いつから新人公演のプログラムから本役の名前が消えたのでしょうか?
あれ、便利だったのに。
「フローベル=響れおな」、とは書いてあっても、とっさに「本役は龍真咲」とすぐに浮かぶ人が何人いるんだろうか(涙)。
以前は、名前のある役は基本的に本役名が()で入ってましたよね…?

観劇日記をつけるのに絶対必要なので、復活させてほしいですぅ。



さてさて、月組「パリの空よりも高く」新人公演。

みちるちゃんのことは書いたので、冒頭の場面にいるオジサンたち(あ、一人若者が混ざってますが)について書かかせていただきます。


ドミニク将軍(嘉月)=姿樹えり緒
アルベール(越乃) =朝桐紫乃
レオニード(未沙) =彩央寿音
ジェラール(遼河) =光月るう
シュミット (北嶋)=綾月せり


月組の芝居を、ちゃんと継承してくれてくれそうな子が、ここにこんなに居たんですね。
すごく嬉しいです!



中でも、寿音ちゃんのレオニードは絶品だったと思います。
エリザベート新人公演のツェップス(本役・越乃)、暁のローマ新人公演のもりえちゃんの役…くらいでしょうか、覚えているのは。みっちゃんのバウは予定がつかなくて観られなかったし…でも、本公演でも日生オクラホマでも、常に誰かと、あるいは一人で小芝居してて、楽しそうで、目を惹いて、…なのにうるさくない。空気を壊さない。
不思議な存在感のある人だと思っていましたが…

登場からして、60代という年齢にちゃんと見えるんですよ!
新人公演では、これってすごく重要な、というか難しいことなのに。

たとえば、昨日褒め称えたエレノールは、かなり年齢不詳でした(苦笑)。まぁ、20年前にジュリアンと出会った頃は16,7の小娘だったのかな?という感じで、ジュリアンへの恋心は「初恋」というイメージが、逆に役づくりに生きていたので良いのですが。

でも、レオニードは、ちゃんとアルマンドくらいの…はちょっと苦しいけど、ジョルジュ(明日海りお)くらいの子供がいてもおかしくないように見えたんですよね。
声も落ち着いていて、深い響きがあって。私は声が良い人が好きなので、台詞を聴いているだけでとても幸せでした。
「上院議員」で、「国運を賭けた一大事業の中心になれる」大人物、というキャラクターにちゃんと説得力があったと思います。
なのに、きちんと笑いも取れる。

本当に、不可思議な存在感のある方でした。



そして、面白かったのがしのちゃんのアルベール。
昨夜も書きましたが、ほんのりと「エレノールへの深い想い」を想像させる仕草や動きがあって、人物像に深みができていました。
ナホちゃんは、踊らせるとあんなにエロいのに、そういう「ほんのり」系の色気は皆無な人なので(^o^)、エレノールとの間にそんな関係がありうる、ということに気づいてもいなかったのですが。

脚本は何一つ変わっていないのに、ちょっとした言い方や距離の取り方、肩を抱く仕草…そういったささいなことで、二人の関係がガラっと違って見える。
お互いをきちんと見詰めて、お互いのコトバをきちんと聴いているからこそできる「キャッチボール」のお芝居。
…しのちゃんやみちるちゃんが自分で考えた解釈なのか、演出の生田さんの指導なのかわかりませんが、非常に面白い場面になっていたと思います。



えりおっとのドミニク将軍。

端正なお芝居、と言っていいのではないかと思います。
あまり目立つところは特にないですけれども、最後の落成パーティーの時のレオニードとのやりとりとかもすごく暖かみがあって、良かったです。
おひげがよく似合いますね(笑)。



このレオニード、ドミニク将軍、アルベールの3人は、本公演ではコメディであることを意識してか、かなり小者っぽい役作りで芝居を組み立てておられますが(しかもエレノールが文句なしに豪傑なので更に小者に見える…)、新人公演では、あくまでもそれなりに功成り名遂げた「重鎮たち」として舞台に立っておられました。
だから、冒頭のホテルのロビーでの会話も、ごくごく普通のお芝居の一場面という感じで、るうちゃんを入れて5人のキャラクターがしっかり見えてきましたし、特に笑わせようという意識はないのに、観客の興味をそらさないナニカがあったと思います。

いったい何が違うのか、観ている間ずーっと考えていたのですが、結論としては演出の違いかなーと。

具体的にココ、というポイントはわからないのですが、なんとなく、全体的に間が良かったり、テンポが良かったり、動きが良かったりしたのだと思います。
…もちろん、一回限りの新人公演ゆえに観客の真剣さも普段の本公演とは段違いだというのもあるのですけれども(^ ^;ゞ

あ、それから。
動きといえば。

なんとなく、ですけれども、いろんな「会話」の場面で、舞台の上にいるメンバーが結構大きく舞台上を動いていたような気がするのですが。
本公演では、会話の時はわりと皆その場に立ったまま話していることが多いのですが、新公では舞台の上を縦横無尽に動き回りながら会話していたような…。あるいは、台詞のない人が無駄に歩き回っていたりとか。…パーティーのシーンとか、パリの街角のシーンとか、そのあたりのことなんですけれども。

人数が少ないから、空間をカバーしようとして結果的にそうなったダケなのかもしれませんが、動いているものがあるとそれだけで退屈しないものなんだなーと思ったので。期せずして、そういう効果もあったのかもしれませんね。



るうちゃんのジェラール。
可愛かった!!

いやもう、「可愛い」の一言です。

最初の登場で、エレノールに挨拶しようとするのにアルベールに邪魔されて「ぷーっ!」とむくれているところとか、もう可愛くて可愛くてたまりませんでした。
るうちゃんって良い声ですよねぇ〜!面白い声で笑いを取るんですけど、「声」自体で笑いを取るのではなく、ちゃんと「びっくりして変な声がでちゃった!」という芝居をしていて、それが可笑しい、という良循環になっていたのに感心しました。
意外とジェラールの芝居というのは難しいと思うんですよね…。あひるくんも毎回苦労されていますし。

ジェラールの芝居で、一番難しいのはパーティーでのギスターヴとのやりとりだと思うのですが、そこもしっかりキャッチボールしていたのが良かったと思います。
でも、最後の「この事業に参加しよう!」に変わるところはもう一工夫ほしかったかな…。
「鉄の時代!?」という台詞の言い方とか。

ロルボン財閥は、「20年前のパリ万博で使う大理石を一手に引き受けたのが始まり」=「石の財閥」なんですよね。だから、本来なら「鉄の時代」は完全に敵なはず。でも、ジェラールは、ギスターヴとの会話の中で時代が動いていることに気づき、置いて行かれないためにはどうしたらいいかを考えはじめて、そして「新しい時代」に乗り遅れるまい、参加しよう、と思うのですよね。
そこはあひるくんも苦労しながら演じていらっしゃる部分ですけれども、るうちゃんも、もっといろいろ間の取り方など研究してみたら良かったんじゃないかと思いました。

それにしても可愛かったです。本当に。
レオニードたちと一世代違うのが実感できたことも収穫でした!

あひるくんはやっぱり身体も大きいし男っぽいしで、(それがああいうカン高い声でカマっぽい芝居をするのがすごく面白いわけですけれども)、どうしてもオジサンたちとそんなに年齢差があるとは思えなくて、結果的に「ただの変な人」に見えてしまうことが結構あるのですが。
るうちゃんは、持ち味的にも役作りとしても完璧に(笑)可愛らしくて、素直に「息子の世代」=「イマドキのヘンなワカモノ」という図式に納得できました。



せりちゃんのシュミット(ホテルの支配人)。
せりちゃん、ぜひ今日から本公演もシュミットで…

コホン。

「血と砂」に最下で出演して、声の良さと芝居の巧さ(ちんぴら役でしたが♪)で私の心をとらえたせりちゃん。
その後、なかなか(私的に)お芝居のヒットが出なくて、歯がゆい思いもしたりしましたが。

シュミットさん、なんともいえずとぼけた感じで、すごくすご〜く良かったです!

台詞回しも、間のとりかたも、ごくごく普通で、自然で、違和感がなくて。
なのに、細かいところでちゃんと笑いを取ってましたね。

嵐の夜、エレノールに「2階の窓が…」と報告した後。フローベルの響さんが慌てて修理しに戻った後、エレノールに叱られるまで“しれ〜っ”とその場に残って、腕を前に組んでにこにこしている姿が…あんまりステキで。最高に笑えました(^ ^)。


最後の落成パーティーで、エレノールが「アルマンド・ジャッケと、ジョルジュです!」と言おうとする時。
シュミットは、その少し前、エレノールが「もう二人おります」と言ったあたりで「はっ」と気が付くんですよね。それまではニコニコしてるのに。で、ちょっとキョドって、エレノールが二人の名前を呼んだときに「思わず」という感じで目を瞑って、客が入り口の方を向いて拍手をするのに軽く首を振るんです…。それからエレノールが不安になってもう一度名前を呼ぶ段になって、やっと顔をあげて。おもむろに

「…いません」

と。

その間の取り方もすごく良かったですし、不安げな声も良かったんです。

大した場面じゃないんですけど、なんともいえず人間味のあるお芝居をしてくれて、とっても嬉しかったのです…。




みちるちゃん、えりおっと、しのちゃんは86期。
せりちゃんが87期で、るうちゃん、寿音ちゃんが88期。

月組若手は、今とってもアツくて面白いです♪
本公演ではみんな本当に出番がないですけど、本当にがんばっているので、良かったらぜひ観てあげてくださいねっ♪




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