ハリウッドの恋人【3】
2008年1月26日 宝塚(月) コメント (2)公演は終わってしまいましたが(涙)、
「Hollywood Lover」という作品については未だ語り足りないので。もうしばらく引っ張らせてくださいませ。
…月っ子たちがあんまり可愛くって、公演中はそっちにかまけちゃって作品について語る余裕が無かったので(汗)。
この作品、バウホールで初日を観たときからすごく印象的だったのは
「歌が少ない」ことと、「音楽が全編メジャーコードである」ことでした。
芝居ができるメンバーが集まっているせいか、全体にものすごく芝居の比重の高い作品だったと思います。
普通なら歌ってしまいそうな、最初のヴィラの場面とか、ステファーノとローズの電話の場面とかも、台詞のやりとりだけですませていますし。
でも、じゃあ音楽がいらないのかというと勿論そんなことはなくて。
なんというのか、舞台装置の一つのように音楽が使われているな、と思ったのでした。
現実のシーンと回想シーンを、照明と音楽を変えることで切り替えてみたり、
ステファーノの気持ちの変化を音楽で追ってみたり、
記者会見の場面などでは、台詞の合いの手として使ってみたり、
全体に、すごく映像的、あるいは映画的な音楽の使い方だなーと思ったのです。
全体に、使われている曲はどれも、ごくごくロマンティックな、シンプルだけど甘やかなメロディばかり。
あまり凝った音楽ではなくて、耳に残る優しい音楽をテーマにあわせてつくり、何度も繰り返し使う。
観客の心の中で音楽と芝居が融合し、イマジネーションが拡がるように。
そして、
歌だけでなく、舞台装置として使われている音楽も含めて、総じてメジャーコードで構成されていたんですよね。
悲劇なのに。
悲劇が起こった後に使われる曲でさえ、切なくて苦しいけれども、悲しくはない。
ステファーノの器の大きさ、底のない優しさ、ポジティブさを、作品全体の音楽でも表現しようとしているんですよね。
観客が、ハンカチを絞るほどの涙を流す作品とは思えないほど、音楽はやわらかく、そして、希望に満ちて明るい。
その明るさこそが、涙腺を壊すわけですが…(T T)。
記憶をひっくり返して、歌のリストを作ってみました。間違いに気づいた方はコメントお願いします!(タイトルは適当です)
1.「Opening」
ステファーノ
2.「Memory in Hollywood」
ステファーノ
3.「Filmin’ the Truth」
ステファーノ+撮影メンバー
4.「It’s All Right」
ステファーノ&ローズ
5.「Filmin’ the Truth」 Reprise
ステファーノ+撮影メンバー
6.「In Solitude」
ローズ
7.「You’re the Only One」
ステファーノ+撮影メンバー
8.「You’re the Only One」Reprise
ビリー&マギー
9.「Regend of Love」
リチャード&ステファーノ
10.「Memory in Hollywood」Reprise
ステファーノ
…やっぱり少ない気がする。歌手がいないから?(T T)
あ、こころ(リタ)の「White Christmas」はあえて抜いてます(^ ^;ゞ
歌の無い音楽で印象に残ったのは、回想シーンのテーマ音楽。
一幕最初の、撮影スタジオでの最初の夜から、繰り返し繰り返し、「過去のステファーノ」&「過去のローズ」が出てくる契機として流される、甘やかで軽やかな、音の羅列。
次第次第に、観客の頭の中にも「あの曲が流れたら回想シーンが始まる」という刷り込みが行われていく。
そして、
ラストの空港で。
シーラがステファーノに声をかける。
「ねぇ、いつかまた、還ってきてよ?ハリウッド」
二度と戻ることのできない
過ぎた時を
ただ胸の奥 閉じ込め
ただ心の底 抱きしめ
「ローズとの、思い出の街」
「…ステファーノ」
流れていた音楽が、止まる。
そして、
耳に馴染んだ、甘やかで軽やかな、音の羅列が。
ふ、と彷徨う、ステファーノの瞳。
観客の心も、一瞬舞台の上を走る。
「過去」の二人を探して。
「過去」の夢を、探して。
そして見つけるのは、今現在、ぱっくりと口をあけて真紅の血を流している傷口。
もう還らない、
愛しすぎる、
切な過ぎる、届かぬ夢。
もう二度と、ローズに会うことは、ない。
……だから。
耳の中で鳴り渡る音楽に聴き入りながら、ステファーノの瞳は虚空を見つめて、
彷徨って、
そして、目を閉じる…。
「時が、今の傷を洗い流してくれたら…」
ローズの幻を見せてしまうことは、簡単なことだったと思います。
空港の奥に、「今の」ローズの幻を現出する演出も、よくある手法だし、ここで使ってもおかしくなかったと思う。
でも。
ステファーノの心は、夢に逃げることを拒否する。
ローズの幻を見ることを、ステファーノの心が拒否している。
だから、ローズの幻は、観客の心の中を掠めるだけ。
ステファーノの瞳には、映らない。
時は流れ、思い出だけセピア色に遠ざかっていく。
いつか、この痛みも風化して、「過去」の宝石箱の中にしまうときがくるかもしれない。
そうしたら、彼の瞳も、再びローズの幻を見るのかもしれない。
でも、今は。
そして、ステファーノが幻を探して彷徨いだそうとする自分の心を留めることに成功して、
旅立つために、「思い出」の街に背を向けた瞬間に。
回想の音楽もとまり、
そして、新しい音楽が始まる。
そして。
ステファーノに憧れる若者が、振り絞るように叫ぶ。
「俺も、…忘れないスから!」
出会い、愛し、別れたこの街で、
乾いた風が運ぶ愛する人のメモリー。
「監督と仕事していたときのローズさん、生き生きとして、キラキラ輝いて……ほんっとうにキレイで!…あの姿、」
全ては Memory in my Mind…
「…絶対に忘れないスから!」
「Ciao!」という軽やかな挨拶と、広くゆるぎない背中。
振り返ることなく、「ステファーノ」が歩き出す。
未来へ向かって。
その未来に、ローズはいなくても。
……たぶん、ローズは今現在も、これからもずっと、ステファーノの肩あたりにいるんでしょうけどね……(^ ^;ゞ
プログラムによると、音楽は青木朝子さん、手島恭子さんのお二人。
残念ながら存じ上げなかったのですが、お二人ともいろいろな作品に参加されているみたいですね。シンプルでロマンティックな、いい音楽が多かったので、今後のご活躍が楽しみです♪
公式サイトも、音楽担当者から検索とかできるようにしてくれると面白いのになあ…。
ネットで検索したら、4月の中日公演「ドラキュラ伝説」という藤井さん演出の松平健公演の音楽に青木さんのお名前があってビビりました(汗)。こ、こんなところで。っていうか、藤井さんって外部演出するのか…いいのか?(^ ^;ゞ。
.
「Hollywood Lover」という作品については未だ語り足りないので。もうしばらく引っ張らせてくださいませ。
…月っ子たちがあんまり可愛くって、公演中はそっちにかまけちゃって作品について語る余裕が無かったので(汗)。
この作品、バウホールで初日を観たときからすごく印象的だったのは
「歌が少ない」ことと、「音楽が全編メジャーコードである」ことでした。
芝居ができるメンバーが集まっているせいか、全体にものすごく芝居の比重の高い作品だったと思います。
普通なら歌ってしまいそうな、最初のヴィラの場面とか、ステファーノとローズの電話の場面とかも、台詞のやりとりだけですませていますし。
でも、じゃあ音楽がいらないのかというと勿論そんなことはなくて。
なんというのか、舞台装置の一つのように音楽が使われているな、と思ったのでした。
現実のシーンと回想シーンを、照明と音楽を変えることで切り替えてみたり、
ステファーノの気持ちの変化を音楽で追ってみたり、
記者会見の場面などでは、台詞の合いの手として使ってみたり、
全体に、すごく映像的、あるいは映画的な音楽の使い方だなーと思ったのです。
全体に、使われている曲はどれも、ごくごくロマンティックな、シンプルだけど甘やかなメロディばかり。
あまり凝った音楽ではなくて、耳に残る優しい音楽をテーマにあわせてつくり、何度も繰り返し使う。
観客の心の中で音楽と芝居が融合し、イマジネーションが拡がるように。
そして、
歌だけでなく、舞台装置として使われている音楽も含めて、総じてメジャーコードで構成されていたんですよね。
悲劇なのに。
悲劇が起こった後に使われる曲でさえ、切なくて苦しいけれども、悲しくはない。
ステファーノの器の大きさ、底のない優しさ、ポジティブさを、作品全体の音楽でも表現しようとしているんですよね。
観客が、ハンカチを絞るほどの涙を流す作品とは思えないほど、音楽はやわらかく、そして、希望に満ちて明るい。
その明るさこそが、涙腺を壊すわけですが…(T T)。
記憶をひっくり返して、歌のリストを作ってみました。間違いに気づいた方はコメントお願いします!(タイトルは適当です)
1.「Opening」
ステファーノ
2.「Memory in Hollywood」
ステファーノ
3.「Filmin’ the Truth」
ステファーノ+撮影メンバー
4.「It’s All Right」
ステファーノ&ローズ
5.「Filmin’ the Truth」 Reprise
ステファーノ+撮影メンバー
6.「In Solitude」
ローズ
7.「You’re the Only One」
ステファーノ+撮影メンバー
8.「You’re the Only One」Reprise
ビリー&マギー
9.「Regend of Love」
リチャード&ステファーノ
10.「Memory in Hollywood」Reprise
ステファーノ
…やっぱり少ない気がする。歌手がいないから?(T T)
あ、こころ(リタ)の「White Christmas」はあえて抜いてます(^ ^;ゞ
歌の無い音楽で印象に残ったのは、回想シーンのテーマ音楽。
一幕最初の、撮影スタジオでの最初の夜から、繰り返し繰り返し、「過去のステファーノ」&「過去のローズ」が出てくる契機として流される、甘やかで軽やかな、音の羅列。
次第次第に、観客の頭の中にも「あの曲が流れたら回想シーンが始まる」という刷り込みが行われていく。
そして、
ラストの空港で。
シーラがステファーノに声をかける。
「ねぇ、いつかまた、還ってきてよ?ハリウッド」
二度と戻ることのできない
過ぎた時を
ただ胸の奥 閉じ込め
ただ心の底 抱きしめ
「ローズとの、思い出の街」
「…ステファーノ」
流れていた音楽が、止まる。
そして、
耳に馴染んだ、甘やかで軽やかな、音の羅列が。
ふ、と彷徨う、ステファーノの瞳。
観客の心も、一瞬舞台の上を走る。
「過去」の二人を探して。
「過去」の夢を、探して。
そして見つけるのは、今現在、ぱっくりと口をあけて真紅の血を流している傷口。
もう還らない、
愛しすぎる、
切な過ぎる、届かぬ夢。
もう二度と、ローズに会うことは、ない。
……だから。
耳の中で鳴り渡る音楽に聴き入りながら、ステファーノの瞳は虚空を見つめて、
彷徨って、
そして、目を閉じる…。
「時が、今の傷を洗い流してくれたら…」
ローズの幻を見せてしまうことは、簡単なことだったと思います。
空港の奥に、「今の」ローズの幻を現出する演出も、よくある手法だし、ここで使ってもおかしくなかったと思う。
でも。
ステファーノの心は、夢に逃げることを拒否する。
ローズの幻を見ることを、ステファーノの心が拒否している。
だから、ローズの幻は、観客の心の中を掠めるだけ。
ステファーノの瞳には、映らない。
時は流れ、思い出だけセピア色に遠ざかっていく。
いつか、この痛みも風化して、「過去」の宝石箱の中にしまうときがくるかもしれない。
そうしたら、彼の瞳も、再びローズの幻を見るのかもしれない。
でも、今は。
そして、ステファーノが幻を探して彷徨いだそうとする自分の心を留めることに成功して、
旅立つために、「思い出」の街に背を向けた瞬間に。
回想の音楽もとまり、
そして、新しい音楽が始まる。
そして。
ステファーノに憧れる若者が、振り絞るように叫ぶ。
「俺も、…忘れないスから!」
出会い、愛し、別れたこの街で、
乾いた風が運ぶ愛する人のメモリー。
「監督と仕事していたときのローズさん、生き生きとして、キラキラ輝いて……ほんっとうにキレイで!…あの姿、」
全ては Memory in my Mind…
「…絶対に忘れないスから!」
「Ciao!」という軽やかな挨拶と、広くゆるぎない背中。
振り返ることなく、「ステファーノ」が歩き出す。
未来へ向かって。
その未来に、ローズはいなくても。
……たぶん、ローズは今現在も、これからもずっと、ステファーノの肩あたりにいるんでしょうけどね……(^ ^;ゞ
プログラムによると、音楽は青木朝子さん、手島恭子さんのお二人。
残念ながら存じ上げなかったのですが、お二人ともいろいろな作品に参加されているみたいですね。シンプルでロマンティックな、いい音楽が多かったので、今後のご活躍が楽しみです♪
公式サイトも、音楽担当者から検索とかできるようにしてくれると面白いのになあ…。
ネットで検索したら、4月の中日公演「ドラキュラ伝説」という藤井さん演出の松平健公演の音楽に青木さんのお名前があってビビりました(汗)。こ、こんなところで。っていうか、藤井さんって外部演出するのか…いいのか?(^ ^;ゞ。
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コメント
読んで、泣いてしまいました。
…しかし。
>広くゆるぎない背中。
のあたりで、「ふふっ」と思い、
>ローズは今現在も、これからもずっと、ステファーノの肩あたりにいるんでしょうけどね
で、笑っちゃったじゃないですか(^_^;)霊なのか?!
音楽からの分析は、みつきねこさんらしいですね。
実は、ねこさんに言われるまで、回想シーンがテーマ音楽と供に始まる事に気付いていませんでした。
なるほど、そういえば…という感じです。
最後に音楽が流れても、回想の二人は出てこないんですね。切ないなぁ。
そして、「音楽が全編メジャーコードである」事にも気付いていなかったのですが(^^ゞ
そういえば、確かに。悲劇なのに、明るく優しい音楽ばかりですね。悲劇的な音楽で、悲壮感を盛り上げるような事はしないんですね。
でも、それは植田景子&大空祐飛コンビに、相応しいような気がします。大空氏は悲劇アピールなんて嫌いそうだし、似合わないし。明るい音楽は、より切なく美しいです。
ラスト、歩み去って行くステファーノさんを送り出す曲は、明るく希望に満ちて、美しくて。
切ないメロディを内包しながらも、終わりは明るく柔らかな音で。
あの千秋楽の日、まるで大空祐飛へのメッセージのように思えた事を思い出しました。
そう、ローズは単に夢枕に立っただけではなく、「離れないわ、もう決して」と言っているので。多分、あの広い肩のどこかに“ちょこん”と座っているんだと思います♪
ステファーノが「全てはMemory In My Mind」とか(観客巻き込んで)号泣している間に★
回想の音楽は、私も千秋楽で初めて意識したんですよ。
楽のラストシーンで、「あれ、ここではもうあの二人出てこないんだ…」と思った瞬間にマジで嗚咽しそうになったくらいキてしまったのでした。
>大空氏は悲劇アピールなんて嫌いそうだし、似合わないし。明るい音楽は、より切なく美しいです。
そうなんです。「嫌いそう」だし、だいいち「似合わない」し(笑)。明るく透明な音楽の方が、切ないですよね。
>あの千秋楽の日、まるで大空祐飛へのメッセージのように思えた事を思い出しました。
景子さんからの、祐飛さんへのメッセージだったんだ、と、
千秋楽だけはそう思うことにしました。
…号泣していたんで、あんまり聴いてなかったんですけどね(汗)