天王洲の銀河劇場にて、Studio Lifeプロデュースの「カリフォルニア物語」を観劇してまいりました。

…花組さんの「舞姫」が開幕する前に、観たものは書いておかないとねっ!(汗)


えーっと。
吉田秋生さんの名作「カリフォルニア物語」を原作とする、今回の公演。普通のライフ公演ではなく、大勢のゲストを迎えてのプロデュース公演だったんですね。あまりにも知らない人が多くて、凄くびっくりしてしまったのですが(^ ^;;;。

まぁ、たしかに私、ライフの舞台を観るのはずいぶんと久しぶりでした。
初めて観た「訪問者」は、まだ笠原浩夫さんがオスカーをやっていらした頃で、あまりの格好良さに惚れこんでしばらくお手紙書いていたんですが……。公演があるたびに「行きたいなあ」と思いながら、なかなかタイミングが合わず。いつの間にか案内も来なくなっちゃって、気になりながら、年単位で時が過ぎてしまったんですよね…。

別に嫌いになったわけじゃないのに、なんとなく遠ざかってしまったことに気がつく。なんだか凄くさびしいことなのかも(T T)。

だからといって、「これからは心を入れ替えてライフもちゃんと毎公演観にいこう!」と思ったわけではないんですけどね…(ごめん、友よ)。

だって。
…「いいなあ」と思った人は、元々大好きだった及川くん以外、みーんなゲストだったんだもん(涙)。


「カリフォルニア物語」。
(役者名は、私が観た回のキャストです)

“西から来た男”ヒース・スワンソン(林剛史)。
“西に憧れる天使”イーヴ・ルチアーノ(松本慎也)。

この二人の心の交流を丁寧に描いた原作。

すこーし頭が弱いイーヴが、ひたすらに憧れつづける「カリフォルニア」。

この作品のミソは、タイトルが「カリフォルニア物語」なのに、物語の舞台は終始変わらず、ニューヨークであることです。
それはたしか、原作の解説か何かにも書いてあったし、
実際私も、読んでいて一番印象に残ったのはそこでした。

ヒースと父・マイケル(石飛幸治)との確執や、兄・テリー(HILUMA)との微妙な感情の行き違い、義姉スージー(HILUMA)への仄かな思慕なんかは、回想の中の出来事。ヒースにとっては、イーヴがいるニューヨークでの生活が現実で、カリフォルニアはむしろ過去の悪夢なのに、
なのに、イーヴは執拗にカリフォルニアへの憧れを口にする。

東海岸の住人にとっては“夢の国カリフォルニア”でも、そこに生きていたヒースたちにとっては“痛い現実”。
それでも生きていかなくてはならないから。

西海岸では生きていけなかったヒースが、東を目指す。
…すべてを捨てて、夢も捨てて。


ヒースの絶望と、イーヴの「西=幸せ」への渇望。
そのすれ違いがドラマを生むから、
その舞台がニューヨークだから、

だからこそ「カリフォルニア物語」なのに。

…倉田惇さんって、割と私の印象では原作に忠実に、その空気をきちんと描いてくれる演出家だと思っていたのですが。

今回はちょっと期待はずれだったかなー。


まず、カリフォルニアでの回想を表に出しすぎです。
あれはあくまでも『回想』だからこそテーマがなりたつのに、あれじゃ大きな事件が起こらないニューヨークでの物語の方が付け足しみたいじゃないですか。

演出のやりようで、同じ脚本でもカリフォルニアのトーンを減らすことができたと思うんです。
「ヒースがニューヨークで過去を思い出している」らしく演出することは出来たはず。なのに、なぜ真正面からカリフォルニアでのドラマを見せてしまったのか。

ドラマティックなのはカリフォルニアでの事件です。イーヴがニューヨークで巻き込まれる事件より、ヒースがカリフォルニアで巻き込まれた事件の方が衝撃度が大きい。だから、その二つを同じレベルで演出してしまったら、ぜったいにカリフォルニアでの物語の方がメインに見えてしまう。
それじゃあ、どうみてもヒースの心はずっとカリフォルニアにあったのですとしか見えないじゃないですか。

ヒースはカリフォルニアを拒否してニューヨークへ出てきた。
なのに、ラスト近くになって彼は、一度故郷へ帰ることになる。やむをえない事情によって。
そこで彼は、過去を清算し、ひとつ大人の階段をのぼって、

ニューヨークへ『帰って』いく。


幕開きには「西から来た男」だったヒースが、ラストの前に「東へ帰る男」になる。

それが一番のドラマなのに。

あんなにカリフォルニアでの話を中心に進めたんじゃあ、そこがボケちゃうじゃないか!
そこがボケちゃうってことは、本当のラストに起こる事件が軽くなってしまうということ。
ヒースがなんのためにどこへ帰るのか、がぼやけてしまうということ。

…あんな話じゃないはずなんだけどなぁ、「カリフォルニア物語」は……(涙)。


まぁ。
そんな文句も言ってますが。

楽しかったです。
とっても。

ええ。

……林くん、超好みですよ私★


ヒースの傲慢さ、
ヒースの沸点の低さ、

そして、
ヒースのあやうげな色っぽさ。

彼はすごーく難しい役だと思うのですが。
林くん、はまり役だったような気がします。
吉田さん、嬉しかったんじゃないでしょうか。自分の主人公にあんなにぴったりな役者がいて。


イーヴの松本くんは、…悪くはないと思うのですが、イーヴ役としてはいまひとつぴんときませんでした。私は。
イーヴは天使なんだもん。リアルさはなくていいの。もっともっと浮世ばなれした天使でいてほしい。
どんな男に買われても、傷ひとつ、汚れひとつつかない、それがイーヴ。
あれはもう、生まれつきのキャラクターが必要な役なので、合わないとなったらもうどうしようもないんでしょうけれども……。

……とりあえず、ああいう作品づくりをするなら、公演前だけではなくて日常のレッスンでの歌レッスンをがんばってくださいまし。公演前だけの歌唱指導って、カサノボー晃さんはすっげー大変だったと思いマス…


カリフォルニア、って、やっぱり東海岸から見たら“憧れの地”なんでしょうか。
…「十二国記」シリーズで、ひとびとが「蓬莱(=日本)」に憧れるように。

そこで生きている人たちの気持ちなど、おかまいなしに。


それを思うと。
「ハリウッド」もまた、一つの虚構なんですよね。
“全米の憧れ”という名の、虚構。


そう呼ばれることが、必ずしも幸せなわけではないのに、

“王”であることが、必ずしも幸せなわけではないのに、


それでも人々は憧れ続ける。
そのひとにとっての「カリフォルニア」、西海岸の太陽、に。



コメント

るなこ
るなこ
2008年3月14日2:04

ねこさま〜☆
「カリフォルニア物語」私も見てきました。
ヒースが岩崎大さんだった方ですが。林さんのヒースも見てみたかったなあ。
しかしあの役は難しいですよね。。
笠原浩夫さん、私も大好きでFCの担当にさせてもらってました(笑)。
この頃全然ライフ公演に出演されなくて寂しいかぎりですね。

nophoto
みつきねこ
2008年3月16日17:59

るなこさま、コメントありがとうございましたm(__)m。ばたばたしていてレスがめちゃめちゃ遅くなってしまい、本当にごめんなさい!

林くん、すごく素敵でしたよ!まあ、私は岩崎くんのヒースを観ていないのですけど、るなこさまにも是非みていただきたかったなあ(涙)

笠原さん…あら、同士がこんなところに(汗)。かっこいいですよねえ〜!またライフにも出て欲しいですよねっ(はぁと)