月組公演「パリの空よりも高く」の原作となった、菊田一夫の「花咲く港」についての話題。
本当は、いちいち細かいところを比較しつつ突っ込んでみて、植田さんへの質問状としてまとめたい気持もあったのですが。
いまさらソンナコトしても無駄だし。
徒労だし。
もう何度も書いてるし。
誰も喜ばないし。(私は楽しいけど)
なので、やめます。
ならば、何を書くのか?
夜野さまがブログで論じられた、「昭和18年における70円の価値」について、もう少し突っ込んでみたいと思います。
夜野さんのナイス!な記事はこちら。
http://blog.so-net.ne.jp/nights-entertainment_troup-leader/2007-03-12
…といいますか。
昭和15年と19年の、世相や賃金、物価などをまとめてくださった労作を発見したので、ご紹介したいんです!(^ ^;ゞ
http://www8.plala.or.jp/shinozaki/s15-1940.pdf
http://www8.plala.or.jp/shinozaki/s19-1944.pdf
残念ながら、「花咲く港」が初演された昭和18年当時のものはないのですが…
一番驚いたのは、
昭和15年の大卒銀行員の初任給70円。
「花咲く港」において、最後のオチの部分で「島への交通費にいくらかかったと思ってるんだ!」「…70円」という会話があります。
「パリの空よりも高く」のラストで、ジョルジュが「70フラン」と応えるところですね。ちなみにここの会話は、内容も言葉遣いもほぼ原作どおり、なのですが……
…えっ!?
ペテン師二人の交通費って、大卒の初任給一ヶ月分だったの!?
いったいどっから来たの二人は!??
まさかと思うが、満州あたりから帰ってきたっていう話なのか…!?
当時の進学率を考えれば、「大卒」は現代と全く比較にならない価値があったはずなのですが…。
えええええーーーー?
もしかして、「70円」じゃなくて「70銭」って言ってるのかしら。(しかし何度聴いても「エン」と聞こえるが…)
だとすると。(強引)
初任給の100分の1で、2000円〜3000円くらい?
あとは昭和19年の「映画封切館80銭」とかが一番近いですが、おそらく現代とは映画の地位が全く違う(ずっと高かった)はずなので、ちょうど東宝劇場のB席料金3500円くらいに当たるのかな?と勝手に思ったり。
夜野さまは、「70フラン=7000円」という推測を立てていらっしゃいますが、
私はその半分くらいという当たりを当面の暫定結論とさせていただきたいと思います。
…ってことは。
嵐の夜の「2万フラン」=「100万円」
初日に集まった「200万フラン」=「1億円」
助成金「1500万」=「7億5千万円」
ま、「一大国家事業」ですからこんなものかな?
夜野さまの調査によると、エッフェル塔の建設費は780フラン。
…でも、フランでの数字は完全に植田さんの空想の産物(エッフェルさんのキャラも含め)で根拠がないので気にしないことにして。
東京タワーの建設費をちょっと調べてみたのですが。
…今、世の中は第2東京タワーで盛り上がっているんですね。
第2東京タワーの建設予算が400億だか500億だか、という記事は沢山見つかったのですが、現東京タワーを建てる時にいくらかかったのかは遂に解らず…
ご存知の方、ぜひコメントで教えてくださいませ!!
とりあえず「試算では30億」という記述を見つけました。
…となると、上の換算表(70銭=3500円)という計算ではちょっと足りないかも(^ ^)。
いえあの、原作では国家規模の事業ではなく小さな島の中でまかなえる範囲で「船」を作る費用なので。こんなには全然かからないはずなんですけどね…。
こうなってくると(←意味不明)、「花咲く港」が初演された有楽座の料金を知りたくなります♪
予測としては、「70銭」というのが有楽座の席料ぴったりか、席料の何倍かといった数字にしてウケを取ったのではないかと思うのですが。
…どうなのでしょうねぇ。
情報をお持ちの方、ぜひぜひご一報を!
芝居は時代を映す鏡。
「花咲く港」を観ると、その当時の世相が、時代が、すごく心に響いてきます。
太平洋戦争は始まっている。
でも、まだ赤紙も丙種には来ないし、食料もまだなんとなかなる、物資も足りないけどまだ我慢できる、
そんな時代。
人々は日本の勝利を、大本営発表を信じて、自分たちの「正義」を確信して、そして、輝かしい明日を夢見ていた、そんな時代。
ましてや日本の片隅にある小さな島、小さな「世界」には、「戦争」も「小さな影」でしかない…。
菊田さん自身がどういう情報をお持ちで、どういう歴史認識でいらしたのかは解りませんが、「世相」はまだそんなものだったのではないでしょうか。
そこに現れた、中年の、ちょっとくたびれた呑気なペテン師二
人が主人公の物語、は。
「パリの空よりも高く」で描かれる、平穏で充実した、ブルジョアたちの高度成長期の「世界の中心」パリとは全く違う世界観を持っているのです。
もちろん、それはそれで良いの。
「パリの空よりも高く」は「花咲く港」とは別物であり、「花咲く港」という昭和初期の名作にインスパイアされて作られた「花の都・パリ」の物語なのですから。
ただ。
この「暗いところへ向かいつつあるけれども、まだ人々は希望にしがみついている」微妙な時代の空気を見事に表現した「花咲く港」は、この時代背景と甑島という、非常に特殊な土地柄で全ての理屈をつけている作品なので。
舞台や登場人物の性格を全く変えてパロディ化する場合は、本当に真剣に、細心の注意を払って設定を見直さないと、あちこちにボロが出て物語全体が破綻してしまうものなんだよ…という典型的な例だなあ、と。
そんなことを、(自己反省も含めて)あらためて思ったのでした。
それにしても、15年から19年への4年間での値上がりっぷりってすごいですよね…。
太平洋戦争が始まる前の15年と、次第に敗色が濃くなっていく19年の差。
たばこ2.5倍、新聞・映画1.5倍。
初任給は、銀行員と巡査なので比較が難しいですが、そんなにあがっているようには思えません。
ということは。
生活、本当に大変だったんでしょうねぇ…。
-----------------------------
ちなみに。
最初に掲示した資料を掲載くださっているホームページはこちらです。
篠崎さまのホームページ
http://www8.plala.or.jp/shinozaki/
開くといきなりちょっとドキッとするタイトルが出てきますが、左側にメニューがありまして、その下の方の「思い出の昭和史」
の中に年ごとにデータがまとめられています。
全ページ見ると、「昭和」という時代が「事実」として見えてくる、非常に興味深い資料だと思います!
昭和生まれの方は、自分の生まれた年のデータを是非見てみてくださーい!(笑)
他のコンテンツも、どれも面白いです!
私は、百人一首のパロディに爆笑しました(^o^)。
ぜひ皆さんも、訪れてみてください、ね m(_ _)m。
.
本当は、いちいち細かいところを比較しつつ突っ込んでみて、植田さんへの質問状としてまとめたい気持もあったのですが。
いまさらソンナコトしても無駄だし。
徒労だし。
もう何度も書いてるし。
誰も喜ばないし。(私は楽しいけど)
なので、やめます。
ならば、何を書くのか?
夜野さまがブログで論じられた、「昭和18年における70円の価値」について、もう少し突っ込んでみたいと思います。
夜野さんのナイス!な記事はこちら。
http://blog.so-net.ne.jp/nights-entertainment_troup-leader/2007-03-12
…といいますか。
昭和15年と19年の、世相や賃金、物価などをまとめてくださった労作を発見したので、ご紹介したいんです!(^ ^;ゞ
http://www8.plala.or.jp/shinozaki/s15-1940.pdf
http://www8.plala.or.jp/shinozaki/s19-1944.pdf
残念ながら、「花咲く港」が初演された昭和18年当時のものはないのですが…
一番驚いたのは、
昭和15年の大卒銀行員の初任給70円。
「花咲く港」において、最後のオチの部分で「島への交通費にいくらかかったと思ってるんだ!」「…70円」という会話があります。
「パリの空よりも高く」のラストで、ジョルジュが「70フラン」と応えるところですね。ちなみにここの会話は、内容も言葉遣いもほぼ原作どおり、なのですが……
…えっ!?
ペテン師二人の交通費って、大卒の初任給一ヶ月分だったの!?
いったいどっから来たの二人は!??
まさかと思うが、満州あたりから帰ってきたっていう話なのか…!?
当時の進学率を考えれば、「大卒」は現代と全く比較にならない価値があったはずなのですが…。
えええええーーーー?
もしかして、「70円」じゃなくて「70銭」って言ってるのかしら。(しかし何度聴いても「エン」と聞こえるが…)
だとすると。(強引)
初任給の100分の1で、2000円〜3000円くらい?
あとは昭和19年の「映画封切館80銭」とかが一番近いですが、おそらく現代とは映画の地位が全く違う(ずっと高かった)はずなので、ちょうど東宝劇場のB席料金3500円くらいに当たるのかな?と勝手に思ったり。
夜野さまは、「70フラン=7000円」という推測を立てていらっしゃいますが、
私はその半分くらいという当たりを当面の暫定結論とさせていただきたいと思います。
…ってことは。
嵐の夜の「2万フラン」=「100万円」
初日に集まった「200万フラン」=「1億円」
助成金「1500万」=「7億5千万円」
ま、「一大国家事業」ですからこんなものかな?
夜野さまの調査によると、エッフェル塔の建設費は780フラン。
…でも、フランでの数字は完全に植田さんの空想の産物(エッフェルさんのキャラも含め)で根拠がないので気にしないことにして。
東京タワーの建設費をちょっと調べてみたのですが。
…今、世の中は第2東京タワーで盛り上がっているんですね。
第2東京タワーの建設予算が400億だか500億だか、という記事は沢山見つかったのですが、現東京タワーを建てる時にいくらかかったのかは遂に解らず…
ご存知の方、ぜひコメントで教えてくださいませ!!
とりあえず「試算では30億」という記述を見つけました。
…となると、上の換算表(70銭=3500円)という計算ではちょっと足りないかも(^ ^)。
いえあの、原作では国家規模の事業ではなく小さな島の中でまかなえる範囲で「船」を作る費用なので。こんなには全然かからないはずなんですけどね…。
こうなってくると(←意味不明)、「花咲く港」が初演された有楽座の料金を知りたくなります♪
予測としては、「70銭」というのが有楽座の席料ぴったりか、席料の何倍かといった数字にしてウケを取ったのではないかと思うのですが。
…どうなのでしょうねぇ。
情報をお持ちの方、ぜひぜひご一報を!
芝居は時代を映す鏡。
「花咲く港」を観ると、その当時の世相が、時代が、すごく心に響いてきます。
太平洋戦争は始まっている。
でも、まだ赤紙も丙種には来ないし、食料もまだなんとなかなる、物資も足りないけどまだ我慢できる、
そんな時代。
人々は日本の勝利を、大本営発表を信じて、自分たちの「正義」を確信して、そして、輝かしい明日を夢見ていた、そんな時代。
ましてや日本の片隅にある小さな島、小さな「世界」には、「戦争」も「小さな影」でしかない…。
菊田さん自身がどういう情報をお持ちで、どういう歴史認識でいらしたのかは解りませんが、「世相」はまだそんなものだったのではないでしょうか。
そこに現れた、中年の、ちょっとくたびれた呑気なペテン師二
人が主人公の物語、は。
「パリの空よりも高く」で描かれる、平穏で充実した、ブルジョアたちの高度成長期の「世界の中心」パリとは全く違う世界観を持っているのです。
もちろん、それはそれで良いの。
「パリの空よりも高く」は「花咲く港」とは別物であり、「花咲く港」という昭和初期の名作にインスパイアされて作られた「花の都・パリ」の物語なのですから。
ただ。
この「暗いところへ向かいつつあるけれども、まだ人々は希望にしがみついている」微妙な時代の空気を見事に表現した「花咲く港」は、この時代背景と甑島という、非常に特殊な土地柄で全ての理屈をつけている作品なので。
舞台や登場人物の性格を全く変えてパロディ化する場合は、本当に真剣に、細心の注意を払って設定を見直さないと、あちこちにボロが出て物語全体が破綻してしまうものなんだよ…という典型的な例だなあ、と。
そんなことを、(自己反省も含めて)あらためて思ったのでした。
それにしても、15年から19年への4年間での値上がりっぷりってすごいですよね…。
太平洋戦争が始まる前の15年と、次第に敗色が濃くなっていく19年の差。
たばこ2.5倍、新聞・映画1.5倍。
初任給は、銀行員と巡査なので比較が難しいですが、そんなにあがっているようには思えません。
ということは。
生活、本当に大変だったんでしょうねぇ…。
-----------------------------
ちなみに。
最初に掲示した資料を掲載くださっているホームページはこちらです。
篠崎さまのホームページ
http://www8.plala.or.jp/shinozaki/
開くといきなりちょっとドキッとするタイトルが出てきますが、左側にメニューがありまして、その下の方の「思い出の昭和史」
の中に年ごとにデータがまとめられています。
全ページ見ると、「昭和」という時代が「事実」として見えてくる、非常に興味深い資料だと思います!
昭和生まれの方は、自分の生まれた年のデータを是非見てみてくださーい!(笑)
他のコンテンツも、どれも面白いです!
私は、百人一首のパロディに爆笑しました(^o^)。
ぜひ皆さんも、訪れてみてください、ね m(_ _)m。
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コメント
そうですね。半分の価値の方が現実的かしら?でも3,500円で来れる場所って…かなり近い?
ねこさまには、ぜひぜひ植田先生への質問状を作ってもらいたいです。すっごい期待しちゃう。
それとエッフェル塔の建設費は780「万」フランだから!(笑)
なんか寂しいな(苦笑)。
建設費の「万」忘れ、すみませんm(_ _)m。350,000円で出来ちゃったよ(滝汗)