東宝劇場での「ME AND MY GIRL」。
本公演の前に、途中になっている新公の続きを。



パブ「ヘアフォード・アームズ」。

銃を抱いてパブへ現れるビル、満面の笑顔で迎えるサリー。
たったそれだけで、涙が出るほど切ない二人。

「あたしはランベスに帰るよ」
「駄目だ!」

という会話の切実さと迫力は、本役のお二人の方があると思うのですが、新公の二人は、とにかく胸が締め付けられるほど切なかった…(T T)。

「君が帰るんなら、僕も帰る」
「そんなこと、いけないよ…」

という会話の、甘やかな切なさ。

どうしてこんなに切ないんだろう、涙が出るんだろう…、と思っていたのですが。

かなみちゃんのサリーは、大人の女なんですね。とてもリアルに、女。恋人のことを深く理解していて、彼の幸せのために身をひくことができる、思いやり深く愛情深い、オトナの、女。
全然違うんですけれども、たとえば「ばらの騎士(=愛のソナタ)」の侯爵夫人のような、貫禄のある愛の女神のような…。

だから、かなみちゃんのサリーは哀れなんだけど、可哀相なんだけど、切なくはない。
彼女自身、自分が何をしているかを知っているから。



でも、しずくちゃんのサリーは、ものすごく“少女”だった。

学年や年齢の問題じゃないと思うんですよね。しずくちゃんもそんなに若いわけじゃないし。あくまでも、役者の持ち味の話なんですが。
しずくちゃんのサリーが“子供っぽい”っていうのともちょっと違う。単純に、かなみちゃんはいつだってリアルな“女”を演じようとするタイプで、しずくちゃんは根っからファンタジックな存在感の持ち主だ、っていう話。


「サリー」という役は、主人公が執着するだけの可愛らしさと、ジョン卿が「助けてあげたい!」と思うだけの魅力があれば良い訳で。魚市場で働きながら、小さなブティックを夢見る、ひたむきで一生懸命で、頭が良くて素直な女性、というだけの役。
別に、少女でもリアルに大人の女でも、どちらの解釈も全然問題なく成立するのですが。
(ビルが大人でも少年でもどちらもありであるように)


ただ。新公サリーがあんなにも切ないのは、“少女”だからなのではないか、と思ったんですよね。
何もわかっていない、自分が何をやっているのか、自分のやっていることの結果がどういうことか全然わかっていない。
罪作りで残酷な“少女”の一人。

かなみちゃんのサリーはひたすら魅力的で、可愛くて、でも、“切なく”はなかった。それは、彼女のサリーは自分が何をやっているのかわかっているからなんじゃないか、と。
だから、彼女は身を引かざるをえなくて哀れだけれども、「仕方ない」と思う。「仕方ない」と、サリー自身が思っている。


しずくちゃんのサリーは、“哀れ”じゃないんですよね。
憐れみをうける謂れはないんです。彼女は幸せだから。
切ないのは観ている観客だけで、サリー本人は自分がどう感じているのかさえ、真実のところは気づいていない。ビルに家族を与えてあげることができて良かった、と、そう思い込もうとしている。

自分を喪ったビルがどう思うか、は想像しているけれども、その思いの深さに気づいていない。彼に家族を与えてあげたい気持ちでいっぱいで。

あたしには家族がいるけど、彼の家族は、今まではあたしひとりだった。だけど、これからはあたしじゃない家族ができたんだ。良かった…

「彼のルーツはここにあるんだよ。ランベスにはないんだよ…」

その台詞を微笑みと共に語るサリーに……涙。



名曲「いちどハートを失くしたら」は、もちろんかなみちゃんの歌唱あってこその名曲。しずくちゃんには、いかにも荷が重いナンバーでしたが。
確かに、新公では手に汗を握りながらの場面になりましたけれども。

でも。しずくちゃん、声は細いけど声質そのものは澄んだソプラノだし、音程もそんなに悪くありません。かなみちゃんの歌を聴いていなければ、そんなに違和感なかったんじゃないか…と思うのは、前後の芝居が良かったからの贔屓目かな?
多分、二幕の「あごで受け止めて」の方がしずくちゃんにとってはハードルが高いはず。…だからこそ、の齋藤さんの親心かとは思います。が。博多座までは、まだ2ヶ月あるっ!!しずくちゃん、がんばれっ!!




ヘアフォードホールのテラス。

ヘザーセットは随分ビルよりになって、召使たちの雰囲気もだいぶ柔らかくなってきた、このタイミングでのパーティ。
この雰囲気づくりも本当に見事だなあと感心しました。ね、齋藤さん♪

役付きでは、ワーシントンワーシントン夫人(天野ほたる)の白雪さち花ちゃんが存在感があって良かったなあ♪声がいい人は本当にお得ですね。
ディス夫人(花瀬みずか)の妃乃あんじさんもしっとりと落ち着きのある美人で役にあっていたと思います。メイ(羽桜しずく)の咲希あかねちゃんは、ホントに可愛くて魅力的♪
ソフィア・ブライトン(ジャッキーズ役替り)の琴音和葉ちゃんは、お姉さんの達者さを彷彿とさせる巧さ。ぱっと目立つ美人ではないけど、いい芝居するんですよね、いつも。そういえば昔、Graphの企画で祐飛さんの相手をして「芝居の巧い子」と宣伝されていたっけなぁ(懐)。


このあたりまでは役付きを追いかけるのに精一杯で、あとはみっしょんくらいしか解りませんでした…。美女の肩をさりげなく抱いて階段を降りてくるみっしょんにときめきつつ、マリアの華やかな美しさにすっかり目を奪われておりました。
りおんくん、ほんっとーに美人だなーっ!!

ああ、もう一回(と言わず10回でも20回でも)観たかった……。早くCSでやらないかなあ(T T)。



乱入してくるランベスメンバー。

ランベスキング&クイーンの瑞羽奏都くん、玲実くれあちゃんのコンビは、華やかで衣装負けしない、いいコンビでした。本公演もそうなんですけど、これだけのダンサーを揃えているんだから、もう少ししっかり踊らせてほしいなー。

ランベス・ウォークの始まり、ビルに帽子を(頭ごと)差し出す研ちゃんポジは、鼓さん。満面の笑顔がすごく可愛い。帽子を取られた後、さりげなく懐からベレー帽を出して被る仕草がかっこいいです。やっぱり楠恵華さんに似てる気が…小芝居キングなところも含めて。
響くん、宇月くんあたりも賑やかに踊りまくっていましたが、残念ながらあまり余裕がなく(涙)。観たい人が多すぎて、あちこち目が泳いでしまって細かいところはあまり覚えていません(T T)。


あ。
ランベスメンバーを先に書いてしまって、ナンバーに入る前のビルとサリー、マリアの芝居を書いてませんでしたね(^ ^;ゞ

すでにビルを“家族”として受け入れている、マリア。

サリーとマリア、両方を“家族”にしたい、ビル。

そして、ビルに“ホントウの家族”を与えてあげたいと願う、サリー。

この3人の会話のすれ違いの、切ないこと…!


「ランベス・ウォーク」が始まってからも、しばらくビルに背を向けて、俯いているサリー。
そんなサリーを見て、一瞬笑顔を消すビル。

華やかに明るい、最高にゴキゲンなミュージカルナンバーの真ん中で。
丸めた背筋を伸ばし、笑顔を取り戻して踊りだすサリーと、そんなサリーを見て心底嬉しそうなビルと。

そんな二人をみているだけで、
胸が締め付けられるように苦しくて。

涙が止まらなくて。


ランベス・ウォークは、泣けるナンバーだったんですね…(T T)。
ただただ、観ているだけで幸せで、幸せすぎて、涙が溢れる。

仕事の疲れもストレスも、何もかも洗い流してくれた、ピュアなな涙。



この公演を観ることができて、本当に良かった。
ありがとう。心から、ありがとう。

齋藤さんと出演者全員に、心からの感謝を。



すいません…幕間のミニショーからは次回に…。

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