ル・テアトル銀座にて、湖月わたる芸能生活20周年記念公演「ACHE〜疼き」を観劇してまいりました。


作・演出は大野拓史。
大野さんの外部作品は初めて観た……のかな?私は。
しかも、芝居作品ではなくて、芝居付のショーという感じの構成。

大野さんのショーって、案外いいかも、と思いました。
荻田さんが神童系の天才(クリエーター)であるとするならば、大野さんはオタク系の天才なんだな、と(そして、石田さんは天才に憧れる普通の人なんだな、と…っていうのはまた全く別の話ですが)

出演者は、宝塚OGの彩輝なおと星奈ゆり。これにダンサーの附田政信と坂本まさる、そして芝居部分のみですが、ミュージカル俳優の戸井勝海、これにワタルさんを加えた6人。

振付は前田清美さんがメインで、御織ゆみ乃さん。
音楽は、玉麻尚一さん、長谷川雅大さん。
プログラムを買わなかったので、どの曲が誰、というのがわからないのですが、とりあえず主題歌(湖月わたる作詞)が素晴らしかったです。
ワタルさんって割と音域が狭い人だと思うんですけど、どんぴしゃの音域だけでもあんなにステキな音楽が作れるんだなー、と感心しました。正直な話、ワタルさんの歌を「ステキ♪」と思ったことはあんまりなかったんですけど、今回の主題歌は素直に良かったです。

作品は、ショー部分と芝居部分が半々くらいの割合で構成されていて、、、

お芝居部分のストーリーを説明してもかなり意味不明なんですけど(苦笑)、観ている分には面白かったです。
サエコさんの使いかたが見事で、さすが大野さんだなあ、という印象。「豊満な美女」と「妖しげな美少年」を、二役?二面性のある役?として演じるサエコさんは、本当に素晴らしかった。あのちょっと上擦ったような独特の声が色っぽくて、一幕ラストにワタルさんに向かって「もう忘れてしまったの?……僕を」を問いかけるところで、ゾクゾクっときました。



優里ちゃんは、サエコさんと対すると、余計にその硬質な美しさが映えますね。
オープニングから優里ちゃんとサエコさんが二人で踊っているんですが、とても印象的でした。優里ちゃんの優雅な仕草やスカートさばきに比べて、ダイナミックにスカートをフッ飛ばし、美脚を丸出しにして踊っているサエコさんの思い切りの良い美しさも捨て難くて。

二人が並んでいるところって初めて観たような気がするのですが、とてもお似合いでステキ♪
76期って本当に面白い期だったんだなあ、としみじみと思いますね。優里ちゃん、サエコさん、樹里ちゃん、優子姫(風花)、グン(月影瞳)ちゃん。…実に実に、バラエティに富んだ見事な期ですよね。
その中でも、優里ちゃんは、退団してから「優雅さ」に磨きがかかって、本当にうつくしいダンサーだな、と観るたびに感動します。




ワタルさんは、全編“ほぼ男役”で通されたのですが。
一幕ラストのダンスナンバーと二幕の頭は女性設定でした。

ちょっと感激したのは、一幕のラスト。
そもそもワタルさんの役は「舞台の上のスター」という役どころだったので、登場からそこまでずっと、細身のパンツに白いシャツ、そして白のかっこいいロング丈の上衣を着ていたのですが。
この上衣がかっこよくて。ホンモノの「男」である戸井さんたちよりも男らしい。背が高いだけじゃなくて、身体のラインが完全に“男”に見えるんですよね。肩幅も、出演者の誰よりもワタルさんが広かったんですよ(^ ^)。

その上衣を、ダンスナンバーの中で戸井さんが脱がせる。
すると。

細い肩を白い薄いシャツに包んだ、女性のラインが現れる…。


大野さんってひとは、こういう魔法を使う人なんだな、と。


実際に衣装を作るのはもちろん、衣装の有村さんなんでしょうが。その発想というか、「上衣を着ているときは誰よりも男らしくかっこいいスター」で、「上衣を脱ぐと、たおやかな女性」という、ギリギリのところを攻めて来たのは大野さんなんだろうな、と思ったのです。



二幕の頭は、うってかわって完全に女性の服。
パンツルックだけど、ギリシア風のドレープのたっぷり入ったやわらかな風合いのブラウスで、“美少年”サエコさんを翻弄する「どS」の女神
胸元もしっかり創りこんで(←ちょっと盛りすぎかも…)、女性らしいライン、まさに“女神降臨”という迫力。


ワタルさんは、「男でもあり、女でもあるもの」。
サエコさんは「男でも女でもないもの」。
優里ちゃんは「完全なる女」。
そして戸井さんは、「不完全な男」。

この4人が織り成す、この世の外の物語。

物語としては観念的にすぎていまひとつでしたけれども、全体を一つのショーと捕えれば、色っぽくてとても面白い作品だった、と思います。


二幕の後半は、完全に「湖月わたる OnStage!」。

途中で「トーク&会場の皆様からの質問コーナー」というMCがあって。私が観たときは、サエコさんが相手をしていたんですけど(日替わりっぽいことを言ってましたが…)、ワタルさんと喋るサエコさん、めちゃくちゃ可愛かったです(はぁと)。



全編を通して、ワタルさん格好いいなぁ〜、と、素直に思える作品でした。
個人的には、ワタルさんといえば美脚なので(←お前だけだ)披露してくれなかったのがとっても残念ですが(←期待しすぎ)、
“漢”なワタルさんと“女神”なワタルさん、ふたりのワタルさんにいっぺんに会える、幸せなショーでした。

ふつーに“男役”をするんなら、宝塚を退団する必要が無いじゃないか、とか思っていた私ですが、
やはりホンモノの男性を相手に「男役」をやれる人というのはとても少ないし、そういう意味では、ワタルさんにしか出来ないショーだなあ、と、しみじみ思いましたね。

……戸井さん以外にも、あとせめて一人、歌える人がいたら、もっと良かったのになあ(^ ^;;;、なんぞとも思いつつ。
歌唱指導に入っていた千秋慎さんも、出てくれたらよかったのになーーーーーっ。




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