バウホールにて、宙組さんのワークショップ「殉情」を観てまいりました。


Aチーム、ちぎ(早霧せいな)ちゃんの佐助バージョン。
…公演が終わる前に感想を書こうと思っていたのですが、あっっっという間に楽になってしまいました……ごめんなさい。
(千秋楽、おめでとうございま〜す!!)



まずは、主なキャストから。
()内は再演(雪組DC/ACT)版キャストです。初演(星組バウ)は観ていないので割愛。

<もずや>
佐助(絵麻緒ゆう) 早霧せいな
琴(紺野まひる)  和音美桜

琴の父(飛鳥裕)  風莉じん
琴の母(灯奈美)  彩苑ゆき
番頭(麻愛めぐる) 暁郷

<現代>
マモル(音月桂)  凪七瑠海
ユリコ(涼花リサ) 天咲千華
石橋(風早優)   八雲美佳

<美濃屋>
利太郎(箙かおる) 寿つかさ
お蘭(森央かずみ) 純矢ちとせ
千吉(貴船尚)   麻音颯斗


こうしてキャストを書くために再演プログラムを引っ張り出してみて、あらためて自分の記憶力の無さに驚きました。
……そっか、マモルとユリコって、ACTではキムちゃんとリサちゃんだったのか!!(@ @)。なんだか、これの1年くらい前に上演した「猛き黄金の国」の現代人3人(美郷真也、朝海ひかる、愛耀子)と完全にごっちゃになっていて、こっちもコム&アミだと思い込んでいました……(汗)。全然違うじゃん>自分

うおおお、キム&リサ……ってことは、キムちゃんはともかく、リサちゃんを最初に認識したのはこの作品だったはず!可愛かったか?可愛かったよなっ!?

……覚えてなーーーーーいっ!!(←どうよソレ/涙)。




さておいて。

観に行って良かったです。
ほんとうに、おもしろかった。

元々この作品、構成的にはいろいろ不満もありますけれども、やっぱり石田さんって締める所は締めるんだなー、というか。
私は本来、“説明役”がいるお芝居ってあまり好きではないんですが、石田さんの説明役って「一つの役として」過去の物語に関する薀蓄を語るタイプの役になるから、比較的我慢しやすいんですよね。
それでも、ラストシーンの前後の石橋先生の語りはいらんやろ、とは思うのですが(特に、ネタバレになる場面直前のは、Bチームからでも遅くないから削除希望!)……まぁ、許容範囲かな、と。


しかし。

本当に難しい作品なんだなーーーっ、とも思いました。

作品、っていうか、佐助って本当に難しい役だよね、と。




えーっと、ですね。

ちぎちゃんと、たっちん。この二人って、同期なんですよね?

とてもそうとは思えないほど、
観ていてオロオロしてしまうほど、たっちんが可愛かったです。

多分、ですが。
ものすごく意識して、子供っぽい役づくりをしていたんじゃないでしょうか。表情も、喋り方も、声も、何もかもが終幕ぎりぎりまで“子供”のままだったから。
あえて「子供を生んだ」という事実を捨てて、「子供を捨てた子供」であることを選んだ演技プランだったんじゃないかなー、と。


演技巧者のたっちんが、あそこまで作り込んで始めて為せる、「心は子供のまま」の天才少女でした。



そして。
それに対するちぎちゃんは。



もの凄くハンサムで、カッコよくて、優しくて、甘やかで、大人で、

典型的な二枚目で、

声がステキで、

そして、


攻め系の佐助だった


そ、それってアリなのか………!?と、驚愕の2時間半。



…アリでした。





ラストの石橋の台詞。

これまた同期のきみちゃんが、しみじみと呟くように言う、
「愛という名のロープで縛られたのは、春琴の方だったのかもしれない」



なるほど、ポン!と手を叩きそうになりました。





あえて、再演のぶんちゃん&まひるちゃんを思い出してみます。

ぶんちゃんってひとは、典型的な受身の役者でした。
竜馬をやっても受身。
トップスターになっても受身。

常に受動的な、運命のままに流されていく存在。

……竜馬をそれでやってのけたぶんちゃんって偉大だったよなあ、と、今更ながらしみじみと思ったりするわけですけれども。



佐助は、そんなぶんちゃんの受身キャラが全面的に出た役だったんですよね。
当たり役と言われ、私も大好きでしたし、実際ほんとうに素晴らしかった!

でも。

最後の石橋の「ロープで縛られたのは…」という台詞だけが、違和感があったんです…。



サディズムとマゾヒズムについて、なんて、偉そうに語るほどの知識も経験も(←当たり前だ)無いんですけれども。
でも、一つだけいえることは。

虐げられることを無条件に好む人、傷つけられることが無条件に快感につながる人というのは、滅多に存在しないと思うのです。

重要なのは、虐げるのが誰かということ。
『主君』であったり、あるいは『憧れの人』であったり…
とにかく、手の届かない、横に並んで歩くことのできない、肩を並べて歩くことのできない人が、自分に関心を持ってくれている証として、“せめて、虐待でもいいから”何事かのアクションがなされることを期待する…それが、“被虐”の一つの意味だと思うのです。


逆に、無条件に虐待することに愉しみを覚える人もあまりいないのではないでしょうか?
「愛情」の反対は「無関心」なのであって、「虐待」は愛の反語にはなりません。それは、愛の裏返しなのです。ちょっと子供っぽい心性ではありますが、「好きな子ほど苛めたい」というのは誰の心にもある悪戯心だと思うのです。


だから。

ぶんちゃんの佐助で一番印象的だったのは、全編とおして、非常に幸せそうだったこと、でした。
愛する春琴にどんなに怒られても、傍にいられるだけで幸せそうで。
羽織なんて貰っちゃったひには、天まで飛んでいきそうな勢いでした。

「春琴が好き」っていう感情を表に出すことができない(主君だから)にも関わらず、「幸せ」オーラを常に背負いつづけることで「主君への愛情」を表現してのけた。
それが、ぶんちゃんの佐助のすごいところだったと思います。

そしてそれは、佐助が「春琴」という運命を受け入れていたからなのではないか、と。
奉公にあがると決まったときに与えられた、“彼女の傍で生きる”という運命の流れの中で、泰然と生きていたから。

だから。
ぶんちゃんの佐助は、ラストに目を突くのがすごく自然だった。
芝居としては怯えるそぶりはするけれども、彼の心に「犠牲心」は無かった。ただ、運命の命ずるがままの行動だった。


……だからこそ、「念願叶い、いまこそ佐助は…」という痛々しい台詞を、何の気負いも衒いもなく言えたのだと思うのです。


ぶんちゃんの佐助は、与えられた運命の中で与えられた愛を受け入れるばかり。
その「受け入れ」っぷりに、主人である春琴の方が不安を覚えることが、「愛に縛られたのは春琴の方」という言葉の意味であるならば。
ぶんちゃんの佐助よりも、佐助に縛られた春琴の方が苦しかったのではないでしょうか。春琴は佐助に縛ってほしかったのに、佐助はそれ以外の全てを与えてくれたのに、それだけは出来なかっただろうから。



そして。
ちぎちゃんの佐助は、春琴の傍で生きることを能動的に選んだ佐助に見えました。

だから、ラストに目を突くのも、佐助の選択の結果だった。それこそ、「究極の愛」で、「究極の犠牲」だった。


「念願叶って…」と言いながら、ちぎちゃんの佐助は泣いていましたね。
自分自身の全てを捧げて、全ての感情が爆発した後の、空白の中で。



ぶんちゃんに無かった選択肢が、ちぎちゃんにはあった。
春琴を選ぶか、商人になるか、その二つの道を選ぶ権利、が。

でも。こんな選択肢は、無いほうが幸せなんです。運命ならば、受け入れてしまった方が楽だから。だから、ぶんちゃんの佐助は幸せだったし、ちぎちゃんの佐助は、ずっと苦しそうだった。



たとえば、この作品世界には出てこない「佐助の父親」が、万が一佐助を迎えに来たとしたら。
ぶんちゃんの佐助は、素直に郷里に帰ったかもしれない、と思うんですよね。春琴が帰るように言えば、ですけれども。
…そして、春琴は壊れてしまうのかもしれません。

でも。
ちぎちゃんの佐助は、絶対に帰らないでしょう。無理矢理帰らせれば、壊れるのは佐助の方。
だって、佐助はもう選んでしまったのだから。春琴の手を引く一生、を。


そんな。
同じ「佐助」という役で、
台詞が「へぇ」「すんまへん」ばっかりなのも同じ、
常に腰を屈めて、うつむきがちなところも、何もかもおんなじで、

こんなに違う人物設定が、アリだったとは。



これは、単純に役者のキャラクターの違いなのか、

石田さんの演出、というか、イメージそのものが変わったのか?



それを確認するためにも、ちーちゃん版も観てみたかったなー(すでに過去形)と思いながら帰って参りました…。

……ちーちゃんの方が、ちぎちゃんよりもっと攻め系キャラに見えるのは…気のせい、かなっ!?(^ ^)。いったいぜんたい、どんな佐助に(そして、どんな春琴に)なるんでしょうか……。







それにしても。
私って再演を心底楽しんでいるなあ、としみじみ思った帰路でした(^ ^)。
いつの日か「HOLLYWOOD LOVER」が再演される日がきても、「血と砂」が再演される日がきても、こんなふうに愉しんで受け入れられる自分でいたいなあ、と思います♪
(な、なんだか突然の決意表明ですみません………)


コメント

nophoto
hanihani
2008年7月11日19:02

ぶんちゃんに公演前に色々と聞き、観に来てくれた時には
ぶんちゃんが細かく教えてくれたとお茶会で話したそう。

ちぎちゃん、今は貪欲に勉強していますよね〜
こういうところも「攻め」なのかも(笑)
ちーちゃんも楽しみです(19日に日帰りで行くぞっ!)

みつきねこ
みつきねこ
2008年7月11日23:33

私が観た回が、ちょうどぶんちゃんも観ていた回だったみたいなので、いつもとはテンションが違っていたかもしれませんね。
ステキでした、ちぎちゃん。歌はアレでしたけど(^ ^;。
植田景子作品、ちょっと期待してしまいますね♪

19日かーーーー、いいなあ(T T)。私の分まで、ちーちゃんにエールをお願いします!!