東京芸術劇場にて、TSミュージカル「タン・ビエットの唄」を観てまいりました。


初演は2004年…ってことは、もうすぐ4年になるんですね。
あのときは、愛華みれさんが主役(?)のフェイ。
ティエンの土居裕子さんとトアンの畠中洋さん、ミンの宮川浩さんは今回と同じでした。

ちなみに私の目当ては、初演の時はトアンの畠中さんと、ハインの沢木順さんだったんですよね……懐かしいわーーーー!!
今回、ハインが若くてハンサムな吉野圭吾さん、ってことで、いったいどんな話になるのかと思ったのですが…


す、すみません。
初演はあまり細かいところを覚えていないので、脚本的・演出的な違いはよくわかりませんでした(^ ^;ゞ。
ただ、縄で作った舞台装置(大田創)がすごく印象的だったので、また観ることができてよかったです。うん、やっぱりいいです、あの装置は。虚仮脅しがなくて、大好き。


「タン・ビエット」というのは、「さよなら」という意味のヴェトナム語だそうです。
有名なソンミ村虐殺事件をモデルに、架空の村(ハン・ティン村)で起こった虐殺から逃げ延びて、解放民族戦線の兵士たちに助けられた姉妹(姉ティアン、妹フェイ)と、彼女たちを助けた男たちにとっての「戦争という現実」の物語。

物語の契機となるハン・ティン村虐殺事件を1969年(ホー主席死去の年)において。
1971年に渡英したまま帰らなかった妹・フェイが、“1990年代後半”にヴェトナムに現れ、姉・ティエンを探し始めるところから物語りは始まります。

20年以上前に、ジャングルの中でティエンとフェイの二人を助けた、開放民族戦線の5人の兵士たち。
トアン(畠中)、ミン(宮川)、ビン(駒田はじめ)、ゴク(戸井勝海)、そしてハイン(吉野)。

1975年のサイゴン解放=ヴェトナム戦争終結から20年。
混迷を深めるヴェトナムで、観光客相手のシクロ(人力車)漕ぎで生計をたてるトアンを見つけたフェイは、戦争中に行方不明になったティエンを探す手伝いを頼む…。



初演は、確か「ミス・サイゴン」の再演を夏に控えた春だったと思います。「ミス・サイゴン」は、西欧から眺めたヴェトナム戦争という印象が拭えませんでしたが(←でも好きな作品です)、この「タンビエットの唄」は、アジアから眺めたヴェトナム戦争になるんだろうな、と思って観にいったので。



…痛かった…。



5人の「元兵士」たちの抱えた心の傷が、自分の記憶に灼きついたかのようでした。
痛くて痛くて、泣くのも苦しかった。

トアンが最後の最後に「それが俺の夢だったんだ…」というんですよ(涙)。
そうとしか言いようのない時代だった、と。

「それ」が何なのか書くとネタバレてしまうので遠慮しておきますが、それにしても本当に、痛い物語でした。


「みんな戦争が悪いのよ」なんぞと、木村信司さんみたいなことを絶対に言わせない謝さんは流石だなあ、と思ってしまいました。
戦争を肯定するわけでは勿論ないのですが、「戦争の中でやむをえず犯してしまった罪」と、どうおりあいをつけていくのか。
特に。戦時における最大の罪のひとつである「逃亡」。
逃げることが罪となった時代を、どうやって生き延びたのかをテーマにした作品ですから。「生きること」への限りない肯定と、愛…その深さに、驚くばかりです。
プログラムのコメントもとても素敵です。「母国」と「祖国」と…自分の人生をきちんと見つめている人にしか言えない、深い言葉だな、と思いました。



まだ週末まで一週間弱上演されておりますので。
ぜひ一度、ご覧になってくださいませ。

「良い作品」かどうかはわかりませんが(テーマがテーマなので、駄目な人もたくさんいらっしゃるかと)、
「痛い作品」であることは保障いたします(^ ^;。




コメント

nophoto
はにはに
2008年2月14日10:41

初演で、余りに出演者、演出全てが素晴らしく(タモは微妙だったが)3回も観てしまいました。
あれを見たら「沖縄に行くときには必ずやひめゆりの塔に行くぞ」とか
「サイパンに観光で行っては申し訳ない」とか思うようになったんですよ、私・・・ (影響を受けやすい)
本当に深い作品で、再演される、それもヤン様でなんてーーーと思ったのですが
何しろ今週は数日会社に行くだけで、中日やらバウに行ったりきたりしていて。

「タンビエット」も雪組初日も全て捨てて、お金も時間もバウに掛けました。
もう二度と主演は来ないだろうからしっかりと目に焼き付けて参りますわ。

ああ、永遠の少女どいさーーーん!
そしてオジサンになっても、畠中さん、好きです!!
ここで宣言するから、ねこさま、あと、宜しく(爆)

みつきねこ
みつきねこ
2008年2月16日1:34

あら、はにはにさまは絶対ご覧になると思ったのに(T_T)残念!

ものすご〜〜〜く良かったですよ!なんと言っても、ヤンさんが素晴らしかった。別の作品としか思えないくらいに。

あと、いまさらですけど、畠中さんマジで素敵すぎました…。ヤンさんと雰囲気が合っていて、他の作品でも共演してほしいな〜、と思いました!(^^)!