最近面白かったこと。
この日記を、「ナホ×麻子」というキーワードで検索して来られた方がいらっしゃったこと。

…っていうか、そのキーワードでひっかかるこの日記に問題があるのかっ!?





さておいて。


やっと新公レポートを書き終えましたので、ちょっと繰り返しになる部分もありますが、この「パリの空よりも高く」の芝居構造について語ってみたいと思います。

本当は、友人から原作「花咲く港」の映像を借りたので、その比較もからめて書くつもりだったのですが。
まずは、「パリ…」単体のみで語ってみようと思います…


宝塚における芝居構造の基本は、2番手=「主役の相棒(愛するには短すぎる)」または「敵(飛鳥夕映え)」のどちらかですよね…?
まれに番手のつく人み〜んな主役の仲間で、敵役は専科や組長クラスの方がやる作品(「Jazzyな妖精たち」マクガバンなど)もありますけれども。

「パリの空よりも高く」では。

この作品には、主役の「敵」がいないんですね。

2番手は主役に利用されるエッフェル役。
相手役は塔建設に関わりのない花売り娘。
エッフェル塔建設に対する反対勢力は、パリ市民の噂話やボーイたちの会話=説明台詞の中でちらっと出てくるだけで、劇中にはまったく出てこない。

これじゃあ、どういじくっても、役者ががんばっても、「ドラマティックな展開」になりようがありません(涙)。


どうせ「全く新しい」人物を作るなら、「石の財閥」であるロルボン財閥の御曹司をキリヤンがやったら面白かったと思うんですよね。
で、エッフェルと組んだアルマンドに、もっと本気で対抗するんですよ。いろいろ妨害工作とかするの。で、その仲間はあひちゃんナホちゃんの強面コンビ(←中身は乙女)☆

結成パーティですぐ態度を変えてしまうんじゃなくて、もっとギリギリの、嵐の前あたりでやっと心を変えてみんなの仲間になるところから、アルマンドたちも巻き込んで嵐を乗り切るところがクライマックス。

そうすれば、嵐の中駆け込んでくるのも御曹司にできるじゃないですか。


で、エッフェルを祐飛さん。
ジョルジュは…順番でいくと園加ちゃん?…うーん。祐飛さんと同じ穴に落ちそうなコンビですねぇ。
素で仲が良すぎる人を、こういうコメディで相棒役にするのはあまり感心しません。どうせならみりおくんくらいまでぶっ飛ばした方がいいのかも。

いずれにしても。

準主役が主役の仲間(今回の場合、エッフェルもジョルジュも主役の「仲間」の範疇)になる作品は、よほど巧く構成しないと、視点が一カ所に固定されるためにダレてしまいがち。
「Ernest In Love」や「愛するには短すぎる」は、そのあたりが非常に巧かったんですが(だから両方とも佳作)、「パリの空よりも高く」は、まさにその構成上の欠点が露わに出ていると思います。

植田さんの過去の作品を見ると、元々単純なドラマを演出のハッタリがましいドラマティックさで魅せてきた部分があると思うのですが。
こういうクリエイトは、よほど日本語のセンスがあるか、他のキャストに魅力的な役がアテられる柔軟性と宛書能力があるか、設定自体がドラマティックか、どれかがないとなかなか成功しません。

少なくとも植田さん日本語のセンスはないので。
設定自体をドラマティックにする=主役に拮抗するべき2番手を敵役に置いた方が無難だったんじゃないのかな、と。



あるいは。
百歩譲って、準主役格の役を相手役であるかなみちゃんがやるという考え方もあります。

具体的には、パリ市民を代表するエレノール役をかなみちゃんにふる。
もちろんあのままではなく、もっと新公のみちるちゃんみたいなキャラクターに変える前提ですけど。ジュリアン小父さんへの憧れを胸に秘めて成長し、最近ママの跡を継いだばかりのお嬢さん、みたいな。

そのほうが、ギスターヴも「主役の恋敵」に見せやすかったのでは?
塔建設の敵でなくても、恋の敵でも全然オッケーですよ?宝塚ですもん。


「ペテン師」という軸に対して、「パリ市民」という軸を作る。
エレノールをかなみちゃんがやるということはそういうこと。

そして、きりやんがロルボン財閥の御曹司をするということは、「産業革命を謳歌する層」と「旧来の価値観にしがみつく層」を対立させるということ、です。



主役が、ただ立っているだけで何もしなくても主役にしか見えないタイプなら、あえて脚本内に対立軸を持ち込まなくてもいいんですけど。
麻子さんは動いてナンボ、遊んでナンボの人ですから。
主役が動きやすいのは、やっぱり「敵」がはっきりしている時なんですよ。だから、何らかの対立軸を作った方が、面白いモノにしやすかったと思います。

せめて、ペテン師二人に疑念をもつただ一人の人・レオニードをもっとフィーチャーするだけでも少しは違っただろうに…。

なぜそうしなかったのか。
なぜあんな、中途半端にいい人だけのパリにしてしまったのか。



…ああ、植田さん。
植田さんに尋きたいことが沢山あるんですけど、

…お茶会してくれないかなあ………。



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