはずのところが女性だったり。歌の順番は同じでしたけど、編曲も結構違う。あと、歌詞が随分変わってました。同じなところもあるけど、知ってる歌詞と違うとどうしても『違和感』になるもので、これは慣れるまでちょっとかかりそう。

でも、あくまでも「RENT」は「RENT」。
迷って、惑って、怒りっぽくて、
それでも真っ直ぐに前を見て進む、“若者”たちの物語でした。








で。

とりあえず、
米倉利紀さんのコリンズが素晴らしかった!

初演以来、日本でコリンズといえばこの人しかいない!と思っていた石原さんの声にも負けぬ、柔らかな低音の響きに惚れました。はい。
石原さんの創ったキャラクターより若くてハンサムで、マークやロジャーと同年代で、『無茶』をしても不思議のない、悪戯っ子な一面を残したままの「天才青年」。

全体に、“若さ”が印象的な演出で、若いメンバー(アンサンブルの数人を除く)でしたが、その中でもコリンズの若さと軽やかさが一番印象的だったような気がします。その“若さ”ゆえに、エンジェルへの惜別の「I’ll Cover You Reprise」が、悲しい別離の歌ではなく、真摯なラヴソングでありえたところがすごいな、と。
天国への階段を昇るエンジェルと、その背の翼を見据えたまま、その耳に届くようにと歌い上げるLove Song。どここまでも高く飛翔する、やわらかで豊かな響き。
本当に、素晴らしかった!(*^ ^*)コンサートあったら行きたいよぅ~~…。(←I’ll Cover Youを歌ってくれるわけでもないのに…?)






森山未来くんのマークは、予想よりずっと似合ってました。
この役は、こんな風にトリックスターとして創ることができたんですね。ダンサーなのに、なんでこんな踊らない役(初演ではせいぜいタンゴ・モーリーンくらい)なのかと思いましたが、アンサンブルに混ざって踊りまくりだったことに驚愕(^ ^)。

この作品はもともとマーク視点の物語として創られていますが、今回はトップクレジットを張っているだけあって、完全にマークが主役の物語でした。日本初演は「マークが語るロジャー」が主役(トップクレジットは宇都宮隆さん)だったんですが、今回は、マークが主役として自分の進むべき道を探す物語になっていましたね。
ロジャーが主役だと、どうしてもロジャーとミミのラヴストーリーがメインになってしまいがちなのですが、主役がマークになると、“まともでつまらない男”であるマークの「回りの個性的な人たち」が強調されて、群集劇っぽいつくりになっていたと思います。


ただ、再演のラストにやっと腑に落ちた「なぜマークはアレクシーの誘いを断るのか」が、今回歌詞がだいぶ変わったこともあって、また見えにくくなってしまっていたのが残念でした。
あそこは、山本耕史さんの芝居が凄くて、「What You Own」が作品全体の一番の山場になっていたくらい凄い迫力だったのに(T T)。せっかくマークが主役という演出なんだから、そこはもう少しがんばってほしいなーと思いました。





ダブルキャストの方は、両方観てからまとめてコメントさせていただくとして……
とりあえず、シングルキャストの方のみ。


ジョアンヌのSHIHOさんは、どちらかというとアレクシーとか向きの声なんじゃないかと思いました。ジョアンヌはもう少し低音に豊かな響きがあった方が、モーリーンとの言い争い(「Take Me Or Leave Me」)が効果的になるんですが……。かなり硬めの強い声なので、モーリーンの声とぶつかってしまって残念でした。
今まで観たジョアンヌの中では一番の美人さんで、スタイルもよくてステキでしたけど(^ ^)。




ベニーの白川裕二郎さんは、、、「HONK!」以来だよ!!すっげー懐かしい!!(^ ^;ゞ
すごい格好良くなっていて吃驚しました!歌もさすがです♪ 私は、再演の泉見くんのベニーがすごく好きだったのですが、白川さんも芝居の方向性は再演系のベニーでしたね。皆(マーク、ロジャー、コリンズ)と仲良くしたくて、彼らと一緒に見た夢を追いかけているベニー。なのに、どうして皆が“語り合ったあの夢”を忘れてしまったのかが理解できない、という、子供っぽい寂しさ。
そういう子供っぽさを、うまく出していたのが良かったと思います。そして、ハンサムなのでミミとの並びがとってもお似合い(^ ^)。ロジャーが嫉妬するのも良くわかる二枚目っぷりでした(*^ ^*)。




メインキャストは、本当に森山くんと白川さん以外誰ひとり知らなかった私ですが(望月英莉加さんが以前RENTに出ていたRYO-KOさんだと知ってびっくり!!です)、…アンサンブルは結構知ってる(笑)。元マリウスの安崎求さん、宝塚OGのYOKO(汐美真帆)さん、元四季の田村雄一さん、RENT組の彼方リキトさん、、、みなさん元気でやっているんだなあ、と感慨深く思います。
「RENT」初演・再演メンバーも、今でも結構いろんな作品でお見かけすることが多くて。エンジェルのKOJIROさんはこないだ「DUET」で久々にお会いできたし、森川美穂さんも活動再開されているみたいだし……RENTフリークとしても嬉しい限りです★




なんだか、「RENT」という作品について、とか全然語ってませんけど……大丈夫かな(汗)。
「昨日も 明日も ない/今日を生きるだけ」という歌詞がなくなってしまったのはとても残念でならないのですが(T T)、「未来も過去もいらない」という歌詞も、もちろん意味はおんなじで、
要するに「NoDAY But TODAY」…「今この時を生きるだけ」なのだから。

庇いあって、支え合って、ありのままを認め合って、尊重しあって、そうやって“今”を生きていく。
「I’ll Cover You」、「Life Support」、「I Should Tell You」……
そして、「Seazons Of Love」。

シンプルでシリアスな、いろいろな、愛。



「愛してる」と真っ直ぐに告げる愛と、「どう言えばいいの?」と問いかける愛。
どちらも同じ、“LOVE”…それだけ。




新生「RENT」。

根底にあるものは、ジョナサンが描いた夢と変わっていなかったと思います。
そこに愛があるから。だから「No DAY But TODAY」なのだ、……と、その一番重要なポイントだけは。

チケットはあと一枚持っていますが、なんとかもう一回増やしたいなーと思っています★
米倉さんの歌をもっと聴きたい!!



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