この週末は、「専科エンカレッジコンサート」で思いっきりオジサマ落ちしてました…という話はまた後日。まずは、先日書きかけて途中で終わってしまった、宙組公演のお話の続きを。



まずはちょっと、ロドリーゴについて追記をさせてくださいませ。
なんか、ちょっとバウのポスターが出たりして頭がみっちゃんしていたせいで、蘭トムくんのロドリーゴについてはとおりいっぺんのことしか書かなかったような気がするのですが。


シルヴィアさんとの激しいラブシーン、本当に凄かっ、いやえっと、素晴らしかったです(*^ ^*)

いやー、それまでずっとクールに冷めた瞳で、苦しむシルヴィアを無感動に眺めているだけに見えたのに。ふいに燃え上がった激情にかられて、“ぐいっ”と効果音が入りそうな勢いで引き寄せ、力づくで抱き寄せて、くちづける、その激しさといったら!!
…思わず見ていられなくて目を逸らしてしまったくらい、本当にドキっとしてしまいました…。



こういう激しさというか、恋の「抑圧」と激情の「解放」の落差の大きさ、それががロドリーゴのドラマなんですね…。そう、この熱がドラマを動かすのよ。やっぱり、脚本的に準主役になるのはどうしたってロドリーゴなんだな、と実感した瞬間でした。

…この役を、まぁキャラ宛とはいえ、役替わりするとはいえ、スターシステムで動く宝塚において、明らかに組内2番手である蘭トムくんに振らなかったのは……
演出の中村暁さんは、この脚本をどう理解して演出したのか、あらためて話を聞いてみたいわっ!

そういえば。
月組、花組、星組、と、第三回まで連続で宝塚を取り上げてくださった日本演劇協会の演劇フォーラム。
第4回のテーマは、朗読劇「女の一生」だったんですね(涙)。
もう宝塚は取り上げてくれないのかなー。この「バレンシアの熱い花」も、次の月組の「まほろば」も、いろんな切り口で分析できる、しっかりした良い作品だと思うのですが。
……演出家の話を聞く機会って意外とないものなので、楽しみにしていたのに、残念だー。





と、いうわけで、
ともちん(悠未ひろ)のルカノール公爵について(ぽっ)。

…そんなに格好良くてどうするんだ?としか言いようがないくらい、本当にカッコイイんだよ〜〜!!(壊)(←おい)



この「バレンシアの熱い花」には、脚本上、大きな穴がいくつかありますが。

そのうちの一つが、「何故ルカノールはシルヴィアを奪ったのか」だと思うんですよね。
わざわざ自分の後継者として指名した男の恋人を、何故?というのは、この作品を観劇した人なら誰もが抱く疑問だと思う。

ま、穴は他にもたくさんありますけど(苦笑)、
私の個人的な解釈ですが、これについては、一つの怪盗じゃなくて回答が与えられていると思っています。


シルヴィアの気持、という回答が。


…シルヴィアは、ルカノールとの結婚について、「父の命を救うために、嫌だったけど仕方なく」とロドリーゴに語っていますが。


絶対違うと思うのっ!!
シルヴィアは、一瞬かもしれませんが、ルカノールに恋をしたの。ロドリーゴを忘れて。
だから結婚を承諾した。それが、すべての始まり。



ルカノールは、甥の恋人が心変わりして自分を撰んだことを知っていた。
だから、甥の機嫌を取るためにわざわざ後継者に指名したの。自分の甥に叛旗を翻させるために、わざわざその恋人を奪ったのではないし、後継者指名したんでもない。
「今後私とシルヴィアの間に子供が生まれても、シルヴィアを奪った替わりに、私の全ての財産はお前に贈ろう」と。




年甲斐もなく若い娘(シルヴィア)に恋をした中年男(ルカノール)が、娘の方もその気になってくれたことに狂喜し、妻に迎え、…そして。

妻の昔の恋人(自分の甥)の帰還に不安を抱く。

…妻は弱い女だ、と………。



ロドリーゴと再会したシルヴィアは、目を逸らし続けてきた自分の罪と向き合う。
父を庇ってくれたルカノールに対して抱いた思慕が、今の自分を責め苛む。弱い彼女は、それに耐えられない。

だから咄嗟に、嘘を吐く。
「父を救いたいなら妻になれ、と…」

すべては、シルヴィアの、哀しい嘘。
自分の罪を認められない弱さゆえ、に。



だから、シルヴィアは死ななくてはならない。

気の迷いだったにせよ、一度は本気で慕った男を殺して、恋しい男と結ばれる…そこまで悪女になれない。なりきれない。

だから。

夫を殺す手引きをすることで、自分の罪を許してもらおう。
そうして、全てをなかったことにしたい、と。

そう願って、死を撰ぶ。




…「ともちん素敵っ♪♪」と舞い上がった大劇場の時から、漠然と、そんなことを考えていた(らしい)のですが。

確信を抱いたのは。
「甥を後継者に」と宣言したあのパーティーで、ロドリーゴに「美しい奥方をしばしお借りします」と言われ、踊る二人を見守るルカノールの、表情でした。

昏い、顔。
この世の全てを憎んでいるかのような。



ルカノールについては、もっとイロイロ語られているような気がしていたのですが、あらためて観てみると、彼の人格や人生についての説明って全く無いんですね。
っていうか、あれっ?と思ったくらい出番も少なかった(涙)。

セレスティーナを愛していたこと、フェルナンドの父を殺してボナパルトについたこと、パーティはいつも盛会なこと…それくらい?軍人としてはレオン将軍の方が上っぽい(ルカノールの部下は、すっしーさんのバルカはじめ、駄目なのばっかりだから)けど、ナポレオンについたってことはそれなりに政治力はあったんでしょうか…?
ホルヘたちの調査報告に対して「放っておけ」と言い放つ感覚がちょっと謎なのですが。でも、レオン将軍のことは信じている?それとも、老いぼれとみて「何もできるまい」と蔑んでいるのでしょうか?

いや、単に“時代を見る目”が弱かったのかもしれませんね。領民たちの不満にも気づいていないっぽいし。


…まぁ、そういう意味では時代劇にありがちな「悪代官」設定だと思えばいろんなことがすっきりするんですけど。
あえてこの役をともちんに振ってくれたので、イロイロ想像をめぐらせてしまいます(^ ^)。

ともちんの芝居って面白いですよね♪その人の人生をしっかり考えさせてくれます。裏と表があってこその人間、っていう気がするの。私はああいう、深みのある芝居をする人が好きです♪♪(←ファン丸出し)


ルカノールは若い頃、セレスティーナに恋をしていた。
この設定を勝手に拡げると、面白い設定が作れます。

フェルナンドの父親とセレスティーナが、歳の離れた夫婦だったとする。
例えば、デルバレス侯爵35歳、セレスティーナ24歳、とか。
そして、ルカノールはセレスティーナより少し年下。たとえば、20歳。(年齢設定はてきとーです)

これって、そっくりルカノール、シルヴィア、ロドリーゴの年齢として設定可能なんですよね。
少し年上の従姉妹(?)に憧れる若者、って感じになりますが。
実際、美羽あさひちゃんのシルヴィアはちょっと年齢も上めに作っていらっしゃるみたいだし。

ルカノールは、シルヴィアを妻に迎えた時、甥の気持ちを想像して、自分が若い頃の絶望を思い出す。
それでも、今更手放せないくらいにはシルヴィアを愛していた。もしかしたら、彼女にはセレスティーナの面影があったのかもしれない。

そして、前領主の暗殺も、半分はセレスティーナを手に入れるためだったかもしれない(…邦さんじゃそれは無理?←失礼な)。

おお。そう思うと、この作品って元ネタはハムレットなんですね!!

デルバレス侯爵=ハムレット王(王子ハムレットの父王)
ルカノール=クローディアス
セレスティーナ=ガートルード


…ハムレットではガートルード一人だった「女」が、セレスティーナとシルヴィアに分裂しているのは、王子ハムレットがフェルナンドとロドリーゴに分裂しているせいだと思うんですよね。オフィーリアはマルガリータに微かに面影を残すのみ、という感じですが。
そして、なぜそんな風に分裂させることになったか、といえば、やっぱり当時の月組の状況に合わせて役を増やす必要があったから…、ということではないか、と。

それにしても、なんかハムレットネタ多くないですか?最近。月組の「マジシャンの憂鬱」も、墓守だのなんだの、キャラ設定がハムレットのパロディっぽいし…




で。

この「バレンシアの熱い花」という作品が、ハムレットを本歌取りして説明を省略しているのだとすれば。

デルバレス侯爵とルカノールは、兄弟ではないにせよ、兄弟のような関係だったのではないか?
そうなると、年下(と思われる)のルカノールが、デルバレス侯爵を兄と慕い、憧れを抱いていた、という可能性が高い。


そしてある時、
…憧れが殺意に変わった、としたら。


憧れの人を殺した時、彼は平静でいられるだろうか?
この手で死の使者を送った時、彼は自分の心の平安を替りに差し出したのではないか、と。



クローディアスが罪の意識に苛まれ、必死で神に祈っていたように、
ラストシーンでは自らも崩壊してデンマークを滅ぼしてしまったように、

ルカノールもまた、自分の作った「世界」を食い荒らす白蟻たち(レオン将軍とその一味)の存在からあえて目を逸らし、部下たちの諫言に耳を貸さず、「世界」が崩壊するのを待っている。



「黒い天使」なんていう意味のないパフォーマンスが中心になってしまうところが、宝塚らしいショーアップの仕方というか、中村暁さんの勘違いというか…。
その表現の仕方には不満はありますが。

「黒い天使」が現れても、何の手も打たないルカノールには、そういう彼自身の鬱屈があったんじゃないか、と。

憧れの人、尊敬する先輩、いやもしかしたら、“恋しいひと”に暗殺者を差し向けたならば、
そりゃー、壊れちゃうよね、と…




……そういう、腐女子にピンポイントヒットな脚本だ、っていう解釈はいかがなもんでしょうか、柴田さん?
(←腐猫め〜〜っ!!)


そういう妄想をかきたててくれたともちんの芝居は、ホントに面白かったです。っていうか、すいません、一から十まで全部妄想ですってばっ!!赦してっ(涙)



…っていうか、新公の暁郷くんのルカノールは、最初のパーティの時、どんな顔してたんだろうか〜〜(涙)。観てなかった(フェルナンドに一点集中していた)ことが悔やまれます……。





話は変わって。
七帆くんのドン・ファン・カルデロ。

今更ですけど、復帰おめでとうございます。
やっぱり華やかですね、彼は。
CSのインタビューで言っていた「いつも上手から出てくるから、左側の顔しか見せないんですね…」という話から、左側だけイヤリングを着けることにしたのでしょうか?確か大劇場ではしてなかったと思うんだけど。
気障度があがってて、なかなか良かったです(はぁと)。


全国ツアーは、ロドリーゴでしょうか。それとも、ドン・ファンのまま?どちらもありそうですが、どちらにしても楽しみです♪いや、個人的にはサドな七帆くんも好きなので、ルカノールも観てみたいなあ(←眼鏡はかけないと思うけど?)(←要するになんでもいいんだなお前?)




今週はバタバタしていて、蘭トムロドリーゴ版はもう観られなさそうですが。最後にもう一度、みっちゃんのロドリーゴを観たいなー、と思っています。
…ともちんのルカノールは、みっちゃんのロドリーゴにはどんな芝居をするんだろう…(←そこか)



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