日生劇場「キーン」を観てまいりました。

「轟悠と愉快な仲間たち」、じゃないですけど。
ほとんど轟さんの一人舞台に、星組の若手が色を添えている、的な作品でしたが。

脚本はすっげー面白かった!です。

役者キーン(轟悠)が、自らの力で勝ち得た「KING OF LONDON」という称号と、
英国皇太子(柚希礼音)が、生来与えられた「PRINCE OF WALES」の称号の対比。

キーンの称号はいつ奪われる(飽きられる)ともわからず、
皇太子の称号は外すことができない。

前者は「権利」であり、後者は「義務(noblesse oblige)」の象徴であるのだから。

この二つの称号を対比させつつ、
貴族社会と下層階級、そして、下層階級の徒花としての「役者」を描きだす物語。

下層階級出身のエドモンド・キーンは、シェイクスピア役者としてスターダムにのしあがり、今は皇太子にも対等の友人であるかのように扱われる身分。
貴族のマダムたちも当たり前のように彼に「恋」をしかけてくる。

しかし。
それは、シェイクスピアの描いた『ロミオ』が、『オテロ』が、『シーザー』が「貴族社会」において憧れられているというだけのことで、エドモンド・キーンという一人の男は、あくまでも「下層階級の星」であるにすぎない
キーンが、自分自身が貴族社会に受け入れられたかように感じるのは、幻想的な思いこみ、いやむしろ、妄想に過ぎないのだ、と、皇太子は言う。


エキセントリックなスター役者と、デンマーク大使の年若い妻との恋も、ただの火遊びにすぎない。
貴族社会のゲームのルールにのっとって取り交わされる手紙。会話。そして、視線。

それを。
何もかもをぶち壊すエネルギーを持って現れる、年若い『聞く耳を持たない』娘、アンナ。
貰った遺産の使い途として、憧れのスターに貢ぐことを思いついて、楽屋まで押しかけてくるその行動力たるや。キーンの恋人と勘違いした番人に「秘密の扉」を案内されて首尾よく楽屋へ入り込み、それまで危ういバランスで保たれていた「キーン」と「貴族社会」の関係を、崩してしまう…。

その、ひどく脆く不安定な世界を。
谷さんの演出が実に奇麗にまとめてみせてくれました。

…谷さんって、海外ミュージカルの演出は、初めてでしょうか?
「心中・恋の大和路」とかはやられているけど。

「ミー&マイガール」「ガイズ」「コパカバーナ」の三木さん、「ファントム」「オクラホマ」の中村一徳さん…このお二人は、申し訳ないですけど海外ミュージカルの翻案・演出にはとことん向いてないし、「エリザベート」は、事実上小池さんのオリジナル作品だし…
今後の海外ミュージカル上演は、谷さんか、百歩譲って木村さん(…ホントはイヤだけど)にお願いしたいなあ…。具体的には、来年のミーマイとか………(←とっくに三木さんで発表済だってば/嘆)


キーンの轟悠。

まさにタイトルロールの貫禄。
「ジュリアス・シーザー」での、「タイトルロールだけど主役じゃない」という珍しい立ち位置がとても似合っていた人ですが、さすがに85期以下を中心とする今回のメンバーだとタイトルロールで主役、という立場が当たり前な感じです。
役への理解もさすがで、素晴らしかったです。

ただ。

…この台詞劇で、台詞が聞き取れない(何を言っているのかわからない)のはちょっと………(涙)。
もともと滑舌の良い人ではないし、声もそんなに美声というわけではないので、あんなものなのかもしれませんが…でも、CSの初日映像なんかはあんなに酷くはなかったはずなので。この出突っ張り喋りっぱなしの公演で喉でも悪くなさったんじゃないかと少し心配になってしまったほどでした。

ま、私の席も悪かったのでしょう、多分。
皆さんの声、どれもなんか変な感じがしましたから(涙)。

それにしても。
本当に何を言っているのかさっぱりわからなかった…。脚本的にシェイクスピアの台詞をそのまま使っている部分も多くて、そこはわかるんですけどね。うーん、脚本読みたいなー。

プリンス・オブ・ウェールズの柚希礼音。

クールで嫌味な(←失礼)英国紳士、そのものでした。
いつもの「チンピラ」っぽさは影を潜め、声の出し方、姿勢、しゃべり方、何もかもにすごーく気をつけていたのがわかります。衣装もよくお似合いで、落ち着いた紳士っぷりがイタについていて、すごーくカッコよかった♪
ただ、燕尾のテールをそんなに跳ね上げなくてもいいだろう(涙)とか、細かいところで気になったところはいくつかありましたが。あと、「ああレオンくん気をつけてるなー」と観客に思わせてしまったのがちょっと残念。このあたりはやはり経験というか訓練なんでしょうね〜。自然に、当たり前に、すっ、と動く、というのは。
でも、やっぱりそれが出来ないと「貴族らしさ」、ましてや「王族らしさ」を出すのは難しいと思うので…。
がんばっていただきたいです。

しかし、今までずーっと明るい元気なやんちゃ坊主ばかりやっているような気がしていたレオンくんが、いつの間にか、こんなにちゃんと「紳士」がやれる役者になっていたことは嬉しい驚きでした。これを糧に、芸幅をもっともっと拡げて、素敵なスターさんになってください☆

エレナの南海まり。

美声を堪能できて幸せです♪
「龍星」の頃は、あの可愛らしい容貌に「キツい顔」「嫌味な演技」をさせるのはやめてくれ〜〜!!と児玉さんを恨んだものですが。
あれから2年?
さすがの演技力でした。感心。怒った顔をしても、嫌味を言っても、いつもコケティッシュで魅力的。ステキだ!しかも、歌も素晴らしいぞ!なんてステキなんだみなみちゃん♪♪(*^ ^*)。

それにしても難しい役ですよね〜、エレナ。
「恋」を語り、「愛」を囁きながら、そこに一欠片の真実も誠意もないことをわからせる。最大のスターであるキーンを“素敵なアクセサリー”としてとらえ、逃がすまいとして。

イギリス貴族社会のルールをしっかりと覚えて、その中を泳ぎ抜こうとする美しい魚。みなみちゃん、大人になったなあ…と感慨深かったです。
他にこの役が似合いそうな人も思いつかないくらい、ハマってました(はぁと)。

アンナの蒼乃夕紀。

見事な存在感と芝居でした。後半、オテロの舞台上での「デズデモーナ」として喋る時と「アンナ」として喋る時の声の使い分けが巧かった!感心しました。
表情があまり動かないのは役づくりなのかしら…?

バウ「Hallelujah Go! Go!」でも準ヒロイン格でいい芝居をしていましたが、これからが本当に楽しみな人です。
サービスショット(脚見せ)があったのが嬉しい♪(←それは違う!)

今回の目玉!キーンの付き人・ソロモンの紫蘭ますみ。

いやー良かったです。間の取り方といい、声のかけ方といい、どの台詞もひとつひとつがぜーんぶ秀逸!って感じ。エキセントリックすぎて何を言っているのかわからないキーンを、この世に連れ戻してくれる人なんですよね。

…祐飛さんと同じ78期かー、今まであまり注目したことありませんでしたけど、ホントに巧い人なんだなーーーーー(溜息)。

役者たちは彩海早矢、鶴美舞夕、真風涼帆。
3人ともハロー!ダンシングで注目した人たち♪キャスト表をみて、もっとこの3人のダンスシーンがあるのだとばかり思っていたのでちょっと拍子抜けでしたが、元気の出る役で良かったと思います。
ミス・スパローの百花沙里と共に、下層階級の代表としてキーンを称え、支える立場の人たち。彼らが明るく挫けず、畏れを知らずに輝いているからこそ、ラストのキーンが観客に響くんですよね。
だから、もっともっとパワフルに、もっともっと舞台を楽しんでくれますように、と…。

っていうか、百花姐さんの歌って意外と味があっていいですね。場面によく似合っていて、いい配役だったと思います。

ネヴィル卿の一輝慎さんは、86期かー!吃驚。もっと上級生かと…でも、「嫌味な中年男」は、さすがにちょっと苦戦してたかな。
後ろをついて歩く水輝涼くんが88期。ああ、このへんがもう中堅なんですねぇ…(シミジミ)。水輝くんは普通の“若い青年貴族”って感じで、そんなに嫌味な感じには作っていなかったせいか、良く似合ってましたね。ただ、歌も台詞もあんまり無かったのが残念(涙)。群舞やコーラスでちびちびソロ歌ってたけど、もっともっと気合い入れて芝居しながら歌えるような役がほしい〜〜〜!(本当に良い声なんですよ♪♪)

しかも。私は席が下手端だったので、オテロの場面のボックス席はネヴィル卿までしか見えず、水輝くんがいることもずっと知りませんでした(涙)。場面の終わり近くになって、ネヴィル卿の肩あたりに白いものがチラチラするなーと思ったら、水輝くんの白手袋の指先だった〜(泣)。

道化たちは、クリスティの如月蓮くんを中心に、結構出番も多くて大活躍。

如月くん、歌が面白かった!90期、ってことは、月でいえば響さんとか宇月くんあたりと一緒か〜、若いなー。(←月組に変換しないとわからない/汗)

「Hallelujah Go! Go!」で、礼音くんの金魚のフンしてた時といい、「シークレット・ハンター」のトウコさんの子供時代といい、良い芝居をする人ですよね。
ただ、すっごい可愛い笑顔を持っている人なので、3作つづけて子役が来たのも解るのですが。大人の男はどうなのかなー、と、ちょっとだけ不安も。(シークレット新公の麻尋くんの役は、あまり印象に残ってないな…)

同じく道化の稀鳥まりやちゃん。
ハロー!ダンシングで惚れ込んだ美少女ダンサー♪いやー、本当に軽やかですよね。彼女だけ立っているところが違うような気がするくらい、ジャンプも高いし、とにかく軽い!
本公演では残念ながら見つけられなかったのですが(涙)、次のショーはがんばるぞ!

この二人は、最近かなりお気に入りで、CSのニュースも星組フェアリーズを楽しみにしているくらいなんですけど(苦笑)。 
道化さんたちは、他のメンバーも皆可愛かったですね♪出てくるだけで幸せーな気分になれました♪

…そんなところかな。

とりあえず、

谷さん、演出はブラボー!ってことで♪♪


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