日生劇場にて「ベガーズオペラ」を観劇してまいりました。
演出はジョン・ケアード。1985年にトレヴァー・ナンとの共同演出で「レ・ミゼラブル」をいう名作を生み出した彼が、1992年にロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)で上演した「ベガーズ・オペラ」が、今回上演された作品のオリジナル。
日本では、2006年の初演に続く再演。
出演者は内野聖陽、橋本さとし、島田歌穂、笹本玲奈、森公美子、村井國夫、原田優一、入絵加奈子、近藤洋介、他。(順不同です失礼があったらすみません)
私は、初演は観たいなーと思いながらスケジュールが合わず(T T)。今回は絶対観るぞ!と思っていたのですが、3月は諸々忙しく、やっと取れたチケットは1階前列のサイドブロック真ん中。この作品は通路際が楽しいと聞いていたのでちょっと残念だった(贅沢!)のですが、そんな贅沢いうなよ、って感じでした(^ ^;;
ああ〜、でも次は舞台上の席に座ってみたいなあ〜。
メインのストーリーは、真矢みきさんの花組で上演された「SPEAK EASY」の原作であるブレヒト&クルト・ヴァイルの「三文オペラ」と同じ。劇中劇で語られる“マクヒース”(McHeath、ヒースの息子という意味だそうです。SPEAK EASYでは“マクフィス”になってたよなー確か…)と、彼をめぐる女たちの物語。
そのマクヒースの物語を「ベガーズ」が演じる、一夜限りの興行。
それが、物語の大きな枠となっています。
ベガーズは、普通“貧民”とか“乞食”と訳されますが。本来は物乞いではなく、大道芸人や曲芸師などのことだそうです。
つまり、雪組公演で高らかに歌い上げられる「サーカス魂」とは、すなわち「ベガーズソウル」なんですね!
テント小屋で芸を見せている彼らが、大きな伝統ある劇場で芝居を上演する。
緊張と不安と、そして、自信。
ドキドキしながら役を演じて、そこここでふと“ベガー”に戻る、そのオン/オフの演出が非常によくできていて、興味深い作品でした!
役者は本当に粒ぞろいでした!
ジョン・ケアードが「全員オーディションで選んだ。歌唱力はもちろんだが、台詞劇の側面も重視して、シェイクスピアの長台詞を課題に出した」とコメントしているとおり、本当に全員が、気持ち良いくらい上手かったです。
あれだけの人数の出演者全員が、きちんと台詞術を身に付けている!それ自体、日本では結構珍しいことなんですよね、哀しいことに。さすがはRSCの顔、素晴らしい仕事をしてくれたと思います。
なんといっても内野さんが素晴らしかった(*^ ^*)。「エリザベート」初演の頃を思うと、嘘みたいな素晴らしい歌声。ストレートプレイは元々本業だし、本当に素敵でした。色っぽくて、ワルくって、いい加減だけど陽気でおおらかな、愛すべき男。女が愛さずにはいられない、男も憎むことができない、エネルギーに溢れた魅力的な男。
「三文オペラ」では彼の妻は3人でしたが、「ベガーズオペラ」ではちょっと曖昧。笹本玲奈(ポリー・ピーチャム)、島田歌穂(ルーシー・ロキット)、入絵加奈子(ジェニー・ダイヴァー)がメインだけど、他の女性たちも皆恋人だった時がある感じ。
それにしてもポリーが可愛かったよぉおぉ(はぁと)。
ルーシーの歌穂ちゃんもさすがの演技力で実に実に可愛くてけなげで素敵でしたが、やっぱり笹本ポリーの天然の可愛らしさは格別!!でした。いやー、可愛い。歌も素晴らしかったし、眼福耳福。
ポリーの両親(Mr.&Mrs.ピーチャム)橋本さん&森クミさんも本当に良かった。もちろん、ルーシーの父親ロキットの村井さんも別格に上手かった!(感涙)
あと、印象に残ったのは原田優一くんのフィルチ(ピーチャムの部下?)。いかにもアンジョルラス役者らしい硬質の美声で、すごかったです。ああ、「ミス・サイゴン」のクリスが楽しみだー。
と、役者ひとりひとりや、劇中劇の“その場面”に出ていないベガーズのうろうろした動きなどの細部は非常に非常〜〜!に面白かったのですが。
一つの公演としての「ベガーズオペラ」という作品については、私は残念ながら、ちょっと世界に入りきれなくてもどかしい思いを抱えて帰宅いたしました(T T)。
うまく嵌れなかった一番の原因は、ちょっと体調を崩していて、最後まで集中できなかったことがあると思うのですが…(祐飛さんのディナーショーに行くために仮病を使ったら、罰があたったらしい/泣)、
たぶん、それだけではなく。
劇場全体に漂う「馴れ馴れしさ」というか「猥雑感」に、初見ではついていけなかったせいではないか、と。
この作品では、“劇中劇”的に出番外のベガーたちも、衣装替えがあるとき以外は殆ど袖にひっこまないで、ずーっと舞台端や客席通路あたりをうろうろしているのです。
舞台を降りた、一人の“ベガー”として。
でも。
…席が前過ぎたせいか、うろうろして喋ったり観客にちょっかいをかけたりする“ベガー”ズに気をとられて、劇中劇に集中できなかったんですよね。したがって、そこで語られる台詞も全部は頭に入らなくて。
なんというか、作品世界全体を見渡すことができなかったんですよね……。
体調が万全で、きちんと集中してみていたならば、そんなことはなかったのかもしれません。
あるいは、席がもう少し後ろ、あるいはグランドサークルあたりの見やすい席だったら、ベガーたちに惑わされることなく“舞台”に集中できたでしょうし、もっとわかりやすかったのかもしれない。
あるいは、これだけ長くて複雑な構造の作品なので、せめて2回は観ないと理解できない、ただそれだけのことなのかもしれない。
…でも。
私の周りの、明らかにリピーターらしき人たちの中に、私を含めて何人か、完全においていかれたひとたちが居たんですよね。
その、リピーターの盛り上がりようとおいていかれた人たちの遠い眼っぷりとの、温度差が。
……せっかくの前方席なのになーーーー、という感じでした。
何が悪い、ということもないのに。
脚本は興味深いし、俳優と演出は最高級の素晴らしさで、音楽も悪くはない、イマドキ珍しいほどよく出来た作品、のはずなのに、
何か物足りない、得るものがなかった気持ちで家路につきました。
……内野さんのあまりの魅力に、くらくらしながら。
(それで十分なんじゃないのか…?)
また2年後に再演があったなら、
今度こそ(!)体調を整えて観劇したい、と思いました。
.
演出はジョン・ケアード。1985年にトレヴァー・ナンとの共同演出で「レ・ミゼラブル」をいう名作を生み出した彼が、1992年にロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)で上演した「ベガーズ・オペラ」が、今回上演された作品のオリジナル。
日本では、2006年の初演に続く再演。
出演者は内野聖陽、橋本さとし、島田歌穂、笹本玲奈、森公美子、村井國夫、原田優一、入絵加奈子、近藤洋介、他。(順不同です失礼があったらすみません)
私は、初演は観たいなーと思いながらスケジュールが合わず(T T)。今回は絶対観るぞ!と思っていたのですが、3月は諸々忙しく、やっと取れたチケットは1階前列のサイドブロック真ん中。この作品は通路際が楽しいと聞いていたのでちょっと残念だった(贅沢!)のですが、そんな贅沢いうなよ、って感じでした(^ ^;;
ああ〜、でも次は舞台上の席に座ってみたいなあ〜。
メインのストーリーは、真矢みきさんの花組で上演された「SPEAK EASY」の原作であるブレヒト&クルト・ヴァイルの「三文オペラ」と同じ。劇中劇で語られる“マクヒース”(McHeath、ヒースの息子という意味だそうです。SPEAK EASYでは“マクフィス”になってたよなー確か…)と、彼をめぐる女たちの物語。
そのマクヒースの物語を「ベガーズ」が演じる、一夜限りの興行。
それが、物語の大きな枠となっています。
ベガーズは、普通“貧民”とか“乞食”と訳されますが。本来は物乞いではなく、大道芸人や曲芸師などのことだそうです。
つまり、雪組公演で高らかに歌い上げられる「サーカス魂」とは、すなわち「ベガーズソウル」なんですね!
テント小屋で芸を見せている彼らが、大きな伝統ある劇場で芝居を上演する。
緊張と不安と、そして、自信。
ドキドキしながら役を演じて、そこここでふと“ベガー”に戻る、そのオン/オフの演出が非常によくできていて、興味深い作品でした!
役者は本当に粒ぞろいでした!
ジョン・ケアードが「全員オーディションで選んだ。歌唱力はもちろんだが、台詞劇の側面も重視して、シェイクスピアの長台詞を課題に出した」とコメントしているとおり、本当に全員が、気持ち良いくらい上手かったです。
あれだけの人数の出演者全員が、きちんと台詞術を身に付けている!それ自体、日本では結構珍しいことなんですよね、哀しいことに。さすがはRSCの顔、素晴らしい仕事をしてくれたと思います。
なんといっても内野さんが素晴らしかった(*^ ^*)。「エリザベート」初演の頃を思うと、嘘みたいな素晴らしい歌声。ストレートプレイは元々本業だし、本当に素敵でした。色っぽくて、ワルくって、いい加減だけど陽気でおおらかな、愛すべき男。女が愛さずにはいられない、男も憎むことができない、エネルギーに溢れた魅力的な男。
「三文オペラ」では彼の妻は3人でしたが、「ベガーズオペラ」ではちょっと曖昧。笹本玲奈(ポリー・ピーチャム)、島田歌穂(ルーシー・ロキット)、入絵加奈子(ジェニー・ダイヴァー)がメインだけど、他の女性たちも皆恋人だった時がある感じ。
それにしてもポリーが可愛かったよぉおぉ(はぁと)。
ルーシーの歌穂ちゃんもさすがの演技力で実に実に可愛くてけなげで素敵でしたが、やっぱり笹本ポリーの天然の可愛らしさは格別!!でした。いやー、可愛い。歌も素晴らしかったし、眼福耳福。
ポリーの両親(Mr.&Mrs.ピーチャム)橋本さん&森クミさんも本当に良かった。もちろん、ルーシーの父親ロキットの村井さんも別格に上手かった!(感涙)
あと、印象に残ったのは原田優一くんのフィルチ(ピーチャムの部下?)。いかにもアンジョルラス役者らしい硬質の美声で、すごかったです。ああ、「ミス・サイゴン」のクリスが楽しみだー。
と、役者ひとりひとりや、劇中劇の“その場面”に出ていないベガーズのうろうろした動きなどの細部は非常に非常〜〜!に面白かったのですが。
一つの公演としての「ベガーズオペラ」という作品については、私は残念ながら、ちょっと世界に入りきれなくてもどかしい思いを抱えて帰宅いたしました(T T)。
うまく嵌れなかった一番の原因は、ちょっと体調を崩していて、最後まで集中できなかったことがあると思うのですが…(祐飛さんのディナーショーに行くために仮病を使ったら、罰があたったらしい/泣)、
たぶん、それだけではなく。
劇場全体に漂う「馴れ馴れしさ」というか「猥雑感」に、初見ではついていけなかったせいではないか、と。
この作品では、“劇中劇”的に出番外のベガーたちも、衣装替えがあるとき以外は殆ど袖にひっこまないで、ずーっと舞台端や客席通路あたりをうろうろしているのです。
舞台を降りた、一人の“ベガー”として。
でも。
…席が前過ぎたせいか、うろうろして喋ったり観客にちょっかいをかけたりする“ベガー”ズに気をとられて、劇中劇に集中できなかったんですよね。したがって、そこで語られる台詞も全部は頭に入らなくて。
なんというか、作品世界全体を見渡すことができなかったんですよね……。
体調が万全で、きちんと集中してみていたならば、そんなことはなかったのかもしれません。
あるいは、席がもう少し後ろ、あるいはグランドサークルあたりの見やすい席だったら、ベガーたちに惑わされることなく“舞台”に集中できたでしょうし、もっとわかりやすかったのかもしれない。
あるいは、これだけ長くて複雑な構造の作品なので、せめて2回は観ないと理解できない、ただそれだけのことなのかもしれない。
…でも。
私の周りの、明らかにリピーターらしき人たちの中に、私を含めて何人か、完全においていかれたひとたちが居たんですよね。
その、リピーターの盛り上がりようとおいていかれた人たちの遠い眼っぷりとの、温度差が。
……せっかくの前方席なのになーーーー、という感じでした。
何が悪い、ということもないのに。
脚本は興味深いし、俳優と演出は最高級の素晴らしさで、音楽も悪くはない、イマドキ珍しいほどよく出来た作品、のはずなのに、
何か物足りない、得るものがなかった気持ちで家路につきました。
……内野さんのあまりの魅力に、くらくらしながら。
(それで十分なんじゃないのか…?)
また2年後に再演があったなら、
今度こそ(!)体調を整えて観劇したい、と思いました。
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