コンフィダント 〜絆〜
2007年5月11日 ミュージカル・舞台 コメント (6)今週の土曜日から旅に出るので(残念ながら「あなたと一緒ならどこへでも」と言ってくれる可愛い相方はいなかった…)。
旅から戻ると、旅の話がしばらく続くはずなので(^ ^)、その前に書かなくっちゃ、と思っていた話題が、書き終わらないうちに一つ残ってしまいました。
でも。
明日は朝早いので。
とりあえず、さわりだけ。
…ってゆーか、ほんとにちょっとだけよ!まだ荷物できてないんだからねっ!>自分
正式な公演タイトルは「コンフィダント・絆」。
作・演出は三谷幸喜。
三谷がPARCO劇場と組んで…何作目だろう?とにかくその一環です。でも別に何かのシリーズというわけではなく、独立した作品だと思います。
題材は。
19世紀末(この時代ホントに多いなー!)のパリ・モンマルトルの「ラ・ボエーム」=共同で助け合いながら生きる貧乏画家たちの物語。
セットは一つ。
シュフネッケルが中心になって借りた、どこか古ぼけた、薄暗い
パリのアトリエ。
ムーラン・ド・ラ・ギャレットに近い、ってことは当時の「新開地」だったモンマルトルの丘近辺の、ベランダがあって、結構本格的な台所がある、心地よい空間。
三谷得意のシチュエーション芝居。コミカルな部分も多いですが、ものすごくシリアスな物語でもありました。
登場人物は5人。
メインは、アトリエに集う4人の貧乏画家たち。
理論家で、「理論さえ心得ていれば誰にだって絵が描ける」と豪語する、理屈屋でなかなか素を見せない点描手法の開拓者、
ジョルジュ・スーラ(中井貴一)
対象と向き合って思いのままに観たものを画布に写し取る、躁鬱の激しい繊細で攻撃的なオランダの天才、
フィンセント・ファン・ゴッホ(生瀬勝久)
ペルーで育ち、船員として商才を存分に発揮し、広い世界を見てきた生活能力のある色男。なのに画家になるために妻子を捨て、安定してた仕事も捨てて身ひとつでパリに来た、
ポール・ゴーギャン(寺脇康文)
そして、温厚で誠実で、話がうまく、妻子を愛し、普通の生活を送る幸運に恵まれた美術教師、
クロード・ミッシェル・シュフネッケル(相島一之)
そして紅一点、4人の画家の共同アトリエの専属モデルとなった、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの踊り子志望のウェイトレス、
ルイーズ(堀内敬子)
これに、音楽監督でピアノ生演奏の荻野清子さんがちょこっと絡みつつ物語は進行します。
うーん、何から話しましょうか。
まず驚いたのは、このキャスティング。
それぞれに違うバックボーンを持った、それぞれに「自分の世界」を持っている同世代の俳優4人。
それぞれ、自分が主宰しているユニットなり劇団なりをもち、あるいは持っていたことがあり、自分一人で座長をつとめる力も人脈もあって、プロデュース能力に長け、演出だって出来ちゃうような、そんな“一流”の男たち。
三谷さんはパンフレットに「同世代の仲間達で何かをやりたかった」と書いていますが。
この4人が二つ返事で参加を引き受け、精一杯の力を出し切って、イタの上で思いっきり傷つけあって、幸せそうに輝いてしまう、
それだけの魅力が三谷のホンにはあるんだなあと改めて思いました。
…今更なんですけどね。
「ラ・ボエーム」のモデルになったモンマルトルの貧乏芸術家たち、というと、宝塚ファン的には星組さんの「1914」が浮かぶ…のが正しいのかな?
私はあの公演、日程が合わなくて観られずじまいだったのですが、あれは確か20世紀初頭の話ですよね?「コンフィダント」の舞台になっているのは、エッフェル塔が工事中のパリなので、1886〜89年の間です。
(月組ファン的には、エッフェル塔に関する話題が何度も出てくるので、そのたびに笑ってしまった。しかも三谷さん、結構いい加減なこと言わせてるし…)
パリの貴族趣味な「サロン」では全く評価されない、「印象派」を中心とする新時代の画家たち。
彼らはまったく収入を得る見込みはなく、お互いに助け合って共同生活をし、また共同で芸術活動を行い、可能なものは必要なものに援助し、
慰めを与え、批評しあい…
そんな。
すべてを分け合っているはずの「芸術家」仲間が。
【人間】というモノが、時としてどこまで残酷に、そして痛烈になれるものなのか。
…なんというか。
観ていてこんなに“痛い”と思った作品は久しぶりでした。
自分より優れた人に対して抱く、憧れとねたみ、そして、恨み。
きっと、「何もかも全て」が優れているなら憧れだけですむはずなのです。
そうであったなら、自分も天使でいられたのに。
なのに、この「天才」は、「絵」以外のことはからっきし駄目で…。
でも、もう魅せられてしまったから、離れることもできない。
とらわれて、
逃げられない。
「ゴッホがいると知っていたら、おれはこんな(画家の)道になんて入らなかったのに」
血を吐くようなゴーギャンの叫び。
それでも、彼は一度踏み込んでしまった道を戻ることは考えない。
ただ、
「俺は、絵以外のすべてで必ずゴッホを上回ってやる」
と。
これって、一番悲しい叫びなんですよね。
だって、彼が本当に陵駕したいと思うのは、越えなくては生きていけないのは、まさに「ゴッホの絵」なんだもの。
たった一つの「絵の才能」 と、「それ以外の全て」。
それは、天秤に載せれば必ず左に傾くのです。
彼らの秤は。
その二つを、秤に載せるゴーギャンの痛み。
それが左に傾くようすから目を離せない、ゴーギャンの痛み。
…そして、その秤が何故左に傾くのか、それがさっぱりわからない、ルイーズの痛み。
そしてまた。
ゴッホの痛み。
シュフネッケルの痛み。
スーラの痛み。
一人一人、それぞれに違う傷をさらけだして、慰めと赦しを与えながら。
物語は進んでいく。
「友情」とは何なのか、
芸術家にとって、「仲間」とか「友達」というのは何かになりうるのか…?
その問いかけそのものが、酷く心に突き刺さって、
もう本当に、痛くて痛くてたまりませんでした……(号泣したんですホントに)
PARCO劇場公演は終わっちゃいましたが、今は大阪のシアターBRAVA!で上演が始まったみたいです。BRAVA!って、一時期劇団四季の大阪劇場だったところですよね?京橋から歩くと、大阪城ホールのちょっと手前。
割と観やすくて、好きな劇場でした。ディズニーの「アイーダ」好きなので結構行ったなあ。懐かしい〜!
…とりあえず。
今日はこのへんにして、またいつか、時間ができたら続きを書かせていただきたいと思っています。
それこそ、すごい長文になっちゃいそうですけどね…(汗/いや、今もう充分長いからっ!!)
.
旅から戻ると、旅の話がしばらく続くはずなので(^ ^)、その前に書かなくっちゃ、と思っていた話題が、書き終わらないうちに一つ残ってしまいました。
でも。
明日は朝早いので。
とりあえず、さわりだけ。
…ってゆーか、ほんとにちょっとだけよ!まだ荷物できてないんだからねっ!>自分
正式な公演タイトルは「コンフィダント・絆」。
作・演出は三谷幸喜。
三谷がPARCO劇場と組んで…何作目だろう?とにかくその一環です。でも別に何かのシリーズというわけではなく、独立した作品だと思います。
題材は。
19世紀末(この時代ホントに多いなー!)のパリ・モンマルトルの「ラ・ボエーム」=共同で助け合いながら生きる貧乏画家たちの物語。
セットは一つ。
シュフネッケルが中心になって借りた、どこか古ぼけた、薄暗い
パリのアトリエ。
ムーラン・ド・ラ・ギャレットに近い、ってことは当時の「新開地」だったモンマルトルの丘近辺の、ベランダがあって、結構本格的な台所がある、心地よい空間。
三谷得意のシチュエーション芝居。コミカルな部分も多いですが、ものすごくシリアスな物語でもありました。
登場人物は5人。
メインは、アトリエに集う4人の貧乏画家たち。
理論家で、「理論さえ心得ていれば誰にだって絵が描ける」と豪語する、理屈屋でなかなか素を見せない点描手法の開拓者、
ジョルジュ・スーラ(中井貴一)
対象と向き合って思いのままに観たものを画布に写し取る、躁鬱の激しい繊細で攻撃的なオランダの天才、
フィンセント・ファン・ゴッホ(生瀬勝久)
ペルーで育ち、船員として商才を存分に発揮し、広い世界を見てきた生活能力のある色男。なのに画家になるために妻子を捨て、安定してた仕事も捨てて身ひとつでパリに来た、
ポール・ゴーギャン(寺脇康文)
そして、温厚で誠実で、話がうまく、妻子を愛し、普通の生活を送る幸運に恵まれた美術教師、
クロード・ミッシェル・シュフネッケル(相島一之)
そして紅一点、4人の画家の共同アトリエの専属モデルとなった、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの踊り子志望のウェイトレス、
ルイーズ(堀内敬子)
これに、音楽監督でピアノ生演奏の荻野清子さんがちょこっと絡みつつ物語は進行します。
うーん、何から話しましょうか。
まず驚いたのは、このキャスティング。
それぞれに違うバックボーンを持った、それぞれに「自分の世界」を持っている同世代の俳優4人。
それぞれ、自分が主宰しているユニットなり劇団なりをもち、あるいは持っていたことがあり、自分一人で座長をつとめる力も人脈もあって、プロデュース能力に長け、演出だって出来ちゃうような、そんな“一流”の男たち。
三谷さんはパンフレットに「同世代の仲間達で何かをやりたかった」と書いていますが。
この4人が二つ返事で参加を引き受け、精一杯の力を出し切って、イタの上で思いっきり傷つけあって、幸せそうに輝いてしまう、
それだけの魅力が三谷のホンにはあるんだなあと改めて思いました。
…今更なんですけどね。
「ラ・ボエーム」のモデルになったモンマルトルの貧乏芸術家たち、というと、宝塚ファン的には星組さんの「1914」が浮かぶ…のが正しいのかな?
私はあの公演、日程が合わなくて観られずじまいだったのですが、あれは確か20世紀初頭の話ですよね?「コンフィダント」の舞台になっているのは、エッフェル塔が工事中のパリなので、1886〜89年の間です。
(月組ファン的には、エッフェル塔に関する話題が何度も出てくるので、そのたびに笑ってしまった。しかも三谷さん、結構いい加減なこと言わせてるし…)
パリの貴族趣味な「サロン」では全く評価されない、「印象派」を中心とする新時代の画家たち。
彼らはまったく収入を得る見込みはなく、お互いに助け合って共同生活をし、また共同で芸術活動を行い、可能なものは必要なものに援助し、
慰めを与え、批評しあい…
そんな。
すべてを分け合っているはずの「芸術家」仲間が。
【人間】というモノが、時としてどこまで残酷に、そして痛烈になれるものなのか。
…なんというか。
観ていてこんなに“痛い”と思った作品は久しぶりでした。
自分より優れた人に対して抱く、憧れとねたみ、そして、恨み。
きっと、「何もかも全て」が優れているなら憧れだけですむはずなのです。
そうであったなら、自分も天使でいられたのに。
なのに、この「天才」は、「絵」以外のことはからっきし駄目で…。
でも、もう魅せられてしまったから、離れることもできない。
とらわれて、
逃げられない。
「ゴッホがいると知っていたら、おれはこんな(画家の)道になんて入らなかったのに」
血を吐くようなゴーギャンの叫び。
それでも、彼は一度踏み込んでしまった道を戻ることは考えない。
ただ、
「俺は、絵以外のすべてで必ずゴッホを上回ってやる」
と。
これって、一番悲しい叫びなんですよね。
だって、彼が本当に陵駕したいと思うのは、越えなくては生きていけないのは、まさに「ゴッホの絵」なんだもの。
たった一つの「絵の才能」 と、「それ以外の全て」。
それは、天秤に載せれば必ず左に傾くのです。
彼らの秤は。
その二つを、秤に載せるゴーギャンの痛み。
それが左に傾くようすから目を離せない、ゴーギャンの痛み。
…そして、その秤が何故左に傾くのか、それがさっぱりわからない、ルイーズの痛み。
そしてまた。
ゴッホの痛み。
シュフネッケルの痛み。
スーラの痛み。
一人一人、それぞれに違う傷をさらけだして、慰めと赦しを与えながら。
物語は進んでいく。
「友情」とは何なのか、
芸術家にとって、「仲間」とか「友達」というのは何かになりうるのか…?
その問いかけそのものが、酷く心に突き刺さって、
もう本当に、痛くて痛くてたまりませんでした……(号泣したんですホントに)
PARCO劇場公演は終わっちゃいましたが、今は大阪のシアターBRAVA!で上演が始まったみたいです。BRAVA!って、一時期劇団四季の大阪劇場だったところですよね?京橋から歩くと、大阪城ホールのちょっと手前。
割と観やすくて、好きな劇場でした。ディズニーの「アイーダ」好きなので結構行ったなあ。懐かしい〜!
…とりあえず。
今日はこのへんにして、またいつか、時間ができたら続きを書かせていただきたいと思っています。
それこそ、すごい長文になっちゃいそうですけどね…(汗/いや、今もう充分長いからっ!!)
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コメント
もうね、もう。
1幕から泣き続け、2幕は殆ど号泣でした。
あげく変な震えまで出てきて、大変な状態に。ただのアブナイ人と成り果てた(笑)。
や、もちろんたくさん笑いもしたんですけどね。
すっごいホンですよね。
ほんとうに!!!
三谷氏の中でも、出色の出来だと思います。
私は基本お喋りなんですが(笑)、終演後は呆然として言葉がなんにも出てこないんですよ。
なんか言おうとすると、また涙出ちゃうの。
大阪楽、行きたいなあ。
いつかだいありーにも書きたいんですが、いつになることやらorz
これだけの出演者だとチケ取りが大変だったのでは〜?
「12人の優しい日本人」の映画版と2005年舞台版で陪審員2号を競演した形の生瀬さんと相島さんの共演というのも興味深いです。
そして、ストーリーが、私が見た「絢爛とか爛漫とか」の世界だなーと思いました。こちらは文士の話ですが。
やはり芸術という世界に足を踏み入れるって、すごい業(ごう)を背負うことなんだな…と、こちらを読んで痛感しました。
ちなみに、「絢爛…」は、涙が出るような辛い物語ではなかったです。
>あげく変な震えまで出てきて
私もです〜!!しゃくり上げないようにするのが精一杯。終演後は泣きすぎで頭痛がして、ホントに智恵熱出るかと思いました(笑)。
>三谷氏の中でも、出色の出来だと思います。
同感です!私も、一人だったのでまっすぐ帰って布団に入りました。思い出すと涙出るし、考えると涙出るし、言葉を探すと涙出るし。大変。
ジュンタさまのだいありぃ、楽しみにお待ちしていま〜す!サ
絢爛〜ってそういうお話だったんですね!夜野さんのブログを読んで、内容も知らずに(笑)飯島さんの脚本にそのメンバーは観たいな〜と思っていたのですが。
それは、行かねば!
チケットは、友人に頼んでしまったのですが…多分大変だったと思いますよ。PARCOだから座布団席はあったと思いますが。
大阪は当日券があるらしい…迷う…(笑)。
今年の観劇No.1です。ほんと、1914と同じような観点で扱っていて、xx先生も結構良いセンスはあるんだろうけどなぁ
劇団はやはり外部の脚本家に年に一度くらい依頼してみるのもいいのではと思います。
あと、堀内敬子さんの代表作と言えるのでは?と思いましたね。
私も無理すれば大阪で観ることはできたのですが…
でも何となく、初見の感動(と号泣)を大切にしたいとも思ったんですよね…。
>今年の観劇No.1です
私も、これを観るまでは大野さんの「ヘイズ・コード」がずっと芝居No.1だったのですが、大きく凌駕されました。
このまま「三谷最高!」で今年は終わってしまうのかなあ
(哀)。
>堀内敬子さんの代表作と言えるのでは?
敬子ちゃんには、あまり知られていませんが一応「I Love You 〜愛の果ては?」という傑作がありまして…
ああいう役は、これが初めてじゃないんですよ♪
でも、間違いなくルイーズは代表作の一つになるでしょうし、この役をやった女優、という肩書きも一生の宝物になるるんじゃないでしょうか。
っていうか、せっかく四季を退団したので、コゼットみたいな役とは縁を切って、似合う役に専念してほしいです〜〜!