宝塚花組日本青年館公演「銀ちゃんの恋」
第三場B 銀四郎のソロ
…っていう場面タイトルだということを、たった今知りました(笑)。
前場ラストで、「やっぱり俺…主役じゃなかったんだな…」という、しょんぼりと肩を落とした銀ちゃんが、そのままの体勢で(ちょっと後ろ向きな感じで)歌いだす。
♪スターになるほど一人ぼっちだと
♪思い知らされて酒を呑む
…その、声が。
かすれきって限界が近い喉が、切なさを煽ってくれるんです……。それは計算なんですか!?と訊きたくなるくらい、色っぽい。
♪夢を売るため嘘をもつくさ
最初の幕が上がって以来、嘘しか喋っていない銀ちゃんに、そんなことを言われても。
…と突っ込んだあたりで、曲想がガラッと変わる。
♪それがスターの生きる道さ
アップテンポのノリのいいメロディラインを、あの切ないかすれ声で聴くのはちょっと辛いです。
声、使い分けるつもりで役作りしていたんだろうに、残念でなりません。…いつか、ディナーショーか何かの機会に思いっきり歌ってほしいです。あの衣装で!!
(←あ。誤解されている方多いと思うんですけど、祐飛さんって音程や滑舌はあやしいけど、声はちゃんと計算して創ってるんですよ!…たぶん)
そして、声が出ないから余計に聞き取りにくくなる歌詞。これが大事なのに!
♪俺が二枚目、俺が看板
♪俺より二枚目出さないでくれ
祐飛さんの銀ちゃんより二枚目な人なんて、どこにもいないから大丈夫だよ!
そう、真顔で声をかけたくなってしまう可愛らしさ。
♪俺が二枚目、俺が看板
♪脇役助演者遠慮してくれ
……本気でこんなことを思っているような役者には、口が裂けても言えない台詞だわカッコイイ、と思うのは、私がファンだから?(*^ ^*)。
実在する大空祐飛が、こういうキャラではないことは、「ししとう」でのさあやとか、この後の幕前でのさあやとか、階段落ち前のさあやとか、、、、じゃなくてっ!!ヤスとか、小夏とか、橘とか、トメさんとか、とにかく出演者全員が楽しそうに、やりたいように、やったもんがちで思いっきりガツガツと芝居を楽しんでいる姿を観ればわかることで。
たぶん銀ちゃんは、じゃない祐飛さんは、「お前らが何をしても、俺がいれば大丈夫なんだからな!」って言ってあげているんだろうな、と、勝手に思っています。
下級生たちがどんなことをやらかしても、祐飛さんには、それを銀ちゃんとして受けられる自信があるんだろうな、と。
気持ちいいくらいキッパリと、「おめーら好きなようにやっていいぞ!」と言ってあげているに違いない!と。
ただし、カメラの前は横切るな、と(^ ^)。。
たとえそれが、空元気であったとしても。
たとえそれが、強がりであったとしても。
痩せ我慢であったとしても。
銀ちゃんのそれは、明らかに空元気で、強がりで、痩せ我慢なんですよね。
っていうか、ツッパリきれなくて泣き言言っちゃうし、強がりきれなくて甘えちゃうし、痩せ我慢なんてできなくて皆に八つ当たっちゃうはた迷惑っぷりなんですけど。
でも、大空祐飛さんのそれは、本気っぽいところがすごいなあ、と。
邦さんと眉月さん、まりんさん以外は学年差(=経験値の差)が大きいから余裕が違うのもあるでしょうけれども、そういう格の違いは随所で感じるわけで。
タイトルロール、という尊称には、それだけの意味があるんだなあ、と思うわけです。
そして。
タイトルロールとして、こういう歌を歌って客席を盛り上げつつ、ちゃんとその中で
「うっそーん☆そんなこと考えてねぇよ!だって、俺より二枚目なんてこの世にいねぇし、脇役助演者が遠慮しなくたってどうせ俺しか見えねぇんだろうテメエら?」
という落ちを用意しているところが………
…石田さん。
「銀ちゃんの恋」って、再演なのにどうしてこうも宛書なんですか?
それとも、ノン(久世星佳)さんご自身が、あんなふうに自信過剰のどSだったとでも……?
第4場 ヤスのアパート
ヤスが、みどりいろのジャージに腹巻して、赤い靴下を履いて、自分の部屋にいる。
ヤスの部屋は、たしかどっかで4畳半って言ってた気がするんですが、ドラマシティは広いので8畳くらいある気がします。(4畳半って、成人が三人も入ったら3歩以上歩くの無理だから!)
頭に鍋(?)を被ったヤスが、なんか殺陣の練習っぽいことをしている。
そこに響き渡る銃声。ヤスは丁寧にその音を拾って撃たれた芝居をする。イメージとしては、カチコミに遭ったヤクザ者、って感じ。いきなり撃たれて、腹をおさえて…手についた紅い血をみて「なんじゃこりゃぁ~!」と叫びながら息絶える、という、ありがちな場面。
ヤスが倒れると、下手側の上がり框で、銀ちゃんが小道具の短銃(←まだ持ってたのか!?早く返さんかい!)にふっと息をかける。
もういまさら衣装についてはコメントしませんが、グラサンが渋くてかっこいいです。はい。
ちなみに。
このものすごい衣装は「コシノヒロコ、ジュンコ、ミチコのデザイナー三姉妹で全身固めてみたんだ」そうです。
が。
……せめて一人にしてください>銀ちゃん。
というか、いいんでしょうかこういう実名の使い方って……。長女のコシノヒロコさんは、「シニョールドンファン」で宝塚と組んだこともある方ですし、事前に了解は取っているんでしょうけれどども…。
いや、あの、その、個人的に「ミチコ」と言われると宙組の某スターさんを思い出して笑ってしまうんですけど…。みっちゃんのデザインかと思うと素直に納得できてしまう私を許してください。
あと、突っ込みどころとしては、ポスターにも登場していたハエタタキ。
ここが唯一の彼(?)の出番なんですよね。ハエタタキの使い方自体は初演と同じなんですけど、ポスターに出た分、インパクトが増したような気がするのは気のせいでしょうか。一回、銀ちゃんが布団を窓から棄てるときに一緒に棄ててしまった回があって(汗)。銀ちゃんは、最初から何もなかったかのように自然に芝居をしていましたが、やっぱりハエタタキがないと物凄く物足りなかったんです(T T)。やっぱポスターに登場するだけのことはあるな、ハエタタキ。
ヤスのアパートに、小夏を連れてきた銀ちゃん。
4畳半のアパートに、真っ赤なドレスにサングラスをかけた小夏がいる、というシュールさ。
赤い座布団を差し出そうとして、つい裏返して、たたいて、ちょっと首をかしげて、一瞬周りを見回してから諦めて差し出すヤスが可愛くて可愛くてなりません。
畳に座る気はねぇよ、とばかりに、ゴミ箱をひっくり返してその上に座る銀ちゃんも。
銀ちゃん自身の衣装自慢の後、ヤスに昔あげた衣装を「着てみんかい」と無理やり着せるくだりは、初演がどうだったかは覚えていないのですが、舞台「蒲田行進曲」では、結構痛い場面だった記憶があります。
銀ちゃんが明らかにヤスを「笑いものにしよう」としていたし、ヤスも明らさまに「あんな変な衣装着たくねぇ…でも、スタァさんの言うことに逆らっちゃいけねぇ」という卑屈な気持ちで着こんでくるんですよね。「冬物ですけど」という台詞も、もっと不満で嫌そうだった記憶があります。
でも。
花組版「銀ちゃんの恋」が「タカラヅカだなあ」と思うのはこういうところなんですが。
なんか、祐飛さんとみつるくんだと、すごくほのぼのと可愛らしいんですよね。
銀ちゃんが心の底から悪戯っ子になりきって(←苛めっ子じゃなくて“悪戯っ子”ね)、「着てみろよ!(わくわく)」という、かっこの中が聞こえてくるくらい悪意なく楽しそうで。
で、ヤスはヤスで、あの服に(ブーツにも)疑問を抱いていないのが凄く可愛い。
銀ちゃんの衣装自慢も、本気で「カッコイイ~!俺もああいう服が着れるようになりたいなぁ…」くらい思っているんじゃないかと不安になるんですが……どうなんでしょうかそのあたりは。
「でもあれ、冬物ですけど」という台詞も、単純に疑問に思ったことを口にしただけで、『着るのが嫌だ』という印象があまりないし。
もともと銀ちゃんは、小夏を笑わせるために(思いつめているのを宥めるために)そんなことを言い出したわけで、ヤスを笑いものにしようという意図に変わりはないはずなんですけれども。
…あの嫌味のなさはいったいなんなんでしょうね。
そして、みつるくんのヤスの、『銀ちゃんと同じ価値観を持った俺』に対するリスペクト。銀ちゃんが言うなら、黒いカラスも白く見える、そんなヤスの、精神のありよう。
この場面のヤスがピュアであればあるほど、この後の悲惨な展開が“タカラヅカ”に近づいていく。
「蒲田行進曲」では、この時点でヤスは微かながらも『自分を抑えて』銀ちゃんに従っていることを自覚していた。
ある意味、銀ちゃんに従う自分に酔っていたといってもいい。
でも、みつるのヤスには、花組版「銀ちゃんの恋」のヤスには、それがない。
ピュアで、素直で、可愛いヤス。彼が銀ちゃんを慕うというのは、この時点ではまだ執着でも依存でもないんですね、今公演では。その思いは、まだ歪んでいない。優しいヤスが、思いやり深くて素直な心根のまま、銀ちゃんという子供みたいにわがままで悪魔だけど一途で可愛いスターに惚れてしまった、ただそれだけのこと、で。
だから。
この瞬間。
小夏、という存在が二人の間に押し込まれてくるこの瞬間まで、銀ちゃんとヤスの間は何の波風もなかったわけです。
ヤスは、十年間、自分を抑えて、何かを我慢して銀ちゃんに従っていたわけじゃない。
銀ちゃんが大好きで、映画が大好きで、『良い映画を創るために精一杯がんばっていたら、10年が過ぎてしまった』といのが、まぎれもない事実。
ちょっと話がずれるんですけれども。
「銀ちゃんの恋」には出てこないエピソードですが、ヤスには確か、主演経験もあったはず(その事実を銀ちゃんが虐めのネタに使ってた記憶があるんですけど)。それなりに実力派のスターだったことがあるわけです。
でも、そういう過去をもった男としてヤスを演じると、銀ちゃんの嫌味の一つ一つが本気で胸に刺さるんですよね。そ、そんなこと真顔で言っちゃうのか、という辛さ。
…人間の汚いところを曝け出して、初めて表現できるモノというのは、確かにあります。
「つかこうへい」という作家の紡ぐ物語は、わりとカウンセリング的な部分があって。
登場人物が、自分の汚いところ、嫌なところを全て観客の前に曝け出して、泣いて喚いてヤツアタリして……そして最後に、もう一度「裸の自分」と向かい合い、嫌っていた自分の嫌な部分ごと、全ての運命を受け止める、という展開が多い(←だから、痛いけど観終わった後はすっきりして、“明日からがんばるぞ!”と思える)のですが。
「蒲田行進曲」という舞台作品の痛さというのは、そういう痛さなんですよね。
そしてたぶん、石田さんが「タカラヅカ」に対するスパイスとして「つか作品」に求めたものも、そういうものなんだろうな、と思うのですが。
でも。
「タカラヅカ」は夢を現実に見せるところだから、どうしても「つか」流の大団円へ行き着くまでの過程に無理があるんですよね。
人間の汚い処から目を背けて生きていきたい人が観るものだから。
だから、「蒲田行進曲」ではなく、「銀ちゃんの恋」なんだと思う。
タイトルのワーディングにはあまり意味はないと思うんですけど(←どうせ石田さんだし)、群像劇(3人が主役)の「蒲田行進曲」から、タイトルロールと彼の物語を語る2人(事実上の主役)という構成の「銀ちゃんの恋」へ、という改変。
「蒲田行進曲」の、あけすけなまでに本音を吐きまくった舞台もホンモノだったし、
それをピュアな光で包んだ「銀ちゃんの恋」も、ホンモノだった。
どちらも、人を癒す力のあるものがたりだった。
祐飛さんが演じる銀ちゃんの、子供っぽい純粋さと、弱みを見せた相手への容赦のなさ。
みつるの演じるヤスのピュアさ、優しさ、素直さ、そして、弱さ。
そして、すみ花ちゃんの演じる小夏の、硬質な純粋さと、芯の強さ。
三人三様に、純粋で一途でまっすぐなんですよね。
それが凄く美しくて、眩しい。
三人三様に狂気を抱えてはいるんですけれども、それ以上にまっすぐなものがある。
だから、三人三様に、運命と闘って、受け入れて、そうして一歩を踏み出していく。
…ともあれ。
まだ話は始まったばかり。
銀ちゃんは、“妊娠4ヶ月の”小夏を、ヤスのアパートに置いて去る。
とある、夏の日。
小夏とヤスの間で、微妙なバランスを保っていた銀ちゃんが、
自分自身を壊しかねない一石を、三人の真ん中に投げた、
……暑い、夜。
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第三場B 銀四郎のソロ
…っていう場面タイトルだということを、たった今知りました(笑)。
前場ラストで、「やっぱり俺…主役じゃなかったんだな…」という、しょんぼりと肩を落とした銀ちゃんが、そのままの体勢で(ちょっと後ろ向きな感じで)歌いだす。
♪スターになるほど一人ぼっちだと
♪思い知らされて酒を呑む
…その、声が。
かすれきって限界が近い喉が、切なさを煽ってくれるんです……。それは計算なんですか!?と訊きたくなるくらい、色っぽい。
♪夢を売るため嘘をもつくさ
最初の幕が上がって以来、嘘しか喋っていない銀ちゃんに、そんなことを言われても。
…と突っ込んだあたりで、曲想がガラッと変わる。
♪それがスターの生きる道さ
アップテンポのノリのいいメロディラインを、あの切ないかすれ声で聴くのはちょっと辛いです。
声、使い分けるつもりで役作りしていたんだろうに、残念でなりません。…いつか、ディナーショーか何かの機会に思いっきり歌ってほしいです。あの衣装で!!
(←あ。誤解されている方多いと思うんですけど、祐飛さんって音程や滑舌はあやしいけど、声はちゃんと計算して創ってるんですよ!…たぶん)
そして、声が出ないから余計に聞き取りにくくなる歌詞。これが大事なのに!
♪俺が二枚目、俺が看板
♪俺より二枚目出さないでくれ
祐飛さんの銀ちゃんより二枚目な人なんて、どこにもいないから大丈夫だよ!
そう、真顔で声をかけたくなってしまう可愛らしさ。
♪俺が二枚目、俺が看板
♪脇役助演者遠慮してくれ
……本気でこんなことを思っているような役者には、口が裂けても言えない台詞だわカッコイイ、と思うのは、私がファンだから?(*^ ^*)。
実在する大空祐飛が、こういうキャラではないことは、「ししとう」でのさあやとか、この後の幕前でのさあやとか、階段落ち前のさあやとか、、、、じゃなくてっ!!ヤスとか、小夏とか、橘とか、トメさんとか、とにかく出演者全員が楽しそうに、やりたいように、やったもんがちで思いっきりガツガツと芝居を楽しんでいる姿を観ればわかることで。
たぶん銀ちゃんは、じゃない祐飛さんは、「お前らが何をしても、俺がいれば大丈夫なんだからな!」って言ってあげているんだろうな、と、勝手に思っています。
下級生たちがどんなことをやらかしても、祐飛さんには、それを銀ちゃんとして受けられる自信があるんだろうな、と。
気持ちいいくらいキッパリと、「おめーら好きなようにやっていいぞ!」と言ってあげているに違いない!と。
ただし、カメラの前は横切るな、と(^ ^)。。
たとえそれが、空元気であったとしても。
たとえそれが、強がりであったとしても。
痩せ我慢であったとしても。
銀ちゃんのそれは、明らかに空元気で、強がりで、痩せ我慢なんですよね。
っていうか、ツッパリきれなくて泣き言言っちゃうし、強がりきれなくて甘えちゃうし、痩せ我慢なんてできなくて皆に八つ当たっちゃうはた迷惑っぷりなんですけど。
でも、大空祐飛さんのそれは、本気っぽいところがすごいなあ、と。
邦さんと眉月さん、まりんさん以外は学年差(=経験値の差)が大きいから余裕が違うのもあるでしょうけれども、そういう格の違いは随所で感じるわけで。
タイトルロール、という尊称には、それだけの意味があるんだなあ、と思うわけです。
そして。
タイトルロールとして、こういう歌を歌って客席を盛り上げつつ、ちゃんとその中で
「うっそーん☆そんなこと考えてねぇよ!だって、俺より二枚目なんてこの世にいねぇし、脇役助演者が遠慮しなくたってどうせ俺しか見えねぇんだろうテメエら?」
という落ちを用意しているところが………
…石田さん。
「銀ちゃんの恋」って、再演なのにどうしてこうも宛書なんですか?
それとも、ノン(久世星佳)さんご自身が、あんなふうに自信過剰のどSだったとでも……?
第4場 ヤスのアパート
ヤスが、みどりいろのジャージに腹巻して、赤い靴下を履いて、自分の部屋にいる。
ヤスの部屋は、たしかどっかで4畳半って言ってた気がするんですが、ドラマシティは広いので8畳くらいある気がします。(4畳半って、成人が三人も入ったら3歩以上歩くの無理だから!)
頭に鍋(?)を被ったヤスが、なんか殺陣の練習っぽいことをしている。
そこに響き渡る銃声。ヤスは丁寧にその音を拾って撃たれた芝居をする。イメージとしては、カチコミに遭ったヤクザ者、って感じ。いきなり撃たれて、腹をおさえて…手についた紅い血をみて「なんじゃこりゃぁ~!」と叫びながら息絶える、という、ありがちな場面。
ヤスが倒れると、下手側の上がり框で、銀ちゃんが小道具の短銃(←まだ持ってたのか!?早く返さんかい!)にふっと息をかける。
もういまさら衣装についてはコメントしませんが、グラサンが渋くてかっこいいです。はい。
ちなみに。
このものすごい衣装は「コシノヒロコ、ジュンコ、ミチコのデザイナー三姉妹で全身固めてみたんだ」そうです。
が。
……せめて一人にしてください>銀ちゃん。
というか、いいんでしょうかこういう実名の使い方って……。長女のコシノヒロコさんは、「シニョールドンファン」で宝塚と組んだこともある方ですし、事前に了解は取っているんでしょうけれどども…。
いや、あの、その、個人的に「ミチコ」と言われると宙組の某スターさんを思い出して笑ってしまうんですけど…。みっちゃんのデザインかと思うと素直に納得できてしまう私を許してください。
あと、突っ込みどころとしては、ポスターにも登場していたハエタタキ。
ここが唯一の彼(?)の出番なんですよね。ハエタタキの使い方自体は初演と同じなんですけど、ポスターに出た分、インパクトが増したような気がするのは気のせいでしょうか。一回、銀ちゃんが布団を窓から棄てるときに一緒に棄ててしまった回があって(汗)。銀ちゃんは、最初から何もなかったかのように自然に芝居をしていましたが、やっぱりハエタタキがないと物凄く物足りなかったんです(T T)。やっぱポスターに登場するだけのことはあるな、ハエタタキ。
ヤスのアパートに、小夏を連れてきた銀ちゃん。
4畳半のアパートに、真っ赤なドレスにサングラスをかけた小夏がいる、というシュールさ。
赤い座布団を差し出そうとして、つい裏返して、たたいて、ちょっと首をかしげて、一瞬周りを見回してから諦めて差し出すヤスが可愛くて可愛くてなりません。
畳に座る気はねぇよ、とばかりに、ゴミ箱をひっくり返してその上に座る銀ちゃんも。
銀ちゃん自身の衣装自慢の後、ヤスに昔あげた衣装を「着てみんかい」と無理やり着せるくだりは、初演がどうだったかは覚えていないのですが、舞台「蒲田行進曲」では、結構痛い場面だった記憶があります。
銀ちゃんが明らかにヤスを「笑いものにしよう」としていたし、ヤスも明らさまに「あんな変な衣装着たくねぇ…でも、スタァさんの言うことに逆らっちゃいけねぇ」という卑屈な気持ちで着こんでくるんですよね。「冬物ですけど」という台詞も、もっと不満で嫌そうだった記憶があります。
でも。
花組版「銀ちゃんの恋」が「タカラヅカだなあ」と思うのはこういうところなんですが。
なんか、祐飛さんとみつるくんだと、すごくほのぼのと可愛らしいんですよね。
銀ちゃんが心の底から悪戯っ子になりきって(←苛めっ子じゃなくて“悪戯っ子”ね)、「着てみろよ!(わくわく)」という、かっこの中が聞こえてくるくらい悪意なく楽しそうで。
で、ヤスはヤスで、あの服に(ブーツにも)疑問を抱いていないのが凄く可愛い。
銀ちゃんの衣装自慢も、本気で「カッコイイ~!俺もああいう服が着れるようになりたいなぁ…」くらい思っているんじゃないかと不安になるんですが……どうなんでしょうかそのあたりは。
「でもあれ、冬物ですけど」という台詞も、単純に疑問に思ったことを口にしただけで、『着るのが嫌だ』という印象があまりないし。
もともと銀ちゃんは、小夏を笑わせるために(思いつめているのを宥めるために)そんなことを言い出したわけで、ヤスを笑いものにしようという意図に変わりはないはずなんですけれども。
…あの嫌味のなさはいったいなんなんでしょうね。
そして、みつるくんのヤスの、『銀ちゃんと同じ価値観を持った俺』に対するリスペクト。銀ちゃんが言うなら、黒いカラスも白く見える、そんなヤスの、精神のありよう。
この場面のヤスがピュアであればあるほど、この後の悲惨な展開が“タカラヅカ”に近づいていく。
「蒲田行進曲」では、この時点でヤスは微かながらも『自分を抑えて』銀ちゃんに従っていることを自覚していた。
ある意味、銀ちゃんに従う自分に酔っていたといってもいい。
でも、みつるのヤスには、花組版「銀ちゃんの恋」のヤスには、それがない。
ピュアで、素直で、可愛いヤス。彼が銀ちゃんを慕うというのは、この時点ではまだ執着でも依存でもないんですね、今公演では。その思いは、まだ歪んでいない。優しいヤスが、思いやり深くて素直な心根のまま、銀ちゃんという子供みたいにわがままで悪魔だけど一途で可愛いスターに惚れてしまった、ただそれだけのこと、で。
だから。
この瞬間。
小夏、という存在が二人の間に押し込まれてくるこの瞬間まで、銀ちゃんとヤスの間は何の波風もなかったわけです。
ヤスは、十年間、自分を抑えて、何かを我慢して銀ちゃんに従っていたわけじゃない。
銀ちゃんが大好きで、映画が大好きで、『良い映画を創るために精一杯がんばっていたら、10年が過ぎてしまった』といのが、まぎれもない事実。
ちょっと話がずれるんですけれども。
「銀ちゃんの恋」には出てこないエピソードですが、ヤスには確か、主演経験もあったはず(その事実を銀ちゃんが虐めのネタに使ってた記憶があるんですけど)。それなりに実力派のスターだったことがあるわけです。
でも、そういう過去をもった男としてヤスを演じると、銀ちゃんの嫌味の一つ一つが本気で胸に刺さるんですよね。そ、そんなこと真顔で言っちゃうのか、という辛さ。
…人間の汚いところを曝け出して、初めて表現できるモノというのは、確かにあります。
「つかこうへい」という作家の紡ぐ物語は、わりとカウンセリング的な部分があって。
登場人物が、自分の汚いところ、嫌なところを全て観客の前に曝け出して、泣いて喚いてヤツアタリして……そして最後に、もう一度「裸の自分」と向かい合い、嫌っていた自分の嫌な部分ごと、全ての運命を受け止める、という展開が多い(←だから、痛いけど観終わった後はすっきりして、“明日からがんばるぞ!”と思える)のですが。
「蒲田行進曲」という舞台作品の痛さというのは、そういう痛さなんですよね。
そしてたぶん、石田さんが「タカラヅカ」に対するスパイスとして「つか作品」に求めたものも、そういうものなんだろうな、と思うのですが。
でも。
「タカラヅカ」は夢を現実に見せるところだから、どうしても「つか」流の大団円へ行き着くまでの過程に無理があるんですよね。
人間の汚い処から目を背けて生きていきたい人が観るものだから。
だから、「蒲田行進曲」ではなく、「銀ちゃんの恋」なんだと思う。
タイトルのワーディングにはあまり意味はないと思うんですけど(←どうせ石田さんだし)、群像劇(3人が主役)の「蒲田行進曲」から、タイトルロールと彼の物語を語る2人(事実上の主役)という構成の「銀ちゃんの恋」へ、という改変。
「蒲田行進曲」の、あけすけなまでに本音を吐きまくった舞台もホンモノだったし、
それをピュアな光で包んだ「銀ちゃんの恋」も、ホンモノだった。
どちらも、人を癒す力のあるものがたりだった。
祐飛さんが演じる銀ちゃんの、子供っぽい純粋さと、弱みを見せた相手への容赦のなさ。
みつるの演じるヤスのピュアさ、優しさ、素直さ、そして、弱さ。
そして、すみ花ちゃんの演じる小夏の、硬質な純粋さと、芯の強さ。
三人三様に、純粋で一途でまっすぐなんですよね。
それが凄く美しくて、眩しい。
三人三様に狂気を抱えてはいるんですけれども、それ以上にまっすぐなものがある。
だから、三人三様に、運命と闘って、受け入れて、そうして一歩を踏み出していく。
…ともあれ。
まだ話は始まったばかり。
銀ちゃんは、“妊娠4ヶ月の”小夏を、ヤスのアパートに置いて去る。
とある、夏の日。
小夏とヤスの間で、微妙なバランスを保っていた銀ちゃんが、
自分自身を壊しかねない一石を、三人の真ん中に投げた、
……暑い、夜。
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コメント
私にとっては未知の部分が多い祐飛さんでしたが、祐飛さんの銀ちゃんは見ていて
きっと素敵な方なんだと思える銀ちゃんでしたね。
出演者全員が役になりきって生き生きしていて、本当にいいものを
見せてもらいました。
さあやちゃんはというと、盆踊りの歌手の美少女っぷりからはじけてる
秘書っぷりまでまるごと大好きです!って感じですね(笑)。
ちなみに初めての観劇で見てはいけない下手奥ですが、前列下手側で観ていた
私にはあれを避けるのは無理な注文でした(爆)。
あの場面はお笑いが大好きなさあやちゃんの本領発揮というべきか。
普段からおちゃめな方ですけど、あのスイッチの入り方はすごいですね。
では、引き続きみつきねこさん入魂のレポ楽しみにしてます。
やっとご覧になったんですね~♪♪おめでとうございます。さあやちゃん素敵だったでしょう~!!
「ししとう」の下手奥、ちなみに私はいつもそこしか観てません(笑)。だって、毎回やること違うんですもの!!見逃せませんよ!
浴衣の美少女、可愛いですよねぇ~(壊)。あそこで、太鼓を叩いていた輝良まさとくんと手をつないで出てくるところがめちゃくちゃツボです。ヤスや小夏が喋っている間もラブラブ2人で笑いあったり耳元で囁いたりしていて、すごい可愛いし。あんな美少女ゲットしてるなんて、羨ましいぞ輝良くん!って反射的に思っちゃいます(^ ^;