だいぶ昔のことになりますが。(ちょうど一ヶ月前だわ)
天王洲の銀河劇場にて、「Cali 〜炎の女・カルメン」を観てまいりました。
TSミュージカルファンデーション作品なので、演出・振付は当然謝珠栄。
脚本は小手伸也さん、音楽(歌唱指導も)は林アキラさん。
「タンビエットの唄」以来のTS。
また全然違う傾向の作品でしたが、非常に興味深かったです。
謝さん的には、「激情」を演出していたときからあたためていたネタなんでしょうかねぇ……。おハナさまのカルメンを思い出して、感慨もひとしおでした。
キャストは以下のとおり。
カルメン :朝海 ひかる
語り手
ジャン :今 拓哉(メリメの甥、という設定でした)
ビゼー :戸井 勝海(実は…という設定あり)
カルメンを愛した男たち
ホセ :友石 竜也
スニーガ隊長:宮川 浩
ガルシア :天宮 良
ヘンリー :野沢 聡
盗賊団員
ダンカイーレ:平野亙
レメンダード:良知真次
オマール :東山竜彦
ファニト :三浦涼
林アキラさんの音楽は随分久しぶり(←タナボタ以来)でしたが、相変わらず耳にも心にも優しい美しい旋律の連続で、うっとりでした。
歌唱力のあるメンバーが揃っていたので、厚みがあってとても良かったです♪いやー、TSは良い人が集まりますよね、本当に。それだけ良い作品を作り続けていて、評価が高いってことなんでしょうね。
「カルメン」。
メリメの書いた小説。名作だけに、いろんなメディアで取り上げられ、作品化されていますが。
すべて、タイトルロールはカルメン、相手役はホセ、という構造は変わらず。
オペラでは、一幕はスニーガ、二幕はエスカミリオが恋敵役。
あとはジプシー仲間くらいで、ガルシアもヘンリーも殆ど出てきません。
宙組の、というか柴田さんの「激情 −ホセとカルメン−」では、二番手のタカコさんがメリメとガルシアを二役で演じ、三番手のワタルさんがエスカミリオ。樹里ちゃん以下は盗賊団でした。こちらもヘンリーのエピソードはなし。
謝さんの「Cali」は、スニーガ、ガルシア、ヘンリーと、ホセの嫉妬心の犠牲になった3人の男をメインに取り上げて、エスカミリオは登場せず。
最初にプログラムを観たとき、エスカミリオを出さないでどうすんだ!!と思ったのですが。
いやー、見事な落ちでした。謝さん、ブラボー。
ちなみに、スニーガはホセが所属する軍隊の隊長。ガルシアは盗賊団の首領でカルメンの夫。ヘンリーは、カルメンがその財産を手に入れるために近づいて籠絡しようとする金持ち男。
全員、嫉妬に狂ったホセによって殺される男たち。
えーっと。
一言で説明するならば。
非常に斬新な、新解釈のカルメンでした。
ものすごく面白かったです。
コムちゃんのカルメンは素晴らしかったし!歌もよかったよ!(←なぜ字が小さいんだよ?>猫)
ただし。
カルメンの死まで、で終わらせればもっと良かったのに、と、残念でなりません。戸井さんファンの一人として、彼の見せ場に文句をつけるのは非常に心苦しいのですが(←役者本人は悪くなかったから余計に)、
後半のメリメとビゼーの論争は蛇足だろうがっ!!
それこそ、「堕天使の涙」の金斗雲くらい蛇足だったと思います。(←そ、それはさすがに…)
謝さんが組み立てたカルメンが、本編そのままで十分素晴らしかっただけに。
心情表現力の弱いコムさんが、黒い肌とキツいメークに助けられて、つれない台詞の裏の女心を、隠し切れないホセへの深く濃い愛情を存分に表現していただけに!
メリメとビゼーが“カルメンの愛”の意味を説明しようとするのが、ウザくてたまりませんでした。(ごめんなさい)
後半の論争部分を全部削除して、ネタばれみたいに繰り返される解説シーンを本編の中に「物語」としてうまく入れ込んで、
「溢れんばかりに愛情豊かなカルメン」という新解釈のカルメン像を、普通に作品として表現すればよかったのに。
だって私は、後半のネタバレ解説場面なんて見なくたって、カルメンがホセに向かって言う台詞がいちいち泣けて泣けて、本編のラストは号泣してましたよ?
あれで、十分に表現できていたと思うのです。本能のままに男を愛し、守り抜こうとする母性に溢れた大地の女神が。
ビゼーがオペラで描いたカルメンは、ファム・ファタルでした。
決してただの“魔性の女”ではないんだけど。でも、「ファム・ファタル」だった。
自分が、愛した男を幸せにすることのできない女だと知っていた。
束縛を嫌い、自由がないと生きられない小鳥のような女。
自分が自分自身であるために、愛も恋も投げ捨てて、自分の道を貫き通す。そのためにはどんな犠牲もいとわない。
愛なんて一時の気の迷い。なくては生きていけないけど、続くものじゃない。そんな刹那的な人生論。
でも、違う。
謝さんのカルメンは、違う。
メリメのカルメンは、愛した男を幸せにするために全てを捧げる女だという新解釈。
自分の幸せも、身体も、大事なものなど何もない。ただ、愛する男が、ホセがいればいい。
ホセのために。
ただ、ホセを幸せにするためだけ、に。
以前東宝で上演された「カルメン」(大地真央主演、ホセはニッキ)では、たしかカルメンがホセの幸せのために自ら身をひいて金持ちの家へ行き、ホセを田舎に帰らせる、という、
椿姫みたいなエピソードが入っていましたが。
(今回の舞台の、ヘンリーのエピソードか?)
そんな中途半端な自己犠牲とは真逆の、
荒野を生きる、野生の狼のような女。
狼は、“自由を愛する生き物”ではありません。
彼らは常に小さな血縁集団を形成し、群れることで自分より大型の草食動物を狩ることができるようになったのですから。個体の、集団に対する忠誠心は絶大なんです。一夫一婦制を守り、自由行動など絶対にありえない。
また、ものすごく頭がよくて環境適応力が高く、学習能力も高いのだそうです。
狼といえば、ふらふらと出歩いて赤頭巾ちゃんを襲う、そんな生き物、というイメージですが。
実在する「オオカミ」という生き物は、小さなパーティ単位で狩をする群れ生活者であり、忠誠心の高い、愛情深い生き物なのです。
“カルメン”は、そういう女なのだ、と。
「犬と狼は一緒には暮らせないんだよ」
繰り返しカルメンが口にする、この台詞。
台詞自体は柴田さんの「激情」の脚本にもありましたので、メリメの小説にある言葉なんでしょうね。
普通に解される「荒野でも一人で生きていける一匹狼」的イメージで理解されると、カルメンの本質を見失うのかなー、と思いました。
そして。
敬虔なキリスト教徒である“ホセ”は、荒野の生き物ではなかった。
彼はあくまでも柵の中で世話されて生きている羊であり、荒野で生きていくことはできない。
カルメンを“自分の付属物”としか考えられず、彼女が彼女自身の意思で男を守ろうとすることなど想像もできない。
信じられないのではなく、想像できないのです。
そういうふうに、自律的に物事を考えることのできる女、という存在を。
赦せないのかもしれない。男を守ろうとする女が。
…男よりも先を歩こうとする、女が。
柵の中の羊は、案外凶暴です。
牧羊犬を蹴り殺したりすることもあるらしい。
犬は自分の仕事を知っているから、抵抗できないんですね。
自分の能力(本来は羊を食う生き物だということ)を、知っているから、歯止めがかかってしまう。
ホセを“守る”ことを優先して、自分の身を守らなかった女。
ホセの誤解を解くよりも、ホセを守ることを優先した、女。
たぶんそれは、ホセがそこまで判っていないと思わなかったから、なんですよね。
自分の“愛”が、深すぎて重たすぎて、子供には理解できない愛だということを。
そして。
コムさんのカルメンも素晴らしかったけど、
友石さんのホセがまた、それはそれは素晴らしかったです!
もし再演するのならば、この二人は外さないでほしい(^ ^)。
あり得ないほど体育会系。
そして、のうみそまで筋肉。
そんな言葉が、観ている間中、頭の中をくるくると……(^ ^;ゞ
聡明で視野が広くて経験豊富な“カルメン”という女を、ただ子供が母親を慕うように恋しがるだけで、
母親が自分の仕事をすることが赦せなくて、自分のそばで自分のごはんを作って頭を撫でる以外のことをするのが許せなくて、怒り狂う子供。
自分のごはんをつくるためには、材料を買ってこなくてはならないことも知らずに。
そんな、
「荒野を生きていく」能力のない男。
カルメンの100倍くらい、本能的に生きている、男。
……大好きだ♪友石くん、「ライオンキング」も良かったけど、こういう“のうみそまで筋肉”系のマッチョ男は最高にかっこいいです。歌も迫力、芝居も迫力!
最後に、毅然と胸を張って刃を待つカルメン。
自分の愛に自信があるから。
自分の行動に迷いがないから。
ホセがどんなに莫迦で阿呆でも、あたしは彼のそんなところもひっくるめて愛してる、と言い切れる強さ。
あまりにも無自覚で盲目的な、母性的な、愛。
背を丸めて、卑屈な目をして刃を突き立てるホセ。
自分の愛に自信がないから。
自分の行動に、確信がないから。
すべてをカルメンのせいにして、
カルメンがすべて悪いんだと言い聞かせて、
自分に「悪しき言の葉」を囁きかけるサタンを撃退するように。
多分、カルメンに向けた刃は“魔避けの銀のナイフ”なのだろう。
…彼にとっては。
カルメンという魔に魅入られた自分を、守るために。
そして、
牢の中で、彼は叫ぶ。
「カルメン!!」
未来永劫、叫び続ける。
「俺を見ろ!俺を愛せ!」
……と。
他の誰よりも深く愛されていたことに、気づこうともせずに。
.
天王洲の銀河劇場にて、「Cali 〜炎の女・カルメン」を観てまいりました。
TSミュージカルファンデーション作品なので、演出・振付は当然謝珠栄。
脚本は小手伸也さん、音楽(歌唱指導も)は林アキラさん。
「タンビエットの唄」以来のTS。
また全然違う傾向の作品でしたが、非常に興味深かったです。
謝さん的には、「激情」を演出していたときからあたためていたネタなんでしょうかねぇ……。おハナさまのカルメンを思い出して、感慨もひとしおでした。
キャストは以下のとおり。
カルメン :朝海 ひかる
語り手
ジャン :今 拓哉(メリメの甥、という設定でした)
ビゼー :戸井 勝海(実は…という設定あり)
カルメンを愛した男たち
ホセ :友石 竜也
スニーガ隊長:宮川 浩
ガルシア :天宮 良
ヘンリー :野沢 聡
盗賊団員
ダンカイーレ:平野亙
レメンダード:良知真次
オマール :東山竜彦
ファニト :三浦涼
林アキラさんの音楽は随分久しぶり(←タナボタ以来)でしたが、相変わらず耳にも心にも優しい美しい旋律の連続で、うっとりでした。
歌唱力のあるメンバーが揃っていたので、厚みがあってとても良かったです♪いやー、TSは良い人が集まりますよね、本当に。それだけ良い作品を作り続けていて、評価が高いってことなんでしょうね。
「カルメン」。
メリメの書いた小説。名作だけに、いろんなメディアで取り上げられ、作品化されていますが。
すべて、タイトルロールはカルメン、相手役はホセ、という構造は変わらず。
オペラでは、一幕はスニーガ、二幕はエスカミリオが恋敵役。
あとはジプシー仲間くらいで、ガルシアもヘンリーも殆ど出てきません。
宙組の、というか柴田さんの「激情 −ホセとカルメン−」では、二番手のタカコさんがメリメとガルシアを二役で演じ、三番手のワタルさんがエスカミリオ。樹里ちゃん以下は盗賊団でした。こちらもヘンリーのエピソードはなし。
謝さんの「Cali」は、スニーガ、ガルシア、ヘンリーと、ホセの嫉妬心の犠牲になった3人の男をメインに取り上げて、エスカミリオは登場せず。
最初にプログラムを観たとき、エスカミリオを出さないでどうすんだ!!と思ったのですが。
いやー、見事な落ちでした。謝さん、ブラボー。
ちなみに、スニーガはホセが所属する軍隊の隊長。ガルシアは盗賊団の首領でカルメンの夫。ヘンリーは、カルメンがその財産を手に入れるために近づいて籠絡しようとする金持ち男。
全員、嫉妬に狂ったホセによって殺される男たち。
えーっと。
一言で説明するならば。
非常に斬新な、新解釈のカルメンでした。
ものすごく面白かったです。
コムちゃんのカルメンは素晴らしかったし!歌もよかったよ!(←なぜ字が小さいんだよ?>猫)
ただし。
カルメンの死まで、で終わらせればもっと良かったのに、と、残念でなりません。戸井さんファンの一人として、彼の見せ場に文句をつけるのは非常に心苦しいのですが(←役者本人は悪くなかったから余計に)、
後半のメリメとビゼーの論争は蛇足だろうがっ!!
それこそ、「堕天使の涙」の金斗雲くらい蛇足だったと思います。(←そ、それはさすがに…)
謝さんが組み立てたカルメンが、本編そのままで十分素晴らしかっただけに。
心情表現力の弱いコムさんが、黒い肌とキツいメークに助けられて、つれない台詞の裏の女心を、隠し切れないホセへの深く濃い愛情を存分に表現していただけに!
メリメとビゼーが“カルメンの愛”の意味を説明しようとするのが、ウザくてたまりませんでした。(ごめんなさい)
後半の論争部分を全部削除して、ネタばれみたいに繰り返される解説シーンを本編の中に「物語」としてうまく入れ込んで、
「溢れんばかりに愛情豊かなカルメン」という新解釈のカルメン像を、普通に作品として表現すればよかったのに。
だって私は、後半のネタバレ解説場面なんて見なくたって、カルメンがホセに向かって言う台詞がいちいち泣けて泣けて、本編のラストは号泣してましたよ?
あれで、十分に表現できていたと思うのです。本能のままに男を愛し、守り抜こうとする母性に溢れた大地の女神が。
ビゼーがオペラで描いたカルメンは、ファム・ファタルでした。
決してただの“魔性の女”ではないんだけど。でも、「ファム・ファタル」だった。
自分が、愛した男を幸せにすることのできない女だと知っていた。
束縛を嫌い、自由がないと生きられない小鳥のような女。
自分が自分自身であるために、愛も恋も投げ捨てて、自分の道を貫き通す。そのためにはどんな犠牲もいとわない。
愛なんて一時の気の迷い。なくては生きていけないけど、続くものじゃない。そんな刹那的な人生論。
でも、違う。
謝さんのカルメンは、違う。
メリメのカルメンは、愛した男を幸せにするために全てを捧げる女だという新解釈。
自分の幸せも、身体も、大事なものなど何もない。ただ、愛する男が、ホセがいればいい。
ホセのために。
ただ、ホセを幸せにするためだけ、に。
以前東宝で上演された「カルメン」(大地真央主演、ホセはニッキ)では、たしかカルメンがホセの幸せのために自ら身をひいて金持ちの家へ行き、ホセを田舎に帰らせる、という、
椿姫みたいなエピソードが入っていましたが。
(今回の舞台の、ヘンリーのエピソードか?)
そんな中途半端な自己犠牲とは真逆の、
荒野を生きる、野生の狼のような女。
狼は、“自由を愛する生き物”ではありません。
彼らは常に小さな血縁集団を形成し、群れることで自分より大型の草食動物を狩ることができるようになったのですから。個体の、集団に対する忠誠心は絶大なんです。一夫一婦制を守り、自由行動など絶対にありえない。
また、ものすごく頭がよくて環境適応力が高く、学習能力も高いのだそうです。
狼といえば、ふらふらと出歩いて赤頭巾ちゃんを襲う、そんな生き物、というイメージですが。
実在する「オオカミ」という生き物は、小さなパーティ単位で狩をする群れ生活者であり、忠誠心の高い、愛情深い生き物なのです。
“カルメン”は、そういう女なのだ、と。
「犬と狼は一緒には暮らせないんだよ」
繰り返しカルメンが口にする、この台詞。
台詞自体は柴田さんの「激情」の脚本にもありましたので、メリメの小説にある言葉なんでしょうね。
普通に解される「荒野でも一人で生きていける一匹狼」的イメージで理解されると、カルメンの本質を見失うのかなー、と思いました。
そして。
敬虔なキリスト教徒である“ホセ”は、荒野の生き物ではなかった。
彼はあくまでも柵の中で世話されて生きている羊であり、荒野で生きていくことはできない。
カルメンを“自分の付属物”としか考えられず、彼女が彼女自身の意思で男を守ろうとすることなど想像もできない。
信じられないのではなく、想像できないのです。
そういうふうに、自律的に物事を考えることのできる女、という存在を。
赦せないのかもしれない。男を守ろうとする女が。
…男よりも先を歩こうとする、女が。
柵の中の羊は、案外凶暴です。
牧羊犬を蹴り殺したりすることもあるらしい。
犬は自分の仕事を知っているから、抵抗できないんですね。
自分の能力(本来は羊を食う生き物だということ)を、知っているから、歯止めがかかってしまう。
ホセを“守る”ことを優先して、自分の身を守らなかった女。
ホセの誤解を解くよりも、ホセを守ることを優先した、女。
たぶんそれは、ホセがそこまで判っていないと思わなかったから、なんですよね。
自分の“愛”が、深すぎて重たすぎて、子供には理解できない愛だということを。
そして。
コムさんのカルメンも素晴らしかったけど、
友石さんのホセがまた、それはそれは素晴らしかったです!
もし再演するのならば、この二人は外さないでほしい(^ ^)。
あり得ないほど体育会系。
そして、のうみそまで筋肉。
そんな言葉が、観ている間中、頭の中をくるくると……(^ ^;ゞ
聡明で視野が広くて経験豊富な“カルメン”という女を、ただ子供が母親を慕うように恋しがるだけで、
母親が自分の仕事をすることが赦せなくて、自分のそばで自分のごはんを作って頭を撫でる以外のことをするのが許せなくて、怒り狂う子供。
自分のごはんをつくるためには、材料を買ってこなくてはならないことも知らずに。
そんな、
「荒野を生きていく」能力のない男。
カルメンの100倍くらい、本能的に生きている、男。
……大好きだ♪友石くん、「ライオンキング」も良かったけど、こういう“のうみそまで筋肉”系のマッチョ男は最高にかっこいいです。歌も迫力、芝居も迫力!
最後に、毅然と胸を張って刃を待つカルメン。
自分の愛に自信があるから。
自分の行動に迷いがないから。
ホセがどんなに莫迦で阿呆でも、あたしは彼のそんなところもひっくるめて愛してる、と言い切れる強さ。
あまりにも無自覚で盲目的な、母性的な、愛。
背を丸めて、卑屈な目をして刃を突き立てるホセ。
自分の愛に自信がないから。
自分の行動に、確信がないから。
すべてをカルメンのせいにして、
カルメンがすべて悪いんだと言い聞かせて、
自分に「悪しき言の葉」を囁きかけるサタンを撃退するように。
多分、カルメンに向けた刃は“魔避けの銀のナイフ”なのだろう。
…彼にとっては。
カルメンという魔に魅入られた自分を、守るために。
そして、
牢の中で、彼は叫ぶ。
「カルメン!!」
未来永劫、叫び続ける。
「俺を見ろ!俺を愛せ!」
……と。
他の誰よりも深く愛されていたことに、気づこうともせずに。
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コメント
いつも納得の緻密な報告・感想を読ませていただき、自分の想いを増幅させて楽しみ、感謝しているこぶみかんと申します。
今回まさかのこちらでのCalli感想にうれしく驚き、なるほどなと感服しました!
確かにカルメンの死の場面までで充分。
みつきねこさんのお説のとおりに、練り直しての再演を希望です。
ホセが何故カルメンの心をとらえて放さなかったのか…
カルメンが死をもってもホセの愛に報いたいのは母性的な愛ゆえなのでしょうか?狼の一族としてなのでしょうか?
ここらあたりをメリメの息子の説明に終わらせずにもっと細かく描写してもらえればなぁというのが私見です。
あり得ないほど体育会系。
そして、のうみそまで筋肉。 ←すごいぴったり。
朝海カルメン対友石ホセのかみ合わないゆえの愛をまたみたいと思っています。
その節にはまたみつきねこさんの感想を読ませていただければうれしいです!
再演希望、賛成くださってありがとうございます♪練り直してくれたら絶対みんなを誘って観に行くのに〜!!
>ホセが何故カルメンの心をとらえて放さなかったのか…
これこそが運命だったのかな、と思いました。逆を言えば、ホセもカルメンも、出会ってしまった運命を変えようとはしなかったんだな、と。
特にカルメンは、二人の終焉を予測しながら、それでも自分の生き方も、愛し方も、変えることができなかった…いえ、変えようとしなかった。それが、彼女が「炎の女」であった証なのかもしれない、と。
>朝海カルメン対友石ホセのかみ合わないゆえの愛をまたみたいと思っています。
ねっ!!最高でしたよね友石ホセ。大好きなんです私。
この二人で再演してほしい〜〜〜。